ファンタジーなリメイクはお好きですか?
メーカー | Fantasy Flight Games |
発売年 | 1994年 |
作者 | Reiner Knizia |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 9歳以上 |
ゲーム概要
リメイクで魂を抜かれた傑作
『キングダム』は1994年に発表された「市場のお店」のリメイク作品です。正確には、本作の前に2002年に同名のリメイクが行われ、今回紹介するのはそのコンポーネントが見直されたバージョンです。ゲームの内容は、リメイク前の「市場のお店」と一緒です。テーマは、リメイクを行ったファンタジーフライト社のお家芸であるファンタジーに置き換わり、残念ながら見る影も無いほどダサくなりました。繰り返しますが、ゲーム性は変わっていないので、面白さはそのままです。
その実態は悩まし系タイル配置ゲーム
ゲームではマス目になっている盤上にタイルか自分の城を配置していき、自分の王国を繁栄させるか、敵の王国を衰退させるかして領土から得られる得点を競います。ゲームボードは二つ折り仕様となり、タイルやコインを置く部分ができました。一見すると、クニチーの2人用ゲーム「アトランテオン」のボードに似ていますが、もう少し大きいです。
手番では、このマスにタイルを1枚か、自分の城を配置していきます。全てのマスが埋まったら得点計算。基本的にタイルは、山札からひいたものを即配置します。城の配置かタイルの配置の選択を常に迫られるわけです。ただし、ラウンドの開始にランダムで1人1枚ずつ配られるタイルを使用してもかまいません。これを3ラウンド繰り返して合計点を競います。タイルをひいたら即配置しなくてはならないので、自分が得する様に置くのか、他人を邪魔するために置くのか、非常に悩ましいです。
配置する自分の城は、リメイク前のチップから立体的な駒となりました。塔の本数がそれぞれの城のレベル(1〜4)を表しています。これらを盤面のマスにタイルの代わりに配置する用途に使用します。
タイルにはプラス得点のものと、マイナス得点のものがあります。王国を守る兵隊や、怪物が描かれていますね。さらに、特殊タイルが5枚。山が2枚とドラゴン、金鉱、魔術師が1枚ずつあります。
城のレベルに応じた領土点
盤面が埋まったら、縦の列、横の段をそれぞれ計算していきます。一直線上の領地に対してお城を配置しているプレイヤーは、数字の合計×配置している城のレベルの点数を得ます。この得点計算ルールに特殊タイルが影響を与えます。
例えば、上記写真で上から3段目の得点計算では、(4+3-6)x2=2点が基礎点。この列にレベル3の城を置いている緑プレイヤーは2×3=6点を得ます。得点計算を終えたら、タイルは全て回収して再び山札とします。レベル2以上の城は全てゲームから除外し、レベル1の城は手元に戻します。つまり、レベルの高い城は使いどころが重要なわけです。
次のラウンドは、再びまっさらな状態からスタート。ゲームは3ラウンド行われ、最終的に最も得点を得たプレイヤーが勝利します。
プレイ記
流木のっちと2人プレイ。COQは緑。
日本の魂を心に刻んで遊ぶため、ジャパニーズTenuguiをマット代わりにしているというのは嘘で、マットを忘れたので、その辺にあった布を敷いて遊んでいる。
COQの初期タイルはプラス点数。ゲーム中、相手のタイルを想像するのも楽しい。
取り敢えず、タイルがいくつか配置されるまでは様子見。比較的大きな「+4」の隣りにレベル1の城を配置してみる。
同じ様に「+4」を求めて配置して来たのっちの青い城をマイナスタイルですかさず囲む。エグイエグイと言われながら、山札から引いたばかりのタイルを配置しているだけなので、サクサク進むし、攻撃的な1手もそれ程、後に禍根を残さない。
城が少ないうちは単純に、マイナスタイルは相手の領地へ、プラスは自分の領地へ。ゲームが進んで城が各地に現れると、自分だけが得する置き場所はほぼ無くなり、双方が得する場所に置く「苦肉の策」の連続になっていく。
COQは特殊タイルがひけない展開。ガンガンひきまくるのっちが魔術師と金鉱で自分の得点をのばしつつ、ドラゴンでCOQの得点はマイナスにするというイヤラしい展開。
タイル運もあり、第一ラウンドはタップリとマイナスを掴まされ大敗。
これ、手札が無い分、Qちゃんのエグ味が出にくくてイイネ
エグイエグイなどと言っておきながら容赦なく攻めてくるのがこの男の手だ。
第二ラウンドは、互いに城を置きまくる展開。イヤラ式戦法を繰り出すのっちの前に、点差はさらに開いた。
そして運命の第三ラウンド。COQの初期タイルは「+1」。ショボイ。このラウンド、COQの逆転への秘策は、相手よりも多く残した城。レベル3の城が1つ多かった。これを如何にしてプラスに繋げるか…そこに尽きる。
のっちの初手は、隅に魔術師。
当然、ここを軸にして盤面が発展していく。「+5」と「+3」が置かれたところで、魂の城レベル4を配置。のっちとしては、「+5」を自分だけが得をするために置いたのだが、運良く「+3」とクロスする位置が空いていたわけだ。
すると、それを挽回しようと周辺に城を建てまくるのっち。しかし、それは3つの青い城の間にポッカリと空いたスペースを造る結果に。
手をニギニギして気合いを入れて引く、タイルを。
そして、引いた「恐怖の姉さんタイル」。同学年に姉がいる2人にとってこのタイルは原始的な怖さを秘めている「チャンネルをよこせ〜っ、弟なんて消えてしまえ〜っ」
慌てふためくのっち領土にドラゴンで追撃。
エグッ
知ってる。フハハハハ
そして最終計算。
最後のラウンドでのタイル引きの強さで圧倒し、差しきったCOQの勝利。
プレイ時間:40分
総評
Bronze
タイルを配置するのか城を配置するのか。得点を重ねるには城を配置しなくてはならないが、先に手の内をみせたらマイナスタイルが襲ってくる。ひいたタイルをどこに置いても他人が得をしてしまう…置きたくない。クニチーの代名詞であるジレンマが楽しめます。そして、起死回生のヒキ。ここでマイナスタイルを引けば一発逆転。引けるさ!というアツさも秘めています。意外とアッサリしているのも良い点。欠点は得点計算が面倒なことです。
最初の1枚以外、タイルはランダム獲得からの即配置であるので、手番で行われる攻撃的なタイル配置もあまり不快感を呼びませんね。これがゲームを軽くし、爽やかにジレンマを楽しむことを可能にしていると思います。推奨プレイ人数は2〜4人のどれでも良いとなっていますが、筆者はランダム要素が現れにくい2人プレイが最も面白いと思います。
もっと胃の痛いような展開を楽しみたいプレイヤーには、タイルを全て公開して自由に選択するヴァリアントも用意されています。これはこれで面白いと思いますが、ご利用は計画的に。また、ルールを知っているとUNOのカードで遊べるという噂もありますが、野暮でしょう。
爽やかなゲームなので、テーマとアートワークはリメイク前の「市場のお店」のほうが良かったと思います。しかし、リメイクを行った会社がファンタジーフライト社ですから、これは期待するだけ無駄ですね。まるでイソップ童話の金の斧のごとく、池に落したゲームをファンタジー色に変えてきます。落したゲームのテーマのままでいいのに。それでも、最初のリメイクの時に、ボードサイズ、チップ等、ファンの間で不評であった欠点を補い、日本語で安価に手に入るようにしてくれたことには敬意を表します。ただし、日本人にはとっつきにくいダサさが滲み出ています。ファンタジーフライト社からは、以前にこのシステムを応用した「ベオウルフ・ザ・ムービー」というゲームも発売されています。