それぞれの四季が来れば、いつも私たちにとって一番良い
メーカー | R&D Games |
発売年 | 2012年 |
作者 | S Bleasdale, R Breese |
プレイ人数 | 2-6人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
オークションとエンジンビルド、そしてワーカープレイスメントの競演に舌鼓をうつ
2012年発表の『キーフラワー』です。発表当時エッセン会場でも、前評判通りの好評に包まれていた作品。四季(4ラウンド)に渡って競り落としたタイルで自分の村を拡大しながら、ワーカーを配置して生産した資源を勝利点に変換していくゲームです。非常に切れ味の鋭いシステムを奇跡的なバランスでデザインすることに成功しています。
筆者は食わず嫌いでKeyシリーズをプレイしたことがありませんでしたが、本作に限っては事前に公開されたルールを読んだだけで面白さが伝わってくる出来であったため、長い間の禁を破って購入に踏み切った作品となりました。俗に言う、指が滑ったというやつです。
本作はRichard BreeseによるKeyシリーズの1つですが、クニツィアの弟子ことSebastian Bleasdaleがデザインに参加しています。切れ味が鋭いのはそのせいかもしれません。
競りとエンジンビルド
ゲームは四季(4ラウンド)に渡って登場する村タイルを手持ちのキープル(ゲーム中のミープルの呼び名)で競り落とし、自分の村を拡大しながら自分の村の機能を拡張して勝利点を得ていくゲームです。ビッドと村タイルのアクション実行に関わる色のマストフォロー(後述)がシビレる展開を約束します。
ゲームに登場するタイルは資源産出が目立つ春から、資源を得点に換えるタイルの冬まで、ラウンドごとに移り変わっていきます。獲得したタイルで作った自分の村で資源をコネコネして得点を得ていきます。冬のタイルのみは最初に配られ、ゲームに登場させるタイルを各プレイヤーが選びます。何が高得点につながるかをプレイヤーが選択して指針を持った状態でゲームが始まるわけです。
マストフォローのキープルビッド
村タイルの競りでは、プレイ人数に応じたタイルが登場します。これに、手番のプレイヤーが手持ちのキープルをビッドして競り落としていくわけです。この時(駒の色ではプレイヤーの判別が不可能なので)、タイルのある一辺を自分の辺と決め、そこにキープルを置いてビッドします。既にビッドされているタイルで競り勝つにはそれを上回るビッドをせねばならず、しかも同じ色の駒を使用しなければなりません。つまり、駒の色をマストフォローする必要があります。
また、手番では、オークションにビッドするだけでなく、タイルの上に駒を置いてアクションを行うこともできます。それどころか、オークション中のタイルの効果も使用することができます。使用するには、そのタイルに1〜3個のキープルを置くのですが、これも勿論、色はマストフォローです。オークション中に利用されたタイル上の駒はタイル落札者の物となるので、アクションが利用されたタイルの競りにはビッドが集中します。なぜなら、ビッドに使用されたキープルはストックに戻ってしまいますので、いかにしてキープル駒を確保するのかがゲームの鍵であるからです。
トコロテン式の競り
このゲームの競りは、いわゆるトコロテン式の競りです。競りに敗れた駒は弾き出されて、別の場所に移動させられます。しかし、これらの駒は一度どこかに置いたら一蓮托生。さらに駒を足して増強することはできますが、分割して再配置することは許されていません。展開次第では、どうでも良いタイルに大量のビッドを移動させなくてはならないようなことが起こるため、非常に切れ味の鋭い、厳しい(シビれる)システムとなっています。
ゲームには基本3色以外に緑のキープルが登場します。これを手に入れるにはタイルのアクションを利用する必要がありますが、その分効果は絶大。緑駒は希少なのでマストフォローのルールを逆手にとって、下手をすると緑駒1つでタイルが落札できる強者です。
新たな人手は、船に乗ってやってくる
ラウンドの最後には、駒とアイテムが乗った船を、各プレイヤーが1つずつ選んで取っていきます。取る順番は、手番順を決めるタイルの落札状況によって決定します(手番順を決めるタイルが絶えずラウンドに登場します)。
アクションを行うのにもタイルにビッドするにも、キープルは必須です。より多くの駒を手に入れるため、手番順のタイルを落札することも非常に重要な1手となります。ちなみに、アイテムのタイルは資源を産出するアクションを実行するのに必要であったり、色々と役立ちます。
手番順を競りで決めるゲームは多々あれど、このゲームの手番順はワーカーの獲得に繋がるので軽視不可能…非常に優れたシステムです。
村の拡大、そして輸送
落札したタイルは、地形が繋がる様に自分の村に追加していきます。地形の中で、一番重要なのは「道」です。なぜなら、タイルのアクションで産出した資源は、道を利用して輸送しなければならないからです。同じくタイルのアクションで実行可能となる「資源の輸送」を利用して、資源を必要な場所まで運ばなくてはなりません。ルートビルディングの要素も色濃くあります。
なぜ資源を運ぶのかというと、「資源をそのタイルに乗せておく事により勝利点を与えるタイル」に対応するため、そして「資源を利用してタイルのアップグレードを行う」ためです。特に後者のアップグレードは重要で、効率的なアクションを可能にしつつ勝利点も増やすという、ゲームの勝利には欠かせない要素となっています。
タイルの表には、アップグレードに必要な資源とアップグレード後の効果が書いてあります。他人の村のタイルを利用して資源を手に入れた時は、最初から持っている自分のスタートタイルに湧きます。スタート地点に湧いた資源には、目的のタイルまで遥かな道のりが予測されるので、出来れば自分の村の目的地に近いタイルで資源を生み出したいところです。自分のタイルであればのせたキープルも戻ってきますし。
こうして村を発達させ、資源を生み、タイルをアップグレードしたり、勝利点を生み出すのに必要な資源を集めたりして勝利を目指すわけです。最後の季節(冬)には、「手持ちのキープル5つにつき1勝利点」などのタイルが登場したり、「川の距離が長いほど得点」などの条件が取り入れられるようになり、それぞれ自分で特化させた方向から勝利点の獲得を目指す事になります。
タイルアクションの実行は、他人の村のものでも実行可能です。ただし、他人の村のタイルに乗せたキープルは、ラウンドの終了時に他人の物となってしまうので、むやみな利用は控えなくてはなりません。
超余談:収納方法
衝立ては、完全に組み立ててしまうと分解することは難しいです。日本では縦置きにして保管する人も多いと思うので、アンカーは装着せずに、いつでもたためる様にして遊んだ方が良いと思います。
2つのメジャー拡張セット
このゲームは評価が高かったこともあり、幾つものタイル拡張やプロモが存在しています。メジャーな(箱に入って販売された)拡張セットには「商人たち」と「農夫たち」の2つがあり、これらによってそれぞれ「商契約や交易」と「農場」の要素が追加されます。双方とも拡張セットとしての評価が高いので、本作が気に入った方は手に取ってみることをお勧めします。本サイトでもそのうち紹介しようと思っています。
プレイ記
写真を撮り忘れるほど面白い!
ジャムタン会にて4人プレイ。最初に配られた冬タイルの中身を見てキープル駒増やしの戦略を選択。
追加でキープルが貰えるボートを落札し、村に装着する。そして、緑キープルを密かに集めてキープル増やしにクリティカルなタイルを落札していく戦略。無事に戦略が実り、勝利。しかし、面白さのあまりに最終形態写真を撮るのを忘れてしまうミス。
各プレイヤーの評判も良く、スピーディにゲームは終了した。4人で1時間強。
プレイ時間:70分(4人)
総評
Gold
キープルの色を使った縛り(マストフォロー)がとても面白いです。「バヌアツ」でシビレた感覚が再び訪れました。プレイ時間も適度で、とても満足の作品です。6人までできるというのも便利ですね。案外2人でもいけます。
面白さの元は色のマストフォローを競りだけにとどまらず、アクションにも連動させたところ。そして、アクションに使用した駒をタイルの持ち主が獲得ようにした点だと思います。この2つが絶妙に絡み合って、ゲームを深くしています。本当にシビレますね。このシステムは奇跡的な成功を収めていると思います。
特に夏のタイルにユニークな物が多く、初ゲームでは1つ1つ説明しないと出来ないのが難点ですが、数回遊べば問題無く各自が戦略を立てられるでしょう。そして、様々な価値筋があることは言うまでもありません。欲を言えば、各ラウンドに登場するタイルの枚数があと1〜2枚少ない方がゲームが締まると思いましたが、そうすると胃潰瘍になるかもしれませんね。あとは、同人ゲームのようなノリの説明書ですが、理解できる範囲なのでまぁ良いでしょう。
インタラクションの塊のようなゲームです。他に類を見ないタイプのゲームであるため、評価は必然的に高くなります。