どんなに洗練された大人の中にも、旅に出たくてしょうがない小さな子供がいる
メーカー | Days of Wonder |
発売年 | 2017年 |
作者 | Alan R. Moon |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 6歳以上 |
ゲーム概要
キッズ用にチューンされたチケライ第2弾!
2004年にSDJを受賞した「乗車券(チケット・トゥ・ライド:通称チケライ)」を知らない人はいないでしょう。米国全土を舞台とした広大なマップで目的地を目指して線路を敷いていくルートビルドのゲームです。誰もが胸躍る鉄道の旅をテーマとしていることもあり、初級者向けのゲームとしてこれを挙げる方も多いかもしれません。この作品を6歳児向けに調整したのが本作『乗車券 ファーストジャーニー』シリーズです。第1弾は米国マップ、第2弾(本作)はヨーロッパマップになっています。
キッズ用ということで、手番とカード取得の選択肢を狭め、マップは簡略化され、地名にイラストが追加されています。これらの調整により「乗車券」のゲームとしての魅力が凝縮し、結果として大人も楽しめるチケライになっています。この出来には作者のアラン・R ムーン自身も驚いたと後にデザイナーズノートで語っています。
手番は2択、カードは山札のみ、得点計算もなし!
手番はよりシンプルに2択のみです。目的地カードはゲーム開始時に2枚ずつ配られています。
手番終了時に自分の線路が目的地間を繋いでいたら、達成を宣言して自分の前に表向きに置き、直ちに新しい目的地カードを引きます。運が良いと引いたカードを既に達成していることがあるので、連続達成できる可能性もあります。目的地カードを引く瞬間は高揚しますね。最初に6枚の目的地カードを達成したプレイヤーが勝者です。したがって、ゲーム中に得点計算も発生しません(線路を敷くこと自体に得点は発生しません)。
本家「乗車券」では、列車カードは山札もしくはディスプレイのどちらかから引いていましたが、『ファーストジャーニー』では完全にランダムです。また、目的地カードを引いて取捨選択するようなこともありません。
注:どうしても達成できない目的地カードを持っている場合のみ手番をスキップする代わりに全交換できます。また、目的地カードに関係なく、東西の都市をつなぐと「East to West」カードがもらえます(1達成)。
本家の欠点を補う簡略化されたマップ
ご覧の通り、本家と比較するとマップはだいぶ簡略化されています。実は、本家「乗車券」では、マップが広大なゆえに、敢えて急いで線路を敷く必要性が薄く、手札を見通しがつくまで溜め込んで一気に線路を敷くというプレイになりがちです。ひたすらカードを集めるだけの序盤が冗長になるので、敬遠する方も多かったのではないでしょうか。その後、発売される続編では、あの手この手で線路を競争的に敷くことを目指させる調整がされているのも作者がこの欠点を理解している証拠だと思います。
『ファーストジャーニー』では線路は最長でも3マス分で、中心部に単線となっている部分も多く見られます。このようなマップで中心部の単線を確保されると、最短ルートで目的地へ線路を敷くことが困難になりやすいです。短時間のゲームでこれは致命傷になります。したがって、競争的に線路を敷くゲームになるというわけです。
都市はイラスト付き!
「乗車券」自体は未就学児でも遊べるルール量だと思いますが、難点は目的地となる都市の名前でした。日本語を含む多言語版でもボードとカードの都市名表記は基本アルファベットです。しかし!『ファーストジャーニー』では都市に特徴的なイラストがボードにもカードにも付記されています。これは物凄いプレイアビリティの増加をもたらすとても良い配慮だと思います。この配慮のおかげで、対象年齢は6歳ですが5歳くらいから普通に楽しめるようになっていると思います。
おすすめツール:カードスタンド
子供達の手は大人のようにカードを扇型に持つことが難しく、ルールは理解できてもカードの内容を隠しながら遊ぶことができない場合があります。また、”カードを隠す”という意識が芽生えるまで時間がかかる子供もいるでしょう。そんな時は、カードスタンドを準備してあげると手の小さな子供達でもカードゲームを遊ぶことができるようになると思います。キッズと一緒に「乗車券」を遊ぶときはカードスタンドがあると便利です。
総評
Silver
キッズ用にチューンしたら、大人も楽しい「乗車券」が出来上がった
子供達にはよりシンプルな「乗車券」を、大人達にはよりソリッドな「乗車券」を楽しませてくれるのが本作『ファーストジャーニー』です。本家のマップは子供達には広すぎますから。
手番やマップをキッズ用にチューンしたら、「乗車券」の短所であるカードの溜め込みがなくなり、プレイヤー間の競争に緊張感が生まれました。ゲーム性を生む単線最短ルートの配置は、簡単に取得競争の面白さを体感できる仕様です。したがって、ゲーマーを含めた大人も楽しめます(大人同士なら本家よりもいやらしいプレイがしやすいです)。ゲーム中、達成の度に宣言する目的地カードは複雑で効率的なルートを考慮する必要がなく、純粋に達成感を楽しめます。運次第で連続達成の快感もあります。つまり、結果として適度な運と、自分の路線を広げて目的地を達成するという「乗車券」の長所だけが凝縮されたゲームになったのです。しかもインスト数分。
最近、「乗車券ロンドン」や「乗車券サンフランシスコ」など、短時間(15分程度)で遊べるシリーズが続けてリリースされています。しかし、これらはプレイ時間は短いものの本家のシステムに近いので『ファーストジャーニー』とは別物です。都市名もアルファベットのみですし。
日本未発売のため、筆者も友人に教わるまでこの存在を知りませんでした。『ファーストジャーニー』こそ、日本で流通させて欲しいものです。子供も大人も楽しみながら遊べるキッズゲーム。これこそボードゲームでしょう。ここから始めてより複雑な「乗車券」にチャレンジしていくのもありだと思います。