原油王(クルード)

40年の時を超えてリメイクされた、近代ゲーム源流の1つ

メーカーSt. Laurent Games
発売年1974年
作者James J. St. Laurent
プレイ人数2-4人用
対象年齢13歳以上

ゲーム概要

300個以上のミニチュア駒に彩られたオイル発掘経済ゲーム

「マックマルチ」という経済ゲームをご存知でしょうか? ダイス出目に応じて採掘される原油をガソリンに換え、需要供給で変動するマーケットに売却することによってゴールの金額を目指すというゲームです。「カタン」に代表されるようなダイス資源発生系の始祖的ゲームです。近年だと「封建領主」というゲームにシステムが流用されていたのが記憶に新しいです。

とにかくミニチュアの駒が凄い

「マックマルチ」の基は、アメリカで1974年にデザインされた「CRUDE: The Oil Game」というゲームです。その後、(真偽は定かでないですが)作者の知らないうちに欧州で「マックマルチ」としてリメイクされ、流通したのだとか。「マックマルチ」には、立派な駒が沢山付いており、いつしか原題よりも有名になったという逸話があります。

ペガサス版

2000年代になって、ストロングホールド社が原作者と手を組み、いくつか改変を加えて発売したのが、このページで紹介している『CRUDE: The Oil Gameになります。また、本作と同時に、ドイツではペガサスシュピーレから「Mcmulti(新版)」がリリースされました。実はこれらはアートワークが異なるだけの同じものです。ドイツの版権のみ、ペガサス社が取得したようです。

基本はダイス座標の当たり外れに一喜一憂する

手番では、赤と黒のダイスを振ります。出た目の座標にある建物がダブルヒット、それぞれの出目の列にある建物がシングルヒットとして石油を生み出したり、石油をガソリンに精製したりしてくれます。ダイスを振る前後には、建物を建てたり、ガソリンや原油をマーケットと売買したりというアクションを行うことができます。

赤と黒それぞれのダイス目は、下家と上家にも影響する

他人との絡みとしては、マーケットでの売買による間接的なやり取りと、自分の振ったダイス目が、それぞれ両隣のプレイヤーにシングルヒットを与える可能性があります。他人の手番でもある程度わくわくできるので、悪くないシステムです。

建てられる建物は、採掘リグ、油井、製油所、ガソリンスタンド。油井はリグをダブルヒットさせないと建てる事が出来ないルールなので、初期はリグを大量に建てることになります。石油採掘はまさにギャンブルなのです。

旧版マックマルチからの変更点は

実は手番で振るダイスの目は、資源を生み出すだけではなく経済の行方も左右します。出目次第で、その場が好景気や不況になったりします。経済ゲームとうたっているだけのことはあり、当時からそういう要素を取り入れていたのですね。ただ、旧版はゾロ目がでないと景気が変動しない仕様だったようです。しかし新版では、2つ振るダイスの差分の合計が8になると景気を変動させるダイスを振らなければならないという仕様で、より景気が変動し易くなりました。また、変動先の景気が、現在の景気によってある程度決まっているという”景気の方向性”があります。旧版と比べると大分景気変動が意味を持つようになったみたいで好感触です。コレ以外にも、幾つかのコンポーネントが豪華になったりしているみたいですね。

国内と海外の原油マーケットとガソリンの小売りマーケットを表すボード:新旧の差はこれに集約されている

景気によって小売りのガソリン値段が乱高下し、施設の値段も変わります。思惑が外れるようなこともあってよりダイナミックなゲーム展開となったみたい。ゾロ目が出ると経済イベントが発生し、大不況が来たり、施設に応じて違約金を支払わなければならなかったり、1/36の恐怖がいい感じになりました。

目標金額を達成したプレイヤーがゲームの行く末を決める

ゲーム開始時に、終了条件となる目標金額を決定します。通常は750M$。ロングゲームだと1000M$に設定するようにマニュアルに記載されています。これを超えたプレイヤーはゲーム終了宣言をする権利を獲得します。終了宣言がなされると、その他のプレイヤーが1度ずつ手番を行った後にゲームは終了し、手持ちの施設を売却した資産の総合計で勝敗を決します。終了時の施設売却額はかなり割が悪いので、そこに向かうまでの好景気時に売り払っておく事も大事です。

プレイ記

海賊船さん、MOGさん、流さんと4人プレイ。

初期資金は200M$、これを750M$まで増やさなくてはならない。当然、原油を生み出さないことには話にならないので、各自ダブルヒットを狙って採掘リグ(黒い櫓みたいなやつ)を建てまくる。その他、COQのみがオレンジ色の製油所を建てていない。緑はお客さんにガソリンを売るガソリンスタンド。リグの並べ方1つみても性格がでる。実際には、数が一緒なら確立は同じなんだけど。

4人を苦しめたのは、フォアキャスト(未来予測)されているゾロ目の経済イベント。建ててる施設に応じてお金を払わなければならず、突出してこれを食らうと脱落しかねない。基本的に昔のゲームなので、資金繰りのガードレールなどは無い。

中々石油を掘り当てられない中、ガソリン市場の値段はグングン上がっていく。でも売るものがない。

そんな中、まず最初に石油を掘り当てたのはCOQ。最初に配置したリグが次々にダブルヒットし、油井を建設。リグから油井へのアップグレードには資金が必要な事を忘れており、ギリギリの経営。この時イベントが発生していたらやばかった。

黒い駒は原油。市場を壊す程にザクザク湧いて来たので製油所とガソリンスタンドを増設。他のプレイヤーはリグがまったくヒットしなくて文句を言っていた。しかし、原油が湧かないなら湧かないなりに大きく崩れた市場から原油を購入し、精製して売るというビジネスモデルも成立するみたい。経済ゲームというだけあって、その部分は懐が深い。

ゲームも中盤を過ぎた頃、やっと上家の流さんのフィールドに油井が建った。完全に出遅れた展開ではあるものの、この時資産でトップはこの人だった。

大量の原油を抱え、ゲーム展開も見えてきたところで一気にリグを潰してガソリンスタンドを増設。原油の保有数などに制限が無く、保管量もかからないところがゲーム的に弱いところか。

序盤は全く機能しなかったガソリン市場も次々にガソリンが売られて盛況。

最後はCOQが終了条件達成を宣言し、景気が良いうちに施設を出来るだけ売却して勝利。

プレイ時間:180分(4人)

総評

古典ゲームのリメイクなので、調整が入っているとはいえ古い印象は拭えません。また、4人プレイで3時間というのは少し冗長な気がします。ガチガチの戦略ゲームなら良いのですが、多分にダイスで運が飛び交うゲームとしては長過ぎますね。

ただ、売りである300個の立体ミニチュアは見事であるし、ダイス目で石油が湧く様が演出するわくわく感が脳の麻薬的な部分を刺激するのは間違いないです。また実際には、石油が湧かなくても勝負になるのでゲームとしての完成度は結構高いです。

作者は、このゲームのバランス調整中に亡くなってしまったようで、これが遺作となってしまいました。ユーロゲームに大きな影響(カタンなど)を与えた古典的名作として持っておいても良いかもしれません。箱はデカいです。覚悟して下さい。

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