ファーストラット

ゲーマーズゲームはチーズとネズミの森に隠せ

メーカーPegasus Spiele
発売年2022年
作者Gabriele Ausiello, Virginio Gigli
プレイ人数1-5人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

最高フレーバーの論理すごろく

コンポーネントは満載

ネズミ達の住むガラクタ置き場では、お月様はチーズでできているという言い伝えがあった。ガラクタの山で月への初着陸のコミックを読んだネズミ達は、この無尽蔵のお宝を求め、一斉に月への冒険を開始した・・・

「ファーストラット」ルールブック

こんな素敵なフレーバーで始まるゲームが『ファーストラット』です。各プレイヤーはロケット発射台に繋がるジャンクヤードでラット駒を進めていき、止まったマスの材料を獲得してロケットの部品を組み立てつつ完成したロケットに乗り込んでいきます。ロケットの部品を集めていくセットコレクションと駒を進めていくすごろくのメカニクスのゲームです。ただし、すごろく部分はダイスを用いない(運の要素のない)論理すごろくになっています。

ゲーマーズゲームはチーズとネズミの森に隠せ

このゲームは、素敵なフレーバーとかわいいイラストでありながら、ゲーマーズゲームの一員です。その昔「チーズのお城」というネズミとチーズのかわいいフレーバーの皮を着たゲーマーズゲームがありましたが、これもその類です。ドイツでは「ゲーマーズゲームはチーズとネズミの森に隠せ」という格言があるのです。

止まったマスの材料がもらえるすごろく

このゲームでは、ラット駒を進めていくことにより止まったマスの材料を獲得していきますが、その動かし方にまったく運の要素がありません。それどころか、ゲーム中に運の要素は一切ありません。ジャンクヤードのマスには色がついています。ラットを1匹だけ動かす場合には最大5マスまで任意のマス数だけ進めることができますが、複数のラットを動かす場合には、1匹につき最大3マスまで、かつ止まる場所は同じ色の別のマスでないといけません。しかも、止まるマスに他のプレイヤーのラットが居る場合には、お金のような役割を持つチーズを支払う必要があります。この運の要素のないすごろくを当サイトでは論理すごろくと呼んでいるという訳です。新種のワーカープレイスメントのようでもあります(ペガサスはこれをワーカームーブメントと呼んでいます)。

2重3重に絡み合う複数のトラック

このゲームで駒を進めていくマス(トラック)はジャンクヤードだけではありません。その他に、電球駒を進める電線トラックと、ラットの巣穴トラックがあります。

ジャンクヤードでラットが電球のマスに止まることにより、電線トラックで電球を進められます。電線トラックはジャンクヤードに沿っており、電球駒を進めることによって、ジャンクヤードのマスで獲得できる材料を+1することができます。また、電球トラックの3つのチェックポイントから先着順で得点が得られます。

一方、ラットの巣穴トラックは円型の周回トラックになっており、周るごとに特殊能力を与えるコミック本や追加のラット駒、そして早い者勝ちの得点のいずれかを獲得することができます。ラットの巣穴駒を進めるためにはリンゴの芯のマスに止まる必要があります。

メインストリームのジャンクヤードを進めながら、他の2つのトラックを進めて複数の要素を絡め、何かに特化した戦略を立てることが求められる正にゲーマーズゲームの様相です。

セットコレクションは早い者勝ち

材料を集めて部品を組み立て、早い者勝ちで得点キューブを置いていく

ネズミ達の目的はジャンクヤードの材料を使ってロケットを組み立てて月へ行くことなので、ゲームで得点を得る主な手段はこのセットコレクション部分となります。電球やリンゴの芯と同様に空き缶やベーキングパウダーのマスに止まることでこれらの材料を獲得できます。手番の最後には、この材料を規定通りに組み合わせて好きなだけロケットを作ることができます。ロケットを作ることができれば、得点トラックの早い者勝ちの得点が貰えます。

購入するか盗むか、明暗を分ける「お買い物」

チーズを支払って「購入」するか、スタート地点も戻る代わりに「盗む」か

ジャンクヤードの途中には、カラスやカエルの出店が出ています。ここではチーズを支払うことによって材料採取を有利にする「ランドセル」や最終得点計算項目が増える「ビンの王冠」を買うことができます。もちろん、これらの効果で勝負を決めることもできますが、実はこれらの店ではチーズを支払うことを拒否して”盗む”ことにより、アイテムを手に入れつつスタート地点に戻ることができます。スタート地点に戻ることの有利・不利は戦略次第と思いますが、このお店での振る舞いが勝負を分けることがしばしばあります。

ビンの王冠はゲーム終了時の得点要素

プレイヤーを楽しませる要素が盛りだくさん

このゲームの特筆すべきポイントは、プレイヤーが楽しめるように極限まで考え抜かれたフレーバーとシステムの融合です。冒頭紹介したチーズのお月様の話に限らず、そもそもロケットに搭乗するのは宇宙(チュ〜)飛行士ですし、コミック本には「アーノルド・チュワルツネッガー」「ルイ・ラットストロング」などのヒーローが登場し、読むと自分のラットをスーパーラットに覚醒させることができたりします。一切妥協のない取り組みが見受けられ、非常に好感の持てる作品です。

まるでディズニーアニメのようで、映画化やアニメ化、グッズ販売の未来が見えるほどのよく練られた世界観です。

ロケットに乗り込め!

ジャンクヤードの最終マスに到達したラットは宇宙(チュ〜)飛行士となる

最終マスの発射台に到達したラットは宇宙(チュ〜)飛行士としてロケットに搭乗します。ロケットに搭乗したラットも早いもの順で得点を生みます。こうして、誰か1人のすべてのラットがロケットに搭乗するか、得点用の駒を使い切るとゲーム終了の引き金が引かれます。ゲーム終了時点で最も得点を得ていたプレイヤーが勝利して月のチーズを家族に分け与えることに成功します。

裏面の可変式でリプレイ性を担保

このゲームのボードが両面仕様となっており、なんと裏面のジャンクヤードマスと得点トラックの点数はランダム可変式となっています。論理すごろく故に動きがパターン化してしまいますが、可変式のボードを用意することでリプレイ性を担保しています。本当に、何から何までよく考えられた作品です。

ソロモード

カードのデザインも秀逸

最近のゲームらしく、ソロモードも用意されています。NPCのグレッグと勝負するオートマ用カードが付属しています。グレッグはとうの昔にフェアプレイを諦めたラットなので強敵です。

超余談:当初はキャラバンのゲームだった

久しぶりに書く、ゲームの超余談のコーナー。本作『ファーストラット』は開発当初ラクダを率いるキャラバンのゲームで「Four Camels」というゲームだったそう。ペガサスの開発チームがファーストラットのテーマを提案したようです。そして、このゲームのプロトタイプがペガサスの評価テーブルにのったのは2019年のエッセンの時期。そこから2022年3月の発売までに2年以上の長い期間をかけてディベロップされたということです。ちなみに、デザイナーの2人はローマ近郊に住む友人同士だったようです。



プレイ記

4人プレイ:今度の人生は盗まない!

クローズ会にてジョーコデルモンダーあきおさん、テンデイズタナカマさん、えりえりさんと4人プレイ。

初回の4人プレイで盗みまくってビリとなったCOQ(青)は、今回の人生では盗まない戦略を実践。COQは初回プレイと同じくスタートプレイヤーとなったので、この作戦の有効性の真偽が検証できる。

常に先行することを心がける青COQ

COQは先手番だったこともあり、常に先行することを心がけ、盗みは働かない。その代わり、出店で無料で商品を購入できるスーパーラット「ラットウーマン」の獲得に全勢力を集中していく。その間、おじさん達は着実に悪に手を染めていく。

あきお
あきお

ここは童心に帰って盗んだバイクで走り出そうや!

タナカマ
タナカマ

そうですね、盗みまくりましょう!

このゲームの終了条件のうち、ラットを全て宇宙(チュ〜)飛行士にする条件が達成されることは珍しく、殆どが得点キューブを8つ使い切ることにより条件が達成される。ジャンクヤードのマスで得られる資源は後半のマスに行くに従って増大するので、盗んでスタート地点に戻ることはかなりリスクのある行為である。

エナジードリンクをタダで手に入れた

ラットウーマンの力を借りて出店で電球+2のランドセルと1回のみ獲得資源を倍にできるエナジードリンクを無料で手に入れるCOQ。そして盗みを働いていないのでラット達は順調に終盤のマスへと到達している。電球を10個獲得できるマスに止まった時点で満を辞してエナジードリンクを使用。

COQ
COQ

電球を20個獲得します!

電球を20個獲得することで電球マーカーを一気に前進させ、今後の獲得資源をほぼ全て+1にすると共に、建設ライトの得点トラックの高得点マスに2つの得点マーカーを同時に置くことにも成功する。

最終形

その後、あきおさんも単独移動で無類のスピードを誇るスーパーラット「ラットストロング」を獲得し、えりえりは手番を有利に進めるコミック本を複数組み合わせてロケット部品の作製に精を出す。そして、タナカマさんは常に盗みを働いている。

結果、ロケットに乗り組む早さを犠牲にして最後まで資源を取り尽くしたCOQがトップ。2位は大泥棒タナカマさんとなりました。やっぱり盗まない方が強いかもしれない。あきおさんはいつの間にかジャンクヤードに飲み込まれていた。

あきお
あきお

複雑すぎるわっ!

プレイ時間:60分

4人プレイ:盗みまくって人生をやり直す作戦

ランビーフィッシュにて、4人プレイ。

なまじルールブックを翻訳して様々な要素を知り尽くしているCOQは、ある程度まで電球を進め、チーズを増やす効力のあるランドセルも盗み、スタート地点に戻されることを利用してチーズ特化の作戦に取り組もうとする。チーズを10個供出することでも最終得点計算用のキューブを得点トラックに置けるのだ。

COQ=緑
COQ
COQ

ダンス・ウィズ・ウルヴスなら僕は”チーズを寄付する男”と呼ばれていますよ。

しかし、一同の答えは「ケビン・コスナーって誰ですか?」という衝撃的なものであり、同時にこの作戦は失敗に終わる。すごろくのマスはゴールに近しい程にたくさんの材料を獲得できるようになっているため、如何に電球駒を進めて材料獲得を+1にしても、盗みを繰り返してスタート地点に戻ることの非効率性を埋めることはできなかったのである。

ラットストロングCOQ

途中から作戦を切り替え、コミック本でスーパーラットを誕生させ一気にゴールの発射台を目指す作戦は成功するも、他のプレイヤーと比較して圧倒的に1手番に手に入る材料の数が異なるために挽回することができない。さすが、運の要素が皆無のゲームである。

最終形

最後までCOQの緑のキューブが得点トラックに置かれることはほとんどなく、トップにダブルスコアをつけられて敗退。ちなみにトップのプレイヤーは一度も盗みを働くことなく、真っ当にラット人生を全うした(ライム)。

プレイ時間60分



総評

Silver

プレイヤーを楽しませることに余念のないデザインで、ものすごく丁寧にディベロップされた作品だと思います。作者の一人(Gabriele Ausiello)はこれがほぼ処女作、作者のもう一人(Virginio Gigli)はエジツィアやグランドオーストリアホテルも連名で手掛けた実力派です。そういえば、ワーカームーブメントの仕組みにエジツィアの色が少しだけ見える気もします。本作はディベロップに2年以上の期間を要したとのことで、長い時間をかけて暖めてきた作品が面白い(「ワーリングウィッチクラフト」「カスカディア」など)というトレンドの一翼です。そして、Dennis Lohausenによるアートワークも手抜きがありません。これは単体でもグッズ展開が見込めそうな出来です。

Cuteなフレーバーとは裏腹に、運の要素がまったくないゲーマーズゲームです。ワーカームーブメントのメカニクスがゲーマーズゲームたる所以です。読んだ瞬間に面白いことが想像できる新規性のあるルールですが、案外とルール量は多く、初見のプレイヤーがこれらの繋がりを把握するのは難しいかもしれません。上級者はこれを利用して多彩な戦略を実行できます。ワーカームーブメントのメカニクスはこれから発展していく可能性が楽しみです。

ゲーム中、早取り競争やバッティングによるチーズの支払いはあるものの、意図的に邪魔をするようなプレイはしにくい設計なのは現代風です。ゲーム時間が60分程度のため、フレーバーも相まってそこまで重苦しいゲームではなく、和気藹々と楽しめる戦略ゲームになっています(ファミリーゲームとは呼べませんが)。得点が低いことはあってもゲームが立ち行かなくなることはないので、その点では誰でもライトに楽しめる良作でしょう。

新規性のあるラット駒の動かし方で毎手番同じマスに如何に効率的に駒を動かしていくのか考え、多数の得点要素の中から特化する戦略を選び出す行為は楽しくて、それでいて60分程度のプレイ時間というのは優秀です。

難点は、手番が回ってきてから動かすマスを選択する必要があるケースが多く、ダウンタイムが長くなりがちな場面があることです。そのため、バッティング要素があるにもかかわらず、最適プレイ人数は3〜4人が推奨されているようです。実際、少人数でプレイする際には得点マスを少なくする調整があるので3人でも面白く遊べます。3〜4人推奨は、先手番が有利になりがちなシステムのせいもあるかもしれません。また、多くの要素がありながら、勝利につながる戦略は限られているようにも感じた(盗んだら勝てない?)ので、少しプレイを重ねて検証してみたいと思っています。

ゲームへの思い入れを感じるデザインで、値段以上の価値を感じました。流石、長期間をかけて開発しただけのことはあります。おそらくですが、日本語版が発売される流れがあるように感じています。2版の印刷に合わせて発表されるのではないかと思いますので、楽しみに待ちましょう。

購入先情報

日本未発売です。

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