
出典:ボードゲームギーク
1964年 ドイツ生まれ
シンプルなルールでも「シャハトの作ったゲーム」ということがわかる独特のデザイン。ボードゲームデザイナーの枠を超えたアーティストであるシャハトはユーロゲーム界の宝であり、筆者お気に入りのデザイナーの一人である。
ミハエル・シャハト:ユーロゲーム界のアーティスト
ミハエル・シャハト。重厚なテーマと複雑なシステムを特徴とするアメリカ系のゲームとは一線を画し、シンプルながらも奥深いゲーム性を持つユーロゲームの世界で、確固たる地位を築いているドイツのボードゲームデザイナーだ。本ページでは、シャハトについて徹底的に調査し、その魅力に迫っていく。
シャハトってどんな人物?
1964年、ドイツのヴィースバーデンに生まれたシャハト(実際には、日本人にはシャハトなのかシャフトなのかは聞き取れない)は、ダルムシュタット専門大学でグラフィックデザインを学んだ。その後、約15年間、様々な広告代理店でアートディレクターとして働き、Heinz、Coca-Cola、Kellogg’sなどのデザインを手がけていた。
シャハトは2005年に広告業界を離れ、専業のボードゲームデザイナーとなった。当時、ボードゲームデザイナーとして生計を立てることは容易ではなく、リスクも大きかった。しかし、「ゲームデザインは、お金を稼ぐための仕事ではなく、情熱を注ぐべきもの」という信念を持ち、専業になることを決意したのだ。彼をゲームデザインの世界へと導いたのは、ボードゲームのデザインコンテストだった。1992年、雑誌「Spielerei」に掲載されたゲーム「Taxi」が彼の最初の作品となる。

2007年には「ズーロレット」でドイツ年間ゲーム大賞を受賞し、彼の代表作として広く知られるようになった。シャハトは、自身のゲームデザインについて「ルールはシンプルに、しかしゲームプレイは最大限に」というモットーを掲げてい。誰もが簡単に理解できるルールでありながら、何度遊んでも飽きない奥深さを実現しているのが特徴だろう。
興味深いのは、彼がゲームデザインを始めた当初、カードゲームやボードゲームに関する知識は限られていたということだ。メジャーな国際的なゲームや「モノポリー」「リスク」「パチーシ」「チェッカー」といった伝統的なゲームしか知らなかったという。むしろ、コンピューターゲームの方が詳しかったようだが、当時はコンピューターゲームのようなボードゲームを作ることは一般的ではなかった。
シャハトは、ゲームを「ビジネス」としてだけでなく、「楽しみ」としても捉えている。専業のゲームデザイナーになってからは「ビジネス」の側面も強くなったが、ゲームを楽しむという気持ちが無ければ、以前の仕事を辞めていなかっただろうと語っている。
また、インタビュー動画では、シャハトは顧客との良好な関係を築き、ブランドを差別化し、効果的なマーケティングを行うこと、そして、ビジネスにおいて誠実であることの重要性を語っている。
シャハトのゲームの特徴と傾向
シャハトのゲームは、以下のような特徴を持つものが多い。

- シンプルなルール: ルールがシンプルで分かりやすく、初心者でもすぐにゲームに馴染むことができる。例えば、「コロレット」では、手番にすることは、山札からカードを引くか、場に出ているカードの列を取るかのいずれかだけだ。
- 奥深い戦略性: 単純なルールながらも、プレイヤーの選択によってゲーム展開が大きく変化するなど、奥深い戦略性も兼ね備えている。例えば、「ハンザ」では、ゲーム終盤に多くの得点が得られるため、一見不利な状況でも逆転勝利が狙える。
- インタラクション: プレイヤー間のインタラクションが程よく存在し、他のプレイヤーとの駆け引きを楽しむことができる。例えば、「Zooloretto」では、他のプレイヤーのトラックに動物を乗せることで、相手の計画を妨害できる。
- 美しいコンポーネント: コンポーネントの質が高く、見た目にも美しいゲームが多い。
シャハトは、テーマとメカニクスの有機的な繋がりを重視している。「テーマ」を最初に決めてゲームを開発する場合、メカニクスをテーマに照らし合わせて判断することができるため、テーマとメカニクスの調和が取りやすい。一方、「メカニクス」を最初に決める場合は、できるだけ早い段階で適切なテーマを見つけ、開発の過程でテーマとメカニクスの強い繋がりを作り出すように努めている。
ユーロゲーム界への影響
シャハトは、「ズーロレット」でドイツ年間ゲーム大賞を受賞するなど、ユーロゲーム界に大きな影響を与えてきた。彼のゲームは、世界中のゲーマーに楽しまれており、多くのデザイナーに影響を与えていると言えるだろう。
特に、シンプルなルールと奥深い戦略性を両立させたゲームデザインは、多くのフォロワーを生み出している。 ユーロゲームは「プレイヤーの脱落がない」「インタラクションが程よい」「プレイ時間が短い」といった特徴を持つが、シャハトのゲームは、これらの特徴を満たしており、多くのプレイヤーがユーロゲームに親しみやすかった点で、ユーロゲームというジャンルをより広く知らしめる上で、大きな役割を果たしたと言えるだろう。
まとめ
ミハエル・シャハトは、ユーロゲーム界を代表するゲームデザイナーの1人だ。彼のゲームは、シンプルなルールと奥深い戦略性を両立させており、世界中のゲーマーに楽しまれている。彼のデザイン哲学は、ユーロゲームの普及に大きく貢献したと言えるだろう。
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