ヘルウィグ

シャハト、デザイナー歴25年を記念するゲームだが・・

メーカーSpiele aus Timbuktu
発売年2014年
作者Michael Schacht
プレイ人数2-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

中世ドイツを舞台とした中量級の貿易ゲーム

縁あって、ドイツゲームの巨匠の1人であるM. シャハト氏のゲームデザイナー歴25周年を記念するゲーム、「Hellweg westfalicus」の邦訳を担当させていただいた。翻訳にあたり、シャハト氏と連絡をとってルールの明確化を行い、英語ルールの修正もされた。彼の偉業の祝福に少しだけ貢献できたかと思うと感激でした。これを書いた当時はいよいよ明日、2014年のゲームマーケットにて販売開始予定となっていました(2022年再掲にあたり加筆修正)。

このゲームの日本代理店は熊本の「ゲームフィールド」さんで、日本販売分には美麗な印刷日本語ルール、英語ルール、そしてミニ拡張が付属していました。このゲームはシャハトのオリジナルブランドであるTimbuktuが出版しているのでアメリカでは手に入り辛いらしく、日本でこの時期に買うことができたのは日本代理店の努力の賜物だったのでした。このゲームの肝は販路の確保なので、ゲーム自体の販路の確保からゲームが始まっていたのかもしれません(嘘)。

内容物:箱はアレアの中箱サイズ

基本ゲームと2種類の拡張ルールが付属している

ゲームのタイトルとなっている「Hellweg」とは、5000年以上の歴史をもつ重要な貿易路のことです。ゲームでは、3種類の商品を出来るだけ安く仕入れ、出来るだけ高く売ることを目指します。いわゆる、ピックアンドデリバーのゲームで、仕入れた商品は貿易路を経由して別の都市で販売するのですが、貿易路を利用するためにはあらかじめ台車を配置しておかなければなりません。また、貿易路には舗装道路と未舗装道路があり、未舗装道路を利用すると台車が壊れてしまうので注意が必要です。売却可能な都市は毎ラウンドランダムに明らかになりますが、ゲームを通して登場する都市とその売却額がすぐに覚えられるようなシンプルな法則で決まっているので、記憶することができれば予想の範疇とすることができます。

ボードはアーケード版のドラゴンバスターの画面のようだが、これもシャハト自身が描いている

つまり、将来売れるであろう商品の売却場所と値段を予測しながら、台車を配置して販路の整備をしていくゲームということです。商品の仕入れは早い者勝ちなのですが、購入金額は手番中に寄り道をするほうが安く設定されており、シビアな所持金管理と相まって苦しい選択を迫られます。

ゲームには基本ルールと2種類の拡張ルールが同梱されており、上記が基本的なゲームの流れとなります。拡張ルールでは、さらに早い者勝ちの販路確保ボーナスや、仕入れをより複雑にする倉庫の使用、各アクションを強くする特権の使用などが可能になります。

基本ルールではかなりソリッドなゲーム展開となります。まさにシャハトを好むプレイヤーが期待するプレイ感なのですが、真にソリッドなゲーム性を楽しむためには前述の販売都市を記憶することが必要に思われます。この点が受けるかどうか、25周年記念の行く末が気になります。

基本ゲームの簡単な流れ

ゲームの指針となるのは毎ラウンド明らかにされる「このラウンドで取引の行われる4つの都市と商品を示すカード」です。これが明らかにされた後、まずはそれぞれの都市ごとに各プレイヤーが商品を販売していきます。商品はその場所になくとも、自分の台車を置いた貿易路で繋がっている都市にあれば輸送して販売することができます。販売額は3〜5ターラー(お金の単位)となっています。未舗装の道路に置かれている台車は使用すると壊れてしまいます。ここで重要なのは、販売額3〜5ターラー、都市、商品の組み合わせがすべて存在するところです。例えばDortmundでビールを売ることのできる機会はゲーム中必ず訪れ、その販売額は3〜5ターラーの各1回ずつということです。12ラウンドあるうちのどのラウンドでその機会が訪れるかはわかりませんが、必ず訪れるということは、準備ができるということです。逆に、すでに訪れた機会を記憶しておくことも重要です。

4つの都市:売却可能な商品は色で、価格は数字で表されている

カードは四角型です。スリーブはMaydayの70×70が最も近いかと思いますが、ゲームするのに支障はない程度に少し余ります。

商品と台車の購入はカードに記載された4つの都市でのみ早い者勝ちで行える

商品の販売をした後は、アクションを各プレイヤー2回(1回ずつを2周)行います。

手番のアクション

アクションは以下のうち1つを選択して実行:
① 商品と台車の購入
② 仕入れ
③ 商品カードの購入
④ お金の獲得

メインとなるのは商品と台車の購入ですが、これは先ほど売却先を決定したカードがそのまま商品と台車を仕入れることの出来る場所、種類、数そして値段を決定するカードとなります。値段は売却額と同じ3〜5ターラーですが、仕入れることの出来る商品の数が複数である場合があるので、うまく販売することができれば儲かるようになっています。そして、(とても苦しい選択ですが)2回あるうちの1回目のアクションで商品と台車の購入以外のアクションを選択していれば、2回目のアクションで商品と台車の購入を行う場合にコストを2ターラー減らすことができます。しかし、商品と台車の購入アクションは早い者勝ちなので、他のプレイヤーにやられてしまった時のバックアッププランは幾つも用意しておく必要があるでしょう。

白は舗装道路、茶色は未舗装道路

台車の配置は、指定された都市から延びる道路に行います。将来商品を販売する上で重要になるであろう販路を事前に構築することを心がけておくのが定石でしょう。拡張ルールでは、決められた都市を台車で繋ぐことも重要になります。舗装道路には台車を1つ置いておけばゲーム中安泰です。未舗装の道路に置いた台車は使用すると無くなってしまいます。これを防ぐには、同じ道に自分の台車を2つ置くしかありません。2つ置いた台車は壊れることがなくなります。ただし、ゲーム中に置ける台車の数は限られていますので、よほど重要な販路でなければこの選択肢はないかもしれません。また、道路には村が存在することがあり、この場合台車を置いたプレイヤーはお金を得ることができます。

商品カードは好きなものを購入できる

商品カードの購入では、ゲーム終了時に購入金額よりも少し高く売却することのできるカードを購入することができます。これに加え、各商品カードには合計3種類の少しだけ有利にゲームを進めることのできる特殊能力がついています(例えば、台車コマが壊れる時に1ターラー貰えるなど)。貯めた現金を少し有利に運用することができる選択肢ですが、アクションを1つ消費することには注意が必要です。商品カードの購入でも1回目のアクションで別のことをしていれば、購入金額を2ターラー安くすることができます。

その他、仕入れのアクションではすでに自分の商品を置いている都市にその商品を1つ追加したり、その都市に繋がっている道路に台車コマを置けたりします。このアクションは拡張ルールを適用することによって”倉庫”的な意味合いを持つ様になります。

こうして12ラウンド(22アクション:最後のラウンドはアクションなし)を繰り返し、ゲーム終了時に最もお金を集めたプレイヤーが勝利します。

総評

というわけで、当時は購入検討の参考になればと基本ルールを中心にゲームの内容を紹介しました。

発売後、期待を胸にゲームを遊んでみましたが、その感想は残念ながら期待に沿うものではありませんでした。勝利点とお金が同一なので、ゲーム中、常に集中してお金の管理をしていないとならない点や、それによってゲーム内容をシンプルにすることに成功している点は評価できました。しかし、ゲーム概要にも記載した、真のゲーム性を味わうためには記憶することが必要という点が悪い方向に働いたように思います。大概のプレイヤーはメモリーゲームを楽しむ気はないので、都市は単にランダムに登場し、大味なゲームとなってしまったようです。

実は、このゲームにおける記憶の重要性はシャハト自身も述べていました。彼も「このゲームで最も重要なのは12枚のカードが毎回すべて使用されるというところ」と言っています。すべての組み合わせが必ずゲームに登場するので、記憶を頼りに取捨選択をしながら苦しいマネジメントをすることを楽しんでほしいという思いでデザインをしたのではないかと想像します。一方、既に登場した組み合わせを覚えるのは大変なので、シャハトは道路への台車配置を販路の重要性に沿って行うことですべてを記憶しなくても良いとも言っていました。完全にガチガチのメモリーゲームにはしなかったつもりのデザインだったようですが、世の多くのボードゲーマー達には悪く受け止められてしまったことが多かったように思います。シャハトに求める中量級のゲームはメモリーゲームではない・・と。

拡張が発売されるかもしれないという期待もありましたが、シャハトの中でも既になかったことになっているようで、その後評価を変更するような大きな動きはありません。

シャハトのデザイナー25周年記念ゲームなので、(記憶が肝だと知った上で)一度は遊んでみるのも一興だと思います。そして、日本語版を手にされた際には是非クレジットにCOQの名前をご確認いただけますと幸いです。

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