ビブリオス(写本と修道士)

天国はとても良いところらしい、だって行った人が誰も帰ってこないんだから。

ある修道士
メーカーiello
発売年2007年
作者Steve Finn
プレイ人数2-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

同人ゲームからの出世作

Dr. FinnことSteve Finnが当初は同人ゲームとして出版した「ビブリオス(写本と修道士)」 Dr.は自称なのかと思っていましたが、本当にPh.D.(博士号)ホルダーのデザイナーでした。Dr. Finnは基本的に自分の手で出版することを好みますが、ビブリオスはその出来があまりに良かったためにiello社からも出版されました。

繰り返しになりますが、このゲームはBoston生まれのDr. Finnが個人出版していたもので、その面白さが反響を呼び、晴れてメーカーから販売されました。個人出版されていた初版はビデオテープのパッケージに収まっている逸品でした。

VHSのビデオパッケージに収納されていた

コンポーネントは小さなメインボードとリソースカード、それとサイコロが5つ。初版に付属していたダイスはすべて黒色でしたが、メーカーから発売された新版のダイスはカラフルな仕様となりました。

俺の写本室が一番イケてる!

ゲームの目的は、誰にも負けないイカした写本室をつくること。そのために、修道士や巻物等のリソースを集めていきます。リソースは5種類あり、それぞれについて最も沢山のリソースを集めたプレイヤーが勝利点を獲得します。そして、最多勝利点のプレイヤーがゲームに勝利します。

リソースカードには写本室に必要な5種類のリソースの他に、お金カードとリソースの価値を決める大司教カードが含まれています。また、テーブル中央にはリソースごとの勝利点を示すメインボードが置かれ、5つ置かれたダイスの目がそれぞれのリソースの勝利点を示しています。サイコロの目の初期値はすべて「3」から始まりますが、大司教カードを利用する事により好きなダイスの目を上下することができます。初版発表時、ダイスを振らずに価値の表示に用いるゲームはあまりなく、斬新でした。

大司教カードには「1」と「2」が存在します。2の場合は一つのサイコロの目を2つ動かすのではなく、2つのサイコロの目を1つずつ動かします(間違えやすいので注意!)。

大司教カードは光り輝いている

ゲームは2段階構造

さて、ゲームは2つのフェイズ(寄進フェイズ・競りフェイズ)で行われます。

寄進フェイズでは、手番のプレイヤーが山札からプレイヤー人数+1枚のカードを1枚ずつめくっていき、そのカードの処遇を1枚ずつ決定して行きます。カードの処遇は以下の3つ。

カードの処遇

1.自分の手札にする。
2.裏向きのまま場に出し、競りフェイズの対象とする。
3.表向きのまま場に出し、手番終了後に他のプレイヤーの手札とする。

1と2の処遇を手番中に必ず1度ずつ実行し、残りは3の処遇となリマス(したがって、他のプレイヤーにも1枚ずつ行き渡る)。

上部がリソースカード、下部は大司教とお金カード

全ての山札が無くなったら、競りフェイズに移行。
競りフェイズでは、寄進フェイズの処遇2で裏向きにされたカードをすべてシャッフルし、1枚ずつ競りの対象としていきます。入札に使用するのは寄進フェイズで各自が手に入れた手札。リソースを落札するには金額を入札し、お金カードを支払います。逆に、お金カードを落札するには、リソースカードの枚数を入札し、種類を問わずリソースカードを必要枚数支払います。すべての入札が終了したらゲーム終了。それぞれのリソースで最も沢山のポイントを所有しているプレイヤーがメインボードのダイスを受け取り、勝利点とします。

如何に寄進フェイズで目標を絞り込み、お金を確保して競りに備えるかが悩ましい。メーカーから出版されたことも納得の傑作カードゲームです。

こちらが新版、発売されたものはダイスもカラフル仕様であった

プレイ記

カルカソンヌプレイを遊んでいる時に「教会タイル」を引きまくり、一躍あだ名が修道士になったナカが遊びに来た。そこで、迷わず「写本と修道士」を遊ぶことにした。

この男はオセロ日本ランカー(10位以内?)なのだが、初見のゲームにはめっぽう弱い。だが、2度目になるとカウント等を始めて急に強くなるので注意が必要だ。

ゲームスタート。
山札はプレイ人数に応じてランダムで減らされる。2〜3人プレイではどのカードが抜かれているのかわからない。4人プレイ時のみカード総数がわかる仕組みだ。

少し小さめなメインボードにのるダイスの目がリソースの価値を表している。イメージしやすい様に敢えて言うと、左から2番目の寡黙で少し影のありそうな人物がCOQに似ている。ナカは右から2番目のさわやかな修道士。中々のイケメンなのだが頭が良すぎてモテない。それにしても、味のある良いイラストだ。

自画像を手札にし、緑のリソースを場に出して相手にあげるカードにする。3枚目は1ゴールドのお金カード。お金カードには1〜3ゴールドがあるので、これは一番弱いお金カード。既に他の選択肢を選んでしまっているので、競りにまわさざるを得ない。だが、概ね成功の第1手番。手札にしたカードはまさに、めくったカードを眺めているCOQの姿が鏡に写っているかのようだった。

続く手番、ナカは要らない価値1のリソースをCOQに渡そうとする。

そして、手札にしたカードはいきなり大司教サマ。COQに渡したカードの価値を早速1下げようとしてくる。全く性格の悪い修道士である。このように、大司教カードのみは手札に入った瞬間に効力を発揮する。競りフェイズならば競り落とした瞬間に効力を発揮する。この動きを見て相手の狙いを把握する事も可能なわけだ。

基本的には、2以上のお金を残す作戦。リソースは5種類あるので、そのうち3つを押えれば勝てるのではないかと考える。自画像カードは集めるとして、残りの2色は道すがら考えることにする。

…と考えながらプレイしていたら、お金ばかりの手札に成長するCOQ写本室。偉い政治家の先生方も体を張って「世の中金だ」ということを教えてくれているので正解と信じてこの流れに沿っていく。

ゲームが進むにつれてお金大好き生臭坊主っぷりにも磨きがかかって来た。また、ナカから執拗に送り込まれる価値の低い茶色カードもこれだけ集まると愛着が湧いてくる。

そんな中、大司教カードがCOQに手渡される。初期に1つ出て以来の大司教サマだ。しかも、価値を2つ高める強力カード。どうも奴はこれでCOQに踏み絵を踏ませるつもりらしい。正直に、初期から集めている自画像の価値を高める。

COQ
COQ

こういう黙々と仕事をしている奴程評価されるべきだと思わないか?

ナカ
ナカ

意味がわかりませんが、狙っている色はわかりました

最終的な自分の手札。これを元に競りフェイズへと移行する。豊富に集めたお金で黒と茶色以外のどれに狙いを定めるかが重要だ。

競りフェイズ1枚目はいきなり2ゴールド。勝ち目の無いカードや要らないカードを手放してお金を稼ぎ、後半の競りにかける良いチャンス。競りは交互に値段をつり上げていく方式で行われる。恐らくナカが大部分を占めている緑と既にこちらが大半を所有していると思われる茶色のカードを放出して獲得。

続くカードはこちらの主力である自画像。絶対獲得!と思ったら、案外ナカも競りにのってくる。
これは益々負けられない。なんと言っても黒の価値は大司教サマのお陰で5に跳ね上がっているのだ。

競りでは、ブラフを使用する事もできる。相当するお金やカードを持っていなくても、競りをつり上げることはできるのだ。ただし、ブラフを見破られたらカードを1枚ランダムに奪われてしまう。序盤なので、ブラフということは無いと思うが、足下を見られて値段をつり上げられてしまった。

こうして競りは進み、カードの中身も洗練されてくる。黒と茶色はほぼ独占に近いはず。青もあわよくば。(茶色は少ないが、お金カード獲得の為に場に捨てているので相手が持っているわけでないことがわかっている。)

そこへやってきた大司教サマ。渾身の力で落札し、茶色の価値を上昇させる。すると序盤、厄介者のように茶色カードをせっせとCOQへ送っていたナカの顔色が変わる。

返す刀で、更に現れた負の大司教を全財産をかけて競り落としていく。負の大司教達の力を借りて、ナカの主力と思われる緑の価値を落し勝利確信。

COQ
COQ

やった!第3部完!

と思ったら、負の大司教はまだまだ潜んでいた。既に「金なき子」になっていたCOQは万事休す。1ゴールドでこれらを落札され、虎の子の自画像の価値が下げられてしまう。数ゲームしてカードの内容を把握するとこれらの攻防がより熱を帯びることは想像に難くない。しかし、今回の勝負は一進一退である。

ゲーム終了。最終手札。果たして点数は!

なんと同点。黒と茶色は予定通りにサイコロを獲得。残りはナカにとられてしまった。同点の場合は、より左側のリソースのサイコロをとったほうが勝ち。PK戦で負けたような気分で、無念。
でも、面白かった。

プレイ時間30分

ナカ
ナカ

COQさんって慎重派だから絶対ブラフかけてきませんよね

COQ
COQ

ウッ…

総評

Silver

収入と競りの2つのフェイズにわかれたゲームシステムが非常に悩ましいようでいて、手番でできることが絶妙にすべてのルールに絡んでいて、2つのフェイズを見通しながら勝敗を手繰り寄せられるように感じられて面白い。多くの得点に絡みたいが、すべてには対応できないジレンマも良かった。当時斬新だった、5つも付属しているダイスを一度も振らないというところも潔い。結果として、カードゲームとは思えない充実感を得ることができる。新旧ともにカードの雰囲気もとても良い。

今回は旧版の写真を中心に紹介したが、新版もダイスがカラフルになり、そして箱のアートワークが良くなり、出来映えはとても良かった。結局新版を2つ購入し、繰り返し遊ぶお気に入りカードゲームの1つとなった。

今回は旧版の写真を使いたかったので2人プレイの様子を紹介したが、3人も勿論面白い。3人だと競りがキツくなり、もっと悩ましく深いプレイ感になる印象である。公式なルールは2人、3人プレイにおいてランダムにカードを抜き、4人プレイではすべてのカードを使用する。そして、カード総数の表が付属しているのでカードを把握しながら遊べる仕様となっている。従って、4人プレイと2〜3人プレイではかなり感触が変わると思われる。4人プレイでは確保すれば確実に得点を稼げる”閾値”がわかるのである。どちらが良いかは好み次第だと思うが、ゲシェンクが好きな自分は少し揺らぎのある2〜3人のほうが好みだと思っており、よりキツいプレイ感の3人がベストだと思う。

Dr. Finnはその他にも多くのゲームを個人出版しており、「ビブリオスダイスゲーム」を出版した時には今回は乗り遅れまいと多くの日本人ゲーマーもこれを求めた。その結果は、敢えて書かなくても想像に難くないであろう。とっても良いものだったと信じよう、だって誰も話題にしないのだから。

購入先情報

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