時代の露と消えた世界の翼
メーカー | Funko Games |
発売年 | 2020年 |
作者 | Prospero Hall |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
パンナムと共に世界のフラッグ・キャリアを目指す
1900年代の航空業界の一員となって、著名なパンアメリカン航空と共に発展を目指すゲーム「パンナム」です。パンナムとは、パンアメリカン航空の通称です。
パンナム(本来の発音はパナム)は、1927年の設立以来その規模を拡大し続け、間違いなく「世界の翼」と呼ぶにふさわしい米国のフラッグキャリアでした。ボーイング747を最初に導入したのもパンナム航空です。当時の勢いは、映画「2001年宇宙の旅」に宇宙への路線を運営する存在として描かれていたことからも窺えます。実際には1970年代の変化の波に対応することができず、2001年にアメリカン航空に吸収され、姿を消してしまいます。皮肉にも、2001年消滅の旅となってしまう運命であったわけです。しかし、今でもパンナムのマークを見ると当時の成長期と海外旅行への憧れを思い出してワクワクするような感覚が多くの人の心に遺っています。(参考文献:ピクシブ百科事典)
このゲームはFunko Gamesという聞きなれないメーカーの作品ですが、ポップカルチャー(大衆文化:映画など)のライセンスを取り扱うFUNKOというアメリカの会社がゲーム会社を買収して立ち上げた新興メーカーのようです。
プレイヤー達は新規に設立された航空会社を運営していきます。そして、パンナムに航路を売却しながら発展していきます。ゲームの最終目標はパンナム航空の株をたくさん手に入れることです。そのために、自分の航空会社の航路を開拓していきます。
簡単に言うと、着陸地をおさえて自分の飛行機を飛ばすことによって航路を開拓し、そこからの定期収入もしくは、パンナム航空への航路売却によって得た収入で毎ラウンド変動するパンナムの株式を購入して最多株主を目指すゲームです。どちらかというと、航路を売却した方が効率が良いので、パンナムが買収してくれそうな航路を如何にして手に入れるかというところが面白いポイントだと思います。
最重要事項は航路開拓
ゲーム中、最も重要なのは航路を開拓することです。開拓した航路は定期収入をもたらしますし、パンナムに売却することによって一気に資金を稼ぐことができます。稼いだ資金で新たな航路の開拓や、ゲームの最終目標となるパンナムの株を購入していくのです。
航路の開拓とは、都市と都市を結ぶ線の数字のマス(航路の距離を表す)に自分の飛行機駒を置くことを指します。航路を開拓するには、「その航路がつなぐ両方の都市の着陸権」と「航路の距離を上回る航続距離の飛行機」が必要となります。飛行機は、アクションの1つとして生産することができます。着陸権の取得については、4つの方法があります。
上記の着陸権の取得方法のルールに従って、航路の両端の都市の着陸権を有していれば、自分の飛行機を置いて航路の開拓を宣言することができるのです。
航続距離の長い飛行機は、ゲームが進むと解放されて生産が可能になります。
ワーカープレイスメント✖️競りのメカニズム
ゲームの基本メカニズムは競りを含むワーカープレイスメントによるルート開拓です。手番では、時計回りに1つずつ、ボード上にあるワーカーマスに自分のワーカー(エンジニア)を置いていきます。ワーカーマスには2種類あり、通常の早い者勝ちで占拠するマスと競りの要素のあるマスです。後者の競りの要素のあるマスでは、同じアクションでもより高額な支払いが必要なマスにワーカーを配置したプレイヤーがいた場合、安い支払いのマスに誰かが配置していたワーカーは押し出されてしまいます(いわゆるトコロテン式)。小クラマーの「ランカスター」や「ホームステッダー」に近いシステムです。押し出されたワーカーは再び配置可能です。
ワーカーを配置する場所は以下の5個です。全プレイヤーがワーカーを配置し終わったら、アルファベット順に解決をしていきます。ここはゲームの骨子となる部分ですが、とてもシンプルで分かり易いルールの部類と思います。ワーカーを配置できるのは以下のアクションです:
各アクションを解決する時に入札額を支払いますが、もしも資金が足りない場合には株式を安く売らなければならないので気をつけましょう。
イベントと株価の変動
ラウンドの最初に、イベントカードが表向けられます。7ラウンドあるので計7回イベントが発生します。イベントカードには3つの情報が記載されています。
これによって株価が上下し、株を購入するタイミングに意味が出てきます。株は各ラウンドの最後に購入できます。できれば安い時に買いたいものです。
パンナム航空の拡張(航路の買収)
このゲームで勝つために一番大事な航路の売却です。イベントカードのダイスの数に従って、パンナムダイスを振ります。パンナム航空はマイアミを本拠地としていた歴史から、マイアミを出発地として、ダイスの出た目の路線がマイアミに近いところから買収されていきます。1面のみあるパンナムのシンボルが出た場合には、全員が1航路ずつ売却することができます。基本的には、航路を保有していることの定期収入よりも売却した方が効率的ですし、航路に飛ばしていた飛行機も手元に戻ってきて再利用可能となることから、売却した方が有利になると思います。したがって、すべてのアクションは、パンナムが買収してくれそうな航路を開発することを目指して実施してくことになります。路線の決定をダイスで行うため、少し運の要素が強い演出かもしれません。
こうして7ラウンドを行い、最終的に最も多くのパンナム株を保有しているプレイヤーが勝利します。
分かり易い説明動画あり〼
ここまでの紹介を読んだ後、メーカーが提供している遊び方の動画を見ればかなり雰囲気が掴めると思います。英語ですが、動画の出来がメチャクチャ良いので、雰囲気だけでも理解できてしまう勢いです。是非白い歯に惚れてしまってください。
総評
Silver
軽〜中量級のワーカプレイスメントゲームとして良いデザインだと思います。ルールに一貫性があり、航路の開拓の仕組み(特に着陸権)とトコロテン式競りの妙について理解してしまえば、難しいルールは殆どありません。インストも短くて済むでしょう。トコロテン式の競りの要素があるお陰で、ゲーマーの人たちも満足できる考えどころがあると思います。如何にパンナムが買収してくれそうな航路を開拓するか、そこに集中するワーカーを最小限の出費で抑え切ろうとし合うことがとても面白い体験となります。
一方で、肝心のパンナムの拡張路線がダイスで決定されるというところで人を選ぶかもしれません。肝心な部分に運の要素を大きく残すことが良くも悪くもアメリカのゲームという印象ですね。ゲームの勘所で振られるダイスの目に盛り上がれるのか、です。私は軽〜中量級のゲームならアリじゃないかと思います。ルールがスッキリしているおかげでダウンタイムも短いゲームですし、逆に売却路線がある程度決まっていてメモリーゲームのような展開になるよりかは良いのではないかと思いました。株価もある程度運で変動しますし、いくつか運の要素が絡んでいることによってバランスは取れるかなと思います。
一部、単純すぎるという評価もあるようですので、司令カードに隠匿の個人目標のようなカードが混じっていたり、パンナムの売却路線を予測しやすくする仕組みを取り入れたり、ラウンドを延長して新たなイベントを追加する拡張セットが発売されるとさらに人気が出そうですけどね。
ワーカープレイスメントなので、基本的には人数が多い方が面白いと思います。したがって、3〜4人で遊んだほうが真価を発揮することでしょう。プレイ人数が増えるとワーカーの数が減るのでゲームが過度にだらけることはありません。
それにしても、レトロ調にデザインされたボードやカードの雰囲気は抜群です。眺めているだけでも楽しくなります。値段も安い(米国アマゾンで購入すると$25)ですし、満足の一品でした。ちなみに、新品でもシュリンクは被せられていませんので、少々の傷は覚悟しましょう。
本作は有志の方がルール和訳とカード和訳を公開してくださっています(Thanks a lot !)。