小チグユー:3色タイルのライトな陣取りゲーム
メーカー | Eggert Spiele |
発売年 | 2012年 |
作者 | Reiner Knizia |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
おかえり、クニチー
クニツィア先生の過去の傑作の中に「チグリスユーフラテス」というタイルを用いた陣取りゲームがあります。このゲームは実に奥深いのですが、悩ましすぎて人を選ぶ仕様のため、毎回コップの反対側から水を飲まされるような難ゲームとなっています。この「チグユー」というインクのでないボールペンで恩人への年賀状を書かされるようなゲームを、クニチー本人が魔改造してくれました。名作「チグリスユーフラテス」をライトにしたようなゲームシステムから、巷では”小チグユー”などとも評されている本作。個人的には、影武者にゲームを作らせていると揶揄されていたクニチー本人に久しぶりに出会ったようなスマッシュヒットだと思います。
おかえり、クニチー。
実際のところは、QIN(秦)を作るにあたり、クニツィア博士がチグユーを参考にしたのかどうかは不明です。偶然、クワークルにそっくりなゲームをイチから創出してしまうくらいですし。ところで、QINは「チン」もしくは「シン」と発音すると思われます。勉強になりますね。これで何かの拍子にタイムスリップしても大丈夫です。
2段パゴタマイズが勝利の鍵
ルールは実に簡単です。手札として3枚持っている赤・青・黄の領土が2つ重なったタイルを配置し、秦の時代に自分の国を拡大するのがゲームの目的です。
配置したタイルが2マス以上の領土を形成したら、そこに自分の領土であることを表す”パゴタの塔(仏教の塔)”を配置(かっこいいのでパゴタマイズと呼んでいます)します。領土は他の大きな領土に吸収合併されたりするので、その前に5マス以上の領土として大国を築いて盤石の体制を整えましょう。大国になったらパゴタの塔を2つ重ねて置くことができます(2段パゴタマイズ)。さらに、あらかじめボードに配置されている村に領土を隣接させたなら、村にもパゴタの塔を置くことができます。その村に隣接する領土に置かれている塔の数次第で村の所有権はプレイヤー間を行き来するので注意が必要。こうして、自分の塔を全て置ききったプレイヤーが勝利します。
ルールは上の文章でほぼ説明し終えてしまっています。シンプルですね、Oh ブラボー!!
流れにのるか、養分として生きるか
このゲームの良いところは、陣取りやマジョリティ争いの楽しさに加えて、例えばタイル配置で「新たな領土を作成する」のか「自分の領土が吸収されないように守る」のかの2択など、ルールのシンプルさゆえのわかりやすいジレンマが毎手番ユルく体験できることです。手札は3枚しかないので把握できない程の悩ましさはありません。さらに、タイル運にも左右される”流れ”のようなものがあり、ひたすら新しい領土を作成できる時と他人が新しい領土を作る手助けしかできない時が発生します。その状況を打破するタイルを引く瞬間がまた良いです。
最終的にはあがりそうなプレイヤーに対して”お仕事”をしながら収束していくことになりますが、最後に勝つのはお仕事されないように地盤をしっかり固めて備えてきたプレイヤーになるのもいいですね。
おまけ:ボードは両面仕様、拡張ボードもあります
付属のボードは両面仕様です。草原が広がるシンプルな鳳凰の面と、邪魔な湖が点在し、より複雑な村の争奪戦が繰り広げられる獅子の面が用意されています。ルールブックでも最初は鳳凰の面をお勧めしている通り、獅子の面のほうが展開が複雑で噛み応えがあります。どっちも面白いですけどね。表裏の選択で変化を持たせられるようにしてくれたサービス精神がうれしいです。また、拡張で追加ボード(蛙と竜亀の両面仕様)が発売されています。拡張ボードはレアアイテムです。さらに考え所が増えるので可能なら揃えておきたいアイテムです。
プレイ記
TBGL会にて2人プレイ。
海賊船さんが初めてだったので鳳凰の面でスタート。初期配置の3つの領土のうち、赤を2マスに繋げてパゴタマイズ。
村の所有権は隣接している領土に置かれた塔の数で決まる。同点ならば早い者勝ち。危ないのは中央付近に隣接した黒プレイヤーの青の大国(5マス以上)と緑プレイヤーの青の小国。このままだと大国に飲み込まれ、圧政を敷かれてしまう。
お互いに青のタイルを引かず、膠着状態で3枚のタイルを見つめ、どうする俺?とJ・オダギリのような台詞を吐きながら耐えていると、、きた。タイルが。
手札は3枚しかないので、その場しのぎの浮き草生活なプレイ感である。しかし、それはファミリーでも楽しめるので良い部分と思われる。ボードの面を変えて縛りをキツくすると読み合いが激しくなるので調節はそちらですれば良い。
そして、無事大国となり、安泰。
そして終盤。最後の村近辺まで領土を延ばして塔の残りは2個。新たな領土を1つ繋げて村に隣接させれば領土と村に1つずつ塔を配置して勝利。海賊船さんの起死回生は、先に村を占領することだけだが、考えこみ方からして同色2マスのタイルは所持してないらしい。
もしもそうなら、既に手札に同色2マスタイルを所持しているCOQの前に敵は居ないのだよ、明智君。フハハハ。
そして目的を達して勝利。ありがとうございました。
プレイ時間 35分
この後すぐに3人戦を獅子面で遊んだが、獅子面は村の取り合いが熱くて良かった。3人だと自分の思惑が保たれたまま手番が1周するのでゲームとして丁度いいかも。よっぽどの実力差が無い限り、終盤まで勝負は拮抗するのも良い点。
総評
Silver
箱絵の胡散臭さとテーマからあまり期待せずにフラッと立ち寄ったら偶然本物のクニチーが居たみたいな喜びに満ちあふれるゲームです。チグリスユーフラテスの面白さは聞いたことがあるけど取っ付きにくいと思っている方にもオススメ。この年のペガサスは凄かった。
2〜4人のどの人数でもそれなりに楽しめて、ルール説明も簡単で、ファミリー層やオープンゲーム会層にもオススメ。ファミリー層にオススメというのは確か箱にも書いてあったような気がします。
軽いがゆえに、直後に2戦、3戦と遊びたくなるゲームです。軽い多人数アブストラクトを探している方はぜひ拡張ボードと一緒にお求めください。タイルを3枚持つ感じも凄く良い感じ。末永く遊ばれるゲームになりそうな気がします。(2022年追記:末永く遊ばれませんでした。)