フィンカ

果実の収穫は、農家の心の収穫でもある

発売年2009年
作者Wolfgang Sentker, Ralf zur Linde
プレイ人数2-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

シンプルで優雅なユーロゲーム入門

2009年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品の『フィンカ』です。農園を舞台にしたセットコレクション(果物を集めてレシピ通りに出荷するゲーム)ですが、そのシンプルでわかりやすいゲーム性と少々のヒネリの効いたシステムからユーロゲーム(ドイツゲーム)の入口としておすすめできる作品です。筆者はSNSで公称プレイ時間45分のゲームを推していますが、本作もこれに該当し、長過ぎず短過ぎない切れ味のある体験を提供してくれます。ちなみに、作者の1人であるRalf zur Lindeは後に「ペルガモン」Stefan Dorraとの共作でリリースするなど、著名なデザイナーの1人です。

マンカラ風車で果物の収穫

ゲームの基本構造はシンプルで、果物を収穫し、各地の農園のタイルに表示されている数だけロバで出荷していきます。このシンプルさが本作の人気を担保している一端ですが、そこにいろどりを与えるひねりの要素が果物の収穫とロバの取得に関わる風車の仕組みです。

風車の羽にはそれぞれ収穫できる果物の種類が記載されています。この風車の羽1枚をマスとしてプレイヤーの駒が時計回りに移動していきます。そして、プレイヤーの駒の移動にアフリカ伝統ゲーム:マンカラのメカニクスを採用しているところがポイントです。つまり、プレイヤーの駒を移動させるには、移動させる駒が現在いる羽に何個の駒があるかを数えます。これが移動力となります。移動力の分だけ選択した駒を時計回りに移動させていき、到達した羽に記載されている果物を取得します。取得できる果物の数は、到達した羽にある駒の数(移動させた駒も含む)です。

1マス移動で葡萄が4つもらえる

こうしてパズルのように今現在出荷に必要な果物の種類を見ながら、他のプレイヤーに先んじて効率よく果物を手に入れる動かし方を探るのがこのゲーム醍醐味です。この独特のメカニクスのお陰で、シンプルな骨子を持った本作が唯一無二のユーロゲームになるわけですね。

ただし、大量に手にしたからと言って油断はできません。誰かが果物を手に入れるタイミングで全体のサプライが不足していた場合、すべてのプレイヤーが一旦その果物をすべて返却しないといけないルールがあります。セットコレクションのゲームは溜め込む戦略が強い場合がありますが、このゲームは見事にこの戦略の強さのバランスをとっていますね。

出荷はロバで

風車には180度回るごとにロバの荷車がもらえる線が引かれています。これをプレイヤーの駒が超えるごとにロバの荷車トークンがもらえます(これも溜め込んでいると返却の対象になるので注意!)。

集めた果物は、ロバのトークンを支払うことで6個まで運べます。これを利用して各農園に置かれているタイルの条件を満たす果物を出荷して勝利点を稼ぐわけです。6個までであれば、複数の農園に出荷することも可能なので、1手番に複数のタイルを取得することも可能な場合があります。

2ヶ所に出荷してタイルを取得

タイルには、特定の果物や「?(任意の果物)」が必要数記載されています。出荷タイルを6枚集めたプレイヤーから順番に得点の傾斜のあるボーナスタイルが授与されるので、早めに枚数を揃える競争も起きます。

使い所が肝心なアクション4種

各自1枚ずつ持つ

各プレイヤーには、ゲーム開始時に4枚のアクションタイルが配られています。これを1手番に1枚だけ使うことができるようになっているので、ここぞというタイミングで他者を出し抜いていきましょう。特殊アクションという程のものではなく、風車で2回駒を動かせたり、ロバトークンがなくても10個まで果物を出荷できたり、任意の羽に移動できたり、出荷時に果物を1つ省略できたりという通常アクションの強化版がゲーム中に各1回使用できる感じですね。

タイルが枯れたその後で

各農園のタイルが枯れた場合、農園タイルの授与が行われます。農園タイルの与えられる条件は「その時点で特定の果物を最も多く出荷しているプレイヤー」です。つまり、闇雲に農園への出荷を満たしていけば良いだけではなく、この農園タイルを獲得できるような条件を自分だけが満たした瞬間を見計らって各農園の最後のタイルに出荷すると効果的ということです。2重3重に考えることがありますね。

6ヶ所の農園のタイルがすべて枯れ、木の駒が配置されたら、ゲームは終了します。出荷タイル、農園タイルそしてボーナスタイルの合計点の多いプレイヤーが勝利します。

キャッチーなコンポーネントに要注目

このゲームが入門編として優秀なポイントはその美麗なコンポーネントにもあります。6種ある果物の駒はすベて木製の駒となっていますし、すべてのタイルが取り去られた後に置く農園の駒も木製です。現代であればコストカットのために紙製のタイル等になってしまいがちな部分にこだわりをもって作られており、所有しているだけで心が躍る逸品です。

総評

Silver

ユーロゲームの入門にぴったりです。シンプルなセットコレクションの早取りの構造を基本にしながら、マンカラの要素を基にしたヒネリの効いた要素を効果的に用いてゲーム体験の密度を高めています。コンポーネントもキャッチーでテーマとアートの組み合わせもよく「こんなものが世の中にあったのか」という驚きを多くの初見の方に与えることでしょう。かく言う筆者も発売当時に同様の感想を持ちました。これぞ公称プレイ時間45分ゲームズの真骨頂で、60分から無駄な15分を排除して洗練されたゲームが味わえると思います。

ガチガチの勝負をする場合には2人がおすすめですが、3人でも楽しめます。4人でも良いですが、人数が増えると読みが効きにくくなるのでファミリーゲームに近づきますね。現在でも日本に度々輸入されているようです。機会があったら是非手にとってみていただきたい良作のうちの1つです。

近年のゲームは複雑化しており、インスト込みで2時間以上もザラですが、本作のようなシンプルで遊びごたえのあるゲームこそボードゲームの華であると筆者は思います。

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