みんなで責任を分担する。利益も分配する。
だからこそ仕事に励みが出てくるというもの。
メーカー | Valley Games |
発売年 | 2007年 |
作者 | Franz-B Delonge, T Ewert |
プレイ人数 | 3-5人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
自由度MAXの経済ゲーム
自由度MAX、「フィヨルド」をデザインしたデロンシュによる希有な名作経済ゲーム『コンテナ』です。そのゲームシステムはもとより、インパクトのある(無い)色使いのコンポーネントも有名です。
このゲームの目的は「経営者となり、誰よりもお金を稼ぐこと」です。プレイヤーは、手番ごとに2つのアクションを実行していきます。そのアクションで工場で製品を生み出し、製品を買い付けてコンテナに梱包し、貨物船に積み込み、市場へと売り出すのです。
本作の特徴は、これら一連の流れの中で発生する金銭のやり取りが、(一定の範囲の中ではあるものの)すべてプレイヤーに一任されているという点です。品物の値段も、コンテナの値段も、全てそのプレイヤーが市場を見て決めます。まさに経済を体験できるゲームです。
コンテナを名作たらしめる工夫とは
金銭的な自由度が高いというだけだと、古く、そしてシステムが機能していないゲームにありがちな特徴です。しかし、本作にはある工夫がしてあります。
それは、この個人ボードを見るとわかります。そう、数字の向きが互い違いに配置されています。先程の一連の流れを、自分だけでは完遂できないようになっているのです。必ず、交互に他人の力を借りなくては商売が進まず、お金が儲からないシステムなのです。それぞれの段階における相場はゲーム中、次第に出来上がるので、意図的に破滅しない限り、相場がわからなくて脱落ということは稀です。この工夫のおかげで本当に経済圏の中にいるようなインタラクションが楽しめます。
そして本作のもう1つの特徴。それは、ゲームボードの使い方です。個人ボードは港と倉庫、そして個々の工場を模しています。中央にあるボードは、それぞれのプレイヤーが最終的にコンテナを送り届ける島。それ以外のテーブル上は、すべて大海原という設定なのです。こんな経済ゲームが他にあるでしょうか。ゲーム中は、各自一隻の貨物船を所有しています。これらは、港、島、海の何処かにいることになっているのです。
自社工場、製造、販売
ゲームの流れは、自社工場を建てるところから始まります。カーリングの石みたいなのが、工場です。最大4つまで増設できます。
生産を行うと、工場と同じ色の製品を生み出せます。これを1〜4金の好きな値段で売りにだします。自分の商品を自分で購入することはできません。
商品の出荷は他社の船で
次の列には港の倉庫が建設されています。ゲーム開始当初は1つですが、最大5つまで建設できます。倉庫の数だけ、港に製品を並べられます。ただし、この製品は他のプレイヤーの工場から買い付けてこなければなりません。ここでも値段を自由に決められます。もちろん買った値段より安くする事も可能です。
やはり、自分の港の商品を自分で購入する事はできません。他のプレイヤーが欲しくなるような値付けを行い、自分の港を訪れてくれるように促し、貨物船に積んでもらいます。
積まれたコンテナは、島で競りにかけられます。運んだ本人以外が競りに参加し、一発勝負の握り競りを行います。競りが成立すれば、銀行からのボーナスを加えて落札価格の倍額が運んだ本人に入ります。安過ぎるな、と感じた場合には、自分でその金額を支払って落札することもできます。
落札は、ゲーム開始時に秘密裏に配られている商品価格表を見ながら行います。つまり、各プレイヤーにとって、コンテナの価値は異なることになります。
安いコンテナ、全色集めると得点が倍になるコンテナ、価値の高いコンテナ。接岸した貨物船のコンテナは一括して落札されるので、落札資金の突っ込みどころが肝心です。しかも、各自最も落札数の多い色のコンテナは、ゲーム終了時にゲームから除外されます。自分にとって価値の高いコンテナを集め過ぎるとゲームから除外されてしまうのです。
バレないように、相手の欲しいコンテナを推察しながらゲームを進めることになります。
ゲームの終了
5色あるコンテナのうち、2色が枯渇したらゲーム終了です。各自のコンテナ価値を公開し、最終得点計算を行います。借金の返済等を行った後に資産を合計し、最もお金を稼いだプレイヤーが勝利します。
拡張セット
作者は異なりますが、拡張セットも発売されています。
プレイ記
TBGL会にて、JOSSさん、Sさん、けがわさんと4人プレイ。けがわさんはこの時すでにプレイ回数30回以上という強者。
COQは、倉庫プレイで沢山貨物船に来てもらう作戦を敢行した。
初期資金で倉庫を建てまくり、港にコンテナを並べる。お値段はちょっと高めに。お!値段以下の逆ニトリ戦法だ。
手番でできるアクションは2回なので、1箇所の港に多くのコンテナがあると一気に積めるというメリットがある(経済用語でこれをワンストップという)。そのメリットを武器に、少し高めに購入してもらおうというわけである。
この作戦で得た資金で、荷揚げされるコンテナの落札も行う。
今回のゲームは、荷揚げ時の落札価格が低かったせいか、かなりのロースコアゲームとなっている。行き交う貨物船に載るコンテナの数も、心無しか寂しい感じだ。
一応、思惑通りに沢山の船が来てくれるが、資金繰りが厳しいせいか、安いコンテナしか売れていかない。そうなるとCOQも資金繰りが厳しい!
このゲームで市場の資金が増えるのは、荷揚げで落札された時に銀行が上乗せしてくれる分のみ。それ以外は皆の資金が流動するだけ。やはり、銀行から資金を引き出すようなプレイをしないと全体が豊かにならない。他人の製品を購入してわずかな利益を乗せるだけの倉庫プレイでは、厳しいのは当たり前だった。
それでもなんとか安値でコンテナを買いたたき、多くの荷揚げ品を落札する水色COQ。
だが、資金がキツい。ついつい、借金に手をだし、自転車操業へと移行する。ワレスゲーのやり過ぎで、借金への敷居が低くなっていた。
そうこうしているうちに、健全経営の周りの会社が追いついて来て追い抜かれて。終了時には借金まみれのビリ。完全に憤死。荷揚げの競りで大金を掴むチャンスに恵まれたプレイヤー(JOSSさん)がそれを運転資金にまわして一気に勝利。
プレイ時間120分
総評
Gold
自由度MAXと評したガードレールのない危ういゲームを制御するインタラクションの工夫。生産/値付/流通/購買、これらの商品の流れを1人では行えない様に、ラザニア的制御にしたことが『コンテナ』の肝です。「このゲームはソロプレイ感が…」などと抜かす輩のほっぺたに、箱ごとグリグリと押し付けたくなるゲームです。
自由に商売をしているような感覚を味わえます。初めてプレイした時は、新入社員研修等でやる生産ロールプレイング研修を思い出しました。ルールは結構シンプルです。シンプルなルールの中に、大まかな価格設定幅を用意してもらっただけなのですが、需要と供給のバランスを超絶楽しく体験できるゲームです。他者との狙いの読み合いもアツい。他者の狙いと自分の狙いを照らし合わせることができるようになってくると、値付けにも「損して得取れ」のような駆け引きがでてきます。そうなったらもう、このゲームの虜です。テーブルを海に見立てたダイナミックな仕様も相まって、仮想現実的に没入できます。
揶揄されることが多い船のコンポーネントですが、これをタイル等にしなかったことに感謝を表したいと思います。惜しむらくはむしろ、商品や工場の色使いですね。パッケージにあるようなカラフルなコンテナを想像して箱を開けると、子供が泣くレベルに地味な配色です。BGGの写真等を見ると、自前で塗装しているヒトもいるようです。
3人、4人、5人でプレイしましたが、5人がゲーム開始当初の不公平も無く、一番面白いです。競りがあるので、人数が多い方が金回りも良くなりますしね。推奨は5人。残念なことに、現在は絶版ですので、ボードゲームカフェなどで見つけたら遊んでみてください。
このゲームの作者が「フィヨルド」のデロンシュであることを知った時には鳥肌が立ちました。至高の名作の1つだと思います。
なぜか高まる仮想現実の中での高揚感。あぁそうだ、みんな小さい頃は、お店屋さんとかになりたかった。