アクロポリス

石材を持てば幸せになれる、持たなければ哲学者になれる

メーカーEngames
発売年2022年
作者Jules Messaud
プレイ人数2-4人用
対象年齢8歳以上

ゲーム概要

高台の都市をつくるタイル配置ゲーム

『アクロポリス』とは、古代ギリシア時代の高台の城市のことで、その多くは神殿が築かれていました(パルテノン神殿などが有名)。本作では、ヘックスが3つ結合したタイルを自分の前に配置していき、立体的に都市を構築していきます。テーマに沿ってより高い場所に配置することで、高得点を得ることができるようになっています。30分程度で遊ぶことのできる比較的シンプルなタイル配置ゲームです。

キングドミノ+ナンバーナイン

タイルを構成するヘックスには5種類の色があり、それぞれの色に建物と泉があります。1枚のタイルはこれらが3つ結合した形状をしています。最初からあるスタートタイルを除き、すべてのタイルの形状は一緒です。これらのタイルを1段目はいずれかの辺が接するように、2段目以降は下の段のタイルを覆い隠すように(覆い隠す下の段は2枚以上のタイルである必要がある)配置していきます。最終的な得点計算において、覆い隠されたタイルの図柄は関係なくなります。

得点のシステムは2017年にSDJを取得した「キングドミノ」のルールと数字タイルを重ねて高得点を狙う「ナンバーナイン」のルールに似ています。すなわち、同じ色の建物のタイル数×星の数=得点となります。そして、タイルの段数が建物タイルの素点となります(1段目=1点。2段目=2点・・)。

青の塊は2段目に1枚、1段目に3枚なので素点は(2+1+1+1=5点)、これに星の数2つを乗じて10点が青の得点

タイル配置の方法は、色によって決められており、ルールに適合して置かれている建物のみが得点対象となります。例えば、青い建物はゲーム終了時に一番大きな塊となっているものだけが得点対象になります。5種類あるので最初は少し戸惑うかもしれませんが、サマリーを見て遊んでいるうちにすぐ慣れる程度のものです。これらをなるべく活かすようにタイルを配置していく過程のパズル感がこのゲームの面白味の主要な部分と言えるでしょう。ゲーム終了時に得点を集計し、勝者を決定します。得点の集計に少し時間がかかりますが、苦になるほどではないですね。

サマリーには登場する色の割合も記載されている

タイル取得のインタラクション

もう一つ、このゲームの面白味の主要な部分を挙げるとすれば、タイル取得のインタラクションでしょう。「見えているタイルの中から如何に自分が欲しいタイルを手に入れるか(もしくは相手の必要なタイルをカットするか)」という駆け引きが存在します。タイルは人数+2枚が”建築現場”と呼ばれるディスプレイに並んでいます。これを手番順に1枚ずつ取得していくのですが、先頭の1枚は無料、そして先頭から離れるごとに石材を1つ支払うことによって任意のタイルを取得することが可能です。石材が手元にない場合は先頭のタイルを取らざるを得ません。

先頭は無料、先のタイルを取得しようとするなら石材が必要

つまり、相手の石材の数と得点の狙いを見ながら、自分が欲しいタイルに石材を投じたり、相手が思惑通りにタイルを取れないようにプレイすることが可能なわけです。この点では、ゲーム慣れしたプレイヤーにも歯ごたえを提供するかもしれません。とはいえ、新たなタイルは残り1枚になった時に一気に登場し、見えているタイルは最大でも人数+2枚です。新たなタイルの登場には大いに運の要素が影響するのでそこまで重い要素とはなりません。

石材の産出がユニーク

他のゲームに似ている部分の多い本作ですが、筆者がプレイしてみて気に入った仕組みは石材の産出です。本作には5種類の建物に加えて石切場が登場します。2段目以降にタイルを配置する際に、石切場という建物を覆い隠すように置くことで石材が算出され、手に入ります。石材は欲しいタイルを取得することに必須な材料ですが、これを手に入れるために石切場が2段目・3段目の下に覆い隠されるように配置していくことと、より高得点を目指すために多層にしていくことのシナジー効果が上手くルールに溶け込んでいてナイスです。

このタイルを石切場3つの上に配置することで石材が3つ手に入る

上級ルール

サマリーカードの裏面は上級ルールの記載になっています。上級ルールでは、各建物に特化することで点数が倍になる条件が追加されます。より特化戦略が有効になる拡張ルールです。筆者の個人的な意見としては、あまりゲームの大筋に変化はないような気がするので、好みに応じて採用すれば良い程度のものかと思っています。

総評

Bronze

タイル配置ゲームは世の中にたくさんあるので、どうしても他のゲームと比較したくなってしまいます。ゲームの概要の部分にも記載したとおり、このゲームの得点システムは「キングドミノ」「ナンバーナイン」に似ており、ヘックスが3つ結合したようなタイルを立体的に配置していくところはユーロゲームの傑作「タルバ」に似ています。本作は、これらの要素をシンプルにまとめ上げた佳作というイメージです。巷では「3Dキングドミノ」とも評されていますね。

比較的シンプルなルールでプレイ時間も短いので、ファミリー層からも好まれつつ、一方でタイル取得のインタラクションでゲーマー同士でも楽しめる便利な作品かもしれません。繰り返し遊ばれている様子も目にします、5回連続とか。価格が比較的安価で誰でも楽しめるところは良い点です。

タイルは切り離し済で収納性もGOOD

タイル配置ゲームといえば、2022年にSDJを獲得した「カスカディア」とも比較したくなります。「カスカディア」には何度プレイしても中々上手くならずに毎回変化する5種類の動物配置ルールに挑む楽しさがある一方で、本作は得点ルールに変化をもたらす要素がないことから、上達するという希望を持ちやすいシステムと言えますし、実際、上達を感じることができると思います。したがって、短期間でのリプレイ欲は本作の方が上回るかもしれません。ただ、これは飽きやすいというデメリットと背中合わせでもあるので、一長一短です。どちらを好むのかは人によって変わりそうです。

インタラクションという観点からは、本作の方が優位です。サマリーカードにはゲームに登場するタイルの内訳が記載されていますし、確実に勝つためにはタイル取得で相手の状況を観察することが必要で、カットなどの相手を意識した一手も本作の方が起こりやすいです。2人プレイなら競技性もありそう。カルカソンヌのように日本大会などを開催したら面白いと思います。

テーマという観点からはどちらもフレーバーを得点ルールに上手く落とし込んでいると思いますが、アートワークとしては「カスカディア」の方がより洗練されています。本作のタイル配置の最終系は幾何学的な模様のようになります。

一応レビューサイトなので筆者が敢えてどちらかを選択するとしたら、個人的には「カスカディア」の方が好みです。テーマのスケールの大きさとゲームへのフィッティング、コンポーネント、そして中々上達しない2重のタイル配置パズルが丁度良い満足感を脳に提供してくれて、定期的に遊びたくなる感じ。

『アクロポリス』はフィラーとしてボードゲームカフェのような場所にあると良いゲームで、自宅の棚には「カスカディア」を置きたいというところでしょうか。繰り返し何度も遊ぶような環境では本作が定番となることもあるでしょうし、実際、筆者の友人の中には本作に軍配を挙げる方もいるので好みの問題ですけどね。

購入先情報

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