ティルトゥム

人生はダイスに比例して小さくも大きくもなるのです

メーカーTendays games
発売年2022年
作者Simone Luciani, Daniele Tascini
プレイ人数1-4人用
対象年齢14歳以上

ゲーム概要

黄金コンビの2022年待望の新作

「ツォルキン」「マルコポーロ」でお馴染みのSimone LucianiDaniele Tasciniの2022年新作はダイスドラフトを主軸としたヨーロッパを旅行しながら各地の見本市で得点を稼ぐゲーム『ティルトゥム』でした。過去作をスッキリとよくまとめた良作という前評判とともに、アクションポイント制を採用したためにダウンタイム(待ち時間)が長い、突出した要素がないという懸念も聞こえてきていました。

ヨーロッパを旅するメインボードは随所に「テケン」の既視感がある

アクションポイント(AP)とは、手番ごとに与えられたポイントを振り分けることで複数の手を組み合わせて打つことができるボードゲームのメカニクスですが、手番ごとにできることの選択肢を組み合わせて考える必要があるのでダウンタイムが発生しがちな使い古された手法というイメージがありました。しかし、本作を実際にプレイしてみると、この古臭いメカニクスを現代風にアレンジするための工夫が随所にみられるデザインとなっていました。

上下両面を用いるダイスピック

本作の目的は、王様へ奉公をしつつヨーロッパ各地の都市へ商人と建築家を派遣して見本市に参加したり、大聖堂の建築に貢献して勝利点を獲得していくことです。この目的を達成するための手段として、手番ではリソース獲得とアクションポイントの2つの意味を持ったダイスをドラフト(ピック)していきます。ラウンドの最初に規定個数のダイスを袋から取り出して振り、出目に応じて6つのアクションスペースに分けて置きます。このアクションスペースは回転式になっており、ラウンドごとに各アクションに対応する出目が変化していきます。

中央の円形のタイルがラウンドごとに回転していく

ダイスの上面と下面の合計値は全て「7」になることを知っている方は多いと思いますが、本作ではこの法則を思い出すと理解しやすいです。すなわち、目に見える面(上面)の数字は、ダイスの色に対応した獲得できるリソースの数を表し、目に見えない裏面(下面)の数字はダイスに対応したアクションのポイントを表しています。つまり、リソースを多くもらえるアクションはポイントが少なく、その逆も然りというわけです。こうして2面を用いるダイスピックのシステムってありそうでなかったですよね。ダイスを1つ選択するだけで、リソースの種類及び数、そしてアクションポイントの3つ要素を決定できるエレガントなシステムです。リソースor アクションの選択を常に迫ってくるシステムはとても悩ましくて、そして面白い選択となることは想像に難くないでしょう?

選択をさらに悩ましくするボーナスタイル

早い者勝ちのボーナスタイル

各アクションのダイスを最初にピックしたプレイヤーは、ラウンドの最初に配置されているボーナスタイルをもらうことができます。ボーナスタイルは、後述する宿に掲げる紋章や即時型にアクションを強化するようなもので、これを獲得できないのは大きな痛手になることがほとんどです。ボーナスタイルのお陰でダイスピックはさらに悩ましいものとなります。

アンロック型の個人ボード

ゲーム中、獲得した人物や契約は自分の個人ボードに配置していきます。個人ボードに成長性はほとんどないのですが、契約の成立や同一人物のセットコレクションを達成することによってボードへの建設に必要な商館や柱がアンロックされるようになっています。ダイスのマークはダイス置き場となっており、使用済みのダイスを置いて手番数のカウントを容易にしてくれます。

右側にある2×2のマスは倉庫で、手に入れたタイルは一旦すべてここにおかれます。一度置くと、2度と廃棄することはできないので計画性が大事です。ゲーム中、何度か「倉庫が狭い…」と呟くことになります。

現代モダンアクションポイント制

アクションポイント制というメカニクスは古くからあり、手番での多様な選択を楽しめる反面、ダウンタイムが大きなネックであることは前述の通りです。しかし、このゲームでは、手番で選択できるアクションの範囲を狭めることでこの懸念点を払拭しようとしています。

ゲームは4ラウンド合計12手番です。手番ではダイスを選択することによって5つの系統のアクションのいずれかを実施できます(6つ目はジョーカーなので実質5つなのです)。本作を遊んでみて、なるほどと感じた重要な点は、選択した系統のアクションしかできないというところです。ゲーム中に手に入る即時型のアクションタイルの使用によって異なる系統のアクションが組み合わせられることもありますが、基本的にはいずれかの系統のアクションの組み合わせのみを検討すればよい仕組みのため、従来のアクションポイント制のゲーム程にはダウンタイムが発生しないように感じました。一度に3つの事象を決定するダイスピックから範囲を狭めたアクションポイント制への繋がりがこれまたエレガントにデザインされており、現代モダンアクションポイント制とも言えるような新しい仕上がりになっていると思います。

簡単に説明すると、選択可能なアクションは以下の通りです:

国王

アクションの中では秒で終わる単純なものですが、手番順を決定するため、とても重要です。このアクションを選択した場合には、AP分だけトラックの駒を進めます。ラウンドごとに記載されている分の勝利点が加算されます。マイナスに振れている場合は勝利点がマイナスされてしまいますが、ラウンドごとに0に戻される救済があります(国王アクションを取れない場合に永久にマイナスということにはならない調整)。手番順が一回りするたびに不正トークンを一枚めくり、全員のマーカーを下げます(とても忘れやすいので注意!)。

あのゲームで見たことのあるような国王トラック

このゲームの手番順の決定はラウンド終了時にマーカーがより右側により下側にある方が優位です。ラウンドごとの各アクションのAPは決まっているので、より先に行動したプレイヤーのマーカーを追い越すことは難しいのが特徴です。したがって、個人ボードを埋めることによってAPを強化できるタイルを国王アクションに置くことは”かなり強力な1手”になり得ます(自分だけ+αの移動ができるため)。

商人

商人アクションではAPを3つのアクションに振り分けます。馬車駒の移動、馬車駒のある都市への商館の建設、馬車駒のある都市にあるボーナスタイルの取得。これらはいずれも1アクションにつき1APなので分かりやすいです。ラウンドごとに開催される見本市(小決算)は、馬車駒もしくは商館の建設が参加条件なので、計画的にこのアクションを実行しておくことは重要です。そして、ボーナスタイルは取得すると即時に利用可能となるので、上記写真のように馬車移動アクションのボーナスタイルとのコンボでかなり長距離を移動できることもあります。これは一部批判に晒されていますが、初手番で近隣のボーナスタイルを根こそぎ獲得できてしまうプレイも可能な場合があります。

建築家

大聖堂の建設はフリーアクション

建築家のアクションも移動する駒がコンパスになり、建設するものが柱になるだけで基本的には商人と同じなので覚えやすいです。柱を建設することにより、フリーアクションで石材を支払って大聖堂の建設を行うことができます。かなり得点効率の良いアクションなので、勝利のためには必須です。柱の建設箇所は限られているので、3人以上のプレイ人数では先取りが重要になる局面もあります。

人物

人物タイルと契約タイルのディスプレイ

このアクションでは1APによる人物タイルの獲得と、個人ボードへの配置が行えます。個人ボードの配置は同一人物を1つの建物に配置するセットコレクションになっており、同一人物で埋まった建物に紋章を配置(食料を支払うフリーアクション)することで建物が完成し、アクションのAPを強化するタイルがもらえます。紋章の配置により、駒のワープや商館&柱の遠隔建築も付いてくるので、ここぞという時に実行するために食料と紋章を揃えておきましょう。

完成した建物の商館がアンロックされ、強化タイルも貰える

契約

契約アクションでは、契約タイル(リソースのセットコレクションで達成できる)の獲得とリソースの1:1交換ができます(黄金はいつでもフリーアクションで2:1交換可能)。契約タイルを達成すると建設可能な柱がアンロックされると共に、タイル自体の勝利点&即時の勝利点が得られる仕組みです。

ジョーカー

ジョーカーアクションは、任意のアクションとしてAPを利用できます。他のアクションのダイスが既に枯れている時や、AP数が足りない時などに重宝するアクションです。

本作には「マルコポーロ」などで用いられたフリーアクションのシステムも搭載しています。契約の達成や即時効果のタイルの使用などはフリーアクションです。覚えてしまえばどうということはないですが、最初はサマリーのようなものを用意した方が良いかもしれません。

見本市!

各ラウンド最後の小決算は見本市と呼ばれます。ラウンド1はスタート地点のティルトゥムで、それ以降はゲーム開始時にランダムに抽選された都市で行われます。見本市に参加するには、自分の商人駒がその都市に停まっているか、または商館が建設されている必要があります。小決算の内容もランダムで決定され、例えば「達成済の契約と建築済の大聖堂の組み合わせ1つにつきボーナス」のような内容です。これがゲーム開始時にすべて見えているので、見通しは大変良くなっています。また、見本市の場所・内容と得点効率を判断してすべての見本市に参加するかどうかを選択することも重要です。

見本市の内容と2〜4ラウンドの見本市の場所はランダム生成

長期的視点が大事なゲーム

各ラウンドに行われる見本市に向けて計画的に手番を実施していかなくては勝てないのは当たり前ですが、それ以外にもみるべき点があります。

もちろん、ダイスピックは早い者勝ちなので、手成りで手番を実施していくことにはなるのですが、実は結構長期的視点も重要です。出目とアクションの対応が回転式になっていることは前述しました。これはつまり、ゲームが進むと強化されていくアクションと弱体化されていくアクションが最初からわかっていることを意味しています。例えば、国王のご機嫌取りのアクションが最終ラウンドではアクションポイント「1」になる(その代わりにリソースは「6」)ことがゲーム開始時にわかっているのです。

先を見据えてアクションを強化しておく

それならばどうするかと言えば、将来を見据えて強化しておくべきアクションには個人ボードの建物完成時にもらえるアクションポイント強化タイルを配置して”自分だけはアクションポイントが低くてもそのダイスをピックできる”状況を作っておくのです。成長性のあるボードゲームの醍醐味の1つは「自分はできるけど他者はできない」という状況を作ることですよね。このような自分だけの工夫ができるのもこのゲームの魅力の1つです。

こうして4ラウンド12手番終了後に最終得点計算を経て、最多得点のプレイヤーが勝利します。ゲーム終了時には、個人ボードの埋まり具合を反映した得点が加算されます。

ゲーム終了時には、完成した建物、建築済の商館と柱、余ったリソースが得点となる

手番順のバランス

目的のアクションに対応するダイスの早取り、国王トラックの順番、商人・建築家駒の移動、そしてそれぞれに付随するボーナスタイル取得、このゲームでは手番順がとても重要な要素です。2ラウンド目以降はある程度自己責任としても、最初の手番順はゲームを壊しかねない要素と捉える方が多いようです。特に、商人・建築家駒の移動によるボーナスタイルの取得に関してはかなり荒削りな印象があります。これを解消する手段として、エッセンでの初版販売時に配られたプロモカードがあります。これを適用することで、最初の見本市が開催されるティルトゥムには各自の商館が建ちつつ、ゲーム開始時の駒の位置がバラけるというものです。

エッセン販売分にのみ付属したプロモカード
(出典:ボードゲームギーク)

日本での評判は良いようですが、これはこれで2ラウンド目以降の見本市の場所で不公平感が生まれる場合もあり、アンバランスだという意見も散見します。デザイナーがこれをルールブックに記載しなかった(プロモにした)のはこのアンバランスさを考慮してのことだったのでしょうか。4枚のカードだけなので、プリントして一度試してみると良いと思います。

超余談:ダイスの色とリソース

ダイスの色は獲得できるリソースの種類と対応しているわけですが、これが直感的に分かりにくいのがこのゲームの1つの欠点だと感じています。そんな欠点の解決策をSNSで教わりましたので共有します。やり方は単純、袋の中に残ったダイスをリソースのサプライに放り込んでおくだけ。これだけで大分リソース獲得の間違いが起こりにくくなります。

糸と石と鉄の関係が分かりにくい


プレイ記

トモさん、なぐもけさんと3人プレイ。ゲーム開始時、見本市が開催される場所にはトークンを目印として置いておく。最初の見本市がティルトゥムなのは変わらないが、その後の見本市はボルドー→ストラスブール→ロンドンで開催される。

今回、COQは3番手でスタート。開始時の手番順の影響を肌で感じながらのプレイができた。確かに、初手で良いボーナスタイルは取られがちである。

序盤、COQは任意のリソースと2:1交換可能な黄金を中心にリソースを集めながら人物を2〜3階に配置していく。ラウンド2の見本市が2〜3階に住んでいる人物の数のためだが、2〜3階への配置はAPが階層と同じだけ必要なので重い。結果的にはこれは見捨てた方が良かったのかもしれない。重ゲー強者であるなぐもけさんはこの見本市を軽視して別の得点源に注力していた。

そして、COQの倉庫には安い契約がいっぱいある。既に倉庫が埋まってしまっており、新たなタイルが取れない事態だ。安めの契約ばかりを集めるのも実は良くない。達成は早まるものの、ゲームを通して6つしか契約の達成は出来ないため、重めの契約も混ぜていかないと得点が失速する。

COQは2回目の見本市に出店すべくボルドーに商館を立てていく。青のトモさんは最終見本市の開催されるロンドンに商館を建てつつ、既に2本の柱も立てている。柱は大聖堂の建設に必須だが、大聖堂は先に建設をした方が圧倒的に点数が高くなるように出来ている。各地に柱を建設しておきながら、石が手に入った時にフリーアクションで大聖堂を建設していく。実は大聖堂の数が3回目の見本市の得点対象となっているため、この作戦は非常に理にかなっている。

第2ラウンドの終盤、国王トラックのケアに失敗したCOQは大きくマイナス側に振れている。手番順が重要なことはゲーム開始前に理解していたが、如何せん、手番が遅いためにボーナスタイルを取得できなくなっていた国王トラックへのケアが後手になった結果である。後手番でゲームを開始したプレイヤーの起死回生の1手は初手国王トラックにあると思われるが、それを怠った結果、以降も手番が遅くなり、大変厳しいゲームとなってしまった。このゲームで優位に立つには強い意志で国王トラックを進める必要がある。

次の第3ラウンドの見本市が行われるストラスブールまで馬車を進めて商館の建築をしたいが、手番順が遅いためになかなか良い商人アクションのダイスが取れない。そこで、個人ボード一番左側の建物に紋章を当てはめることで、商館の遠距離建築を実行する。ストラスブールには商館が2軒までしか建てられず、出遅れたトモさんは馬車を移動してこれに対応しなければならない。なんとか一矢を報いた感じである。こうした早取りの要素が効いてくるため、3人プレイは2人プレイよりも面白そう。ところで、紋章の配置による他のボーナスとして柱の遠隔建築が可能だが、これはどうみてもドラゴンボールに登場する桃白白タオパイパイのそれである(柱を投げて飛び乗って移動する)。

この頃にはなぐもけさんもヨーロッパ東側へ建築家を大移動させ、ボーナスタイルを収集しつつ柱の建築に余念がない。結果として、最後に最も多くの大聖堂を建設していたのはなぐもけさんであった。

第3ラウンド、中盤から終盤に差し掛かり、全員が紋章の配置のために食料が欲しい。食料に対応するピンクのダイスはボーナスタイル付きで真っ先に獲得される。そうなると、どうしてもボーナスタイル付きの他のダイスを優先して取ってしまう病にかかる。結果として食料が足りない。

最終ラウンド、最後の見本市はロンドンで行われ、国王トラックの進み具合が得点となる。序盤、ロンドンに商館を建築済のトモさんは国王トラックを上げていく。国王トラックで奮わないCOQは、最後の見本市を諦め、柱と大聖堂の建築に精を出す。

最終的にはなぐもけさんがいつの間にか大量の柱と商館をヨーロッパ中にばら撒いており、最終得点計算後に圧巻の230点オーバーの点数を叩き出して勝利した。

プレイ時間120分

補足:次に遊んだ4人プレイでは国王トラックを重視して1位を取ることができました。手番順大事!



総評

Silver

過去の複雑なゲームと比較してスッキリしたとはいえ、様々な要素から得点可能なポイントサラダのゲームです。しかし、これだけの要素を含みながらもきちんとまとまったゲームになっているところは流石です。ダイスピックで手番の方向性が一気に決まるエレガントなデザインと、個人ボード(特に人物タイルの配置)を埋めていくのがとても楽しいです。手番が来るのが楽しみで、でもがっかりしたくないのでどのダイスがピックされるのか自分の番が来るまで目視したくないと思いながら遊んでいました。

ダウンタイムを嫌うプレイヤーが多いため、2人プレイを推奨する向きもありますが、筆者は早とりの要素が効いてくる3人プレイがおすすめだと思います。

懸念点であったアクションポイント制のダウンタイムについては、現代モダンアクションポイント制とも言える”要素を限定した仕組み”によって(筆者としては)それ程気になるものではありませんでしたし、デザイナーの試みを感じることのできる良い工夫を感じることが出来ました。過去の名作と言われているゲームにこれよりももっとダウンタイムの長いゲームは沢山あります。先手番順の不公平感については、ポイントサラダなので別の行動が可能なものの、有利なのは間違い無いですね。今思い出してみると、これまでに3回遊んでいますが、いずれも勝者はラウンド1の先手番でした。これが気になる方はプロモカードを試してみることをおすすめします。

逆に、プレイしてみて気になった点は、ラウンドの終盤になるにしたがってダイスが腐っていく(良いダイスは無くなっていく)傾向があり、また、特に最終ラウンドで見本市に参加しない場合にはやることが無くなっていく感触があったところです。良いゲームのわかりやすい基準として「あれもこれもやりたいのに手番が足りない」というものがあると思いますが、本作はこの”手番が足りない”の部分が”ダイスがない”に置き換わっているので、やりたいことがやれず、盛り下がるような印象がある場合があります。また、展開の多様性という面では、いくつかランダム要素があるものの見通しが良過ぎる部分があるかもしれません。

過去作の良い点を集めた印象もありますが、よくまとまっているオールドでモダンなユーロゲームです。ダイスピックの悩ましさと手番順のコントロール、目標の達成に向けて着実に進んでいくところなど、とても楽しいと思える要素が沢山あるゲームです。コンポーネントは満載で質も良いです。2022年に発売された重量級ゲームの中ではTOP3に入る出来だと思います。

購入先情報

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