チキンから車を経て、なぜか日本へ
メーカー | White Goblin Games |
発売年 | 2012年 |
作者 | Michael Schacht |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
純和風アートワークで帰ってきたセットコレクションの名作
当時駄作を連発していた白ゴブ(White Goblin Games)。その作品には、少なくとも我先には手を付けないと誓っていました。その矢先、シャハトの「ドライブ(クレイジーチキン)」が純和風にリメイクされると聞いて、早速その禁を破り発注してルールを和訳したのが本作『コールトゥグローリー』でした。
このゲームは元々「クレイジーチキン」という名前で発売された手札マネジメントとセットコレクションの名作。当時は2人用でした。これに3〜4人用のルールを付与し、テーマを車の収集に変更したのが「ドライブ」です。そして本作は、「ドライブ」にヴァリアントルールを2種類同梱し、テーマを純和風に変更したものです。ラミー系のカードゲームここに極まれりというゲームです。
純和風テイストの欧州ゲームといえば”勘違い日本”を大いに期待してしまいますが、箱絵からもうかがえる通り、カードイラストなど全体的な雰囲気に隙は無く、むしろクール。どこかで見た絵だなと思ったら「NINJATO」のイラストレーターと同じ人物のようです。あちらで日本風のイラストというと、この人が第一人者なのでしょうか。
勘違い日本に期待していた方は、諦めずにヴァリアントルールに期待してください。
ゲームの概要
ゲームには、9種類のキャラクターカードが登場します。カードには6〜20の数字が書かれており、これがそのまま「ゲームに登場する枚数」と「そのキャラクターの得点」を表しています。
手番では、4つのドローパイルから手札を2枚補充し、その後で1枚を捨てるか手札から1種類のキャラクターカードを公開するか選択します。基本的にはカードは2枚から公開できますが(3〜4人プレイ時のみ、中間層のカードは3枚以上から公開可)、他のプレイヤーはさらに多い枚数で上書きすることが可能なので注意が必要です。これを繰り返し、プレイ人数による終了条件を達成したらラウンド終了(例えば4人プレイでは9種類全部のカードが場に公開されるか、1人のプレイヤーが4種類のカードを公開するかしたらラウンド終了)。3〜4ラウンドの点数の合計で勝者を決定します。
基本の点数は、公開しているカードに書かれている数字です。何枚一組で公開していようとも、点数は変わりません。公開している枚数は、(基本ルールでは)他のプレイヤーに上書きされるかどうかの判定にのみ関わってきます。早く公開して点数を獲得できる条件を揃えたいところですが、あまり焦って少ない枚数で公開してしまうと容易に他のプレイヤーに上書きされてしまうというジレンマです。リメイク前の「クレイジーチキン」の題名に、クレイジーになるかチキン(臆病者)になるかという意味が込められていたとすれば言い得て妙です。ラウンドの終了条件への到達スピードは結構早いので、あまり溜め込んでも勝てないのが難しくて面白いポイントです。
カードの補充に作者らしい特徴が出ている
手番における2枚のカード補充は、別々のドローパイルから行うことが義務づけられています。ドローパイルには表向きと裏向きの2種類がそれぞれ2つずつあります。表向きのドローパイルは、捨て札置場も兼ねており、捨て札にする場合はどちらかを選択して置いていきます。
ここで気をつけなければならないのは、自分が今捨てたカードは他のプレイヤーに拾われる可能性があるということです。他人の欲しそうなカードを読んでそのカードが埋まるように捨てたり、自分のカードが拾われない様に注意したり。半アブストラクト的なカード補充にシャハトらしさを感じます。
別々のドローパイルから引かなければならないというルールには、もう1つ利点があります。それは、裏向きのドローパイル(山札)があまり切れていなくても問題無いという点です。同じ山から連続で引くことができないので、同じカードが連続していてもあまりゲームに影響がでません。意図的かどうかはわかりませんが。
ドローパイルといえば、「ドライブ」ではドローパイル用のボードが付属していましたが、本作では廃止されています。
ヴァリアント1:ミッションカードにより、ゲームはよりエキサイティングに
さて、本作で追加されたヴァリアントルールですが、そのどちらも加えてプレイしたほうがゲームはより深みを増すと感じています。
1つ目のヴァリアントは、キャラクターカードとは別に各自3枚ずつ配られるミッションカード。ゲームの勝敗を3ラウンド合計得点で決定することとし、各ラウンドの最後にこのカードを各自が1枚ずつプレイします。ミッションカードにはそれぞれキャラクターカードと得点が描かれており、そのカードを公開しているプレイヤーは、カード1枚につきボーナス得点を得ることができます。
3ラウンドのうちに全てを使用せねばならず、他のプレイヤーにもボーナスを与えるカードなので、より目的意識を持ってプレイすることが求められます。さらに、カード裏面が色分けされており、他のプレイヤーがどの種類のミッションカードを残しているかがある程度わかります。これによる得点は基本得点と同じくらい重要なので、手也でカード運に任せるだけでは勝てないということです。とても良い拡張だと思います。
ヴァリアント2:なぜこうなった!
もう1つの拡張は「パワーオブ忍者」です。ハワイのレストラン「田中オブトーキョー」を彷彿とさせる日本人には考えつかないパワーを感じるネーミングです。直訳すると忍者の力、忍者力ですね。この拡張では、忍者を公開すると忍者フィギュアを1つ得る事ができるようになります。忍者フィギュアは、手番中に使用することによって他人が公開しているカードを1枚破棄することができるという強力な能力を持っています。
これもどっちつかずの点数であった忍者カードの価値を大きく高め、戦略的なプレイを生む良拡張なのですが、付属のフィギュアが凄い。どうみても忍者力ゼロです。贔屓目に見てもせいぜい侍というところ。明らかにカードと違う見た目に、何か気付くところはなかったのでしょうか。やはり期待を裏切りません。
プレイ記
プレイ時間は3人で45分程度でした。
総評
Bronze
プレイ時間も丁度良く、初心者にもドイツゲームのジレンマを感じてもらいやすい良いゲームだと思います。リメイク前のゲーム名が知れ渡っているだけのことはあります。ラミー系のセットコレクションカードゲームで、スピードをとるか盤石性をとるかを悩むのが楽しいゲームです。
カードの構成は同じですので、これ1つでヴァリアントを加える前の「ドライブ」も、2人プレイで「クレイジーチキン」も遊べます。基本的には、拡張を入れた方がゲームが複雑になって良いと思いますが、初心者や子供と遊ぶ場合には拡張なしの「ドライブ」ルールで遊ぶと良いと思います。
2020年に白ゴブから「Lyttle Wood」という名前で再リメイクされています。
余談ですが、和風のキャラクター達はそれぞれ元ネタがありそうな顔つきをしています。プレイしながら元ネタを想像してみてください。
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