カスカディア

あなたは誤ることがあっても、自然は決して誤らない。

メーカーFLATOUT Games
発売年2021年
作者Randy Flynn
プレイ人数1-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

ランキングの階段を上り詰めた『生態系を作る』パズルゲーム

世界最大のボードゲームデータベースであるボードゲームギークのアブストラクトゲーム(比較的運の要素の薄いゲーム)のランキング1位に輝いているゲームをご存知でしょうか。そう、Randy Flynnが彼の処女作として発表した『カスカディア』です。発表以来静かにランキングを上り続け、ついにアブストラクトランキング1位(本作がアブストラクトゲームかどうかはさておき)、総合ランキングでも100位の栄誉に輝いています。

このゲームの目的は、豊かな生態系を作ること。プレイヤーは、大自然の地形が描かれた6角形のタイルで箱庭を作り、その上に野生動物のトークンを置いて豊かな生態系の構築を目指します。ゲーム終了時、タイルの地形のつながり野生動物の分布の形が得点となり勝者が決定します。

しばらく個人輸入するしか入手方法がありませんでしたが、「ケンビル」さんより日本語版が発売されています。SDJも受賞し、色々と素晴らしいですね。

超余談:カスカディアとは

いきなり余談から始まりますが、ゲームの題名となっている『カスカディア(Cascadia)』とは、アメリカ大陸西部のカリフォルニア州北部〜カナダに至るカスケード山脈周辺の生態系バイオリージョン「カスカディア」に由来するものと思われます。デザイナーのRandyを含むチームのメンバーのほとんどは故郷がこのカスカディアであることから、これをテーマの主軸に据えたようですね。したがって、このゲームに登場する動物達も、カスカディアに実在する動物となっています。

美麗なコンポーネントの品質はとても良い

ゲームで主に使用するのは、地形とそこに住む動物が描かれたタイル85枚木製の野生動物トークン100枚(巾着袋付き)です。タイルのカットはしっかり行われており枠から打ち出す際に破れたりすることはありませんでした。動物トークンは均一な美しい仕上がりです。

地形タイルには、2種類の地形が描かれているものと、1種類のものがあります。それとは別に、そのタイルに配置することのできる動物のシンボルも描かれています。

これに加えて、得点ルールを設定するためのカード20枚、手番でサプライの刷新に使えるネイチャートークンなどが付属しています。

ゲームシステムは「2層構造のパズルタイル配置」

同じ動物3つの場合は任意でトークンの引き直しができる(4つ同じなら強制的に引き直し)

ゲームには、プレイ人数×20+3枚のタイルを使用します。ここから、常に4枚のタイルが表向けられており、巾着袋から引いたトークンとセットになって4組の共通のサプライを形成しています。ゲームの基本は、この共通のサプライから得たタイルと動物トークンを自分の箱庭に配置していくことです。基本的には、セットになっている組み合わせのタイルとトークンを取らなくてはなりません。

手番ですること

① サプライからタイルと動物トークンを1組とる
② 自分の箱庭にタイルを配置する
③ 自分の箱庭の空いているタイルの上に動物トークンを配置する

手番でやることはこれだけです。タイル配置のルールは非常にユルく、既に置かれているタイルと1辺が接していればOKです。地形が整合している必要はありません(整合して大きな地形を作ると高得点ですが)。タイル配置で作成した箱庭の上に動物トークンを置いていくことから、タイルとトークンの2層構造のパズル配置というわけです。

1種類の地形しか描かれていないタイルには、白い三角形とネイチャートークンのシルエットが描かれており、ここに動物トークンを配置するとネイチャートークンが1つもらえます。ネイチャートークンは、「ゲーム終了時に得点」となる他、「サプライのトークンの刷新」「セットを無視したタイルとトークンの獲得」に使えます。少しだけ手番の自由度を上げる良い味付けです。

1024通りの得点ルール

ゲームには常に5種類の動物のカードが1枚ずつ登場します。各カードには、登場する動物の習性に合わせた配置ルールが記載されています。この配置ルールに沿って動物トークンを配置することができれば、ゲーム終了時に大きな得点が狙えます。基本セットでは、各動物につき4種類のカードが用意されていることから、その組み合わせは1024通りです。配置による得点ルールが動物の習性のイメージとあっており、配置が楽しくなります。

何かの配置で点数が決まるゲームでは、ある程度遊ぶと最適解が判明してしまうというデメリットがありますが、このゲームでは遊ぶ度に異なる条件に挑戦できるようになっています。また、単に動物を集めるセットコレクションではなく、フォーメーションに得点性を持たせたことがタイル配置との密接なルールの繋がりをもたらしています。グレイトです。

なるべく大きな地形で高得点を狙うためのタイル配置と毎ゲーム異なる配置条件に合うように置きたい動物トークンのジレンマが悩ましくて楽しいのです。

ファミリーでも子供でも遊べる間口の広さ

このゲームはファミリーゲームランキングでも上位をキープしています。その理由はシンプルな手番だけが理由ではなく、誰もが同じ規模の箱庭を作れることにあると思います。お金の要素も完全な排他性もないこのゲームのシステムでは、手番で必ずタイルとトークンが手に入ります。高得点を得るためには綿密な配置が求められますが、ゲーム終了時には初心者でも子供でも一生懸命作った箱庭が目の前にあるのです。様々なレベルのゲームシーンのいずれにも対応できる間口の広さがあるゲームです。

ファミリーヴァリアント(初級・中級)

ゲームの難易度を調節するためのファミリーヴァリアントが2つ付属しています。動物トークンの配置得点ルールがとてもシンプルになります(塊になっていれば得点となる)。

ゲームの終了と得点計算

各自20回の手番を行なった後に、ゲームは終了します。ゲームの準備でプレイ人数に応じたタイルを用意しているので、ゲーム終了時には丁度サプライにタイルを補充できなくなります。とてもわかりやすいです。

ゲームが終了したら、付属のメモパッドを使用して得点を計算していきます。合計得点の多いプレイヤーが勝利します。

最終得点

・各動物:カードに応じた動物配置ルールの得点
・各地形:最も大きい塊を形成するタイル枚数の得点
・各地形:プレイヤー間で地形の塊の大きさ順位に応じた得点
・トークン:使用しなかったネイチャートークン(1つ1点)

ソロヴァリアント

ソロでも楽しく遊ぶことができるのがこのゲームの特徴です。ソロで遊ぶ場合も20手番を行います。準備は2人プレイと一緒で43枚のタイルです。『え?!』って思いますよね。

ソロルールでは、手番ごとに自分が取得するセットに加えてもう1セットがゲームから取り除かれていきます。したがって、2人プレイと同じタイル枚数でピッタリゲームが終わるんですね。タイルとトークンを取得した後、最も右端にあるタイルとトークンがゲームから除外されます。その他のルールは通常通りです。

除外されるタイルを加味して優先順位を決めなければならないところが面白いですね。

プレイ記

自宅でAMIと2人プレイ。

結果は95対88でCOQの勝利。

AMI
AMI

欲しいタイルあるし、欲しい動物いるし、邪魔もしたいし。
でもあっという間に終わってしまった。もう一回!

実はこのゲームの悩ましさは、2層構造のタイル配置に加えて相手の邪魔もしたくなるトリレンマとなっている。目の前に広がっていく箱庭は想像以上に楽しく、アブストラクト的ゲームと言えども明るい雰囲気だった。

プレイ時間30分

総評

Gold

非常に丁寧に作られたゲームという印象です。デザイナーの処女作ということもあり、長い時間をかけてディベロップしてきた結果なのでしょう。最低限の量に抑えたルールはとても美しいですし、ソロ・2〜4人・ファミリールールに加えてキャンペーンのルールまで付属していることは、デザイナーが如何にこのゲームに愛着を持っているかを物語っています。

キャンペーンシナリオが付属している

数分で説明可能な簡単なルールです。しかし、簡単なルールでありながら、タイル配置と動物トークン配置の2層構造が得点ルールにより密接に結び付けられており、奥が深いです。狙った通りにタイル・トークンがはまった瞬間も爽快。ゲームに少しの変化を与えるネイチャートークンの味付けも程よく機能しています。1種類しか地形が描かれていないタイルは取りたくないのですが、ネイチャートークンを貰えるので場合によっては取ることに意味が出てきます。この辺りのバランスも良く考えられていると思います。

ゲームの説明部分にも記載した通り、とても間口の広いゲームです。ストイックに高得点を狙うアブストラクトを好むプレイヤーにもおすすめできますし、ファミリーやキッズと一緒に遊ぶ場合でも遜色ない楽しさを提供してくれるでしょう。実際、ターゲット外(本来は中〜重量級のゲームを好む)の我が家でもお気に入りの1つになりました。

ゲームの性質上、人数が増えてもあまりプレイ感が変わりません。アブストラクトは盤面の予測がつきやすいほど面白くなることから、最適なプレイ人数は2人、次点で3人だと思います。実は1人もソロルールが優秀なので結構面白いです。

カードの得点ルールやキャンペーンに英語の言語依存があるので、これから購入するなら日本語版を強く勧めます。自然をテーマにしたゲームというとあまりヒット作がないような気がするのですが、これは良いものです。

購入先情報

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