裏の裏の裏の裏の裏を読んで裏をかけ
メーカー | Ravensburger |
発売年 | 1988年 |
作者 | Alex Randolph |
プレイ人数 | 2-6人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
人生が語れるほど深くシンプルな「競り」と「バッティング」のゲーム
アレックス・ランドルフの『ハゲタカのえじき』です。すでに古典と評してもよい定番ゲームの一つで、さまざまな版が発売されており、現在は、メビウスゲームズより日本語版が発売されています。絶妙な加減に競りとバッティングがデザインされたカードゲームで、後の多くの作品に影響を与えました。最早「ハゲタカ式の競り」でゲームシステムの説明ができてしまう程です。
ゲームの目的は毎ラウンド公開される点数の付いたネズミカードを獲得すること。ただし、たまにマイナス点のハゲタカが現れるので要注意です。ゲーム開始時、各プレイヤーには「1~15までのカード1組」が与えられます。獲物はネズミかハゲタカのカードです(カードのイラストは版によって異なります)。
毎ラウンド1枚公開される獲物に対し、手札を1枚同時出しして入札します。ネズミカードは最も大きな数字を入札したプレイヤーが獲得し、ハゲタカカードは最も小さな数字を入札したプレイヤーが獲得させられてしまいます。一度使用した手札は戻ってきません。1つのゲームの中に、2通りの競りの要素、すなわち通常の競りと逆競りの場面が登場する構造です。
最も大きな数字や最も小さい数字が被った場合は、次点の数字を出していたプレイヤーが獲物を獲得します。全員が被った場合には、カードは持ち越しとなります。ここで、すでに使われたカードの記憶とバッティングを避ける心理戦が展開されます。
これを15ラウンド繰り返し、最終得点の多いプレイヤーが勝利します。
プレイ記
自宅にてのっち、ヤスと3人プレイ。
この3人は、年も出身地も小学校も同じ、いわゆる幼馴染。読み合いのゲームで明らかになる「環境がヒトを作る」のかどうか。
このように、各プレイヤーは同じ色のカードを1組(15枚:1〜15)手札として持つ。中央には獲物カードの山札があり、ここから1枚ずつ公開されていく。
そして、その向こうに見えるのが、既に「のっちのえじき」になった我が家の冷蔵庫に埋蔵されていたビール。発泡酒をかき分けて、迷わずラガーを選択した嗅覚に乾杯。
さて1枚目。いきなりの「−3」。マイナスの場合は小さい数字を出したプレイヤーが引き取る。まずはほろ酔いののっちがハゲタカのえじきに。
その後の「ー2」ものっちが余裕で獲得。なにか秘策でもあるのか。悪球打ちか。マイナスを溜め込んでいくのっち。
そして3枚目はいきなり上から2番目の「+9」登場。「+10」は激戦と読み、ここで勝負の15投入。しかし、マイナス王のっちと被る。なんたる不覚。
「+9」は漁夫の利でヤスへ。まず、人生で一番最初に幸せを掴んだ男が高得点のカードを獲得する。するとあれだ、のっちのマイナスカード2枚は誰なんだ。
そして次は「+1」。30代男を取り巻く”仕事と家族のしがらみ”がこの選択を生み、1が3枚揃ってドロー。
全員がドローとなったカードは累積し、「+1と+3」の両方を競り合う。9を出したのっちがこのカードを獲得。これで序盤に獲得したマイナスカードはほぼ相殺。人生山があれば谷もあるが、微妙に2歩進んで3歩下がっているところに哀愁を感じざるを得ない。
それにしても、完全に割り切って、クールに2をだせるか、妙なスケベ心で中途半端な7をだすか、生きるセンスの違いを感じる。
次は「−1」ここでも中途半端な選択が仇となり、はげたかの餌食となってしまうCOQ。そうか、あの時の。いや、確かにあれは失敗だった。
そして「+8」、ここぞとばかりに全員が14を投入。あぁ中学時代、3人とも同じ女の子が好きだったことが大学に入ってから発覚したことがあったっけ。そう言えば、このネズミはどことなくあの子に似ている、、ような気がする今日この頃。
憧れだったあの子は累積し、続くカードは「+6」、、最悪。なぜ最悪なのかというと、のっちとCOQは序盤で切り札である15を使い切ってしまったから。実生活でも既に2人の子宝に恵まれたヤスが2枚とも持っていく。粒ぞろいだ、おめでとう。
ここで真打ちの「+10」登場!単独で最強の13を所持していたCOQが一矢報いる。ヤスはカードを覚えており、手札マネジメントで4を投入、マイナス王のっちは無意味な全力投球。
つまり警戒していたマイナス王に秘策は無く、ただ川を流れる流木のようにほろ酔い状態で漂っているだけだったということ。ギャラクシートラッカーに続き、まさかの流木のっち再登場だ。
その後は巧みに強いカードを残していたヤスがほぼ全てのネズミを獲得し、流木男が無事に残りのハゲタカのえじきとなりゲーム終了。
プレイ時間:20分程度。
総評
Bronze
ルールは非常にシンプルです。それなのに、毎回絶妙の心理戦が展開されます。シンプルなルールに潜む奥深さは、1ゲームで人生が語れてしまう程です。アレックス・ランドルフのゲームはどれも後世のゲームの骨子となる程の根幹のメカニクスとなっていると改めて思います。競りとバッティングでできたこのゲームは、これ以上の要素を足しても引いても面白さが失われるのではないかと思ってしまうほどのバランスの上に成り立っています。
一見、ゲームに慣れている人には少し物足りなく見えてしまうかもしれませんが、実は、「ゴキブリポーカー」等と同じく、慣れている者同士ではより一層深い心理戦が楽しめます。しかも短時間で。カードの記憶とバッティングの読み合いです。ただ、筆者はもう少し要素が多い中量級が好みです。
通常の競りと逆競りの要素が場に公開される1枚の獲物のみで簡単に入れ替わるところも見事です。これにより、手札のマネジメントを2軸で考えなければならなくなります。裏の裏の裏をかいて・・と考えているうちに脳に汗をかいています。
版権の問題等で仕方ないことと思いますが、箱のデザインはラベンスバーガーの版が気に入っています。
初心者の方にもおすすめのゲームです。これであなたもドイツゲームのえじき。