「近所に港ができる」ということ
メーカー | Lookout Games |
発売年 | 2012年 |
作者 | Uwe Rosenberg |
プレイ人数 | 2人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
「ルアーブル」のウヴェ2人用シリーズ
「ルアーブル」といえば、Uwe Rosenbergがアグリコラと同時期に発売し、彼のターニングポイントの1つとなった傑作ゲームです。他人の建築物を利用できるところがポイントで、良好なインタラクションと食料供出のキツさがとても印象的な筆者的にもかなり評価の高い作品でした。本作『ルアーブル内陸港』はこのテーマを作者自身が2人用ゲームに落とし込んだもので、本家とは異なったゲーム性ではあるものの、2つの天才的なアイデアを惜しげもなく盛り込んだ良作となっています。
本作はリソースマネジメントをしながら内陸港に建物を建設していくゲームで、未使用の建物のアクションが次第に強化されていくところが特徴です。
手番では、次々と登場する建物を建設するか、建設済の建物を使用してリソースを生み出すかのどちらかを実行していきます。ラウンドが進むにつれてより強力な建物が登場し、手番数も増えていきます。本家ルアーブルと同様に、他人の建物をお金を支払って利用することもできます。
圧倒的な2つのアイデア
本作には、2つの画期的なアイデアが盛り込まれています。1つは他の作品でも継続的に利用されているホイール型の経過時間管理システム。そしてもう1つはルーフバルコニー付きのマンションのような見た目の表を用いた資源管理システムです。
ホイール型の建物アクション強度管理
同作者の「祈り働け」からお目見えし、今やお馴染みのシステムの1つにもなっていますが、本作はこれを建物アクションの強度管理に応用しています(正式名称=アクションリング)。ホイールの針はラウンドごとに1メモリずつ進んでいき、1ゲームで丁度2周するようになっています。建築したばかりの建物は、ゼロの位置に置き、針が進むごとにアクションが強化されていく仕組みです。アクションを実行した建物は再びゼロの位置に戻されます。
巧妙なのは、アクションをせずに針が一周してしまった場合はその建物が問答無用に売却されてしまうことに加えて、他人の建物を利用することができる点です。特に後者のお陰で闇雲にアクション強化を待っていると他人に利用されてしまうという良いジレンマが発生します。
表による資源管理
このゲームには4つのリソース(レンガ・木材・小麦・魚)が登場します。これらの個数をルーフバルコニー付きのマンションのような見た目の表で管理します。個人ボードに描かれたこの表の上にトークンを置いて4つのリソースの個数を同時に表すことができます。このトークンを左右に動かすと個数が1つ増減し、上下に動かすと個数が3つ増減します。すなわち、斜めに移動させると個数が4つ増減するというわけです。ただし、表の左右の端は繋がっておらず、最下段の右端に到達しているトークンを右に動かすことで2段目の左端に移動することはできません。なんとも独特のリソース管理方法です。
この表による資源管理はあまりに天才的なアイデアの1つだと思うのですが、他の作品には応用されずに露と消えてしまいました。
矢印で表記される建物効果
建物の効果は、主に矢印で表記されています。これは、上記の表による資源管理方法が可能にした華麗なシステムです。慣れるととても分かり易いのですが、少し頭が混乱する方もいるようです。
建物上部(屋根部分)に記載されているのはその建物を建設するためのコストで、これはサプライに支払います。主に、建築資材系(レンガ・木材)で攻めるか、食料系(魚・麦)で攻めるかの2択が勝利への近道のようですね。
勝敗はお金で決する
規定のラウンドが終了するとゲーム終了です。最後に勝敗を決するのは所持金です。建物の価値は屋根の下の帯部分に記載されています。終盤の登場する建物には実行可能なアクションを持たず、これまでに建設した建物や、保有するリソースをお金に換える効果を持っているものがあります。
総評
Bronze
2つの天才的なアイデアで名作「ルアーブル」のテーマを2人用ゲームにすることに成功しています。食料の支払い義務など厳しい制約がなく、本家とはかなり別物のゲームですが、良作です。
発表年は前後しますが、今のボードゲーマーに説明するとなると「リトルタウンビルダーズ」にとてもプレイ感が近いです。リソース管理をしながら建物を建設し、他人の建物も利用しながら終盤に向けて点数化を目指す部分はかなり似ていますね。しかし、資源管理の天才的なアイデアがある分、さすがUwe Rosenbergといったところでしょう。
一方で、建物の登場順も手番数も全て決まっているため、展開の多様性に乏しい部分があると思います。完全情報公開ゆえに、初手の最善手などが決まってしまっている手合いがあります。非常に優れたゲームだと思いますが、上記の理由により、たまに遊ぶくらいが丁度良い塩梅です。たまに遊ぶと天才的!という驚きをいつも味わえます。筆者は結構好きなゲームなので、手元に残しておきたいゲームです。