人間がサルになるのは簡単だが、サルが人間になるのは難しい。
発売年 | 2023年 |
作者 | Reiner Knizia |
プレイ人数 | 3-6人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
トコロテン式の競りゲーム
クニチーの2023年タイトルの1つ『島の完熟バナナ』は競りゲームです。検索性が滅茶苦茶悪く、気の迷いで検索すると、大量のバナナ画像を目にすることになるでしょう。ゲームはトコロテン式の押し出し競りゲームという説明でおおよそ伝えられるシンプルなもので、新たな情報として伝えられるのは漢字で書くと”心太
”だよということ位なのですが、細かな工夫が効いていて、流石クニチーというデザインになっています。
そうだ、バナナを食べよう
プレイヤーは島のマカク(サルのこと)なので、バナナをお腹いっぱい食べたい動物です。このゲームでは、競りで勝利点となるバナナを獲得していきます。ゲームは3ラウンド構成となっており、ラウンド終了時に手に入れたバナナを得点化できます。しかし、ゲームに登場するバナナは3色あり、第1ラウンドで得点化できるのは1色だけ、第3ラウンドでやっと3色全部のバナナが得点化できるようになります。後のラウンドで得点化できる色のバナナ程、得点が高くなっています。
得点化前のバナナの保管スペースは限られており、高得点とはいえ将来のバナナをおいておくとスペースが圧迫されます。入り切らないバナナは捨てなければならないので落札は計画的に。マイナス点の腐ったバナナやペアで集めないと得点にならないバナナもあります。
ゲームには、バナナの他にバナナを持ち去るオウムが登場します。布袋からバナナが人数分でるまでチップを引きますが、その際にオウムが引かれた場合にはオウムもバナナと一緒に落札対象となります。オウムは各ラウンドの決算時に同色のバナナを1つ持ち去ってしまうので、狙っている色のバナナと同じ色のオウムは死んでも取りたくないです。持ち去るバナナがない場合はしっかりと次回ラウンド以降も島の周りで待っていてくれるのでたちが悪いですね。
0がいい、0になろう
競りはカードで行います。各プレイヤーはゲームスタート時に0〜10のカードセットを持っています。手番では、このうち1枚を落札したいバナナの列にプレイします。トコロテン式なので、以降のプレイヤーがより大きな数字のカードを同じバナナの列にプレイした場合には、追い出されたカードが持ち主のところに戻ってきます。自分の手番が回ってきたときに、自分のカードが場になければ、カードをプレイする必要があります。こうして、すべてのバナナにカードが置かれたら、1回の競りが終了します。
各自、自分のカードが置かれているバナナ(とオウム)を手に入れて、自分の島の空いている場所に保管します(オウムは島の周りを飛ばせておきます)。そして、競りに使用した0以外のカードを捨札にしてゲームから除外します。ここがこのゲームの肝の部分で、0のカードのみが再利用可能となっているのです。これを繰り返し、全員のバナナ置き場が埋まったらラウンド終了です。
実にイヤらしいのが、ゲーム終了時まで使用しなかったカードの数字の合計値も勝利点に加算されるという点です。つまり、できるだけ0を利用して競りを行いたいですし、他のプレイヤーには0以外のカードを消費させたいのです。さらには、使用してしまったカードがなくなるため、次第に小回りが効かなくなるのも苦しいポイントです。
他者の狙っているバナナの色が比較的わかりやすいことから、プレッシャーをかけやすく、また、バナナの数字の価値=カードの数字=勝利点であることから、競りゲームのハードルとなる相場がわかりやすい構造になっていますね。一見、それなら0だけ出していれば勝てるのでは?と思いますが、前述の通り、プレッシャーをかけて他者には数字カードを出させたいので、単純に0だけだしていては勝てないと思います。
サルだって濡れたくない
ゲームを引き締めるスパイスとして、布袋から雷雨のトークンが引かれることがあります。雷雨のトークンが引かれたら、サルだって濡れたくないので競りをさっさと終わらせる必要があります。その回の競りのみ、カードを裏向きで同時出しして数字の大きい順にバナナを獲得していきます。細かい調整ですが、これがドラマを生むことがあります。
総評
Bronze
目新しい点は少ないものの、これまでの経験と細かな配慮を融合させた、わかりやすくて面白い競りゲームです。競りの相場がわかりやすいことと、0のみのカード循環によるプレッシャーの掛け合い、小回りの効かなくなったプレイヤーへの嫌がらせや島のバナナ置き場の制限など、考えどころが結構あります。チップの引き運や雷雨の発生でこれらがライトな感じにまとまっているのも良いですね。
欠点を挙げるとすれば、展開次第では最大15回競りが行われて冗長になることがあるところと、プレイアビリティという面で、島ボードにラウンドごとに得点化できるバナナの色を書いておいて欲しかったという点、ボードに個人カラーを反映させて欲しかった点でしょうか。また、箱と中身のバランスが悪いという点が気になります。ツォッホのもうワンサイズ小さい箱にできた筈です。
オーソドックスを集めたようなデザインに、一捻り加えて面白くする流石のクニチー作品ですね。