速くなければ意味がない!
メーカー | AEG |
発売年 | 2021年 |
作者 | John D. Clair |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
超アメリカンポップなダイスプールビルドレース開幕!
自分好みのダイスを集めてトラックを駆け抜ける『キュビトス』は、誰よりも早くゴールに到達することを目指すレースゲームです。様々な能力を発揮するダイスを購入して自分のダイスプールを強化していきつつ不要なダイスを捨ててプールを圧縮し、自分の作戦に特化したダイスプールを構築していきます。ダイスの能力はすべて使い切りたいところですが、ダイスロールを攻めすぎるとバースト(手番失敗)してしまいます。アメリカンポップに愉快なキャラクターが多数登場する本作は、自分で構築したダイスプールを使ってレースを勝ち抜くという新体験でファミリーも楽しめるゲームです。2022年に日本語版が発売されました。
カラフルなダイス
このゲームにはダイスが大量に入っています。これらはこのゲーム専用のオリジナルダイスです。ダイスには一部の面にしかイラストが彫られておらず、色ごとに異なる仕様になっています。ダイスロールの際、何も彫られていない面が出たダイスは出目なしの扱いです。
それぞれの色のダイスには対応するカードが7種類ずつ用意されており、出目の効果はカードを参照しながら適用します。カードを入れ替えることによってダイスの効果を変えることができるようになっています。ルールブックにはおすすめのカードの組み合わせが掲載されています。
ダイスはお金で購入します。お金には貯められるお金と貯められないお金があり、高額なダイスを頑張って貯めたお金で購入するという要素もあります。もちろん、高額なダイスは能力も強いのでお金を貯める楽しみがありますね。
出目には大きく分けて、お金、足、特殊能力の3種類があります。ダイスに記載されているお金(丸印の数字)は手番中に使用しないと消滅してしまうお金です。足のマークはレースで自分の駒を進めるための出目。特殊能力は前述の通り、カードを参照してその能力を解決します。レースを制することがこのゲームで勝利することなので、ゲームが後半に差し掛かるに従ってダイスプールを変化させ、足のマークが出やすいように舵を切ることが重要になりそう。
みんなでバーストすれば怖くない!
手番では、自分のダイスプールから各自決められた個数のダイスをとり、全員が一斉に振っていきます。そう、このゲームは同時手番のためダウンタイムがほとんどありません。その分、ソロ感は強め。
振って出た出目をすべてキープ(横に避けておく)した後に、出目なしのダイスを振り直すかどうかを決めます。2つ以上のダイスをキープしている状態で、振り直したダイスがすべて出目なしの場合はバーストとなり、手番でダイスの効果を使うことができなくなります。バーストした場合は、救済措置としてトラックの駒を1マス進めることができます。トラックのマスを進めることによって手番で振れるダイスの数が増えていきます。バーストを極力控えるか、果敢に勝負するかで性格が出そうです。しかし、バーストを恐れすぎるプレイヤーは「シャバ僧」の通り名をほしいままにすることでしょう。同時手番なので、他人のバーストを知るのはバーストした後ですけどね。
勝つために必須のファントラック!
メインボードとは別に用意されたファントラックの駒を進めることによって、毎手番で振れるダイスの数が増えていきます。この駒は、バーストの救済措置として進める以外に、ボード上の特定のマスに止まることによっても進めることが出来ます。ダイスの数が増えるということは、単純にバーストの危険度を下げることに加えて、後半で手に入れた強力なダイスを毎手番使っていくことにもつながりますし、何より肝心のレースで駒を進める足の出目をたくさん出すことに直結するので正義。これを上げないと勝つことは難しいでしょう。
映えるコンポーネントとリプレイ性
写真にもあるとおり、カラフルなダイスとそれを置くトレーもセットになっており、値段の割に多くのコンポーネントで写真映えもします。ダイストレーは組み立て式になっていて、一度組み立てると内箱を潰さないと(もしくは一部を内箱の裏にしまわないと)箱に収まりません。ゲームをする上ではトレーはなくても大丈夫なので、収納ケースを別途用意してダイストレーは組み立てずに置くほうがゲームの準備に時間がかからなくて良いような気がします。
コースは両面仕様が2枚で計4コース用意されています。また、ダイスの効果を決めるカードも各色7種類用意されており、説明書にもコースとカードの組み合わせが用意されていてリプレイ性は高いです。レースの着順によるポイントを決めておき、全組み合わせを巡るワールドチャンピオンシップのような楽しみ方もできるでしょう。
日本語版の闇
本作は2022年にTUOPICというところから日本語版が発売されたのですが、色々と話題となりました。品質に関わる問題と情報発信に関わる問題です。品質に関わる問題は、主にDTPと言われる日本語文字のフォント選択と配置の部分で、最も顕著であったのはカードのキャラクター名称でした。ただし、このゲームはゲーム全体がポップにふざけたテーマであるので、問題の部分も含めて笑えるようで救われましたね。一部、翻訳に対する意見もあったようですが、(自身でも翻訳をすることのある)筆者からすると、元々が英語でポップにふざけられると日本語で同じ世界観を表現するのはかなり困難でコストのかかる要求だと思います。ただし、版権リスクがありそうな翻訳は避けた方がよかったでしょうね。
一方、情報発信の方では、上記のDTPの問題を公表することなく事前集金の予約を実施したものの、COVID-19の影響もあって商品の発送に当初の予定から大幅な遅れが生じました。その間、適切な情報発信をしたとは言い難く、今後の大きな改善が期待されるところです。ちなみに、筆者が問い合わせた発送に関するメールの返事は今の時点でも来ていません。ライセンスビジネスの場合は消費者側にメーカーを選択する自由がないので、メーカーの取り組み姿勢はとても大事だと思います。
プレイ記
なぐもけさん、Nさん、Oさんと4人プレイ。
日本語版が届いた次の日、早速持ち込んで遊んでみた。コンポーネントは正に(箱が閉まらないほど)満載で、値段の割にお得感がある。スタートラインに並んだ各駒はどのマスから移動を開始しても良い。同じマスに複数の駒が入ることもできる。邪魔する要素はほぼ皆無である。
今回はマニュアルに記載されている一番最初のカードセットで遊んでみた。話題となった「ミスター・ソ ルジャー」もいる。結果的に、これらも含めて笑い飛ばせるポップなゲームだった。マップ上の特殊マスから1〜2マス離れていもその効果を得ることのできる「ボブ」がとても強力なので、これを買いつつ最終的には「猫はくちゃい」の足を使って逃げ切りたい。それにしても、キャラ名を日本語にするとクソダサい。
最初は2色の基本ダイスしかない状態で始まる。大きな黒いダイスはスタートプレイヤーを示すダイスだが、あまりスタートプレイヤーを意識する場面はない。ダイスを振り、出目は全てキープしていく。下の写真のように残り3〜4個程度になったら無理は禁物。基本ダイスはほぼ一時的なお金の出目しかないので、まずはこれでお買い物である。
緩やかに始まるレース。かと思いきやNさんは人知れずバーストしており、黄色の駒がトラックを1マス進んでいる。チキンなCOQはレース中一度も命をかけることはなく、バーストすることはなかった。
COQ(青)はダイスプールを序盤から圧縮することに注力し、なるべくコースの内々を廻って最短距離でのゴールを目指す。しかし、赤のなぐもけさんはコースの大きく廻って砦のようなマスにすべてとまり、トラックの駒をどんどん進めていく。序盤にしてトラックでだいぶ差がついてしまっている。
振っているダイスの数を見比べてほしい、赤のなぐもけさんはたくさんのダイスを振ることができ、その分資金も貯まるため、とても効果な「向こう見ずなチーズ」を3つも購入している。これは、ダイスを振るたびに問答無用に駒を進められるとても強力な効果を持っている。
COQのダイスプールは圧縮されて購入したほとんどのダイスを毎回使えるようになっているものの、如何せんダイスの数が少ないので大幅な移動は期待できないし、「向こう見ずなチーズ」の効果も振り直しの回数が少ないために殆ど役に立たない。これは大失敗、トラックの駒を進めて振れるダイスの数を増やしておくべきだった(そりゃそうだ)。
ところで、ゲーム中ダイスが四散するので可能であれば人数分のダイストレイがあると良い。
結果として、赤の独走状態。途中でトラックをすすめていないヤバさに気づき、大外の効果付きのマスをめぐる戦略ブレブレのCOQに活路はない。
最終的に赤がぶっちぎって勝利。チェッカーフラッグを受けた後も可能な限り進み、同時にゴールした場合にはより先に進んだプレイヤーが勝利する。にしてもオーバーキルである。白が最後にバーストしてくれたおかげでCOQは何とか3位に食い込むことに成功した。
プレイ時間50分
総評
Bronze
ソロい。ソロゲー志向もここまで来たかという程にソロい。ゲーム中は殆ど自分のダイスを振ることに集中しており、周りのプレイヤーがどのようにダイスプールを構築しているかをみる暇もありません。マップ上でも同じマスに駒を置くことも出来ますし、特にインタラクションはありません。ここまでソロいとボードゲームに何を求めるかによって大きく評価が分かれそうな気がします。バーストに一喜一憂しながら振るダイスロールはとても楽しい体験なのですが、本来であれば他者とこの楽しみを共有したいですよね。「ブッ込んでくんで四露死苦ゥ!」とか叫びながらバーストして盛り上がったりしたいです。
自分の手番だけに特化して考えてみると、拡大生産の要素があるダイスプールビルドはとても面白く、強力なダイスで大きな効果を得ることができた際には脳の刺激物質を感じます。自分だけの特殊能力のダイスプールを構築していく作業の面白さはドミニオンに始まり、最早説明の必要はないでしょう。序盤の拡大フェイズから終盤のゴールに疾走するフェイズに向けて、ダイスプールの中身を切り替えるタイミングには戦略的要素もあります。様々な細かいルールもよく出来ていて、総じて、良くできたゲームと言えます。
全体のポップな雰囲気といい、ライト層向けのゲームと捉えています。筆者としては、このアイデアに如何に爽快なインタラクションを搭載するかがデザイナーの腕の見せ所だと考えているので、評価はそこまで高くならないですが、特殊なダイスを使ってレースゲームをするという行為はかなり新しい体験で、これを機にボードゲームに興味を持つ人もいるかもしれません。このポップなデザイン、ひょっとしたらデザイナーの狙ったインタラクションは笑顔の共有かも知れませんね。
購入先情報
日本語版の一般販売情報が出たら更新します。