
発売年 | 2022年 |
作者 | Luke Melia |
プレイ人数 | 3-6人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
指令:ゼロのゾロ目を出せ!
ここに0〜9の数字が描かれた10面ダイスが2つある。勝利するにはこれを2つ同時に振って00のゾロ目を出せばいい。確率はちょうど1%、運が良ければ一回で成功するかもしれない。100回チャレンジして狙ったゾロ目が出る確率は63.4%だ。これを高いと見るか低いと見るか、結構性格が出る絶妙な確率だ。

なんだか垢抜けないような、逆にポップでシャレオツなようなパッケージで登場した『1%:ワンパーセント』はライアーズダイスと王への誓願をミックスしたような少し変わったゲームだ。箱の側面に描かれているシュールな確率論「あなたがサメに噛まれて死ぬ確率は0.000026%です」が売上に貢献するとは正直考えられない。筆者も仲の良い友人に遊ばせてもらえなければこのゲームを手に取ることはなかっただろう。何事もチャレンジ精神が肝要ということである。

なんでこんなに異質な雰囲気なのか少し調べてみたところ、このゲームの発売元であるIconiq Studiosという会社はライセンス物のフィギュアをデザインする会社らしい。ヘッドデザイナーであるLuke Meliaは一部ボードゲームのデザインも行っているが、そのほとんどはやはりライセンス物で、「トゥームレイダー」や「SAW」などの映画の世界観をボードゲームに落とし込むことに定評があるらしいが、ミニチュアゲームが多く、少し筆者の好みの範疇からは外れているようだ。
このゲームはSNSでも賛否両論あるみたいだが、筆者はこれに”賛”の立場で参加してみたいと思う。
ポップになったライアーズダイス
このゲームは「ライアーズダイス」と「王への誓願」がミックスされたようなゲームだと評したが、融合しているわけではなく、ラウンド内でこれらが2部制になっている。つまり、1ラウンドの前半がブラフパート、後半がダイスチャレンジというわけだ。ライアーズダイスはリンク先を見ていただくとして、「王への誓願」はダイス目を操作できる能力を獲得していきながら、最後に出目勝負をするというダイスゲームだ。天文学的な確率ではあるが、ダイスの操作能力を獲得していなくても出目次第で勝てることもある。
サメは6匹います

前半のブラフパートでは彗星、クローバー、稲妻、サメ、星のイラストが1〜5個描かれたカードを3枚ずつ配る。このイラストの元は、前述の「サメに噛まれる確率は〜」や「四葉のクローバーの出現率は〜」というフレーバーから来ているらしい。

手札を配られたら、プレイヤーはこの場に自分も含めて各イラストが何個存在しているかを競り上げていく。競り上げる際、イラストの種類は変えてもいいが、個数は必ず多くなるように宣言しなくてはならない。宣言したくない場合はダウトを申告する。誰かがダウトを申告したら、他のメンバーも同様にそのイラストが宣言された数存在しているか・存在していないかを申告していく。申告に成功すれば生き残り、失敗すればラウンドから脱落だ。これを最後の1人が生き残るまで続ける。

ライアーズダイスでは、ダイスの出目の数を競り上げていくが、このゲームではカードのイラストを用いている。ライアーズダイスでは宣言に失敗するとどんどん手持ちのダイスが減って辛い状況になっていくが、本作では1ラウンド待っていれば復活できるという点で異なっている。
今ここでゼロのゾロ目を出すと決心しているッ!

後半は、前半の勝者がゾロ目にチャレンジできるパートである。しかし、1%の確率にただチャレンジするのではあまりにダルい。そこで用意されているのがボーナスカードである。3種類の使い捨てカードの例外はあるが、基本的には、0以外の出目を0扱いにできるというカードが場に3枚ランダムで出ている。前半パートの勝者は3アクションポイントを与えられており、ダイスチャレンジ/ボーナスカード獲得に好きなようにアクションを割り振ることができる。強化を行なって次回の勝率を上げるもよし、少し強化して同時にチャレンジを行うもよしだ。中にはいきなり3回チャレンジする輩もいるが、それで勝ったところはまだみたことがない。筆者もある程度強化してから気合を入れてダイスロールする派だ。

3種類のボーナスカードはあまり複雑な物ではなく、ボーナスカードを山札からガチャ引きできたり他人から奪えたりするが、各2〜3枚しか入っていないので適度なアクセントという感じである。

こうしてダイスチャレンジの確率を上げていき、当初1%であったゼロのゾロ目を出しちゃおうというゲームである。
総評

Bronze
「ライアーズダイス」では、シビアに出目の確率が追求されており、いつでも真の確率が計算できるように配慮されている。それと比べて本作では、シンボルがカードで出現することで確率が計算しにくくなっていることで、よりパーティゲーム寄りのブラフゲームになっている。そして、ブラフパートで脱落したとしても次のラウンドが開始されたら五分の条件で復活することができるのが大きな特徴だ。ゲーマーとしてのシビアさを追求するなら名作「ライアーズダイス」に軍配が上がるが、単に楽しくゲームがしたい場合には筆者は本作をお勧めする。
勝者の決定ははっきり言って運で、ボーナスカードを強化していないプレイヤーがあっさり勝ってしまうこともあるかもしれない。それゆえ、本作は色々な盛り上がりが噛み合う神回もあればとてもつまらない展開もあるだろうと思う。プレイする人たちの話術でもその面白さは変わるだろう。その辺がSNSでの賛否両論につながっている気もするが、乱発されているワードゲーや話術のためのツールゲーとは異なる次元にいるゲームだと思う。
最近絡みの薄い箱庭のようなゲームが増えてきた中で、本作はわいわいと遊べるゲームでかつ一瞬の運を信じる熱いゲームで「こんなゲームが欲しかった」というスキマを埋めてくれる感じがする。大人数で遊ぶ機会のある方は選択肢の一つとして持っておいて良いと思う。実は筆者はこのゲームのブラフパートの勝率は1%くらいだが、それでも結構楽しめているし、失敗してもゲームが苦しくならないおかげで初心者でも結構楽しめているように見える。
唯一の難点は、カードサイズがブリッジサイズという特殊なサイズなことと、スリーブに入れたらインサートが無用の長物になるということ。ここはもう少し考えて欲しかった。
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