塗りのススメ

ブルゴーニュの城のミニチュアを塗装してみる

2023年某月「ブルゴーニュの城スペシャルエディション」のクラウドファンディングが行われ、超豪華仕様の「ブルゴーニュの城」が手元に届いた。筆者はそのセットに加えて3Dミニチュア駒セット「Terrain Pack」も手に入れていた。当初は塗装などする気もなくあらかじめ簡素な塗装が施されているサンドロップ仕様を購入したのだけど、届いてみると物足りなくなり「ちょっと塗ってみようか」という軽い気持ちで駒の塗装を始めたのである。なにぶんミニチュアの塗装の知識がまったく無かった筆者は、インターネットで検索し、どうやら高機能らしいシタデルカラーの本を図書館で借りて座学から入った。色々と調べてはみたものの、初心者に参考になるページに簡単に辿り着くことができなかったので、自分の記憶が薄れないうちに人生初めての塗りについて備忘録を残しておこうと思った次第だ。つまり、これから塗ろうと思っている方々の参考に、少しでもなれば幸いです!

完成図!

まずは座学から

Terrain Packとシタデルカラーの本

ミニチュアはあらかじめ簡易的な塗装の施されているサンドロップ仕様でしたが、実際に並べてみると少し物足りない感じがしました。下記の写真のような感じで悪くはなかったのですが。でも少し物足りない。

出典:ボードゲームギーク

Terrain Packには約150個のミニチュアが含まれており、これを全部塗るのは大変だなと思ったので手に入れてからは現実逃避のためにしばらく座学を続けていました。

調べてみると、昔プラモデルを塗装する時に使っていたタミヤのアクリル塗料でも塗れる様でしたが、どうやらウォーハンマーというミニチュアを使って遊ぶTRPGのようなゲームのために開発された「シタデルカラー」という塗料の性能が高く、初心者でも比較的綺麗に塗れるらしいという情報を掴みます。製造元はUKの会社で輸入品となるため、値が張る恐れがありましたが、完全に素人であったために道具の力に頼った方が良いだろうと判断してシタデルカラーを用いることにしました。(結果として、とても塗りやすく、発色も良くて、良い判断でした)

シタデルカラーは水性アクリル塗料のため、水で薄めて使うことができます。また、筆も水で洗うことができるので片付けも楽です。使用中に有機溶媒が揮発することもないので、締め切った部屋で使用しても問題ありません(乾くと水で洗っても落ちにくいので、その点は気をつけて)。

入門用の塗料セット

何から始めようかと考えていると、筆者が塗り始めることを知ったある方から入門用のセットをいただくことができました。優しい世の中です。感謝。

塗り方は大きく分けて2通り

シタデルカラーは、「シタデルメソッド」という独自の塗り方のSOP(Standard Operating Procedure:標準操作手順)の様なものを用意しており、それに従って塗料を選択して塗っていくことで簡単に最高の仕上がりを手に入れられるということなのですが、それでも素人には複雑過ぎると感じました。整理してみると、要は2通り、下地を施した後に、そのまま被せるように塗料をのせていくか、それとも、あらかじめ陰影をつけておいて薄めの塗料を塗って陰影を活かす(スラップチョップ技法)かというものです。

主な塗り方

1:下地の上に単に塗料をのせていく
2:下地の上に灰色と白で陰影をつけてから薄めの塗料で塗装する(スラップチョップ技法)

筆者は2の技法がとても気に入り、基本的にはこちらを採用して塗っていきましたが、場合によっては1を選択した方がよいミニチュアもあり、ファジー(適当に、いや失礼、適切に)に対応しました。下地に白を塗るか、黒を塗るかも臨機応変な対応が必要です。要するに、陰影をつける場合には下地に黒を、陰影をつけない場合には下地に白を塗れば大体OKということです。

シタデルカラーの教科書

シタデルカラーには、シタデルメソッドという塗装技法があることを紹介しました。シタデルカラーには、主に4種類の用途に応じた塗料があり、これらを使い分けることで初心者でも鮮やかなミニチュアを仕上げることができます。

シタデルカラーの種類

ベース:隠蔽力(元の色を覆い隠す能力)の高い塗料、下地としても有効
レイヤー:鮮やかな色が多いが、隠蔽力は中くらい、下地の上からピンポイントに
コントラスト:シャバシャバ系の塗料で、白下地の上から塗ることで、窪みに自然と溜まって陰影がつく
シェイド:墨入れや汚しに使う超シャバシャバ系塗料

これに、メディウムと呼ばれる薄め液があります。シタデルカラーは水性アクリル塗料のため、水で薄めて使用することができますが、メディウムで薄めることによって過度にシャバシャバしない塗装が可能です。

塗ってみる!

シタデルカラーの良いところのもう1つは、ある程度は重ね塗りが可能というところです。つまり、気に入らなければ下地を塗り直し、再スタートが可能ということ。ということは、とりあえずやってみればいいということです。ブルゴーニュの城のミニチュアは再販の予定が今のところない(版元談)とのことなので多少緊張しましたが、やってみないと始まらない。

下地の塗り方は主に2通り。どちらも仕上がりは(素人目には)大して変わらないので予算とミニチュアの数によって選択すると良いと思います。必ずミニチュアを中性洗剤(台所用洗剤)とぬるいお湯で洗浄し、良く乾かしてから作業を始めます。新品のミニチュアは製造工程で油がついていることが多く、手の脂もついている可能性があることから、洗浄作業をすることで塗料のノリが格段に良くなります(一度、洗わずに塗装したところ、見事に指紋が浮き出ました)。

手袋をした手で優しく洗いましょう
下地の塗り方

ミニチュアを中性洗剤で洗って乾かした後に・・
1:シタデルベース(アバドンブラックやレイスボーンなど)を水で1.5倍くらいに薄め、3〜4度塗りする
2:下地スプレー(ケイオスブラックやレイスボーンなど)を吹く

スプレーの場合は有機溶剤を含むので作業は外で、段ボールなどの遮蔽物を用意して行いましょう。

TIPS:ミニチュアが歪んでいる時は

ミニチュアが歪んでいるときは、温めて形を整形してから塗装を開始しましょう。熱湯で温める方法とドライヤーを用いる方法が一般的です。筆者はドライヤーを用いて船のマストの角度を修正しました。(注:決して冷めた状態で無理にいじらないようにしてください。ポキッと折れます)

写真をみると、船のマストが大きく傾いているのがわかります。やり方は簡単、火傷しないようにドライヤーの熱で温め、形を整形してから冷めるまでその形をキープするだけです。塗った後には難しいので、先にやっておきましょう。

スラップチョップ技法に挑戦

スラップチョップ技法とは、前述の通り下地を塗った後に灰色と白のドライブラシで陰影をつけ、そこに透過性の高い塗料を塗る手法です。白い下地に塗料を塗った状態よりもさらに立体的な駒に仕上がる特徴があります。筆者は下地にはスプレーのケイオスブラック(若しくはベースのアバドンブラック)、灰色にはレイヤーのドーンストーン、白にはレイヤーのホワイトスカーを使用しました。

ドライブライ塗装

ドライブラシ塗装とは、水を殆ど含まない塗料を毛の短い筆に軽く含ませ、キッチンペーパーになすりつけて極限まで塗料を落としてから(殆ど乾いた筆で)色を塗っていく手法です。隙間に塗料が入り込まず、凸な場所が濃く塗られるので陰影をつける塗装に適しています。
(ドライブラシ用の筆も売られていますが、100均で売っているアイブロウの筆で十分です)

TIPS:ドライブラシによる陰影

ドライブラシで陰影をつける際には、白を塗るときに上から下の方向だけに筆を動かすことで陽の光を意識した陰影をつけることができます。

陰影がついたところで、乾燥後にこの上からシタデルコントラストを塗っていきます。濃いと感じた時には、メディウムを使用して薄めると良いです。ちなみに、この船を塗った時のコントラストはメディウムで2倍希釈してちょうど良いくらいでした。

陰影をつけたらあとは色決めをしてひたすら細かく塗っていくだけ。上の写真は1回目の塗装ですが、濃過ぎると感じたのでメディウムで薄めました。

2倍希釈して塗ったミニチュア達

基本的には、こんな感じで塗装を進めます。

TIPS:塗り方のコツ

シタデルカラーを塗る時は、1度に塗り切ろうとしないことがコツです。筆塗りの場合、薄めた塗料を重ね塗りすることが綺麗に仕上げるコツだと思います。また、ペットボトルのキャップでもいいので、どうでもいいパーツを用意して色味の確認をしてから塗る方がイメージ通りに仕上がります。

陰影をつけない塗装技法

陰影をつけないで塗装を開始する場合も基本的には変わりません。ミニチュアを中性洗剤で洗浄して乾かした後に、スプレーか薄めたベースで重ね塗りをして下地を塗ります。あとは、その上から塗料をのせていくだけです。下地をホワイトにしてシタデルコントラストを塗ることで簡易的に陰影のついた仕上がりを期待することもできます。

色決めが肝心

筆者が塗装を始めて最も頭を悩ませたのは色決めです。ブルゴーニュの城の場合、タイルにカラフルなイラストが描かれているために、参考とすべき色味はあるのですが、イラストとミニチュアでまったく同じというわけにはいきません。また、同じ色が販売されているとは限らないため、時には色味を変えたり、色を混ぜたりする必要があります。

色の混ぜ方

塗り直しや複数日にわたる塗装のことを考慮すると、可能な限り市販そのままの色で塗ることができるのが最良ですが、色を揃えるのにはお金がかかりますし、どうしても塗料を混ぜる必要がでてきます。シタデルカラーは単体でとても発色の良い塗料のため、逆に単純に混ぜたからといって期待する色味が綺麗に表現できるとは限りませんが、筆者の少ない経験の限りでは、絵の具を混ぜるのと大差ない配慮で好みの色を作ることができました(公式にはあまり混ぜることを推奨してはいないと思います)。塗料を混ぜる時に注意したいのは、塗料の種類です。例えばコントラストとベースを混ぜると、その比率にもよりますが、隠蔽力の高い塗料となるので、透過性を期待したい場合にはコントラスト同士を混ぜるなどの工夫が必要です。

さて、本題です。色決めが肝心で大変なことを前述しましたが、インターネット上でなかなか探せなかったのが『何色を塗るとどうなるか』という情報です。この記事を書いている主な目的は、色味の見本をこれから塗る方々と共有することです。ボードゲームラボラトリーのコンセプトは、成果の共有、筆者が使った時間をなるべくみなさんの役に立てたいということですから。

以下に主な塗装成果と使用した色を列記しておきます。ご参考まで。

下地:ケイオスブラック
陰影:ドーンストーン&ホワイトスカー
船体:ウィルドウッド(コントラスト)
海:ウルトラマリンブルー(コントラスト)
旗:バールレッド(コントラスト)
ロープ:レイスボーン(ベース)
飾り:リトリビューターアーマー(ベース)

修道院

下地:レイスボーン
十字架:ホワイトスカー
地面:バッドムーンイエロー(コントラスト)&アガロスデューン(コントラスト)
屋根:スケルトンホード(コントラスト)
壁の陰影:アグラクスアースシェイド(シェイド)

見張り塔

下地:ケイオスブラック(スプレー)
陰影:ドーンストーン&ホワイトスカー
白い壁:コルテックスホワイト
屋根:バールレッド&バッドムーンイエロー&ブラックテンプラー(コントラスト)&アポシカリーホワイト(コントラスト)
石壁:アポシカリーホワイト&ブラックテンプラー&メディウム
地面:ホワイトスカーで塗装後にスケルトンホード(メディウム2倍希釈)
土台外周:レイスボーン
旗:フレッシュティアラーズレッド
枠:アガロスデューン
窓:アグラクスアースシェイド

鉱山とクレーン

<共通>
下地:ケイオスブラック
陰影:ドーンストーン&ホワイトスカー
木部:ウィルドウッド(メディウム2倍希釈)
<鉱山>
岩石・地面:アポシカリーホワイト&ブラックテンプラー
銀:リードベルチャー(ベース)
外周:ドーンストーン
<クレーン>
地面と外周:見張り塔と同様

工房

下地・煙突・壁:コルテックスホワイト
屋根:アガロスデューン
木材:ウィルドウッド(メディウム2倍希釈)
地面・外周:見張り塔と同様

銀行

下地:ケイオスブラック
陰影:ドーンストーン&ホワイトスカー
壁:コルテックスホワイト
石壁:ドーンストーン
低木:カランドラスグリーン(コントラスト)+アポカリプスホワイト
木枠・窓:ウィルドウッド
旗:フレッシュティアラーズレッド
屋根(銀):リードベルチャー
屋根:バールレッド+バッドムーンイエロー+ブラックテンプラー
地面・外周:見張り塔と同様

塗装用ツール

塗装に要したツール(筆とか)ですが、大したものは使用していません。もちろん、専用の筆等を使用すればさらに綺麗に仕上がるかもしれませんが、そこまでお金をかけなくても大丈夫です:

手袋:ニトリル手袋(家にあったやつ)
乾燥用の土台:VIPER DESIGN プラモデル エアブラシ 塗装 セット(スポイト・カップ付き)(1798円)
筆:Amyuペイントブラシ11本セット(1000円)
ドライブラシ:100均のアイブロー用筆(100円)
塗料:以下の写真の塗料(500〜980円/本)

使わなかったものもあった・・

とにかくチャレンジしてみて、合計100時間以上かけて塗装を完了したと思います。一番費用が嵩んだのは人的リソースで、はっきり言って時間が溶けますが、楽しかったです。実はまだお城の塗装が残っているのと、コーティングスプレーの塗装をしたいと考えているのでまだ完成とはならないのですが、このミニチュアを使用してブルゴーニュの城を遊ぶのが楽しみです。少しでもみなさんの参考になること願ってやみません。

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