足りなかったアレを引っ提げて、レジスタンスが帰ってきた
”役職”を加え、完璧となった脱落しない人狼
メーカー | HJ他 |
発売年 | 2012年 |
作者 | Don Eskridge |
プレイ人数 | 5-10人用 |
対象年齢 | 13歳以上 |
ゲーム概要
2009年に”司会者要らずで脱落もしない人狼ゲーム”として登場した「レジスタンス」。今まで、人狼と言えば手慣れた司会者が必要で、最初のターンで何もせずに殺されてゲームからはじき出されるプレイヤーが出るなど、一部で熱狂的なファンが居るものの敷居の高い遊びの一つでした。しかし、レジスタンスでは”ミッション制”を導入することにより、全ての行為を全員が目を開けた状態で可能にした(司会者要らず)。さらに、勝敗をミッションの成功と失敗によって決める事によって脱落者を必要としなくなった。また、最低人数5人からというのも、今まで人狼をプレイしたくても人数的にできなかった人々への敷居を大きく下げた。しかし…、人狼系のゲームにはつきものの”役職”が足りなかった。
悪い人たち側のカード。 ファンタジー色が強い。
役職というのは、”占い師:夜のうちに1人を指名し、その人物が村人か人狼か自分だけが知れる”などというような、特殊な能力を持ったキャラクターのこと。
人狼の楽しさというのは、誰が人狼なのかという推理と目立たないように自分の理論を通す舌戦、一夜明けて食い殺されているかもしれないドキドキ感などだと思う。
個人的には、わずかに漂う情報を論理的に解釈することに一番楽しみを感じる。つまり、絶対的な情報を掴んでいるプレイヤーが混じっていた方が面白い。そうでないと、誰もが当てずっぽうで発言し、それをギャンブルで採択するだけのゲームになりがちなのである。人狼側は、ゲーム当初に自分たちの仲間を確認するチャンスがあるので問題ないが、村人側になった時にこれを大きく感じてしまう。
鍵を握る”役職”
善い人達側のカード。
元々の人狼の役職は、”占い師”、”ナイト”など名前から分かり易いものが多いが、アヴァロンの役職は円卓の騎士の登場人物となっている。とは言っても出てくるのは本当に一部で、正義側にはマーリンとパーシヴァルしかでてこない。位置づけ的には、マーリンが占い師的な役割であり、悪者側のプレイヤーを事前に知る事ができる。
通常のゲームでは、マーリン(正義側)と暗殺者(悪者側)のみを投入する。暗殺者はゲーム終了時、正義側が勝利条件を満たしていた場合に、マーリンの暗殺を試みる事のできる役職。説明書によって各役職は詳しく説明されており、加える事によってどちらの陣営が強くなるかも書かれている親切設計。ゲームのシステムに程よくマッチし、バランスの取れた役職が用意されている。
パーシヴァルはそのイラストのせいで「カツラ野郎」呼ばわり。など、絵に特徴があるので、イラストについて語ることはマニュアルで禁じられている。禿げている人に禿げていると言ってはいけないのはゲームでも同じなのである。マーリンを間違ってモーリンと発音してしまって、自分で見たカードがマーリンでないことがバレたプレイヤーもいたので注意だ(アホですか?)。
ミッションシステムと勝利条件、そして絶妙の一発逆転ルール
元々の人狼では、昼間のうちに話し合いで人狼とおぼしき人物をあぶり出したり、夜のうちに村人を食い殺したりする。レジスタンスでは、それらをひっくるめてミッションという形に落とし込み、脱落者のでない展開を可能にしている。
具体的には時計周り順にまわるリーダー役が、そのラウンドのミッションに参加するメンバーを選定し、過半数の了承が得られれば、選ばれたメンバーが正否のカードを秘密裏に投票して、誰がどのカードを投票したのかわからない状況下で内容を白日の下にさらす。”ミッション失敗”のカードが含まれていたらミッションは失敗。同時に、そのメンバーの中に悪者が居る事を示す。これを繰り返して、5回中3回のミッション成功もしくは失敗を目指すゲームとなる。
ミッションの正否を記録するボードは、プレイ人数によって使い分けられるように複数毎封入されている。
ミッションの成功と失敗を決定するカード。
ここで大事になってくるのが、マーリンの役職者が知っている「誰が悪者側なのか」という情報。元々の人狼であれば、この役目は占い師が握っているわけだが、迂闊に自分の素性をバラすとあっという間に食い殺されてしまう。しかし、アヴァロンには脱落=食い殺されることがない。すると、マーリンはカミングアウトし放題となってしまいそうだ。そこで用意されたのが、悪者側の一発逆転ルール。
悪の役職の皆様。
正義側が5ミッション中3ミッションを成功に導くことができても、それだけでは勝利にならない。
悪者側の基本役職”暗殺者”のマリーン暗殺を阻止しなくてはならないのだ。
ゲーム終了時、暗殺者はマリーンと思われるプレイヤーを1人選択し、それが当たっていれば悪者側の勝ちとなる。つまり、マリーンは知っていてもそれを単純に公にすることは出来ないのである。このルールのおかげで、このゲームは最後まで緊張感を持って、場全体の理論の整合性を注意深く観察する必要のあるゲームに仕上がっている。
その他、既に発売されているレジスタンス基本セットのアクションカードを利用したり、アヴァロンに同梱されているトークンを利用したりして、ヴァリアントルールを楽しむ事もできる。
総評
Platinum
これは素晴らしい。
レジスタンス登場時にも素晴らしさを存分に感じたけれど、そこに足りなかった何かを解決した感満載。足りなかったのはズバリ役職なんだけど、その役職から派生するルールがゲーム全体に良く働いてる。
欠点を敢えて挙げるとすれば、毎回のミッションのためのカードシャッフルなどが若干めんどくさいけれど、10人プレイでもメンバーの評判は上々だったので1日数ゲームするくらいなら問題ない。ただ、ゲームの間延びを防ぐために、メンバー選出投票の間の議論の時間は2分とかに区切った方が良いと思う。
既にレジスタンスを持っている人は、誰かに詳しい役職を聞いて、カードにマジックでマーリンって書いとけばアヴァロンを買わなくても同様のゲームが出来ない事はない。(カコワルイけどね!!)
アヴァロンの発売に伴い、素のレジスタンスの評価は辛めに訂正。個人的に人狼系はこれ1箱持ってればOK。
さあみんなで息を吐くようにウソをつこうぜ。