シュタウファー

エレガントに奔走する王

メーカーHans im Glück
発売年2014年
作者Andreas Steding
プレイ人数2-5人用
対象年齢13歳以上

ゲーム概要

領土を周るエリアマジョリティ

名作として名高い「ハンザテウトニカ」の作者であるAndreas StedingHans im Glückから発表した『シュタウファー』です。個人的にかなり気に入っているタイトルなのですが、過去にアークライト社から日本語版も発売されていますので比較的知名度は高いのかもしれません。中世を舞台に、椅子取りゲームにマンカラやロンデルのスパイスを加えたようなゲームです。ゲームの舞台となる各領地を模して円形に並んだボードがとても美しいことでも目を引きます。

出典:ボードゲームギーク

ゲームでプレイヤーたちは神聖ローマ皇帝ハインリヒ6世の重臣となってイタリア全土を含む広大な領土を統治するために奔走する王に付き従って各地の役職に配下を送り込み、有力な領主となることを目指します。配下を送り込むだけでなく、時には補充するために道を譲らなくてはならない苦渋の決断が必要な苦しさのあるゲームで、当時としては珍しく、手番の行動が自然と手番順に結びつくという非常にエレガントなルールのゲームです。

超余談:ハインリヒ奔走王

ハインリヒ6世(出典:Wikipedia)

シュタウファー家は、12〜13世紀にかけてフリードリヒ1世(赤髭王)を含む多くの有力な王を輩出しましたが、ハインリヒ6世もその一人であり、イタリア半島を600年ぶりに統一した王です。広大な領地を支配していたため、その統治のためにハインリヒ6世自らが国土中を馬で旅して回っており、その距離は1年で4000キロにも及んでいたと伝えられています。まさにこのゲームで国中を周る様はこのテーマとピッタリあっています。ハインリヒ6世は早死にしてしまった王としても有名ですが、これが長旅のせいであったのかは今となってはわかりません。

手番順 is エレガント

このゲームでは、時計回りなど一定の順番で手番を行うのではなく、アクションチャートと呼ばれるボード上の駒の並び順で手番を行なっていきます。手番では、”補充””配置”の2択を迫られます。補充を行ったプレイヤーは手番順を表す駒を次ラウンドの手番順を決める列の先頭に置くことができます。一方で、配置を行ったプレイヤーは、手番順を表す駒を次ラウンドの手番を決める列の最後尾に置かなくてはなりません。以降の手番でも、補充か配置かのアクションによって、手番順駒を最前列か最後尾から真ん中に向かって並べていきます。つまり、次のラウンドの手番順は現在のラウンドで補充を最初におこなったプレイヤーの一手目が1番最初、最初に配置を行ったプレイヤーの最後の手番が次のラウンドの最後の手番となるわけです。

これに加えて、それぞれの補充や配置に早取ボーナスとして”宝箱”が用意されているのでその選択はさらに悩ましくなります。宝箱には配下駒や特殊なアクション、ゲーム終了時の得点を与えるものなどがあります。

補充アクションと宝箱

例えば、補充のアクションでは、選ぶマスによって補充できる配下駒が異なりますが、最初に選んだプレイヤーのみ、その下に置かれている宝箱(ラウンド終了時に補充)を得ることができるので、絶えず「配下駒を補充したいけれど宝箱も欲しい」というジレンマに悩まされることになります。

このゲームで目的の役職に配下を送り込むには、とにかく配下駒がたくさん必要です。配下駒には公使と貴族の2種類があり、貴族は公使の2倍の効果があります。これを補充して次ラウンドの手番を早く実行するか、勝負をかけて配置を行うか、非常に悩ましいです。

役職は配下の献身を越えて

各ラウンドごとに指定される領地のマジョリティによる得点がゲーム中の勝利点の主な発生源です。領地のマジョリティとは、それぞれの領地の役職に送り込まれている駒の数の順位です。公使は1つ分、貴族は2つ分として数え、上位から順番に高得点が配分されます。同数の場合はより左側に(コストの高い役職に)送り込んでいたプレイヤーが優位となります。

王様の2つ先の領地に移動するには1つ先(通過)と2つ先(目的地)に駒を蒔く必要がある

公開情報であるラウンドごとの得点処理を睨みながら役職に配下を送り込むわけですが、これには前述の通り、大量の駒が必要です。配置をするには、まず”移動”を処理します。王様駒から時計回りに領地を1つ移動するごとに家族コマを一つを領地上部の空のような部分に置いていかなければなりません。遠く離れた領地に移動するには、マンカラのように駒を1つずつ蒔いていく必要があります。遠い場所のアクションをするのに資源を払う必要のあるロンデルにも近いメカニクスです。

5の役職に配下を1つ置くために追加で4つの駒を時計回りに蒔く必要がある

そして、各役職にもそのマスに配下を就かせるために必要な駒の数が決められています。これを支払い、その支払いの最初の駒を役職のマスに配置します。残りの支払い駒は、この領地から時計回りに空に蒔いていきます。貴族のマークのある役職には貴族駒を置く必要があります。役職にもそれぞれ宝箱が割り当てられているので、役職に配下を送り込んだプレイヤーはその宝箱を得ることができます。

結果として、王様の2つ先の領地の6の役職に貴族駒を置くためには8個も駒が必要になる

配下の回収

王様は1〜3マス進む

各領域にコストとして蒔かれた駒は、回収しないと補充アクションで補充することができません。これが非常に苦しいのですが、回収する方法は1つだけです。ラウンド終了時に王様駒が1〜3マス領地を移動します。この時、目的地と通過した領地(元々王様のいた領地は含まない!)に蒔かれている配下駒がストックに戻り、補充アクションで補充できるようになります。駒の管理のルールは非常に厳しくなっており、ストックに駒がない場合は役職から駒を補充しなければなりません。

ラウンドごとに得点対象となる領地

ゲームは5ラウンドで構成されています。それぞれのラウンドでどの領地が得点対象となるのか、そしてラウンド終了時に王様駒がどの領地に移動するのかはすべて公開されています。各ラウンド得点対象となる領地は2つで、1つはラウンドタイルの先頭のタイルに示された領地、そしてもう1つは王様駒がいる領地/宝箱が少ない領地/配下駒が多い領地のいずれかとなります。

各領地の得点計算で1位/2位となったプレイヤーは、さらに領地に記載されているボーナス(配下駒の補充など)がもらえます。

この場合、緑が1位、青が2位、黄色が3位

指令カード

指令カード

最終得点計算では、ゲーム開始時に配布されていた各自3枚の指令カードの決算も行います。内訳は地域・形・役職の数字が各1枚となっており、ゲーム終了時に盤面の役職に送り込んでいる配下の数によって得点が得られるようになっています。ラウンドごとの得点計算に加えて、この指令カードの内容も重要というわけです。

宝箱と特権

このゲームの敷居を上げていることの1つに大量の宝箱の効果と特権カードがあると思います(他のゲームと同じように、慣れれば特に難しくはないのですが)。宝箱にはさまざまな即時効果や特殊アクションを与えるものがありますが、中でも特別なのは紫色の特権宝箱です。これを2つ集めるごとに、ゲーム中に6枚(全16枚中)だけ登場する特権カードと交換することができます。特権カードは強力なパッシブ効果をもたらすので、これを獲得することが勝利するためにとても重要です。

こうして、各領地、指令カード、宝箱から最もたくさん得点を得たプレイヤーが勝利します。

総評

Platinum

個人的にとても気に入っているゲームです(本サイトのプラチナ評価は筆者の個人的お気に入りというカテゴリです)。ゲーム全体のアート、テーマとの融合、そしてエレガントなルールのどれをとってもユーロゲームの最高峰の1つだと思います。このデザイナーのゲームは「ハンザテウトニカ」が一番有名だと思いますが、運の要素のバランスの面から筆者は本作の方が好みです。反面、このゲームを宝箱の運の要素で嫌う評価を見たことがある気がするのでこの辺りの評価は人によるかもしれません。指令カードの組み合わせの運もある程度影響しますし。

2人でもそこそこ楽しめるのもポイントが高いですが、3〜4人程度で遊んだほうがさらに面白いです。5人は少しカオスかも。ボードは全て両面仕様となっており、人数に応じて役職や勝利点に調整が入るようになっています。

同じエリアマジョリティのエルグランデなどと比較すると、直接的な攻撃要素がない分、こちらの方がよりユーロゲームとして完成されている気がします。ロンデルのようにリソースを支払い、マンカラのようにリソースを蒔いていくシステムとそれを回収する仕組みには本当に感心しました。Andreas Stedingは新規のアイデアを形にすることのできる真のデザイナーの一人ですね。

このゲーム特有のメカニクスをもつゲームで、唯一無二の作品の1つだと思います。今更このゲームを購入することをおすすめはしませんが、ゲームカフェなどで見かけた際にはぜひ遊んでみていただきたい作品です。非常にソリッドなプレイが楽しめます。当然ですが、当サイトのTOP100ゲームにランクインしています。

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