
Bronze
君はただ眼で見るだけで観察ということをしない。
見るのと観察するのでは大違いなんだぜ。

メーカー | Futami Shobo |
発売年 | 2007年 |
作者 | Raymond Edwards他 |
プレイ人数 | 1-8人用 |
対象年齢 | 13歳以上 |
ゲーム概要
ゲームブックのような推理ゲーム
異質のドイツゲーム大賞受賞作「シャーロックホームズ10の怪事件」の紹介です。このゲーム、存在は知られていますが、あまり中身の紹介を見た事がないので、あえて紹介してみよう!という企画です。

既に絶版となっており、アマゾンで注文して中古の比較的綺麗なものを手に入れました。早速確認してみると、ボードゲームというか、むしろ本です。中身は文字でいっぱいですが、完全日本語版となっており、外国語がわからなくても楽しめます。逆に言うと、よっぽど英語が堪能でないと原語版で遊ぶのは難しいでしょう(英語版は新版が発売されています)。
さて、ページをめくってみると、最初はゲームの説明。A4サイズに近い本体の他に、捜査資料としてロンドンの地図、住所録、新聞などが付いています。これらを使用して捜査をするわけですね。つまり、これはゲームというよりもゲームブックに近いものです。
1人でも多人数でも
ゲームシステムにはどうやら、1人で捜査を行い、ホームズの捜査結果と点数を競う1人用のシステムと、複数人で一緒に捜査を行って、協力もしくは競い合って犯人を突き止めるパーティシステムがあるようです。『ホームズ先生はお忙しいので代わりに暇な僕たちが捜査する』というわけです。
肝心の捜査はどのように行うのかというと、地図もしくは住所録に記されたロンドン市内のあらゆる場所へ聞き込みに行き、そこから得られた内容から事件の真相を推理し、事件に関する質問に答えていきます。
事件に関する質問には点数が付けられており、これに正解すると点数が得られます。これの合計点から、聞き込みに行った回数をホームズと比べた回数×5点をマイナスした点数が自分の捜査点となります。この捜査点が、ホームズよりも高ければ、勝利したことになります。
聞き込みの方法ですが、本体に書かれたそれぞれの場所ごとの聞き込み結果を読むことにより行います。この時、メモ書きを取る事は自由です。まずは依頼人の話をホームズと一緒に聞くところから始まります。依頼人が話した内容から、事件現場、周囲の人物、遺留品等の情報を得て、地図と住所録、そしてタイムズ(新聞)を駆使して事件の真相に迫るわけです。
事件は10個収載されています。そのうちの1つをやってみたプレイ記を以下に記してみようと思います。
以降、ネタばれを含みますので、ご注意ください。
プレイ記
捜査資料の納められた茶封筒。

そして、新聞のアーカイブ。様々な情報が詰まっている。

さらにロンドンの住所録。情報量は凄まじい。

ロンドン市内はこのように5つにわかれる。

地図はかなり大きく、地図上を人物は5分で2.5センチ進む。アリバイ等を検証する場合は、犯行現場からの距離も重要となる。

最初の事件は「武器商人殺人事件」
ホームズ、ワトソン博士、ホームズの弟子のヴィギンズと一緒に殺された武器商人”コートニー・アレン”の弟から事件の概要を聞く。
操作開始
コートニー・アレンはグラント武器会社の社長。
3/9の午後7時、事務所の裏通りで何者かに射殺されたらしい。被害者の財布は空になり、金の懐中時計も無くなっていたことから、スコットランドヤード(ロンドンの警察)は単なる物盗りの犯行だと決めつけているとか。
コートニーには奥さんが居るが、どうやら不倫もしていたらしい。そして、殺された時、弟から1/8の誕生日に贈られたカバンを持っていたようだ。中身は、、、書類ばさみに挟まれた書類の束が3つ。
ML-C:炭坑関係の書類
S87R:ロシアとの取引
特別計画#10ーA:書類ばさみは空になっている。
そして、コートニーの筆跡によるメモ書き、
「今夜、スペイン人亭で会うー10ーA・M」
「午後8時30分ーイーガン大佐」
「工場ー午前8時ーすばらしい!」
「僧正の指亭ー午後8時半」
「秘書の母親の誕生日」
その他、眼鏡ケース、ルビーの指輪などが遺留品として残されていた。会社関係の情報では、副社長のラグランド卿と第二副社長のホーランド。次期社長はホーランドになるらしい。
このゲーム、質問事項も捜査を終了すると宣言してからでないと参照できないようになっている。きっと事件の全容を掴む事ができれば質問にも自ずと答えがでるのだろう。
さて、どこから手をつけるか。。まずは、事件現場であるグラント武器会社へ行ってみよう。
19:00頃に事務所裏の路地で射殺されているのを巡回中の巡査が発見。秘書から詳しい話を聞く。
莫大な遺産は妻が相続したとのこと。被害者は仰向けに大の字に倒れていたらしいが、これは、弾の勢いで後ろに吹っ飛んだのだろうと推測する。
倒れていた場所は、裏路地、いつもここから帰るらしい。特別計画#10はどうやら、軍との最新武器極秘取引らしい。そして、国際武器見本市以後、直後から香水付きの封筒が送られてくるようになったとか。この封筒の相手が不倫の相手だろうか?
・・・と、事件現場を物色していると、「B&H」と金の文字が入ったタバコの吸い殻を発見。
犯人のものだろうか。この吸い殻をよく観察してみると、吸い口が実に綺麗。なぜだろう?
犯人は「B&H」のタバコを吸っていて、社長が裏路地から帰ることを知っている人物だろうか。
続いて、検死を行っている病院へ行き、死体の解剖結果を聞くとしよう。
コートニーは至近距離から胸を撃たれたらしい。凶器は大口径の銃のようだ。
くそっ空振りだ。射殺されたことは事件現場での情報から既にわかっていた。こういう無駄足を如何に踏まないかにホームズとの勝負が掛かっているのだろう。
さて、次は「B&H」のマークの入ったタバコを調べてみよう。今のところ、これが唯一の手掛かりだ。早速、住所録のタバコ屋の項を開く。10店舗程のタバコ屋がリストされているが・・・その中にベンソン&ヘッジスというタバコ屋がある!
「B&H」はきっとベンソン&ヘッジスの頭文字だ。ここへ行って話を聞いてみよう。
店主は協力的で、当該のタバコは通向きの特別注文品であることと、その注文者リストを提供してくれた。
注文者リストには12人の名前が。その中にはなんと、ラグランド卿(副社長)の名前がある。
これはラグランド卿が怪しい!ラグランド卿が任されているという工場へ直行だ。
興奮して工場へ来たものの、ラグランドは留守。かわりに助手のキオーから話を聞く。
3/9当日の朝、社長であるコートニーは工場へ副社長を訪ねて来たらしい。しかし、この時もラグランドは留守。会えずに帰って行ったらしいとのこと。ラグランドはその後帰ってきたが、2~3時間たつと、また居なくなってしまった。さらに、特別計画#10について訪ねると、元担当者が居るというので、呼んでもらう。
助手が席を外した隙をねらってラグランドの机をあさる。すると、ラグランドは半年前から溜めた借金を3/10に完済していることがわかった!3/10と言えば、殺人の翌日。まとまった金が入ったということだな。。
ラグランド卿、益々怪しい。・・と、ここで助手が帰ってくる。元担当者はリチャード・キャンプ。本日は体調を崩して早退したらしい。
なんと、このリチャードキャンプもタバコ屋の名簿に載っていた12人のうちの一人であった!しかも、この人物、特別計画#10を他国にリークしている疑いをかけられて担当を外されたと言うのだ。
さて、ここに来てラグランドの他にキャンプが容疑者として挙がってきた。特別計画のスパイ行為をめぐって、金と銃弾が入り乱れたのだろうか??
早退しているというキャンプを訪ねてみよう。住所録から、リチャード・キャンプの住所を割り出し、直接話しを聞きに行く。
顔を一目見てわかる。どうやら本当に具合が悪いらしい。
3/9のアリバイを訪ねると、その日は恋人のアネットとレストラン”ルール”で食事をしていたという。このアネットはフランス大使館領事の娘であるらしい。「B&Hのタバコ」は、恋愛に協力的な叔父のエミール・ゾバールに贈ったもので、本人はタバコを吸わないようだ。
確かに、エミール・ゾバールの名前も12名のリストに入っている。
ウソは言っていないようだ、念のために、後でレストランに寄ってアリバイの確認をしておこう。
確かに当日、キャンプは恋人と見つめ合っていたらしい。コイツはシロだな。
さて、タバコを吸っていたエミール・ゾバールをあたってみるか。フランス大使館の関係者となれば、新型武器の計画にも興味があるはず。住所録から家を割り出し、聞き込みにいく。
エミールはヒマだったらしく、歓迎してくれた。
・・と、おもむろに「B&Hのタバコ」を取り出して火をつけ、口にくわえる。家政婦がうるさく、中々タバコが吸わせてもらえないのだとか。3/9はシンプソン煙草店で、チェスを夜通しさしていたと言う。
こちらも後でアリバイを確認する必要がありそうだ。
さて、そろそろ帰ろうか…と別れを告げて玄関へと向かうと、家政婦が何やら噂話をしている。かろうじて聞こえたのが「レディー イルダ オープ…」という女性の名前。こちらが盗み聞きしていることに気付いたのか、家政婦はすぐに奥に引っ込んでしまった。
これは気になる。住所録で調べてみるが、オープ・イルダという女性は見つからない。
ん?まてよ、ここはフランス大使館関係者の邸宅。家政婦もフランス人。フランス人は確か、先頭にある子音を発音しない。Hotelなら、発音はオテルになる。奴らの英語は実に聞き取りづらいのだ。
ということは、この女性の名前はきっと、ホープ・ヒルダ。急いで、住所録のHの項を捜す。あった!やはり、名前はホープだった!
ホープ邸へ急ぐ。
何かある!
と勇んでヒルダ邸に到着。問いつめると、ヒルダは泣く泣く、エミールとの不倫を告白。旦那は遠くに出張中なのだとか。ばれたらとんでもない事になるので口外しないで欲しいと懇願される。
完全に空振り。また1つホームズに遅れをとったな。。。
ラグランド卿の自宅を住所録で調べ、訪ねることにする。
ラグランド卿に話を聞くと、「B&Hのタバコ」を黒檀のホルダーにさしながら吸い、質問に答えてくれた。驚く事に、ラグランド卿はかなり若くみえる。名前からして、爺さんかと思っていた。
・イーガン大佐は海軍省の軍事品買い付け担当。
・コートニーはキャンプの内通を疑っていた。念のためキャンプを担当からはずした。
・マーローが次期社長になるのは決まっていたことで、特に気にしていない。
・3/9はコートニーと朝に会った。その後は工場で遅くまで働いていた。
お気づきだろうか。3/9の話が助手と食い違っている。どちらかがウソをついていることになる。助手の話では、コートニーとラグランドは3/9の朝に会えていないし、ラグランドは夜には居なかった。
ラグランド卿が怪しいのは確かだが、念のために助手のキオーの自宅へ行って、確証を得よう。
キオーの自宅には、母親しかいなかった。しかし、母親から聞かされるキオーの様子からして、事件に関与しているとは考えられない。
これは、ラグランド卿が特別計画#10を売り、金を得るために社長を射殺したと見るのが妥当なのだろうか。
この推理を確かなものにするため、社長のメモにあるイーガン大佐とスペイン人亭に行ってみよう。
イーガン大佐からの情報で、さらに浮かぶ「B&Hのタバコ」を吸う関係者達。そして、スペイン人亭でマスターに1ポンドを握らせて浮かぶ、事件当日に30代の男と密会する謎の人物。
こんな形で捜査は進んで行き、事件を解決した!と最後の質問に挑んだ。結果、ホームズの誕生日を聞くクソ問題以外、全てに答える事ができました(合計120点)。しかし、立ち寄った捜査ポイント、COQ25カ所、一方のホームズ、4カ所(マジ?!)。
25-4×(ー5)=ー105点
120ー105=15点
なんと、COQの得点は15点。ホームズの得点はどの事件も100点。
従って、ホームズの圧勝。おいおい、これはホームズに勝つのは無理じゃない?

総評

Bronze
ホームズには負けたものの、事件の解明はすることができて、すがすがしい。
しかし、シャーロックホームズを知らないと解けない問題なども入っており、ホームズに勝つのは至難の業です。プレイ記のゲーム時間は3時間程度。これが10事件も収載されているとなれば、かなり長い間楽しめると思うけれど、この良いニュースも人によっては「今日の晩飯は馬の糞。量はたくさんだ!」になるので自分の好みと相談してから遊びましょう。
数あるドイツゲーム大賞受賞作の中でも異質の輝きを放つ本作ですが、非常によくできた探偵ゲームだとは思います。謎解きゲームが人気を博している昨今だからこそもう一度遊んでみても良いのかもしれません。コンポーネントが豪華で、情報量も大量にあるので探偵になったような気分は味わえます。
複数人でやったらどうなるのでしょうかね。