陰から鉄のカーテンを操作する…
それが私の仕事だった
メーカー | APE Games |
発売年 | 2011年 |
作者 | Kevin G. Nunn |
プレイ人数 | 2人用 |
対象年齢 | 13歳以上 |
ゲーム概要
スーパーライト級「トワイライトストラグル」
冷戦時代を部隊に暗躍するスパイ同士の戦いがテーマの『1955』です。邦題にはあの有名ゲームをオマージュしたものが付けられています(内容はまったく関係ありません)。プレイヤーは冷戦時代に世界を飛び回るスパイの長となり、カードが及ぼす影響力や、特殊能力を駆使して世界を自分の陣営に傾かせることを目指します。
ゲームのメカニクスがTag of War(綱引き)とカードドリブンで、テーマが冷戦と言えば「トワイライトストラグル(TS)」です。このゲームは、TSをライトに楽しむことに挑戦したデザインのゲームと言えます。
より明確な”綱引き”のゲーム
メインボードは、青が西側、赤が東側の3国を示しています。プレイヤーはゲーム開始時にどちらかの陣営を選択し、その陣営の中の1国から本国を選択します。それぞれの国には影響力を示す駒が置かれ、自分の側の端までその駒を動かすことができれば、その国を自分の陣営側で”安定”させたこととなり、支配している状態となります。一旦支配された国は、通常の影響力では揺らがなくなります。
初期カードは5枚が基本です。カードには対応する陣営と国が設定されており、書かれている数字の分だけ各国に影響力を与えることができます。また、それぞれのカードには特殊能力が備わっており、影響力を発揮する代わりに特殊カードとして使用することも可能。いわゆるカードドリブンのメカニクスです。
特殊能力にはカードに関係なく影響力を発揮するものや、手札の増減をするもの、一旦安定した国を再び混乱させるもの等、多様です。
「発明」が新しい
特殊能力には「発明」というものもあり、発明することによって手札が増えたり、スパイの移動が楽になったりします。ボードの下に差し込まれているカードが発明が行われている証拠です。当然、発明を破壊する特殊能力も用意されています。
本国とスパイの潜伏先が重要
そして、ゲームの中核スパイ駒。自分の本国と、スパイが滞在している国に対しては有利に手番を進められます。本国への影響力は勢力の色を問わずにカードを使用できるメリットがありますし、スパイの居るところではカードの影響力を+1したり、カードを2枚プレイしたり出来ます。また、相手の影響力を跳ね返すことができるのも本国とスパイの居る国だけです。その分、相手のスパイが滞在している国に大しては常に警戒が必要です。
手番では、カードを2回、影響力か特殊能力のいずれかでプレイし、カードの補充を行った後にスパイを移動させます。こうして熱い綱引きを繰り返し、相手の本国を安定させるか、3国を安定させたプレイヤーの勝利です。
プレイ記
Tさんと2人プレイ。
トーネードやファルコンなど、シャレオツな西側戦闘機の似合うCOQは資本主義を担当。本国はイギリスとした。野暮ったい、フィッシュ弁当だか風呂ッガーだかの東側戦闘機の似合うTさんは共産主義を担当。本国はソ連だ。本国のマーカーは特別に勢力の色の物が使用され、識別できるようになっている。
そんなところでゲーム開始、敵機襲来、まわせーっ!(注:戦闘機は関係ないゲームです)
COQの初手の手札。「発明」が成功するまでは5枚になるように手札を補充していく。西側諸国のカードばかり。早速「発明」の出来るカードがある(電球マーク)。どんなゲームでもカードの枚数が多いことはかなりのアドバンテージになる筈。しかし、発明など効果の高いカードは影響力も高く、悩ましい。
などと、西側では発明熱が高まるが、早速赤い人達がフランスにちょっかいを出してくる。一旦安定させられてしまうと、革命を起こさないとならないのでとても厄介。仕方ないのでフランスのカードを切って影響力を元に戻す。
そして発明。これで西側諸国のカード補充は6枚となった。まだ世界は平和。
手札を補充すると、東側のカードや黒いカードが手に入った。黒いカードは傭兵カード。なんの制約も無しに、他のカードの影響力をブーストアップできるという強力カードだ。勝負所で是非使いたい。
などと考えていると、相手も同じ発明をしてきた。これで条件は同じ、そうでなくちゃ。暫くは陽動しつつ手札を整えたい。前手番、敵本国へとスパイを移動させていたので、ソ連へ影響力を適用する。スパイがいるのでカードを2枚同時に使用できる。
敵を本国に釘付けにしつつ、カードを捨てて手札ロンダリング。うまく本国に集中してくれると嬉しい。
そして、相手が本国のリトリートや近隣諸国にちょっかいを出している間に、傭兵部隊を投入してフランスを一気に安定させてしまう。スパイが居る国で対応するカードを1枚だけで使用すると、影響力を+1できる。そこに傭兵部隊がブーストをかけるという寸法だ。
電撃作戦の後、手札には大分アメリカが揃ってきたので、段々と東側へ吸い寄せられるアメリカに手を差し伸べることにする。
しかし、敵もさるもの。フィッシュ弁当でパワーアップしたスパイがハンガリーを一気に自勢力へ安定化。これで安定国1:1、勝負は分からない。
すかさずCOQもアメリカへの影響力を爆発させ、西側への安定を促す。すると、手札にイギリス本国の強力カードが。ここは迷わずイギリス本国へスパイ移動。だが、東側も何かを察してイギリスへとスパイ駒を動かしてくる。
だが、ここまで来たらやるしかない。イギリスのカードを2枚きり、安定化を宣言。
東側は、スパイが居ればその国が属する勢力のカードで対抗できるはずだが、何もしてこない。どうやら、手札にカードが無いようだ。スパイの移動はブラフだったのか。
ともあれ、後は最も西側になびいているアメリカを安定させれば勝利。しかし、手札にアメリカが無いので暫くはこちらも手札を整えることになりそうだ。イギリスを安定化させたCOQは再びソ連へとスパイを移動させて相手を牽制し始める。
この時の手札はこんな感じ。上段左、「革命」のカードがある。強力かつ大事なカードだ。このカードでハンガリーの安定を崩壊させ、影響力カードを使用して一気に西側に寝返らせようか。と考えていると…
東側が特殊カード”こそ泥”発動。手札を2枚まで捨てる…痛い。
仕方ないので、手札を2枚まで減らす。残したカードは革命と”こそ泥”。そう、次はあなたの番、手札を2枚まで減らしやがれと。
こそ泥をプレイし、一通り絶叫を楽しんだあとで革命も発動。
ハンガリーのカードは捨てさせられてしまっていたので、どうせなら耐久力の少ない国をと、この間に安定化されていたポーランドに革命を起こして再び混乱状態に陥れる。
この後、運良くひいた「カードを3枚余分に補充する」カードを適用し、無双状態。
T陣営が最後のあがきで複数の国に影響力を行使するカードをプレイしてくるが、手札の多いCOQはその効力を無効にするカードでカウンター。さらには、再びこそ泥で相手のカードを削ぎ落す。
返す刀で傭兵付きのアメリカカードでアメリカを安定させ、勝負あり。西側3国を安定化させたCOQの勝利でした。
冷戦が終了しても、世界平和が訪れる訳ではない。
サー・ウィンストン・L・S・COQ
プレイ時間:30分
総評
Bronze
テーマが良い。東西冷戦、冷酷なスパイ達の熱い戦い。
テーマとメカニクスが同じ「トワイライトストラグル」のプレイ感に良く近づけたと思います。これの簡易版という感じ。もう一つ似たゲームとして「大統領を作る方法」というゲームが挙げられますが、本作『1955』も悪くない。
カードの影響力と特殊能力のどちらかしか使えないカードドリブン特有の悩ましさの中で、各国への影響力を競い合う。この楽しみが短時間で味わえるというのは嬉しいポイントです。一方で、このゲームでは自分の手札からは自分にとってマイナスの影響が発生しないという点でとてもプレイ感が軽く、若干カード引き運の要素が強いという点で賛否両論あるようですね。
当初、説明書のゲーム時間30分というのが疑わしかったのですが、相手を牽制して手札を整えるうちに、一気に勝負をつけられるタイミングがくるのでちゃんと収束するようです。反面、やはりカードの運次第では一気に本国の安定化をされてしまい、勝負があっという間に決することもありました。ゲーム時間が短い分、運の要素も強いという印象です。ゲーム時間が短いので、解決策は「再戦を要求する」でしょうね。