敵が友となる時、敵を滅ぼしたと言えないかね?
メーカー | REPOS |
発売年 | 2010年 |
作者 | Antoine Bauza |
プレイ人数 | 2-7人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
カードドラフトをメジャーにした大いなる功績
カードドラフトのメカニクスの知名度を飛躍的に高めた2011年ドイツゲーム大賞エキスパート部門受賞作『世界の七不思議(7 wonders)』です。現在は調整の入った第二版の日本語版が流通しています。
このゲームは、「ドラフト」と呼ばれるカードピック方式を基本のゲームシステムとしています。マジック・ザ・ギャザリング(MTG)を代表とするトレーディングカードゲームではおなじみのシステムですね。
昔から「7 wonders」は「七不思議」と邦訳されているので違和感はあまりないのですが、原題:wonderの本来の意図は「不思議なもの」ではなくて「必見のもの(建造物)」という意味です。
余談:MTGのブースタードラフト
MTGでいうドラフトとは、ブースターパックと呼ばれる15枚入りの未開封カードパックを各人3つずつ用意し、その場で1つずつ開けていくゲーム方式のことです。この中身を1枚取っては隣に渡し、ぐるぐるとまわしていきます。全てのカードが取られたら、次のパックを開け、と3回繰り返すと手元に45枚のカードが揃います。
これでデッキを組んで総当たり戦をやるわけです。15枚のパックにはレアカードが1枚、その次に良いカードが2枚必ず入っています。このカード達を如何に使うかが勝負の分かれ目の1つとなるわけですが、未開封のパックにはどのようなカードが入っているかわかりません。自分のデッキの方向性を決定しつつ、他のプレイヤーの狙いを判別し、かつ未知のパックの中身に適応しなければなりません。
実際の勝負以上に、回って来たカードを見て狙いのバッティングを避けたりする読み合いが熱いゲームシステムです。MTGやるならこれに限るというくらいの良システムですが、いかんせん毎回お金がかかります。本作『世界の七不思議』とは直接関係のないゲームですが、ドラフトの面白みをわかっていただくためにあえて掲載しておきますね。
本題:世界の七不思議のゲームシステム!
さて『世界の七不思議』ですが、ゲームの目的は「古代世界の7つの大都市の一つを担当し、3つの時代にわたって文明を発展させて勝利点を獲得すること」です。拡張が出るたびに文明が増えたりしているので最早「世界の11不思議」位だったりするのですが、そこは目を瞑りましょう。各都市には、1つずつ脅威の建造物(ワンダー)があり、これらを完成させることでゲームを有利に進めることができます。
このゲームの基盤のメカニクスは「カードドラフト」です。各時代で、カードを7枚ずつプレイヤーに配り、1枚取っては建設もしくは換金し、残りのカードの束を隣のプレイヤーに渡していくわけです。これを6回繰り返したら、残りの1枚は捨て札とし、戦争の処理を行って次の時代に進みます。3時代あるので計18枚のカードを建設することがゲームの主軸となります。かなりサクサクとゲームが進む印象です。
文明を発展させるには?
文明は、カードをプレイして施設を建設していくことにより発展します。施設は大きく分けて、資源産出/勝利点/軍事力/特殊能力の効果のうちいずれかを持っています。これらのカードを3つの時代の山に分け、1枚ずつ建設していきます。
資源は、一般的なゲームの様にトークン等で管理するのではなく、プレイしているカードに記載の資源が毎ターン擬似的に手元にある(この資源で満たされる施設を建設できる)という方式です。使わなかった資源が貯まる事はありません。また、隣り合った都市の資源は、隣のプレイヤーにお金(2金)を払う事によって使うことができます。
施設を建設する際のコストを支払うには、カードに書かれている資源を自都市が産出している必要があるわけですが、もしもその施設の前段階の施設を建設していれば、無償で建設することができます。従って、先を見据えたカードピックが要求されるわけです。
軍事力の施設は、その都市に軍事力を与え、各時代の最後に他の都市との戦争が行われます。両隣の都市との比較で勝利点を得るわけですが、時代が進むと獲得できる勝利点も段々と増えていきます。
その他、単独もしくはセットコレクションで勝利点を与える施設や、通常2金かかる他都市からの購入を1金にできるなどの特殊能力を与える施設もあります。
ピックとカット
ドラフトで回ってきたカードの束からカードを1枚取る行為をピックと呼び、他のプレイヤーの邪魔をするためにあえて特定のカードをピックする行為をカットと呼びます。
換金もしくはワンダーの材料とするカードをピックする際にはどんなカードでもかまわないので、カットして他都市の邪魔などをする絶好の機会です。他国が建設しようとしている(前段階の施設を既に建設しているとか)施設を裏向きにして換金してしまえば、カードの束が一周した時に、そのプレイヤーのがっかりした顔が見られることでしょう。これもドラフトを主軸とするゲームの醍醐味の1つです。
ワンダーの建設ではたくさんの勝利点が入ったり、捨て札を建設できたり、という特殊な能力が発動しますが、完成=勝利ではありません。ゲーム終了時、全ての得点計算を行い、最も勝利点を獲得していたプレイヤーが勝利します。
プレイ記
自宅にて、ヤス、のっちと3人プレイ。
第一時代
今回COQは戦闘国家を目指すことにした。資源は産出される天然資源とヒトの手によって産出される人工資源に大別されているが、それぞれの資源カテゴリーについて、隣の都市から1金で買えるようになる施設が存在するので、それを頼りに人工資源のための施設は建設しないことにして、その分の建設を軍事にまわす作戦である。
どの都市になるかは、カードを使用してランダムに決める。都市ボードには表裏があり、裏面のほうが玄人向け。今回は「ハリカルナッソスのマウソロス霊廟」を担当。カタカナで書いても意味がわからない。
このワンダーは1段階目と3段階目は勝利点、2段階目は捨て札から1枚建設の特殊能力。ただし、2段階目の建設には鉱石が3つも必要な難しい都市である。
さて、最初の7枚を開けると資源(茶)が3枚と軍事(赤)が1枚。とりあえずは資源を集めないと建設もままならないので、ワンダーを見据えて鉱石の施設を建設。最初の時代は資源産出のカードが多く、建設コストも少なめか無料である。3つめの時代などは資源獲得の施設はゼロに近いので計画的にいかねばならない。
実は、カードの右下には次の時代に無償で建設できる施設の名称が系統的に書かれているが、第一版のカードでは扇状に持つと見えないという致命的欠点がある(第二版で改善された)。
次の手番も1つ目のワンダーのコストがレンガ2個のため、レンガの施設を建設。ゲームはサクサク進む。待ち時間はほとんどないゲームだが、たまに対面ののっちが長考気味。一旦カードを選択してしまうと待ち時間はやることがないのでカードピックのテンポは大事である。
戦闘国家を目指すCOQはとりあえず軍事力増強に勤しむ。右隣のヤス都市は序盤ひたすら資源施設を建設しているようだ。次の手番は狙い通り、人工資源を1金で両隣から購入できる「市場」を建設。順調順調。あとはこのまま天然資源を拡充するだけ。このように、ある程度カード構成を把握しているとゲームはより面白くなる。
しかし、次のカードから、天然資源のカードがこない!しかたなく、勝利点の施設などを建設して様子見の展開。様子見をしながら、他都市の邪魔を出来れば良いのだが、同じ種類のカードは重ねられため、第一版のカードでは次の時代への繋がりの部分が非公開になってしまう。施設の系統が完全に頭に入っていないと効果的なカットはできない。
さて、そうこうしているうちに最初の時代が終わり、戦争がはじまる。戦争では、隣の都市と軍事力を比べ、勝っていればプラス点が、負けていればマイナス点が付与される。同軍事力の場合は何も起こらない。今回COQは左隣とは同軍事力、右隣には勝っている。従って、1勝利点をゲットして戦争終了。
やべぇ、これ軍事力無いのきついな。
気づいてしまったか明智くん。両側からの袋だたきは辛い。どんどんマイナスが貯まっていく。
第二時代
一気にカードのコストが上昇し、内容も高度になる。COQ都市は最初の時代で獲得できなかった天然資源の施設を中心に建設。ワンダーのために鉱石を3つとレンガを1つ産出できるようにした。
その間、最初時代にコテンパンにされたヤス都市が軍事力の拡大に着手。その分COQ都市には軍事力がまわってこない。これはヤバい。しかも、資源の種類が合わず、中々目的の施設を建設できない。結局、買う事に決めていた人工資源を算出する施設を建設する羽目となり、早くも道に迷ってしまう。
のっち都市は何やらカラフルに色々な種類の施設を建てている。何が狙いだ??・・と、2つめの時代でのっちがワンダーを完成。カラフルなようでいて、キチンと資源を集めていた。お見事。これで勝利点10点確定。そして、毎ターン好きな天然資源を一つ産出する能力をゲット。手強いな。
COQ都市は、戦闘国家へ返り咲くべく軍事力を強化するも3止まり。2つ目の時代終了を目前として不穏である。このまま2つ目の時代が終わり、戦争解決。2回目の戦争では、勝った場合の得点が3点となる。ワンダー建設にかまけたのっち都市には勝つものの、ヤス都市には敗北。戦闘国家を宣言していた都市としては屈辱のマイナスチップ。
第三時代
最後の時代のカードには資源産出のカードがほとんどない。また、コストも高く、効果も高いカードが目白押し。
最初の手札には軍事力3の「兵器開発所」が。この期を逃すまいと、これを建設しようとするが、資源が足りず建設できない。「天文台」を建設していれば、無償で建設できたのだが、COQ都市には無いので無理。しかしこんなカードをリリースするわけにもいかないのでワンダーの建設に使用することにしてカット。ついにCOQ都市でもワンダーが完成。勝利点獲得を確定させる。
次の手札には念願の「武器庫」が。コイツも軍事力3の強力なカード。しかも、COQ都市の資源にピッタリ。逃さずにこれを建設し、周りの都市を脅えさる。
さて、終盤は自分の資源と相談しながら、「両隣の軍事力施設の数に応じて勝利点」等の施設を建設して少しでも勝利点を増やす努力をする。また、お金も3金ごとに勝利点となるため、3の倍数にするのが最も効率的。カードの売却などで数を揃えていく。
最後の戦争。両隣の都市に勝利して勝利点を10点獲得(最後の戦争は勝利すると5点)。軍事力を捨てたのっち都市はヤス都市に敗北。その分、科学技術に力をいれていた。
今回は全員がワンダーの建設を成功させゲーム終了。
軍事力を疎かにしたのっちは馬群に沈んだ。COQは軍事力では勝ったが、指数関数的に勝利点を稼ぐ科学技術がなかったのが敗因だった。
プレイ時間30分
総評
Gold
ユーロカードゲーム史に金字塔を打ち立てた功績は大きい
驚くべきはそのプレイ時間。濃密なボードゲームを遊んだ感覚があるにもかかわらず、30分程度しか時間が過ぎていない。そして、これはプレイ人数が最大の7人になっても大きく変化しない。これは発明の域に達しているゲームシステムだと思います。
ドイツゲームで完全にドラフトを主軸としたゲームはこれが初めてであり、デッキビルドを一般化した「ドミニオン」に続き、『世界の七不思議』はカードゲームに一つの金字塔を打ち立てたと言え、これを評価せざるを得ません。トレーディングカードゲームから得たカードドラフトのメカニクスを綺麗にまとめたシステムは素晴らしいと思います。
第二版では、第一版で問題となっていたカードの材質と表記も改善されたとのことなので、益々良いでしょう。カードやワンダーの効果も一部修正が入ってよりバランスが取れるようになったようです。
ゲームとしては、色々な勝ち方があり、毎回違うボード使用するシステムによって多様な展開を楽しめます。また、プレイ時間の短さがこの多様性を楽しむ事を後押しすることでしょう。カード構成がある程度頭に入ってからが本番です。
個人的に残念な点を挙げるとすれば、ドラフトゲームの面白さのウリの1つである「他人のプレイを推察する」要素が薄いことでしょうか。このゲームでは、ピックしたカードは建設によって毎ターン明らかにされます。すると、回って来たカードの種類や、減り具合などから相手のプレイを推察するという「操り人形」や「MTGドラフト」にのような推察の要素が無いのですよね。まぁ、全てのシステムを含むことはできないし、肝心のサクサク感を犠牲にする恐れもあるので、これは好みの問題だと思います。
Attention(注意)!:ゲームシステムの優秀さを考慮すれば真の面白さはGold評価です。しかし、このゲームの真の面白さに辿り着くために時間を投資する必要があるところが難点です。このゲームは、各国で高評価を得ています。しかし、そのポテンシャルは、プレイヤー間のインタラクションによるものだと思います。このインタラクションを十分に楽しむためには、プレイヤーがこのシステム(特にカードの系統図)に習熟し、自分と他人の都市の発展の道筋を1枚のカードからある程度判断できるようになる必要があります。そうなれば、他のプレイヤーへの影響や、将来を見据えた1手を打てる様になり格段に面白くなると思います。しかし、そこまで到達するまでの道のりが結構遠いのが難点です。経験者と未経験者が遊んだ場合には、まず間違いなく経験者が勝利するゲームです。
単純に、短時間で7人まで出来るゲームは重宝するので持っておいて損はないです。2人専用の「世界の七不思議デュエル」というバージョンもありこちらも評判が良いです。
拡張セット
このゲームには拡張セットが4つ発売されています(第一版用、第二版は2つ?)。機会があれば、レビュー記事を投稿しようと思います。特に、「指導者たち」はマストレベルの良拡張だと思います。
・指導者たち(レビュー記事)
・都市(レビュー記事)
・バベル
・艦隊