クレオパトラの鼻がもう少し低かったら
メーカー | Closet Nerd Games |
発売年 | 2008年 |
作者 | Eric B. Vogel |
プレイ人数 | 2-5人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
お手軽陣取りゲームの兄貴分
臨床心理士のVogel博士のゲーム『カンブリア』。「ヒベルニア」と同じく、セルフ出版していたものが、2011年に再版されました。本作『カンブリア』のほうが、1年早い2008年出版の兄貴分となっています。
ゲームは、ダイスロールとエリアコントロールのメカニクスを採用しています。ローマ時代の終わり頃、ウェールズの各地域に侵攻し、自分の軍隊を配置して支配を拡げます。早い話が、ダイスを振って出た目に関連する地域に駒を配置し、エリア最大の軍隊数を目指すゲームです。ゲームボードは両面仕様となっており、難易度を選択可能です。
小箱ながらも映えるコンポーネント
ゲームの勝敗を左右するのは、各地域に置かれる木製の得点チップ。ローマ数字で2〜6までの数字が書かれた通常チップと、2〜4が書かれた白抜き文字チップがあります。白抜き文字チップは、通常チップの4〜6の下に重ねます。
限られた軍隊でなんとか支配を維持する
手番がきたら、ダイスを2つ振ります。その後で出た目のどちらか一方を選択し、対応する地域(出目=チップの数字)に繋がる、空いている道に自分の軍隊を置きます。
ゾロ目が出た場合には、他人の駒を取り払って、自分の駒を置く事が出来ます。地域を取り巻く道全てに誰かしらの駒が置かれたら、その地域を解決します。1番軍隊の多いプレイヤーがチップを獲得し、2番目のプレイヤーはその下のチップを(あれば)獲得します。ただし、2番目のプレイヤーが複数居る場合には、チップは失われてしまいます。軍隊駒は5つしかないので、6つ目からは、自分が既に置いている駒を移動させなくてはなりません。水を張った洗面器に顔をつけて我慢比べをする通称洗面器ゲーというやつです。
駒の排除や出目操作も適度に
ダイスで1が出た場合には、盤面に1つしかない、共通のローマ軍駒を動かすことができます。ローマ軍は強大で、他のプレイヤーの駒を押しのけ、その道を占領します。ローマ軍が隣接している地域は、ゲーム終了まで解決が行われません。
1のゾロ目が出た場合には、ローマ軍駒を必ず動かさなければなりません。さらに、自分の駒を船にのせることができます。船に乗せておくと、自分の手番で対応するダイス目を振ったことにできるようになります。
こうしてエリアの解決をしていき、残りエリアが6つ以下になったら、最後の手番を実行した後に全ての地域を解決します。チップの得点を最も多く集めたプレイヤーが勝利します。
プレイ記
MOGさん、海賊船さんと3人プレイ。COQは緑色。
初期配置はダイスを1人1つずつ振って決定。COQは辺境で得点を稼ぐことにした。曹操と劉備の争いを遠くから見守る馬騰的な。
ダイスを2つ振ってどちらかを選ぶので、目的の道に置ける確率は、(1/6+1/6)× 2 = 66.6 % くらい(道は2つの区域を連結しているので×2)。駒の数には限りがあるので、区域を各個撃破していきたい。
早速、2点の区域を陥落。隣り合った区域も続けて落せれば効率が良さそう。
…、と思っていたところでゾロ目。折角のゾロ目なので、当初の計画は無視してちょっかいを出したくなる。取り敢えずは既にチップを獲得しているMOGさんの駒を追い出して中央に参戦。
結果、乱戦。案外66%がひけなくて、辺境の戦いを終わらせられないのと、何もしないと簡単に高得点を獲得されてしまうという恐怖感が自然と駒を中央へ。ローマ軍駒も導入され、中央での覇権争い。これだけ駒が集まってくると、盤面が狭い。
…と、ここで初めてCOQがピンゾロを振り、ローマ駒を動かしつつ船へ駒を送り込む。これでいつでも辺境の戦いを終わらせられるが、その分盤面の駒が少なくなる。また、得点チップも残り少なくなって来たため、最終得点計算時に死に体になる駒を無くすべく頑張る。
チップは残り七枚。あと一枚取り除かれるとゲーム終了フラグ。
駒を船にのせたまま終わるのは非常に不利なので、仕方なく駒を盤面に投入し、終了。
結果、MOGさんと海賊船さんが同点、チップ数で上回るMOGさんの勝利。他の場所に奪われない、強い心が必要なゲームである。
プレイ時間:25分
総評
Bronze
見た目以上に手軽な陣取りゲームです。序盤こそ、ダイス出目の処理が少しわかり辛いものの、慣れればサクサクと手番が進みます。
ルールの肝は、駒数に制限があることと、同率では解決が行われない、もしくは2位が同率の場合は得点が失われることです。この2つのルールが適度なジレンマを与えてくれます。そして、そんなジレンマを排除してくれる、必殺のゾロ目が出たときは快感です。自分が得点チップを取れる様にするという明確な目的があるので、駒を置き換えられたほうもそれほど不快感はない(と思う)。
箱の中には、なぜか1人6つの駒が入っていますが、使用するのは5つのようです。無くした時の補充用でしょうか。箱の大きさはアミーゴカード箱4つ分くらいの小さなもので、材質はそれ程良くありませんが、日本の収納事情には優しい造りです。流石臨床心理士、心にストレスを与えません。
と書いておきながら、最後に得点チップについて。
超ストレス。ローマ時代のゲームなので、得点はローマ数字でかかれているのですが、ⅣとⅥなんてパッと見、見慣れていない日本人には判別しずらいです。これがなければ、クレオパトラの鼻が…と考えてしまいますね。得点チップが見やすければ、もっと手軽な良ゲーになったと思います。
しかし、プレイ後の評判は上々。プレイ時間もインストも短くて済むので、ゲーム会の時間調節などにはピッタリです。この作者の作品はBGGではあまり評価が高くないのですが、ルールにひねりが効いていて面白いと思います。筆者は「ヒベルニア」よりも本作『カンブリア』の方が好みです。
ホビージャパン扱いですが、初期出荷版には誤訳があるので注意。