悪い地形なんてものはない、様々な種類の良い地形があるだけだ
メーカー | Thunderworks Games |
発売年 | 2019年 |
作者 | Jordy Adan |
プレイ人数 | 1-100人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
製図家となり地図を描く紙ペンゲーム
紙ペンゲーム『カートグラファー』です。アークライト社より完全日本語版が発売されています。ゲームの目的は「製図家となって女王の命で開拓地の地図を作成すること」です。実際には、配られた方眼紙(予めマス目の印刷された紙)にめくったカードに描かれている地形を記入していきます。ゲーム中、モンスターの待ち伏せを受けることがあり、計画通りに地図が完成しない可能性がありますが、これを乗り越えて得点の条件を満たすことを目指すゲームです。
一言で表現するなら能動的ビンゴ+多次元パズル
ゲーム開始時に配られる用紙には、マス目とわずかな地形(山と廃墟)が予め記載されています。山は障害物です。この用紙のマス目を「1枚ずつ公開されていく地形(森林・村落・農場・水域・怪物の5種類)を指定するカード」に従って埋めていきます。地形はいわゆるテトリス的な形をしており、回転・反転は自由です。カードによっては形を選べるようになっており、小さい形を選択することで勝利点の定期収入をもたらす金貨を手に入れることもできます。このコインは障害物である山の四方を地形で囲むことでも手に入ります。
このゲームは紙ペンゲーム、すなわちロール&ライトゲームに分類されます。これらはダイスロールをして紙にチェックをしていく「ヤッツィー」や多人数イベントで遊ばれる「ビンゴ」などにその源流があると言われています。ランダムに発表される地形をマス目に埋めていく様は、まさしく「ビンゴ」ですが、本作では予め数字が台紙に印刷されいている「ビンゴ」と異なり、自由にマス目を埋めていけます。これを非常にシンプルにまとめたゲームに「ストリームス」がありますが、本作は1次元的であった(単なる昇順であった)「ストリームス」に対して、地形の形と種類をマス目に配置するという更に次元を増やした多次元能動的ビンゴとなっています。
得点ルールにより多次元パズルへ
ゲーム開始時に4つの得点ルール(女王の命)が公開され、それぞれが4ラウンドのうちに必ず2回ずつ適用されます。例えば「水域にも地図の端にも四方が接していない農場のカタマリ1つにつき3点」などです。従って、ゲーム中はこの得点ルールを睨みながらなるべく多くの得点が得られるように地形を当てはめていきます。
前述の「ビンゴ」では数字が1列並べば勝ちという単純な(1次元の)得点ルールですが、本作ではこの4つの得点ルールをなるべく多く満たすように地形の形と種類を配置していくために、多次元的なパズルを解いているような感覚となります。
緩いインタラクション:敵の待ち伏せ
このゲームはソロでも遊べますが、多人数で遊ぶ場合のインタラクションとして「敵の待ち伏せ」が用意されています。敵の待ち伏せを知らせるカードが公開されたら、自分の用紙を隣のプレイヤーに手渡し、怪物の出現を意味する地形を書き込んでもらいます。怪物は単純に邪魔であることに加えて、各ラウンド終了時の決算で怪物の隣の空いているマス1つにつきマイナス1点となります。
ソロゲームでも怪物は登場しますが、この場合はカードの記載に従ってオートマで書き込まれるようになっています。ソロゲームでは総得点に応じたランクが用意されています。
絵にこだわるとさらに楽しい
このゲームには、もう一つ箱庭的な楽しみ方ができます。基本的には地形を1マスずつ記載していくわけですが、この1マス1マスの記載にこだわっても良いですし、地形をつなげてダイナミックに描くこともできます。これらを楽しむためには発色のいい色鉛筆やサインペンを用意すると良いと思います。筆者は絵心があまりないのであまり良い例はお見せできないのが残念です。
拡張・ミニ拡張
完全日本語版には最初から「技能拡張」が同梱されています。これを適用することで、ゲーム中獲得できる金貨で特殊技能を獲得できるようになります。特殊技能では例えば怪物の隣に追加で地形を記載できるなど、ゲームを有利に進められるものです。この拡張を適用することで、金貨をめぐる決断の重要度が増し、よりゲームらしい体験をすることができると思います。
その他、用紙やカードのバリエーションが今後も発表されていくものと思います。
プレイ記
自宅にて、AMIと2人プレイ。基本的にはソロ以外では何人で遊んでもプレイ感は大して変わらないものと思う。
ゲーム開始時には、4つの得点ルールをよく確認する。春夏秋冬の4ラウンドで適用される順番もわかっているので、なるべく効率的にこの条件を満たすように地図を塗っていく。例えばBのルールは秋以降2度と適用されないルールとなるので、見切りをつけることも重要である。
今回、COQはなるべく小さい方の地形を選択して序盤から金貨を得ていく作戦。もちろん大きい地形の方が繋がりを作りやすかったりするのだが、今回の得点ルールではあまり地形の大きさに左右されるものはなかったので金貨作戦を選択したというわけ。
それにしても、100均で購入した色鉛筆セットの発色が悪く、相当に筆圧を高めないと色が出ない。楽しく塗るためには発色の良い画材を用意したほうがよさそう。
序盤は地形が出るのみでモンスターが出現しなかったため、ひたすら得点ルールを睨みながら地形を書き込んでいく。森で山を繋いだり、端に接していない水源を作ったり。地形のカードの左上にある数字がラウンドごとに設定された数字を超えるとラウンドが終了するので、幾つの地形を書くことができるのかにはある程度ばらつきが生まれるようになっている。
程なくして最初のラウンド「春」が終了。金貨作戦をとったCOQがその分だけAMIをリードした形である。
次のラウンドで初めて怪物も登場。用紙を交換して怪物を描く。基本的にはこれまでの配置から相手の狙いを読み取り、その邪魔をする。これはオートマ(ソロモード)で書き込まれるよりも人間が書き込んだ方がいやらしい場所に書き込めるので面白い。
序盤は余裕で書き込みをしていくが、段々隙間に余裕がなくなってくるとお互いにぶつぶつと隙間がないことを嘆き始める。
隙間がない隙間がない隙間がない、なんでこんなとこに怪物いるのよ?
こうして地図を書き込んでいき、4ラウンド終了時の得点で勝敗を決する。今回は金貨の差でCOQが勝利した。最初のラウンドで金貨を多めに獲得しておけば、4回のラウンドで得点が得られる。今回の得点ルールのように、最終的に隙間が空いていても問題がない場合は金貨作戦は強い。
プレイ時間40分
総評
Bronze
ルールにアラがなく、綺麗にデザインされた紙ペンゲームだと思います。紙ペンゲームでは、書く場所を散らすために様々なルールを設定するのが常ですが、これらにとって付けた感がなくうまくまとまっています。テーマとの整合性もあり、絵を描く楽しみに直結しますね。「ストリームス」を初めて遊んだ時に、能動的ビンゴを生み出していることに驚きました。本作も本質的には狼の皮を被ったストリームスに他ならないのですが、これをさらに多次元パズルに落とし込んでいるところが進化したポイントと思います。同じ紙ペンゲームの「welcome to(外部サイト:ジョーコデルモンド)」を遊んだ時には、ストリームスからの脱却をそれほど感じませんでしたが、本作では世界観も伴ってゲームとして深みが増しています。それでいて適度な長さでゲームが終了するのが良いですね。
ソロプレイでは、カードのめくり運で点数が決まる部分もあるのでビンゴ感(運の要素が)高まりますが、多人数プレイでは、基本的に同じ条件の中で自分の裁量で如何に得点を高める地図を描ききるかという競争になるため、ソロよりは2人以上で遊んだ方が面白いと思いました。ちなみに、筆者が試しにソロプレイをしてみたところ、めくり運にも恵まれず「インクこぼし屋」という最低ランクになったことは内緒です。
筆者はあまり絵心がないので、ゲームとしてはコンポーネントを使用して遊ぶ方が好みですが、目の前の用紙に世界が広がっていく様をみて楽しいと感じる方は多いような気がします。地形のバリエーションが少ないので、拡張等でこれが増加するとより面白くなるかもしれませんね。特殊効果も含めて。