最も荒廃した時代のアイルランドで
メーカー | Closet Nerd Games |
発売年 | 2009年 |
作者 | Eric B. Vogel |
プレイ人数 | 3-4人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
ありそうでなかった手軽な陣取り
臨床心理学者であり、教授でもあるEric B. Vogelは、2009年に4つのゲームをセルフ出版しています。そのうちの1つが2011年にデザインを新たにしてメーカーより出版されたのが本作『ヒベルニア』です。ゲームでは、鉄の時代のアイルランドの覇権を争います。ウォーゲーム的な陣取りですが、得点計算等が工夫され、ユーロテイストに仕上がっています。
ゲームボードは4色に色分けされた地図と、外周の得点トラックより成ります。各自は兵力を表す木製キューブで地図を占領していきます。手番で対象とする土地を選ぶのは色を決定するダイス。それとは別に、好きな色を選択する権利も与えられます。
他人の領土へ進軍する場合には、兵力駒を相殺して生き残った方が領土を得ます。また、自国の領土へ進軍すると、兵力の移動を行うことができます。
戦闘で失われた駒は、一箇所に集められます。手番中、進軍の権利を放棄することによって、この駒を全て手元に戻すことができます。それ以外のプレイヤーには、端数切り捨ての駒が戻されます。
そして、点数計算。手番終了時に支配している自国領土の色の分だけ自分の得点を進めます。後半には同じ色の土地を複数支配していないと進めない場所もあります。
こうして、得点を獲得していき、最初にトラックを一周したプレイヤーが勝利します。
日本語訳のエラー
大したものではありませんが、日本販売当時に付属していたHJ日本訳にはエラッタがあります。ゲームの準備において、3番手のプレイヤーが置く駒は、3つではなく1つです。
プレイ記
ヤス、のっち、セイコーと4人プレイ。
COQは緑。
照明が暗いのは実家の灯りが電球色ゆえ。COQ自身がいまだに蛍光灯が嫌いなのは、実家の照明のせいだろうか。そんな謎を背に、アイルランド各地で一斉に蜂起。
最初の手番は、領土の拡張に務める。他国側へ向かうか、背後を固めるかで性格がわかりそう。得点は毎ラウンド加算されていくので、サイコロの目と相談しながら得点をとれるように。
黄色のセイコーは、サイコロで1点獲得の目が出てしまったために領土を拡げきれなかった。後半には、進むのが困難な連続色があるが、序盤は領土拡張のほうが有利っぽい。
赤のヤスと緑のCOQが、青の流木のっちを突ついている間に、セイコーが巻き返しをはかる。
サイコロの出目次第では一気に形勢をひっくり返すことも可能。疲弊して水面を漂う生活をおくる流木のっちを押しのけ、セイコーが一躍躍り出てくる。激しい戦闘の末、ヤスの領土も1つ空白地となった。
実生活でも大地主であるセイコーの進軍が止まらない。ヤス&のっちの庶民連合軍は兵の多くを失い、退却を余儀なくされる。それに乗じてCOQも北部への進軍を実行。
各自の得点がほぼ一周しようとしており、ゲームはもう終盤。
なんと、流木のっちが死線をかいくぐってボードを1周。ただし、のっちはスタートプレイヤーなので、それ以外のプレイヤーにはもう一度手番が廻ってくる。COQは、どうしても黄色の領土が足りずにのっちを追い越すことができない。
ここで、アレが必要だ!!
そして、奇跡的に出るアレ。得点トラックを1マス進められる出目。
お陰で1マス差で流木のっちを差し切ることに成功。
しかし、TBGLでは奇跡が2度起こる。1/36の確率をくぐり抜けて、セイコーも得点の出目を振り、逆転。
勝負有り!
プレイ時間:30分
総評
Bronze
地味に面白い。テーマは戦争で見た目もウォーゲームですが、単純な進軍システムと得点トラックシステムのお陰でユーロゲームテイストな軽い陣取りゲームとなっています。
特に、所有する領土の色とリンクした得点システムのアイデアが良く、他人の土地を攻める際にも、その必然性が誰からも理解され易いので個人攻撃にはなりにくいです。
そこへ、ダイスの出目が適度ながっかり感と高揚感をもたらすのでゲームは最後までだれませんでした。ゲーム時間も短いですしね。4人プレイ時に全員が絡めるようになっている中央部のマップ工夫も良い試みですね。
難点は、マップの黄色が蛍光色のために少し見辛い点でしょうか。また、原文のマニュアルも少し読み辛く、支配の意味が書いてなかったりします(駒が1つでもあれば占領していると解釈しました)。
BGGでは、公式2人用ルールの公開もされているようです(1人が2つの陣営を担当)。ありそうで無かった手軽な陣取りゲームです。兄弟分の「カンブリア」というゲームもそのうち紹介します。