”Glory shines behind enemy lines!!“
(栄光は敵線の向こうに!!)
メーカー | Days of wonder |
発売年 | 2004年 |
作者 | Richard Borg |
プレイ人数 | 2-8人用 |
評価 | Platinum |
ゲーム概要
簡略化されたウォーゲーム
Days of Wonder社の『メモワール ’44』です。このゲームのテーマは第二次世界大戦です。
Days of wonder社のゲームはコンポーネントが素晴らしく、値段以上に満足させてくれる事が多いですが、このゲームも期待を裏切りません。プラスティック製ですが、駒が沢山付いてきます。また、発売当時は一般的でなかったカード立ても標準で付いています。カード立てが一般化したのはここからですよね。
ゲームの内容は、ウォーゲームを簡略化したような内容です。大戦略等でおなじみのヘックスに部隊駒を配置し、手札をプレイして指令を与えていきます。指令を与えられた部隊はそれぞれの移動力分移動し、有効射程に敵がいれば、距離に応じて攻撃(サイコロを振る)することができます。
全てはカードにかかっている、だがサイコロを振るのはあなた自身だ
ボードには3つのエリアが描かれており、カードにはどのエリアの何体のユニットに指令を下せるかが書いてあります。両方のエリアにまたがったヘックスはどちらのエリアのカードでも指令が下せるため、有利です。
敵に隣接する場所に移動し、攻撃をして相手を退却もしくは全滅させることに成功すると、特別に「侵攻」を行うことができ、敵がいたマスへさらに移動できます。
カードには特殊カードが含まれており、移動距離がのびたり、サイコロの数が増えたりと非常に強力なものが揃っています。カードの引きは超重要で、逆にカードが悪いと何もできません。しかし、戦場でそのようなことを嘆いても何も起きません。サイコロにすべてを掛けて勝利を手繰り寄せるしかないのです。
例えば戦車は2マス動いてから、最大3マス以内にいる敵を砲撃できます。攻撃を行う場合は、両ヘックスの間に遮蔽物が無いかを判定したのち、攻撃側が一方的にサイコロを振って攻撃の正否を決定します。
サイコロには歩兵/手榴弾/旗/星が描かれており、歩兵ならば歩兵撃破。手榴弾ならば、任意のユニット撃破。旗ならば敵を退却させる事ができ、星ならばミスです。
戦闘解決時に振るサイコロの数は、攻撃側ユニットの種類、敵との距離そして敵のいる地形の防御効果によって左右されます。バンカーなどにいる敵はサイコロをかなり減らしてくるので強いです。
大体のルールはこんなところです。見た目のウォーゲームっぽさとは裏腹に、難解なルールは殆どありません。簡単に、第二次世界大戦の世界へ身を投じることができます。
世界観に浸れば最高に楽しい
ゲームには幾つものシナリオが用意されており、説明書の通りに駒を並べると、当時の戦場を再現できるようになっています。簡単な背景テキストも添えられているので、気分は高まります。また、個人的にはこのゲームをする前にプライベートライアンやプラトーン等を見て気分をさらに高めることをオススメします。
ところで、ゲームの勝敗を決定するのは勲章の数です。勲章は、敵の部隊を殲滅したり、特定の場所に侵攻すると獲得できます。これをシナリオで規定された数そろえる事によって、ドイツ軍か連合軍のどちらが勝利するか決定されます。
非常にシンプルなシステムを採用しているため、如何にこの世界にどっぷりと浸かる事ができるかが、楽しめるかどうかの分かれ目だと思います。
プレイ記
正月にのっちと自宅で対戦。5年に及ぶ挑戦である。
毎年、恒例のようにノルマンディー上陸作戦を敢行しているが、未だ上陸には至っていない。ビーチのバンカー(要塞)には、大砲が陣取っており、近づく敵を全て撃破してくる厳しいマップである。
俺の名はジャクソン、連合軍の2等兵だ。
ヤップ島沖の南の島でのんびりと残りの軍務を消化するはずが、突然上官に叩き起こされた。
上官「おい、ウジ虫共!貴様ら、床を這いずり回る以外になにか取り柄があるのか!」
「サー!イエッサー!上官のお話を聞く事が出来るであります!」
上官「いいか!良いニュースと悪いニュースがある!ケツの穴まで開いて良ーく聞け!」
「サー!イエッサー!」
上官「まずは良いニュースだ!今から貴様らに休暇をやる!」
「サー!イエッサー!」
上官「次に悪いニュース!貴様らの休暇場所は、ソードビーチへ向かう揚陸艦の中だ!!」
「サー!イエッサー!」
写真はビーチに並んだ連合軍。次々に揚陸艦で砂浜へ到着する部隊。
このシナリオで連合軍は、ビーチに上陸し、勲章を5つ獲得すれば勝利となる。逆にドイツ軍は連合軍を5部隊撃破すれば勝利。中央のバンカーに射程6(!)の大砲が備わっているので、実に厳しい戦いが予想される。
毎年毎年、このビーチで藻屑となっていたCOQは考えた。中央の砲台を確保するには、複数の部隊で一気に攻めるしかない。そうしないと、近づく途中に各個撃破されてしまうと。
しかし、この考えが根本から間違っていたのである。中央の大砲にこだわるから勝てないのではないか?と考えるべきだった。
今年の連合軍はひと味違う!!
中央の砲台の射程外から左右に展開する歩兵バンカーに侵入し、おちた側から敵の背後にある街(侵入すると勲章が貰える)を占領しようと試みる事に。
南の島でバカンスするはずが、とんでもない所に駆り出されちまった。船内で休暇と言ったって、やることはデッキ掃除とポーカーぐらいだ。昨夜のポーカーで新兵のガードナーが許嫁の写真を自慢していやがったが、あいつは間違いなく死ぬな。自分の女の話をする奴ぁ、序盤で死ぬって相場が決まってんだ。
だが俺は死にたくない。なんとしてもサンダース軍曹の直属部隊にまぎれて生き残るんだ!
ヒュ〜〜ン、、ッドドーン! タタタタタッ!
畜生、もう始まっている! おい!ハッチに弾が当たってるじゃねーか開けるんじゃねーよ!
最初の手札は連合軍5枚、ドイツ軍4枚からはじまる。手札は使用後に補充されるのだが、選択肢が少ないのは辛い。左右両側のバンカーを攻める作戦を選択したものの、指令を下せなければ意味が無い。手札には左1枚、中央1枚、右2枚。
これはいけるかも。
中央付近に厚く敷かれた部隊を一旦左側へと移動させる作戦をとる。この時、左側と中央の両方のエリアにまたがっているヘックスへと部隊を配置できれば完璧。ちなみに、浜辺に置いてあるバリケードには戦車を侵入させることができない。
また、鉄条網に侵入した歩兵は、攻撃能力をそのターン失ってしまう。
中央の指令カードをプレイして、揚陸艦を左のビーチへと誘導するCOQ。中央の砲台の射程からは外れているので、未だ大砲は火を吹かない。奥の街から歩兵を動員するのっち。だが、どうやら指令カードが乏しいようで動きが遅い。このまま、左のバンカーに取りついて、バンカーを確保する!(ちなみに、歩兵についているトークンは特殊部隊の証。通常よりも移動攻撃能力に優れる)
よかった、なんとか左端のサンダース軍曹直属部隊へ潜り込むことができた。ここからなら、なんとかバンカーからの射撃を避けて上陸する事ができそうだ。しかも、流石サンダースの部隊。普通の部隊よりも進軍スピードが早い。まぁ、俺ぐらいの兵士になってくると、着いていくのも苦じゃあないがな。
次の指令で左エリアの部隊全てを動かすカードを使用する。左に展開しておいた部隊が一斉に敵バンカーへと進軍し、砲火を敵歩兵部隊へと集中させる。
バンカーにいる歩兵に攻撃する場合、戦車でも歩兵でも、ほとんどサイコロは1つになってしまう。しかも、バンカーの部隊は退却マークを無視できるので、撃破できる確率は高くない。だが進軍してしまった以上、やるしかないので、敵戦車(左上)が迫る前になんとか決着をつけようとする。こちらの歩兵部隊が砲台やバンカーの歩兵の有効射程にかかっているが、背に腹は換えられない。
火線を集中し、なんとかバンカーの歩兵を残り1小隊に削る事に成功。あとは、歩兵を隣接させ、敵部隊を殲滅して侵攻するのみ。こちらの歩兵は敵の砲火によく耐えて、まだ3小隊残存している(まぁ運だけど(笑))。
「メディーック!!」
ビーチは血の海と化している。海の水は真っ赤に染まり、敵の機関銃が水しぶきを上げる。前線の歩兵がバンカーへと到達したみたいだが、こちらはまだ上陸もおぼつかない。まったく上層部なんてカスばっかりだ。こんな作戦立てるなら、さっさとHQ(作戦司令部)を爆撃しやがれ。クソみたいな司令部の連中が瞬殺されれば、敵も味方も大喜びだぜ。
作戦通り、左のバンカーを占拠。しかし、3方より敵が迫る。耐え切るのは難しいかもしれない。
案の定、のっちは任意の4ユニットに対して射撃命令を下せるカードをプレイして来た。実はこのバンカー、敵の中央砲台からも弾が届くのだ。流石に4部隊からの集中砲火には耐えきれないか。この手の特殊カードを巧く使うのが勝利への近道。やるなのっち。
やはり、歩兵1部隊だけでは敵の火力に耐えきれず撤退。部隊が殲滅されると敵に勲章を奪われてしまうので、全滅しなかっただけでも御の字。この部隊を退却させるか、それとも再びバンカーへと侵入させるか、悩む。
が、ここでふと気付く。そういえば、今回は中央砲台からの射撃が少ないな?ひょっとして、中央に指令を下せるカードがないんじゃないのか?左のバンカーを確保した今なら背後を取られる事もない。初の砲台殲滅も夢では無いのではないか?
脳裏によぎった作戦を実行すべく、中央付近に駐留していた歩兵部隊を一気に砲台へと進軍させる。
やっとビーチへの上陸を果たしたのはいいが、そこかしこに味方の死体が転がっている。だが、目標のバンカー確保には成功したようだ。犠牲も無駄にはならない…か。っておい!どうして、バンカーを放棄して砲台に向かってるんだよ!ブリーフィングでは砲台を避けて両側のバンカーを占拠するって言ってたじゃねーか!
敵の攻撃をかいくぐりながら、敵砲台の包囲に成功。予想道り、のっちは中央に火力を集中できていない。カードリストとにらめっこをしているところをみると、ほとんどが特殊カードのようだ。このまま畳み掛けるように中央のバンカーも突破できそう。
しかし、ここに来て予想外にのっちが全エリア指揮のカードをプレイ。
カードないんじゃなかったの!
今引いた(笑)
そして、当然標的はバンカー付近の歩兵部隊。まずは、左側のバンカーを占拠していた部隊が追いかけて来た歩兵に殲滅される。そして大砲が火を噴く。サイコロは3つ。小隊数が減ったら、退却せざるを得ないかと考えていると…
なんと、判定は全弾命中!! 恐るべし、固定砲台。あっという間に勲章を奪われてしまった。まずい、このままだと、先に勲章を獲得されてしまい、今年も枕を濡らす羽目に。
まさか、こうも簡単に全滅させられてしまうとは。この戦場は既に囲まれているので、残った部隊をなんとか退却させようとする。しかし、射程距離6の砲台に対し、移動力2の歩兵では射程外に退避することも許されず、背後から砲撃され、全滅。
しかも、先取したバンカーも留守にしているうちに再び占拠されてしまう。ここで、作戦を再び変更し、まだ手薄なうちに左のバンカーを襲撃することにする。
サンダース「バンカー奪取の命令がでた!ついてこい!」
一度放棄したバンカーを再び奪取するらしい。なんだこれは、ここの司令官の頭はスポンジか?こんな遮蔽物の無い砂浜を走るなんて自殺行為だっつってんだよ!チクショー!
足の速いサンダース軍曹の部隊を突撃させ、バンカーを再び確保する事に成功するも、火力が弱い。横にはドイツの誇るティガー戦車部隊も迫っており、打開策を考えねばならない状況。
しかし、転機は突然訪れた。手札に、歩兵1部隊を3マス進軍させた後にサイコロを一つ追加して戦闘を行い、さらに3マス進軍するというカードが!
現時点で勲章の数は連合3つ、ドイツ4つ。5つになった方が勝ちなので、猶予は殆どない。このカードで敵の歩兵部隊を一つ殲滅し、その足で都市に侵入することができれば、勝てるかもしれない。まずは、敵の戦車をおびき寄せるため、中央へ慎重にえさをまく。あと1部隊殲滅されたら負けなので、慎重に慎重に。
通信兵「軍曹!HQより入電です。暗号文読み上げます!」
通信兵「アルファ、アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタ、ブラボー・・・」
通信兵「作戦番号108、Behind enemy linesです!」
サンダース「ついに来たか!栄光は敵線の向こうにある!ムーブアウト!(突撃せよ!)繰り返す!ムーブアウト!」
ウオオオオっ やってやる!やってやるさ!
ジャクソンの耳には確かにラ・マルセイエーズが聞こえていた・・
すると、来た!絶好のチャンスが!
特殊カードをプレイし、歩兵を一気に3マス進軍させて、弱ったドイツ歩兵部隊を後ろから叩く。見事撃破に成功し、そのまま都市に侵入!!勲章を5つ獲得して連合軍が勝利したのであった!!
5年越しのチャレンジがやっと成功し、満足。しかし、1ページシナリオをめくると更に厳しい条件の上陸シナリオが・・・
総評
Platinum
ゲーム紹介の熱の入れようからお察しの通り、筆者はこのゲームが大好きです。ゲームとしては、戦闘もダイス解決だし、すべてのシナリオの勝利条件が勲章だし、と単調な部分も目立ちますが、手軽にウォーゲームの雰囲気が味わえるゲームだと思います。
このゲームはかなり運に左右されます。動かしたいユニットの指令カードが無いために、一度も火を噴かずに全滅なんてこともしょっちゅうあります。従って、本格的な戦略ゲームを望む方には向きません。
ただ、ミリタリー映画好き同士でプレイすれば盛り上がりは必至。メガドライブのスーパー大戦略を24時間連続でプレイした少年時代を思い出します。雰囲気を楽しむことが、このゲームの楽しみ方の一つです。
拡張版も色々と出ており、その気になれば日本兵を使用する事もできるようです。ただ、基本セットにシナリオが沢山ついているので、それをやり切るだけでも大変です。また、基本セットを2つ用意し、広大な”完全版”ビーチを攻略するシナリオも付属しています。
好みの分かれるゲームだと思いますが、もしも機会があったら、是非プレイしてみて下さい!
注意!:筆者の好みのためPlatinumランクに分類されていますが、実際のゲーム性はBronze〜Silver程度だと思いますので、興味のある方は一度ボードゲームカフェなどで遊ばれると良いと思います。BGGのランクはまぁまぁ高いところにつけています(2022年現在156位)。好きなものは好きということで!