ミドルエイジス

剣をとるものは皆、剣で滅びる

発売年2024年
作者Marc André
プレイ人数2-5人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

宝石の煌き作者の名誉挽回なるか

2014年に発表以来、今も傑作であり続ける「宝石の煌き」の作者であるMarc Andréは、その後に「バロニー」を発表して以降、鳴かず飛ばずの時期が続いた。しかし、2017年、「マジェスティ」というカードドラフトのゲームを発表することとなり、それがディベロップメントに定評のあるハンスイムグリュック社からということで大いに期待を集めたものの、その結果は、これを読んでいる多くの方が「マジェスティってなに?」という反応をしているように、期待に応えたとはいえない内容だったと言える。本作『ミドルエイジス』は、作者自身の手による「マジェスティ」のリメイク。カードゲームであったコンポーネントをタイルに変え、ドラフトメカニクスに3手先までの計画性をプラスし、タイルの効果を調整して戻ってきたのである。一目見るだけで、アートやコンポーネントの豪華さには気合が入っているようだが(コインは劣化)、果たして鳴かず飛ばずの印象になってしまった名誉は挽回できたのだろうか。

8種のタイルドラフトで王国を造る

ゲームでは、プレイ人数+1枚のタイル列から各人が1枚ずつタイルを獲得していき、タイルごとに収入と特殊効果を得ていく。同じ種類のタイルを累積させればその効果は強まっていくので、計画的に集めていきたい。

若い番号のタイルを取得したプレイヤーが次のタイルを先に選ぶ

タイルは4列並んでおり、常に3手先まで見えている状態。ここがリメイクで加わった大きな違いである。各列のタイルは裏面の数字順に並べられており、より若い番号のタイルを取得したプレイヤーは次の列のタイルを最初に選ぶ権利を得ることができる。いわゆる、キングドミノ式と呼ばれる、タイルドラフトと手番順の競りを融合させた仕組みだ。

風車を置くと、風車の特殊効果と風車1台につき2金もらえる

ゲームの目的はお金を得ること。何よりもお金が大事だということは、日本の政治家の皆さんも汚職や脱税を繰り返しながら体を張って教えてくれているのでとてもわかりやすい。各タイルを獲得すると、現在自分が配置しているタイルの種類と数に応じてそれぞれ収入が得られる。この収入も累積で強くなるので基本的には何かに集中して集めたほうが強いけど、ゲーム終了時に1枚もないタイルの種類につき大きなマイナス点となるため、まんべんなく取得することも重要。

城壁がなければ未来もない

タイルの特殊能力には、他のタイルについているシンボルの数だけお金がもらえるなど平和なものもあるのだが、このゲームの勝敗のキーになるタイルは、他人からお金を徴収する風車タイル、他人のタイルを1枚破壊してお金も徴収する兵舎タイル、他人の攻撃から身を守る城壁タイルの3種類である。これらの特殊能力が発動するかどうかは各人同士のその種類のタイル数比べとなっているので、いったん出遅れると蹂躙されまくる素敵なゲーム体験があなたをまっている。焼け野原で笑顔を保っていられるかどうかの人柄が試されるので、豆腐メンタルを自認するならこのゲームには近づかない方がいい。

凶悪3人衆

風車はまだしも、兵舎から身を守る城壁の獲得に失敗するとゲームに参加することすら叶わなくなるので、タイルドラフトは城壁の獲得を狙って推移するのが基本路線。さらに、城壁には防御以外にもう一つ重要な特殊効果がある。なんと、城壁を取得したプレイヤーは未来のタイルをひとつ予約できる。ここまで強いと取得しない手はない。

城壁の個数も参照するようにして1件あたり3金にアップグレード

死ぬほど強い城壁とのコンボとして、城壁タイルの数が収入に直結するようになり、さらにその収入額を上げることが、修道院とお城のタイルを取得することにより可能だ。例えば風車など、城壁以外に取る予定のタイルの収入を城壁に特化して強化しておくのが定石となる。このコンボを作られると手に負えなくなるので、誰かがお仕事をして阻止しないといけないが、奉行問題と隣り合わせの危険性をはらんでいる。

指針はあるが・・

ゲーム全体の目標として、イベントカードが公開されている。これによって特定のラウンドで良いことや悪いこと(タイルの破壊など)が起きたりする。可能なら、これに対応できるようなタイル集めを目指すと良いけれど、前述の城壁コンボに比べたら無視できるレベルのイベントで、筆者もイベントの内容については一昨日の晩ごはんレベルの記憶しか残っていない。

こうして規定ラウンドを終え、最後に欠けているタイルの種類数のマイナス評価を適用した後に、最もお金を稼いでいるプレイヤーが勝利となる。

総評

Bronze

作者自身がこのゲームを諦めきれなかったのか、メーカーからのお願いに対応したのか、その真意は定かではありませんが、決してつまらないゲームではないものの、ゲーム中に必ずだれかが迫害されて無表情になるようなプレイ感が筆者的にはあまり好みではありませんでした。

取得済みのタイルの数比べで他の全員を攻撃するという攻撃的な要素をわざわざ2種類のタイル(風車と兵舎)に同じ仕組みで仕込んでいるところに芸が無いし、他の全員が対象となることから、プレイ人数で効果が左右されます。もちろん、何か絶対的な軸を用意して、タイルドラフトに緊張を与えたいという意図はわかるのですが。5人ではこれらの効果が強すぎると感じたので3〜4人くらいがちょうどいいかもしれません。それでも、城壁が場にない状態でゲームが始まったら、どうにもならないプレイヤーが複数出そうなデザインです。

実は3回ほど遊び、全勝の筆者なのですが、どのセッションにも途中に建物のほぼすべてを破壊されてしまうプレイヤーがおり、嬉しいよりも申し訳ない感じになってしまいました。あと、毎ラウンドタイルを並べるのが地味に忙しないですね。

分厚いタイルは種類ごとに接合部の形が異なり、すべて裁断済の状態で箱に封入されているなどコンポーネントへのこだわりは高いものがあるのですが、気心の知れたゲーマー同士でないと真価を発揮しづらいタイトルと感じました。キングドミノ式としたことでだいぶ戦略的に遊べるようにはなっています。BGAなどで相手の顔を見ずに、スピーディに遊ぶのには良いかも。

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