AIでボードゲームを快適に③:デクリプト2人プレイを実現!

NotebookLMでゲームをサポートする

こんにちは。このところ集中的に掲載しているAIでボードゲームを快適にする記事の第三弾です。今回は、AI活用したボードゲームの快適化について、さらなる応用例として「AIにボードゲームのプレイをサポートしてもらう方法」を紹介します。その一例として、名作ワードゲーム『デクリプト』を2人で遊ぶ方法を解説したいと思います。

前回のおさらい

以前は、AIを使ってボードゲームのルールを要約したり、用語集を作成したり、Youtubeなどの動画から情報を時短で取得する方法、そして、AIを使ってルールを比較したり、FAQチャットボットを作成したりする方法を紹介した。まだ読んでいない方は、こちらから読まれることをお勧めする。読む時間のない方は「NotebookLMという、あらかじめ情報を登録しておくと、それを題材に受け答えしてくれる超便利なAIサービスがあるらしい」ことだけ頭の片隅に入れて先に進もう。

AIをNPCにする新しい遊び方!

以前の記事でも、今後の期待として「AIをゲームマスターにする」アイデアを紹介した。今回は、このアイデアの具体例を共有したいと思う。この具体例はあくまでも一例で、工夫次第で様々なゲームに応用できる可能性がある。

「デクリプト」を2人で遊ぼう!

お互いの暗号を解読する「デクリプト」は、人類史上最もクールなワードゲームだが、ルール上、プレイ人数が3人〜というネックがある。このゲームを2人で遊べたらいいのにと思ったことのある方は多そうだし、筆者もその一人である。そこで、今回は「デクリプト」を具体例にしてみることにする。

Decrypto(デクリプト)は、2つのチームが相手チームにコードを傍受されないように、チームメイトにコードを伝達するゲームです。各チームは、4つの秘密のキーワードを持ち、プレイヤーはランダムに決定されるキーワードの並び順である3桁のコードを伝えるために、各桁に対応するキーワードのヒントを出します。相手チームは、これらのヒントからコードを傍受しようとします。4つの秘密のキーワードを知っている自分のチームの解読者が3桁のコードを正確に導き出せるヒントを出す必要があります。

ルールの概要を見て分かるように、このゲームではどうしても出されたヒントが解読可能かどうか、判定するためのプレイヤーが必要だ(でないと、相手が絶対解読不可能なヒントを出せてしまう)。Board Game Geekの掲示板でも2人プレイのルールが度々議論されているが、この解読者の役割をオートマに置き換えることは今のところ困難とされている。

そこで、「この解読者の役割をAIに担当させてしまおう」というのが今回の試みである。それぞれのプレイヤーが4つの秘密のキーワードをもち、自分のチームの解読者に3桁のコードを伝えるためのヒントを出しながら相手のヒントを傍受してコードを明らかにしようとするルールは変更せず、AIにあらかじめ4つの秘密のキーワードを登録しておき、ゲーム中に味方プレイヤーが出した3つのヒントで3桁のコードを類推する役割をNotebookLMにやらせようというわけである。

ここでも、NotebookLMがソースとして与えられた情報以外は参照しないという特徴が活かされるはずだ。そして、NotebookLMは無料で利用できるので、API(ソフトウェア間を繋ぐインターフェース、有料の場合が多い)の料金などは発生しないという利点がある。2人プレイの大体のルールは以下の通りとなる。

NotebookLMを使った2人プレイルール
  • 各プレイヤーは通常通りカードで決めたキーワードをNotebookLMのノートに登録する。
  • 各自のNotebookLMを自分のチームの解読者としてゲームを進行する。
  • 通常通りコード(3桁の数字)にしたがってヒントを3つ作成したら、それをNotebookLMに入力し、相手のプレイヤーに発表する。
  • 相手チームのプレイヤーは、通常通りコードを解読しようとする。
  • NotebookLMがヒントを基にキーワード番号で解読結果を提示する。
  • NotebookLMに正解のコードを入力する(NotebookLMは学習する)
  • ポイントの判定を通常通り行う

事前準備

筆者は予習とか先々の予定という言葉が大の苦手だが、何事にも準備は必要である。ここではまず、プレイする2人それぞれがgoogleのアカウントを用意する必要がある。ない場合は、この機に作成されることをお勧めする。とはいえ、現代では大概の方がgmailを使っているだろうし、アンドロイドスマホを所有している方は100%の確率でgoogleのアカウントを所有しているだろう。

アカウントの準備ができたら、各自のスマホやタブレットでWebブラウザからNotebookLMにアクセスして新しいノートを作成する(「+新規作成」ボタンを押す)。そして、ソースとして「デクリプト:2人プレイAI支援システム」のテキスト(下記参照)とデクリプトのルールブック(PDF)を登録する(BGGのページからルールブックをダウンロードするには無料のアカウント登録が必要なので、登録してない方は登録されたい。)どちらのソースを先に登録するかで差があるかどうかは未検証だが、筆者は先に2人用のテキストを登録した。

デクリプト:2人プレイAI支援システム(このテキストをコピーしてソースに貼り付け)

NotebookLM用:デクリプト2人プレイ支援システム
概要:
この文書には、デクリプトの公式ルールブックが含まれています。ルールブックは3人以上のプレイを想定しています。このシステムは2人プレイ用であり、あなたはゲームマスター兼AI解読者です。以下の指示に従い、ルールブックを参照しつつ、2人プレイ専用ルールを適用してゲームを進行してください。
ゲームマスターモード開始:
プレイヤーが「ゲームマスターモード開始」と入力すると、ゲームマスターモードを開始します。
ゲームマスターモードを開始するとNotebookLMは「ゲームマスターモードを開始します。あなたのキーワードリストを登録してください。キーワードを4つコンマで区切って入力してください。」と応答します。
キーワードリストの登録:
プレイヤーは、各自のNotebookLMに、使用する4つのキーワードをコンマ区切りで登録します。
例:「りんご,みかん,ぶどう,メロン」
注意:キーワードリストに同義語や関連語を含めないでください。登録された語句のみがキーワードとして扱われます。
2人プレイ専用ルール:
各プレイヤーは個別にキーワードリストを登録します。
各プレイヤーは各自のNotebookLMでゲームを進行します。
NotebookLMはプレイヤーを勝たせようと最大限努力します。
AIはキーワード番号で解読結果を提示します。
相手チームの解読はプレイヤー自身が行います。
ゲームマスターモード中は、NotebookLMはゲームの進行を管理し、プレイヤーの行動を記録します。
ゲームマスターモード中は、NotebookLMはAI解読者として、プレイヤーのヒントに基づいてキーワード番号の候補を提示します。
ルールブックと2人プレイ専用ルールに矛盾が生じた場合は、2人プレイ専用ルールを優先します。
暗号の作成はプレイヤーのみが行います。NotebookLMは暗号作成を支援しません。
ゲームの進行(ゲームマスターモード中):
暗号の作成:
各プレイヤーは、3つの数字の組み合わせからなる暗号を各自で作成します。
NotebookLMへの暗号の伝達は不要です。
ヒントの提示:
各プレイヤーは、暗号に対応するキーワードのヒントを各自のNotebookLMに伝えます。
NotebookLMは「ヒントを受け付けました。」と応答します。
ヒントは、相手チームにキーワードを特定されないように、曖昧な言葉を選びます。
AI解読の実行:
ヒントが提示されるたびに、NotebookLMは登録されたキーワードリストと照らし合わせ、キーワードの番号候補を提示します。
NotebookLMは、過去のヒントと解読履歴を考慮し、最も可能性の高い組み合わせを提示します。
NotebookLMは、解読結果(3つの数字の順番)をキーワード番号で提示します。
解読結果の確認と回答:
プレイヤーは、NotebookLMに今回の暗号の正解を伝えます。
NotebookLMは正解を受け付けると、次のヒントの解読のために学習します。
相手チームの解読:
相手チームの解読は、プレイヤー自身が行います。
各プレイヤーは、相手チームのヒントを記録し、必要であれば各自のNotebookLMに関連するキーワードを表示させるなどのサポートを受けられます。
ゲーム終了:
一定ラウンド終了後、最も得点の高いプレイヤーが勝利となります。
NotebookLMへの指示例:
「ゲームマスターモード開始」
「りんご,みかん,ぶどう,メロン」
「ヒント:赤い、甘い、丸い」
「回答:1, 3, 2」

デクリプトのルールブックのダウンロード

テキストの方はもう少し簡易な内容でも良いかもしれないが、それを検証することの意味があまりないのでご容赦いただきたい。

実際に遊んでみる

それでは、画面を見ながら実際に遊んでみよう。まずは「ゲームマスターモードを開始してください。」と命令する。色々とごちゃごちゃ説明してくるのが玉に瑕だが、一応これでゲームマスターモードが開始される。

次に、4つのキーワードを登録する。今回は「ちくわ、パソコン、メガネ、さくら」とした(注:筆者のナウでヤングなセンスが存分に活かされた、カードを見ないで選んだ適当なワード)。

これで準備は完了。実際に、考えたヒントを入力しつつ対戦相手プレイヤーに伝達する。今回のヒントは1・3・4のコードを示すべく「穴、ガラス、ピンク」とした。すると、NotebookLMは健気に理由も示しながらコードを解読し、見事に1・3・4の正解を導き出した。忘れずに正解のコードを入力してあげよう(単に「正解!」と入力するのみでOK)。

次に、少し意地悪に全然関連しないヒントを入れて間違えさせる。今回のコードは1・2・4と仮定し、ヒントは「マフラー、キー、植物」とした。キーワード(ちくわ)と関係ないヒントとして「マフラー」を指定してみたわけだ。

「マフラー」が関係ない

そのあとで、コードの正解を入力してあげると、きちんと次に向けて学習をした。ちょっとかわいそうだが、検証のために涙を堪えて正解を教える(マフラーとちくわは関係ないが、これが正解と教え込む)。この検証では、関連しないヒントを入力するときちんと間違えることが確認され、同時に、次回に向けて学習する様子が見られた。

このようにNotebookLMを用いることで、自チームの解読者としての役割を担ってもらうことができた。この方法なら、「デクリプト」を2人で遊ぶことができてしまいそうだ。

検証は以上。今回は、ワードゲームの「デクリプト」を本来ならば非対応の2人で遊ぶ方法を検討してみたが、予想を上回って機能したように感じた。工夫次第で1人で遊ぶ方法も考えられるかもしれないし、他のゲームにも応用できるかもしれない。NPCとしてではなく、複雑なゲーム情報の管理にも使えるかもしれない。

近年、カメラを通してリアルタイムに観光案内をできるAIサービスが既にローンチされているし、ビデオゲームの画面を共有しながらアドバイスをしてくれるAIの開発も進んでいるらしいので、SFの世界だった「コンピュータがボードゲームを遊んでくれる未来」の足音がかなり近くで聞こえる。その一環として、こんな遊び方も試してみてはいかがだろうか。

まとめ

一応免責しておくと、この思いつきはNotebookLMに大きく依存しているので、仕様変更などで状況が変わる可能性があります。また、AIの中身がブラックボックスなので、ヒントによってはまったくAIが機能せず、ゲームが壊れる可能性もあります(この場合は、その分野に知識のないプレイヤーと遊んでも同じ状況になるかもしないけれど)。それでも、AIを使ってボードゲームの新たな楽しみ方を探すのはワクワクしますね。皆さんも是非、どんな利用法があるか、検討してみてください。

タイトルとURLをコピーしました