オールドロンドンブリッジ

人がロンドンに飽きるとき、それは人生に飽きている

メーカーQueen Games
発売年2022年
作者G Bubola, L Colovini
プレイ人数2-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

古き良き正統派ドイツゲームの潮流

2022年にキックスターターを経由してリリースされた『オールドロンドンブリッジ』です。Leo Coloviniの作品はBGGではあまり評価されませんが、「カール大帝」などシブいドイツゲームを手がけているデザイナーです。もう一人のデザイナーGabriele Bubolaの作品の情報は少なかったのですが、ルールを読んだ段階で筆者のユーロゲームレーダーにヒットしたので、プロジェクトをバックしてゲームを手に入れました。

出典:ボードゲームギーク

ゲームの目的はロンドン大火で燃え落ちた橋の再建に貢献してお金を稼ぐことです。あまり苦しさはなく、サクサクと進む軽〜中量級のゲームです。2022年に舞い降りた古き良き正統派ドイツゲームです。

降順ランクオーダー

建物には1〜60の番号がついている

ゲームでは、12ラウンドに渡って自分の橋の上に計12個の建物を建設していきます。建物には1〜60の番号が付いており、建物は左から右に向かって数字が小さくなるような順番で建設する必要があります。このルールにそぐわない建物を取得した場合には、このルールに適合するように以前建設した建物と交換しなくてはなりません。この場合、ゲーム終了時の建物の数が減ってしまうことになります。

右に向かって数字が小さくなるように建設する縛り(公園でリセット)

このルールをリセットするための建物として「公園」が用意されています。公園を挟むことで、降順のランクオーダーをリセットして始めることができます。

建物ごとの固有アクション

建設したら、建物ごとの固有のアクションを実行できます。

固有のアクション

礼拝堂:礼拝堂トラックの駒をアクションの強さの分進める
橋門:橋門トラックの駒をアクションの強さの分進める(特殊タイルがもらえる)
商店:アクションの強さの分のお金を受け取る
宿屋:合計数値がアクションの強さとなるようにキャラクターカードを受け取る
ギルドハウス:4つ全ての紋章が付いている(アクションなし)
公園:建物の降順をリセット(アクションなし)

ポイントは、これまで建設した建物に付いている紋章の累積が固有のアクションの強さを決定するところです。建物には、4種類の紋章のいずれか1つまたは4つが記載されています。手番で建設した建物に付いている紋章がそれ自身を含めて自分の橋の上に何個あるかを数え、その数がアクションの強さになります。したがって、建設する際には、(固有のアクションのための)建物の種類・(降順のための)数字・(アクションの強さのための)紋章の3箇所を気にしなくてはならないということです。

青い紋章は3つなので、礼拝堂のアクションを強度3で実行できる

尚、礼拝堂トラックはお金を受け取ることができるマスがあることに加えて、タイブレークの順位を決める重要な要素となっています。橋門トラックでは、手番を若干有利にすることのできる特殊アクションタイルが手に入ります。

特殊タイルは手番を有利にするマイルドなもの

建物の取得

橋の上に建設する建物はゲームボードの中央に配置されたロンデルの周りに種類ごとに山になっています。プレイヤーは自分の手番でロンデルのマスにワーカープレイスメント的に自分の駒を配置することで、山の一番上の建物を手に入れることができます。手に入れた建物は直ちに建設しなくてはなりません。ロンデルの外周に駒を置く場合には、数字の金額が貰えますが、中央に置く場合には任意の山から建物を手に入れることができる反面2金を支払わなくてはなりません。

手番の順番を決めるのは、手札から出す1枚のカードによるビッディング(競り)です。カードの数字が大きいプレイヤーから手番を実行していきますが、使用したカードは捨て札となります。

数字がバッティングした場合は礼拝堂のタイブレーク

すべての引き分けを解決する礼拝堂

このゲームで最も重要なのは、すべての引き分けを解決する礼拝堂トラックの順位です。手番順の決定はかなり重要な手順ですが、ここでカードの数字が同じ場合でも礼拝堂トラックの順位が勝敗を決します。礼拝堂を制すものがこのゲームを制すと評しても良いと思います。

全てのタイブレークを司る、全知全能の礼拝堂

得点計算の条件は可変

12ラウンドが終了したら最終得点計算をします。それぞれの固有アクションに関連するものが基本です(礼拝堂トラック順位、橋門トラック順位、手札の数値合計、建物の数)。ゲームボードにはあらかじめ基本の最終得点計算の条件が記載されていますが、これを変化させるタイルが付属していますので、慣れてきたら最終得点計算を毎回違う条件とすることができます。また、ゲーム終了時に建物を建てられなかったスペース数に応じて原点があります。

リプレイ性を高めるタイル

12ラウンドでキッチリ終わるので終了前に間伸びするような展開はありません。こうして、最終的に最も多くのお金を所持しているプレイヤーが勝利します。

詳しいルールはこちらに日本語ルールを公開しています。

プレイ記

調布フォックスにて、同卓していただいたナカジマさん、しんさんと3人プレイ。ボードゲームカフェに行けばゲームが実際に遊べる時代になっていて嬉しい。

インスト10分、ものすごく軽いプレイ感

古き良き時代の古典ドイツゲームのようなロジカルなルールなので例外処理等もなく、インストは簡単。同卓者の理解が早いこともあって、すぐにゲームが開始できる。若干、建物タイルのソート(種類ごとに分ける作業)が面倒臭い。

今回は初見の方と遊ぶため、最終得点はボード上に記載されている標準ルールを採用。

偶然であるが、1〜60の建物タイルの数字のうち最小と最大の1と60がいきなり登場している。大きな数字は誰もが取りたいが、1は場に残る。そして、このゲームのルールには不人気のタイルを取り除くシステムがない。したがって、今回のゲームでは「1」の橋門の動きが鈍く、全体的に橋門トラックの駒の進みが停滞する展開となった。

苦労した分、その後の人生は楽になる

初手のCOQ。先ずは全力で「60」の建物を取りに行く。降順で最大値は正義。手番順に応じて初期手札が異なっているので、初手から戦略的に進めることができる。

これが功を奏した。ナカジマさん、しんさんは「40付近」の建物を初手で建てた。つまり、以降40〜60の建物を建てられるのは(他の二人が公園でリセットしない限り)COQだけとなったのである。これがこのゲームの醍醐味の1つであると思う。自分の建物の番号を頑張って整え、以降のラウンドで誰も手を出すことのできない大きな番号の建物を安く手にするのである。

こうなると自分の手番順を気にせずに序盤を進められる。手札から出すのは無料の「0」ばかりで大丈夫。頑張れピーター神父(0のカード)!

周りの建物の様子を見ながら次の手番でバッティングせずに公園が取れそうなタイミングで例の「1」の建物を建てる。次の手番で公園を建設できれば再び「60」から建物を建設できるので問題ない。しかし、中央のロンデルには「×」の印が1箇所だけあり、そこにはワーカーを置けないので注意が必要だ。ロンデルがラウンド開始時にランダムで1〜3マス進むことを考慮しながら戦略を立てないと自分の橋の上に空き地を作る羽目になる。

公園建設計画は無事に完了し、青の紋章に狙いを定めて可能な限り礼拝堂トラックを進めるCOQ。礼拝堂のタイブレークは本当に強いのでここだけは1位を取りたい算段である。既に9ラウンドを消化していてものの持ち金の差はよくわからない。ただ、これまで手札を温存できているし、建物獲得時のお金も多めに獲得できているのでリードはできていそうな気がする。

そしてあっという間に次が最後のラウンド。最終ラウンドでも礼拝堂を建設し、礼拝堂トラックを磐石なものにしてついでに小銭ももらおうと考えていた。

ナカジマさんは11ラウンド目にわざわざお金を支払って宿屋を建設し、手札を潤沢にする。こちらも最終ラウンドに向けて牙を研いでいる。

公園建設のタイミングが勝負を分ける

そして最終ラウンド、大事なところでしんさんの手札を見誤っており、COQは礼拝堂を奪われてしまう失態をおかしてしまう。しんさんの11ラウンドでの建設は公園で、最終ラウンドにすべてのタイルを受け入れる体制を作っていたのであった。

その結果、最終得点計算では礼拝堂自体の1位に加えて橋の上の建物数のタイブレークも取得され、万事急須かと思われた。しかし、予想通り手札の数値とこれまでの各ラウンドでの収入に優っており、1点差でCOQが勝利した。

プレイ時間50分(インスト込)

今回は、ご一緒いただいた方々のルール理解速度が速く、長考もほとんどない恵まれたセッションだったためもあり、短時間でゲームを楽しめました。

なお、別の機会に4人で2回ほど遊んでみたところ、プレイ時間は殆ど変更なし(プレイ時間のみだと40分)でした。4人ではロンデルの取り合いがより熱くなり、面白さが増した印象です。

総評

Silver

正に古き良き正統派のドイツゲームの潮流。建設の降順ルールとそれぞれのアクションの繋がり、それぞれのアクションと最終得点計算の繋がりがすっきりとしたシンプルなルールで繋がっており、テーマとの整合性も良好です。余分なテキスト情報などはなく、シンプルにまとめた分ゲームの面白さが際立っています。タイル運が強いのは難点ですが、直接的な攻撃要素はなく、程よいインタラクションと競争の要素があります。遊んでみるとColovini作品独特の荒削りな印象が薄く、エレガントにまとまったルールのゲームでしたので、Bubolaの良い影響が出た結果かもしれません。

お金=勝利点なのですが、そもそもお金を使う場面がほとんどないためにプレイ感はものすごく軽いです。小箱のカードゲームと同程度の軽さと感じるプレイヤーもいるかもしれません。大箱ながらゲーム会のフィラーや、ボードゲームカフェで相席した時などに活躍しそうなゲームです。

アートワークは非常に凝っていて、ボードの裏面にも綺麗なロンドンブリッジが描かれていてインストに一役買います。また、自分の橋の上に綺麗な建物タイルが建っていく様子は視覚的にも楽しいです。

ワーカープレイスメントの要素があることから、プレイ人数は4人が最適。次いで3人と思われます。ダウンタイムは殆どないので可能であれば4人で遊びたい作品です。

難点は、建物タイルの出現が完全にランダムで、それを取り除く術がないところです。お金を使ってタイルを取り除くアクションなどがあってもよかったように思います(しかし、ゲームが短いのでこれもジレンマの1つと捉えて楽しめる範囲でしょう)。また、かなり軽いプレイ感のゲームなので、大箱&価格&準備時間との釣り合いが取れていると感じるかは人それぞれでしょう。個人的に一番気になるのは準備時間です。

10年前であれば、このゲームに肩を並べるようなゲームが毎年発売されていましたが、現代ではこのようなピュアユーロゲーム自体が珍しくなってきているので貴重な存在だと思います。重いゲームも良いのですが、ファミリーで楽しめる正統派のドイツゲームの火は消えてほしくないです。

このゲームは昨今の諸々の事情を鑑みて欧州で製造されるようです。円安や日本への送料の問題で日本で流通するかどうかも不明瞭ですが、見かけた際には是非遊んでみることをお勧めします。どこに持って行っても評判が良いのも正統派ドイツゲームの特徴です。

購入先情報

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