時には失敗と失望の切れ端をも美しく縫い付けるのだ
メーカー | Lookout Games |
発売年 | 2014年 |
作者 | Uwe Rosenberg |
プレイ人数 | 2人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
シンプルで奥深い、2人用ゲームの金字塔の一つ
2014年にUwe Rosenbergが発表した2人専用ゲーム『パッチワーク』は発表から10年近く経った今でも人気の衰えない2人用のタイル配置ゲームです。その人気ゆえに様々なバージョンが発表されていることでも知られています。このゲームでは、布の切れ端に見立てたタイルを配置していき、四角いパッチワークを完成させます。大きな布を縫い付けると時間を多く消費してしまい、すぐに個人の決算が来てしまいます。決算では縫い付けた布切れについているお金兼勝利点のボタンを獲得できるため、無駄な時間を消費せずに効率よく個人の決算を発生させることが求められます。簡単に学べるルールで奥深い対戦が楽しめます。
基本はタイルを取得して配置
基本的には、共通の場に並べられたテトリスのような形をしたタイルを交互に取得していき、自分の9×9マスの個人ボードに並べていくゲームです。ゲーム終了時に、隙間があると減点されます。パッチワークで大きな布を作成するゲームなので、穴の空いた布なんて嫌だよね?ということのようです。布の切れ端であるタイルは、お金の役割を持つ”ボタン”を支払って取得します。タイルについている値札のようなイラストに、値段と配置時に経過する時間が描かれています。さらに、配置したタイルにボタンが描かれていれば、その合計が定期収入になります。
ゲーム途中、先に7×7マスの四角を先に完成させたプレイヤーには、ボーナスとして7ボタンが与えられます。タイルは重ねておくことができないため、さまざまな形のタイルを隙間なく埋めるのは中々骨の折れる作業なのですが、1マスタイルの「端切れ」が手助けをしてくれます。
共通ボードの時間管理と個人決算が熱い
中央には、ゲーム中の時間管理をする共通ボードが置かれています。表裏にデザインの違う双六のような盤面が描かれていますが、どちらを使用しても同じです。お互いの駒が時間を使うとゴールに向かって進んでいき、絶えず後ろにある駒の持ち主が手番を実行します。うまく時間管理をすることで、連続手番もありうるわけです。時間は、タイルを配置することで進みます。大きなタイルほど時間がたくさん進みます。
この共通ボードにはジレンマが詰まっています。なぜなら、相手よりも先に進むことで、先々に配置されている1マスタイルの「端切れ」が早い者勝ちでもらえます。これと同時に、決算のラインを越えるごとに、現在配置しているタイルに描かれたボタンの数だけ収入がもらえます。つまり、できるだけ定期収入を整えて決算をしたいけれど、端切れは絶対欲しいという展開が続くわけです。
ラストまで見据えたタイルの取得
時間管理のジレンマをさらに濃厚にする要素がタイル取得の仕組みです。布切れのタイルは円形に並べられており、目印の駒が1つタイルとタイルの間に置いてあります。手番のプレイヤーがボタンを支払って取得できるのは、この目印の駒から数えて3つのタイルのみです。タイルが取得された場合、目印の駒は今取得されたタイルがあった場所に移動します。
手番でタイルが取得できない(取得したくない)場合は、自分の時間管理駒を相手よりも1マス先まで進め、進めたマスの数だけストックからボタンを受け取らなくてはなりません。時にはこの行動で駒を進めたり、ボタンを獲得したりすることも大事ですが、こればかりをしていてはパッチワークが完成することはありません。
相手の手持ちのボタン(お金)は公開されているので、相手が欲しいタイルを簡単に取らせないようなイヤラしいタイル取得がこのゲームの肝です。そして、自分が取得したタイルを配置することでどの程度時間が進み、幾つのボタンを保有して、さらに可能なら連続手番ができるのか、短い間に何度も訪れる、勝つための非常に悩ましい算段、すなわちGreat Decisionを体験してください。
ボタンはお金であり勝利点
ボタンは布切れを購入するお金を役割を持ちますが、最終的に勝敗を決する勝利点としての意味も持ちます。ある時点を境に、決算の時期を予測すると、投資しても逆にマイナスというタイルも出てくるわけです。時間だけが進んでボタンの収入が少ないタイルはゲーム中なるべく取りたくないタイルとして忌み嫌われていたりします。
最終的に、空きマスは1マスにつきー2ボタンとなるので、可能な限り埋めたほうが良いものの、タイルの値段と経過時間、そして収入の要素を的確に判断しないと、最終得点がマイナスという展開も十分にあり得ます。双方の駒が両方ゴールに辿り着くとゲーム終了です。最終的なボタンの数で勝敗を決します。
総評
Gold
Uwe Rosenbergのゲームといえば、アグリコラやオーディンの祝祭など重いゲームが有名ですが、本作はシンプルながら彼のベストゲームの1つと評価して良いと思います。ルールはとても簡単で、とても奥深い駆け引きが短時間で楽しめるというボードゲームのお手本のようなゲームです。しかも、見た目とテーマが万人受けすることから、初心者の方やカップルが遊ぶのにも丁度良いと思います。2人用のゲームを購入するなら、まず最初にこのゲームを買っても良いでしょう。
タイル取得の攻防に時間管理の手番順の要素が加わった悩ましさに、ボーナスと端切れの早取りの要素が効いてとてもエレガントなルールです。マストバイ。これがUweの最高傑作と言われても特に驚きはありません。
このゲームはアプリでも出来のいいものが安価で手に入りますので、腕を磨くには丁度いいですよ。
最近、キッズ用に調整された引っ越しバージョンも発売されたようです。