ビア&ブレッド

気高いビールはパンの魂を受けるにふさわしい

メーカーHobby Japan
発売年2022年
作者Scott Almes
プレイ人数2人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

正統派ユーロの2人専用リソースマネジメント

2022年に発表された2人専用のカード&リソースマネジメントゲーム『ビア&ブレッド』です。カードに言語依存があることから、日本語版の発売を待っていた方も多いと思いますが、2023年にホビージャパン社より日本語版が発売されました。

ゲームでは、各プレイヤーが担当する村の間にある畑から素材(リソース)を採取し、ビールとパンを製造・販売して獲得する勝利点を競い合います。2人ゲームでカードドラフトメカニクスを採用するなど、随所に新たな工夫が見られる本格的な2人専用ゲームです。派手ではないもののお互いの能力のアップグレードが可能になっています。多様な戦略と展開の受け皿があり、リプレイ性も期待できるゲームです。

普段は良好な関係にある村同士が切磋琢磨するという設定であることからも直接攻撃的な要素はなく、正統派のユーロゲームです。コスモス小箱サイズに詰め込まれたコンポーネントは豪華で、2人用ゲームのラインナップに新たな彩りを加えるゲームといえるでしょう。アートがMr.ユーロゲームのMichael Menzelの手によるものなのもポイントが高いです。

3種類の用途があるカード

このゲームの手番では、手札を1枚ずつプレイしていきます。すべてのカードは上・中・下に分けて3種類の用途が記載されており、それぞれ収穫・パンとビールの製造販売・アップグレードの効果を示しています。

収穫

収穫を選択してプレイした場合、カード上部に記載されているリソースを畑(川)から得ることができます。ラウンド中に複数枚の収穫をプレイしていた場合は、カードをずらして置き、今プレイしたカードに記載されているリソースは累積して得ることができます。ただし、リソースを保管できる倉庫は限られており(当初は9マス)、収納しきれなかった分は相手に渡さなくてはなりません。また、非常に重要なルールですが、収穫としてプレイしたカードは、次のラウンドの手札になります。次のラウンドの手札の補充の際、まず自分が収穫としてプレイしていたカードをすベてとり、その後で5枚になるように山札からカードを補充します。

パンとビールの製造販売

パンとビールの製造販売はこのゲームで勝利点を稼ぐ主な方法です。いわゆるセットコレクションで、カードに記載されているリソースを支払い、自分の村のパン焼き小屋かビール醸造所に裏向きで置きます。当初はそれぞれについて1枚ずつしかカードを裏返すことができません。カードをアップグレードとしてプレイした際に、裏向きのカードを取り除き、ゲーム終了時の得点源とすることで新たに製造販売をすることができるようになります。

アップグレード(向上)

アップグレードはいくつかの要素(例えば手札マネジメント系、収穫系、倉庫拡張系など)に分かれており、何枚でも累積して適用できます。アップグレードとして使用したカードはボードの下に差し込んでおき、パッシブ(特定条件下で自動的に発動)に効果を適用します。その後、パン焼き小屋とビール醸造所を占拠しているカードをすべて取り除くことができます。

新機軸:交互にやってくる豊作と凶作

このゲームで最も目を引くのは全6ラウンドで交互にやってくる豊作と凶作のラウンドです。どちらも5手番で5枚のカードをプレイするのですが、奇数ラウンドの豊作では場に出る収穫のリソースが多いことに加え、カードをドラフトします。つまり、手札から1枚選択してプレイした後に、残りの手札を相手に渡します。自分だけでなく相手の状況を見ながらカードを選択する必要があるわけです。

凶作はドラフトせず、リソースも少なくなる

そして、偶数ラウンドの凶作では場に出る収穫のリソースが少なく、カードはドラフトしません。その代わりに、場に共通の3枚のカードが並んでおり、そのカードと交換してプレイすることが可能です。このように、交互に豊作と凶作のラウンドが訪れ、手札の運用方法が異なるルールとなっています。

ゲームの肝は凶作のハンドマネジメント

ここまで説明すると、勘の良い方は気づくかもしれません。本作『ビア&ブレッド』は、手札に合わせてリソースを集め、セットコレクションを成功させて得点するゲームですが、その肝は如何に手札をコントロールするか、すなわちハンドマネジメントにあります。それを能動的に可能にするのが、奇数ラウンド(豊作)の収穫アクションです。奇数ラウンドで収穫アクションとしてプレイしたカードは、偶数ラウンド(凶作)で必ずプレイできます。逆に計3回あるこのチャンスを活かせないと、山札から補充されるカードの運ゲーになってしまいます。もちろん、救済要素として凶作ラウンドには場に3枚の共通手札がありますし、アップグレードによって手札のルーティング(交換)が可能なようにもなっていますので、そこまで厳しいゲームではないのですが。これらの手段を講じて、ハンドマネジメントを成功させることが勝利に直結しています。

スタPの決定にも抜かりがない

スタPマーカー

次のラウンドのスタPは、ラウンド終了時の所有リソースの量で決まります。各ラウンドで収穫できるリソース量には限りがあるので先手番が有利な場合もありますし、相手の出方を見てから手番を行いたい場合もあるでしょう。これらの思惑を手番順に反映しようとするなら、ラウンド終了時のリソースの量にも気を配らないといけません。そこまで要素が多いわけではないゲームですが、各要素がいい仕事をしている感じです。

クニチー?的最終得点

計6ラウンドを終了したら、最終得点計算です。製造販売したパン・ビールそれぞれについて得点を集計し、得点系のアップグレードカードの効果を適用してそれぞれの最終得点を計算します。最終的に得点となるのは、いずれか低い方の得点です。最終得点では「両方注力しないと敗北」というクニチーのような要素が出てくるのでゲーム中に気をつけておかないといけないのですが、しばしば忘れます。とにかく、ビールとパン、低い方の得点を比較して、得点が高いプレイヤーが勝者となります。

プレイ記

USKさんと2人プレイ。

ゲームスタート。ラウンドマーカーが変な位置にあるが、気にしないで欲しい。最初のラウンドは豊作なので、カードをドラフトする。初手では相手の手札がまったく見えないため、思案した挙句いきなり強そうな収穫系のアップグレードをしていく。本来、アップグレードには製造販売済のカードをクリンナップする効果が付随するのでリソースを集め、セットコレクション(製造販売)をした後でアップグレードすべきなのかもしれないが、相手の手札が見えないのと、その時には強いカードがなくなっているだろうと思い、第一ラウンドはアップグレードに費やす。どうやら相手も同じ思考のよう。

2枚ほどアップグレードにカードを差し込んだところで、次のラウンドで作れそうなビールカードを収穫に使い、リソースを確保しつつ手札マネジメントを行う。

次のラウンド(ラウンドマーカーを動かし忘れているが凶作ラウンドである)、思惑通りビールの製造販売を行い、カードを裏向きに置く。本来は各1枚までしか置けないが、アップグレードでビールカードは2枚置ける状態となっているので、この状態でビールとパンを1枚ずつ製造販売できる。ただし、あまりどちらかに特化しすぎると最終得点で痛い目をみる。

そしてまた豊作ラウンド。だいぶコツが掴めてきて、収穫しては製造販売を成功させつつ凶作ラウンドに向けた手札のマネジメントを実行。それにしても、手札に倉庫を拡張するカードが来ず、相手にリソースを渡さないように収穫をしなくてはならないのが地味に苦しい。相手の倉庫もいっぱいになっているタイミングで収穫をしなければならない。

この時点で相手は倉庫を3マス拡張、こちらは1マスなので部が悪い。ホップ(緑のコマ)を沢山獲得できるアップグレードとホップをワイルドカードとして使用できるアップグレードを組み合わせて対抗する。そこまで派手な効果はないが、自分だけの必勝のコンボを見つける楽しみもある。

終盤、ビールばかり造っていたので慌ててパンを中心に製造販売して得点の均衡化を図る。そして、秘策のための得点系アップグレードも差しておく。

そしてゲーム終了。基本の得点は僅差だったが、実は8/9点のカードを中心に製造販売しており、8/9点のカードの価値を上げるアップグレードが炸裂してCOQの勝利。

プレイ時間40分

総評

Bronze

正統派ユーロの2人専用ゲームです。随所に工夫があり、ロジカルで抜かりのないルールはかなり綺麗に纏まっています。カードドラフトを交互に登場させることで手札マネジメントをさせるという手法は新しいですね。カードの引きによる運の要素もありますが、能動感を出せるようにデザインされていると思います。2人専用で対峙するゲームですが、フレーバーの通りに良好な関係の村が切磋琢磨しているように直接攻撃をすることなく勝敗を決するところが良いです。

カードの3種の使い道、溢れないように管理するリソース、手札のマネジメント、手番順の調整、製造販売済カードのクリンナップなどなど、それほど多くないルールにも関わらず悩ましいポイントがいくつもある綺麗なデザインのゲームです。2人用かつ30〜40分程度でユーロゲームを味わうことができるゲームは貴重ですね。

おかげで少々値が張りますが、コスモス2人用の小箱に木駒と6つ折りのボードが満載なのも嬉しく、アートは文句なく最高の雰囲気です。2人で遊ぶチャンスのある方はラインナップに加えておいて良いゲームだと思います。奥深さという意味ではそこまで期待できなかもしれませんが、楽しく爽やかにプレイできるゲームですね。これはすなわち新しいアイデアがうまく機能しているということだと思います。

購入先情報

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