リバイブ

変えられるのは自分と未来だけ

発売年2022年
作者Helge M, Kristian AØ, Eilif S, Anna W
プレイ人数1-4人用
対象年齢14歳以上

ゲーム概要

荒廃した世界で目撃するユーロゲームの臨界点

春99さんが編集している「このボードゲームがすごい2024年度版」に2023年に遊んだボードゲームの中で個人的に面白いと感じたゲームを寄稿した。その中で、筆者は本作を上位にランクした。

バンザ〜イ

「比較的シンプルなルールで」というのがユーロゲームの1つの定義である。しかし、近頃のボードゲームは様々なメカニクスを組み合わせて複雑化し、インストだけで1時間というゲームも珍しくない。モダンユーロゲームと言えば、主に近年のプレイヤー間のインタラクションの薄いゲームを称して使用する言葉だが、過度に複雑化したゲームもモダンユーロの一部なのかもしれない。しかし、単に複雑化するために既存のメカニクスを掛け合わせると、筆者の好みからは離れてしまう。既存要素を複合的にすることで思考性を増そうとするゲームでは、筆者が好む切れ味はたいてい失われてしまうからだ。

さて、本作『リバイブ』は北欧のデザイナーKristian Amundsen Østbyを中心としたデザイナー陣が製作したポストアポカリプステーマのゲームである。プレイヤーたちは荒廃した凍てつく世界に勢力を拡げていく。独特なデッキ構築とカードプレイ、個人ボードの強化、種族ごとの特技と特殊能力の解放、そしてマップの探検と開拓という盛りだくさんな内容である。この説明だけ聞くと、4Xishゲーム(eXplore:探検、eXpand:拡張、eXploit:開発、eXterminate:抹消の4行動を特徴とするゲーム)から抹消(他のプレイヤーやシステムとの戦闘)を無くしただけのようなゲームだが、プレイ中、確かに「これはユーロゲームだ!」と叫びたくなるほどにユーロゲームなのである。

<ポストアポカリプス>
ポストアポカリプスは、文明崩壊後の世界を舞台にした主にSF的な作品や設定を指す。核戦争や災害などで荒廃した世界で、生き残った人々が過酷な状況下で生活する姿が描かれる。資源の不足や治安の悪化、文明の破綻などが描かれ、時には新たな秩序や文化が生まれる様子も表現される。サバイバルや探索、モラルの問題などがテーマとして取り上げられ、人間の本質や社会の在り方について考えさせられる。代表的な作品には『マッドマックス』シリーズや『フォールアウト』シリーズなどがある。

資源を生み出しながら凍てつく大地の果てを目指す

中央の穴が大裂孔

メインボードには中央に全員のスタート地点である大裂孔があり、それをヘックス状の地形が取り巻いている。未開の土地は裏向きの氷原になっており、探検で明らかにするために必要な資源と、明らかにすることにより得られる報酬、それにおおよそ含まれる土地の情報が描かれている。見た目は完全にCivilization的で、これがユーロゲームであることが逆に驚きである。未開のタイルをめくっても敵が突然湧いてくるようなことはない。基本的に、このゲームの行動にはメリットしかない。ポストアポカリプスながら、安全の約束された冒険である。手番では各自アクションを2つずつ実行していく。

アクションは左の「2X」の中から2つ、案外選択肢は少ない

このゲームには4つの資源(食料・歯車・本といずれの資源にも交換できる水晶)が登場する。ゲーム中は、これらの資源を管理するのが1つの大事な要素となる。

資源は3種類+ワイルド

各プレイヤーは大裂孔からスタートし、四方にある目的地を目指して探検と開拓をしていくことになる。いずれの行動をするのにも通過する土地分の食料が必要であり、開拓では食料を払って移動した先に、本を使って人員を配置するか歯車を使って建物を建設することができる。一旦開拓して駒を配置すれば、いずれも次の探検や開拓の中継地点として利用できるので、将来的な目的地を思い描くことが肝心だ。

この開拓の目的は主に3つ(建物によるリソース獲得・未開地の探検・目的地への到達)ある。

建物によるリソース獲得

建物は砂漠ますに建設する

建物を空いている砂漠マスに建設することにより、建物を取り巻く土地からリソースを1回だけ獲得できる。このリソースは、個人ボードのテクノロジーを発展させるために重要な要素である。1マスに建築できる建物は1件だけなので、良い立地は早めに確保したいところ。現実世界と同じで、良い立地を見つけたら速攻で唾をつけにいく。もしくは、自分で探検を行って良い立地を造る。手番でのアクションは2回できるので、資源さえあれば良い立地を自らが造り、そこに建物を建てることも可能なのだ。とはいえ、中々資源を貯めるのも大変なので「エクリプス」のようなタイルめくりゲーになることはあまりないので安心して欲しい。裏面にある程度情報が書いてあるのも指針になる。

大小2種類の建物、コストも異なる

建物には大小の2種類があり、大きい建物は得られるリソースも2倍となるため、”駅近で目の前がコンビニ”のような好立地に建てていきたい。ゲーム終了時に建物の場所による勝利点が入る場合もある。

未開地の探検

中継地点から移動するマス分の食料を支払い、到達した裏向きのタイルに記されているリソースを支払うことでタイルを表向けることができる。この報酬として、ディスプレイからカードを1枚獲得でき、勝利点を得ることができる。表向けたタイルは任意の向きに配置することができます。また、表向けられたことによってボード上に現れた土地は既に建設済みの建物にも影響を及ぼすので、自分の建物に有利な形に配置したいところだ。相手の近くのタイルを既に建設済の相手の建物に不利なように配置する手もある。

湖があるか、拠点があるかがわかる

カードを獲得する要素はほぼこの探検に集約されているので、避けて通ることは難しい。そして、ゲーム中に得られる勝利点は一定間隔ごとにボーナスをもたらすことから、これも積極的に狙っていきたい。ボーナスでは、資源が詰まった宝箱がもらえたりする。

目的地への到達

人員の配置では、そこを中継地点にできること以外にメインボード上のメリットはない(個人ボードには能力のアンロックの恩恵がある)。建物と異なり、1マスに各プレイヤーが1個ずつ人員駒を配置できるが、後から来たプレイヤーはリソースを配る必要がある。戦闘が起こるわけでなくとてもユーロっぽい仕様だ。

荒廃した都市のようなマスが拠点

活動範囲を広げていき、四方の大拠点人員駒を配置することができたら、そこに記載されているゲーム終了時の得点が約束される。大拠点はゲーム開始時にランダムに配置される。ただ到達しただけで勝利点を与えるものもあるが、ゲーム中に登場する要素を集めることで高得点が狙えるようになっている。

大拠点にたどり着くことが1つの大きな目的

繰り返しになるが、見た目は4Xishなゲームな反面、その実はリソースを管理して早取りの要素にチャレンジしていく、とてもオールドスクールなユーロゲーム要素が骨子となっている。

運0%のカード運用

本作が切れ味を保っている要素の1つが資源を得るために使用するカード運用のシステムにある。当初は同様(完全に同じではない)のカードデッキを持ってスタートするが、後にプレイヤーの選択によってデッキのカードが増え、多様性がでてくる。これらのカードは表向きのカードプールとして管理し、任意のカードを使うことができる(したがって圧縮する必要はない)。使用したカードが一定の手順を踏まないとカードプールに戻ってこないのは、表向きのカードプールの仕組みも合わせて「モンバサ(スカイマイン)」味のあるシステムである。

カードをスロットに挿す

カードの使用方法はシンプルで、自分のボードの空きスロットにカードを挿すだけ。カードは上下にアイコンが書かれており、ボードの上下いずれかに半分挿した後、見えているアイコンの資源が手に入るという仕組み。カードを差し込むスロットには3色のカード色に対応するチップを埋め込む部分(スロットモジュール)があり、ここにあらかじめチップを埋め込んでおくことにより、同じ色のカードを挿した場合にのみチップの資源も手に入る。

上部に帯があるのがスロットを持つカード

さらに、カードにはさらにカードを挿せるスロットを備えているものがあり、ここに同じ色のカードを挿せばチップまで含めて連鎖をさせることができる。複雑なカードテキストなどではなく、色の整合性のみで連鎖を起こす仕組みがよくできており、チップによるスロットの強化も効果が分かりやすくて楽しい。カードの効果には、資源以外のものもありアイコンで示されている。このアイコンは少し分かりにくく、慣れが必要である。

カードは一旦捨て札置き場に置かれてから戻ってくる

カードスロットがすべて埋まってしまうと手番でそれ以上カードが挿せなくなる。その場合には冬眠(後述)という個人ボード周辺のClean upの手順を実行し、カードをスロットから除去する。除去したカードは一旦自分の捨て札置き場に置いておく。そして、捨て札置き場に置いてあったカードが自分のカードプールに戻ってくる。つまり、一度使用したカードは2回冬眠しないと戻ってこないのである。

デッキ構築的な要素はあるものの、引き運0%の戦略的なカード運用システムに、シンプルな強化システムの切れ味が相乗効果となってとても面白い。安易にテキスト満載にしなかったところも大いに評価したい。

テクノロジーを復活させていく強化要素

テクノロジーすごろくであるマシントラック

このゲームは荒廃した世界で過去のテクノロジーを復活させていくというフレーバーがあるので、個人ボードに色々な要素を追加していくことでどんどん勢力が強化されていく。具体的には、前述のカードスロットのチップによる強化に加え、建物建設で得たリソースによって強化される個人ボードのテクノロジー、そして人員を配置することによって解放アンロックされる勢力特有の能力だ。

スロットまで到達すれば選択したテクノロジーを実装できる

建物建設で得たリソースによって、個人ボードの3つの要素ですごろくのように駒を進めていける。こうして、テクノロジースロットのマスまで駒が到達したら、共通のディスプレイにあるテクノロジーを1枚とって埋め込む。こうすることで、埋め込んだテクノロジーを発動させて恩恵を受けることができるようになる。また、所々に駒が置かれており、これを外していくことによって進行トラックを埋めていく。これはゲーム終了時の勝利点となる。

ディスクを外すたびに進行トラックを埋めていく

テクノロジーの発動には電力が必要なので(電気が通っていた時代のテクノロジーだからね)、電気トークンを1つ置いてこれが発動済みであることをマークする。電気トークンを除去して再びこのテクノロジーを発動可能にするには、冬眠が必要となる。

電気トークンをテクノロジーに置くことで発動できる

テクノロジーのすごろくを最後まで進めることができれば、ゲーム終了時に対応する色のカードから得点を獲得できるようになるので、特化して進めることも大事だが、テクノロジースロットの中には、2色の駒が到達しないと埋め込むことができないものもあるので、その塩梅が難しい(=楽しい)。

勢力の特徴

勢力(種族)は基本ゲームに6種類入っており、拡張を適用することによってさらに増加する。勢力のボードには、建設のための建物と、使用することによって駒が外されていく特殊能力、そして人員配置によって解放される能力のツリーがある。人員の配置ではツリーを進めることによって勝利点も入るようになっている。資源を流用できる種族や特定の行動が強い勢力など、色々と居て楽しめる(筆者の場合はあまり重点を置いている要素ではないが)。

勢力ボードは両面仕様

特殊能力を使用して外されていく駒はテクノロジーと同じ進行トラックを埋めるためのものである。なお、勢力ボードは両面仕様となっており、裏面はより勢力の個性が際立っている。

特殊能力を使用することでもディスクを外せる

とりあえず寝てしまえば問題は解決する

手番ではアクションを2つずつ実行していくが、カードスロットが埋まるとそのうち資源が尽きてやることがなくなる。その場合には、冬眠を実行して個人ボードをリセットする。そうすることでカードスロットは再び利用可能になり、捨て札置き場にあったカードも戻ってきて再利用可能になるという寸法だ。昔のMacは致命的なエラーが起きても一晩寝ればなぜか復活していた。それと同じでこのゲームでも一晩寝れば、大体のことは解決する。

冬眠するたびに進めるマーカー

冬眠を実行すると、冬眠トラックで駒を進めることになる。ここでも恩恵がもらえるので、冬眠をひたすら我慢していればいいというものでもない。眠たいときは寝るに限る。

ガチャンという音がしそうなスイッチ

アクションの1つにスイッチというものがあり、これは1回使用すると冬眠しないと再び使用できない。任意のリソースを1つ与えるというだけの効果に対して大掛かりなこのスイッチは拡張ルールで真価を発揮する。

多岐にわたる得点

ゲームの得点は多岐にわたる。大拠点の得点、個人ボードからの駒の配置によって解放される得点、進行トラックによる得点、テクノロジーを最後まで進めていた場合のカードによる得点、カードのフラスコシンボルが得点になる場合もある。

これをさらに彩るのが、遺物による得点である。どう見てもエイリアンの頭にしか見えないこの遺物は、ゲーム開始時の指針となる遺物カードと連動している。すなわち、遺物カードに記載されている要素の得点が、ゲーム終了時までに集めた3色の遺物によって2倍、3倍と増えていくのである(遺物がなければ1倍)。

遺物がすべて取られたらゲーム終了フラグ

そして、ゲームの終了の条件は、この遺物がすべて取り去られることである。最後の遺物を獲得したプレイヤーには終了トリガーを引いたご褒美の得点も与えられる。個人ボードのエンジンがある程度完成した頃には、遺物がものすごいスピードで獲得されていき、加速度的にゲームが終了する。これらすべての得点要素が直接攻撃とは無縁のユーロゲーム的な競争であり、これらがそのままゲーム終了条件もコントロールしているバランスがエレガントである。

拡張:深淵の呼び声

ホビージャパン製品情報ページより

拡張「深淵の呼び声」では、新たな勢力が追加されることに加え、献身トラックとより強力な効果を持つサイフォズカードが登場して選択肢を増やす。また、影の薄かったスイッチに旅という新機能が追加され、スイッチの重要度が増す。基本ゲームでも十分に面白いが、慣れてきたら拡張を試してみるのも良いと思う。

プレイ記

重ゲー強者なぐもけ氏、トモさんとの3人プレイ。今回は初プレイなので勢力はA面で。

ゲーム開始時、2枚配られた遺物カードから1枚を選択する。精力の特殊能力を使用すると1勝利点(紫遺物)、スロットモジュールにチップを2枚セットする(オレンジ遺物)、水晶の隣に建物を建てる(灰色遺物)が今回の目標である。

担当勢力はクニバン。FFの黒魔道士みたいな勢力だが、特殊能力は食糧を支払うとカードが獲得でき、カードを獲得すると資源がもらえるというカード集めましょう勢力。大事なのは、人員を配置して能力を解放しないと恩恵を受けられないところ。この仕組みをよく理解していないまま(初プレイなので!)特殊能力の星マークを炸裂させてしまい、早速損をする。それでも、カード獲得に恩恵のある勢力とテクノロジートラックを最後まで進めることで得られるカードの得点でシナジーを生み出そうという戦略を(一応)実行していた。

序盤は隣に3つもリソースのある土地に一軒家を購入し、さらにはめくった土地のリソースもくっつけて、購入した地元の駅がダイヤ改正で急行停車駅になったような棚ぼた的資源獲得を成功させていく。

しかし実はこのゲーム、カードの獲得も大事だが、カードのスロットモジュールの改良がかなり重要だった。そしてそれを重ゲー強者もけ氏に思い知らされる。

なぐもけ
なぐもけ

スロットモジュールの色は揃えろって小学校で習いましたよね?

カードスロット付きカードも独占しいたなぐもけさんの生み出す資源の量は他の2人と比較すると桁が違う勢いで、冬眠も少なく、序盤のスタートダッシュは簡単に挽回され、すぐさま背中が見えないほど離されてしまう。

さーてそろそろ遺物でも、とノンビリしていたCOQが遺物を取得できるはずもなく、ほぼすべての遺物をなぐもけさんが獲得してゲーム終了。圧倒的に差をつけられて敗北。

しかし、初見で大敗したおかげで逆にリプレイ欲が湧いた。

総評

Gold

個人ボードのエンジンビルドを切れ味のあるオープンデッキ構築のメカニクスでまとめているのが面白いです。メインボード上ではモダンユーロ的にちょうど良いレベルで早取りのインタラクションが展開されています。運要素のないカードのやりくりでリソースマネジメントをするのが楽しいです。様々な要素がユーロゲーム的な最終得点計算に有機的に結びついているのが好みです。

本作は、複雑化していくユーロゲームの臨界点(重要な変化が起きる状態)であり、ヘビーユーロのあるべき姿を表したゲームなのではないかと思います。確かに様々な要素が存在しますが、それら一つ一つがシンプルで、勝利点の獲得方法は至ってはオールドスクール的なユーロゲームのそれです。見た目はアメゲーっぽいですが、完全なるユーロゲームです。これだけ完成度が高いと、勢力の違いによる戦略の微調整も楽しくなってきます。リプレイ性も非常に高いです。このシンプルなシステムの中でもコンボを見つけて動作させることができると気持ちいいですね。様々な要素が混在する割にはバランスも取られていると思います。

データベースによると最適人数は3人とされていますが、筆者の経験では2〜4人のいずれでも面白かったです。ダウンタイム的な問題で4人よりは3人の方が良いかもしれません。

欠点としては、ゲーム時間が長いことでしょうか。うまく誘導しているとはいえ、ゲームの終了条件がプレイヤーによる遺物の枯渇であるため、特に慣れていないプレイヤーの場合はゲーム時間が長引く可能性があります。また、アイコンが慣れるまでわかりにくいのは欠点ですね。あとは、「羊の皮を被った狼」か、「狼の皮を被った羊か」の問題で、筆者とは逆にアメゲーが好みの方の場合は見た目に騙されてしまうかもしれませんね。BGGで評価が極端に低い人の原因は主にここに集中しているように思います。人によってはコンポーネントの数が多すぎると感じる場合もあるようです。

ちなみに、本作にはシナリオモードが付属していますが、これは次第に要素が増えていくチュートリアル的なものです。同一メンバーで中途半端なシナリオモードを何度もプレイする機会を作ることは困難ですし、その必要はないと思います。

最後に超余談ですが、メインボードのタイルはダイソーで販売しているケースインケースの外箱の中にシンデレラフィットします。これでポストアポカリプスも安心。

シンデレラフィット!

タイトルとURLをコピーしました