倉庫の街

燃えやすい倉庫、むしろ火事の街

メーカーeggertspiele
発売年2010年
作者Stefan Feld
プレイ人数2-5人用
対象年齢8歳以上

ゲーム概要

一風変わった競りゲーム

フェルトの『倉庫の街』です。厄災が厳しいフェルトらしいデザインの、少し変わった競りが特徴のゲームです。プレイヤーの目的は「倉庫を火事から守りながら貿易を成功させること」です。競りで手に入れたカードでタブロービルド(自分だけのエンジン構築)をしてこの目的の達成を目指します。

ゲームボードと貿易カード

プレイヤーはハンブルグ倉庫街の商社社長となり、毎ラウンド提供される貿易カードを購入していきます。貿易カードには契約書や契約を成功させるための品物を積んだ船、倉庫を火事から守ってくれる消防士などがあります。購入は需要と価格の関係を綺麗に再現したダッチオークション(次第に価格の下がっていく競り)です。

とにかく燃えまくる街

ラウンドは春夏秋冬の4つに分かれており、4ラウンドにわたってゲームは進行します。2ラウンド以降には各ラウンド1回ずつ火事が発生し、消防士を雇っていないと勝利点を失ってしまいます。また、ゲームの最後にも火事が起ります。とにかく、ゲーム名を「火事の街」としても良いくらい燃えまくる街です。

山札は春夏秋冬の4ラウンド、必ず火事が起こる

市場カード、5金、労働者駒3個を受け取ってゲームスタートです。市場カードは自分専用の基地のようなもので、品物を1個だけ保管しておいたり、品物を売却したり、交換したりすることができます。ただし、市場カードによる売却はものすごく効率が悪いので、ゲーム中に効率の良い売却用のカードを手に入れていきます。

市場カード、商品変換と売却が可能

開始価格の決定が見事なダッチオークション

ラウンドでは数回の購入フェイズで貿易カードを購入していきます。貿易カードは購入フェイズごとに人数+1枚場に出ます。手番では、欲しいと思ったカードの前に労働者駒を1つずつ置いていきます。これを3巡し、全員が駒を置き終わったらお買い物タイムのスタートです。並んでいるカードの端から順にカードを購入するプレイヤーを決めていきます。

一昔前の空港に設置された公衆電話のように駒が並ぶ、並んだ駒の数がそのまま値段というシステム

カードはダッチオークションで購入していきますが、開始価格は並んでいる労働者駒の数と同じです。人気のあるカードは必然的に高騰します。一番前に駒を置いているプレイヤーから買うかどうかを判断し、買わない場合は駒を取り除きます。次のプレイヤーも同様に選択を迫られるわけですが、値段が1安くなるのです。見事な競りのシステムです。他のプレイヤーにお金を使わせるために労働者を置くというプレイができるようになっており、面白い駆け引きが展開されます。

タブロービルドの楽しみ

お金は絶えずカツカツです。お金は毎フェイズ開始前に1金ずつ銀行から配られます。また、前のフェイズで貿易カードを1枚も購入しなかったプレイヤーは2金を受け取れます(重要:忘れやすい)。これを忘れると、お金がカツカツすぎて胃液を吐くことになりかねません。

分厚い紙製コイン

その他、お金を得る方法として品物を売ることができます。元々持っている市場カードでは品物2個につき1金を得る事ができますが、特定の売却カードを購入しておくことによって品物1個を1金とすることができるようになります。このように、タブロービルドで自分だけの勝利点につながる仕組み(=エンジン)を作ることの楽しみがあります。

ちなみに商品は貿易カードの中に含まれている船にランダムに3つずつ載ってくるのですが、購入に成功した場合にはすぐさま使い切らなければなりません。厳しいルールです。

この厳しい戦いに勝つためには勝利点を稼ぐ方法は大きく分けて3つ。

主な勝利点の源

・契約書に書かれた品物を集める
・特定の建物カードを集める
・消防士を集めて倉庫を火事から守る

様々な得点源のカード

火事への対応が勝敗を分ける

貿易カードに混じっている火事カードがでたら、最も消防士を雇っているプレイヤーが得点し、最も少ないプレイヤーがカード記載の数字分だけ減点されます。ラウンドが進むと火事による勝利点の変動も激しくなります。お金がカツカツで苦しい中で厄災に対する備えを求めるところがフェルトらしいところです。

合計4回の火事が起ったらゲーム終了。ゲーム終了時に最多勝利点のプレイヤーが勝利します。

プレイ記

COQ(白)、JJ(水色)、ナカ(黒)、カジ(オレンジ)で4人プレイ。

このゲームのお金は凄く良くできていて、普通のタイルの倍くらいの厚さかつ銀色をしている。写真上部にあるのは金属コイン。これはスタートプレイヤーマーカーである。

早速消防士のおっさんが2枚も出ているが、始まる前に火事は重要なので消防士は必然的に大事なカードとなることを説明しておいた。

すると、やはり消防士を中心として労働者駒が並ぶ。ゲーム開始前に説明したのは2点。消防士の大事さとお金の大事さ。金は現実でもゲームでも大切にしなさいと。

また、今回はカードリストを何時でも参照できるようにして遊んでいる。特定の売却カード等はゲーム中1枚ずつしか出てこないので、カードリストを正確に把握していたほうがゲームは面白くなる。

最初のフェイズで全員が労働者駒を置き終わった図

白のCOQは消防士が欲しかったので、JJとカジの後ろに2つも駒を並べてプレッシャーをかける。流石にいきなり4金3金は払えまい、フッフッフ。これで、JJとカジがあきらめてくれれば最初の労働者駒では自分もスルーして1金で購入できる予定である。このような思惑を実行するのがこのゲームの楽しさの1つである。

そして、予定通り消防士を2人獲得。2人目は後ろに並んでいたJJのせいで2金となったが強行買い。さぁこれでいつ火事が起きても心配なし。むしろ火を着けてまわりたいくらいだ。

続いて登場したのが契約書と倉庫(!)倉庫は通常1つしか保管できない品物を合計5つ保管できるようになるという強者。かなり強いので絶対欲しいが、金がない。屈強な消防士達の筋肉におひねりを弾んだおかげで懐が寂しい。この便利な「倉庫」はゲーム中1枚しかでてこない。

資金不足で買えないとは知りつつも、邪魔と「ひょっとして」と思いながら一応並んでみる白COQ。

すると、JJが後ろからダブルで攻めてくる。2対1のプレッシャーがきつい。ATMで操作を間違っているわけでもないのに後ろからプレッシャーをかけてくる二人組みたいだ。

結局、カジも白COQもパスし、JJが倉庫を1金でゲット。

JJ
JJ

倉庫の街っていうくらいだから倉庫は強いはずです

その通りだよ明智君。まぁいい。「今に見ておれ」を心の中で3回繰り返して忘れることにする。

そしてまた消防士のおっさん登場。倉庫街イチの筋肉集団を結成すべく労働者を並ばせる。

COQ
COQ

あの筋肉だ!あいつをスカウトしてこい!あのホースの持ち方にスター性を感じる!

しかし、ホース男の後ろには長蛇の列。先頭に並んでいるCOQにはとても買えるはずも無く、消防士達は他社へと引き抜かれていく。

実はこの手番、スタートプレイヤー(スタP)だったのだが、スタPが一番つらい。どうしても後ろから駒を被せられる危険があるからだ。基本的にはスタPは我慢の手番だと思った方が良い。

こんな感じにカードを揃えていたところに火災発生。消防士3点ずつのCOQとナカが得点し、消防士0だったカジが焼けこげて減点。

火事が起ったということはそろそろ季節も移り変わり、船が到着するようになる。船が到着すると進駐軍にチョコレートをねだるように子供達が群がる。そして価格は一気に高騰。

しかし、この後はガンガン船が到着する。そのかわり売却カードや倉庫はもう二度と出てこない。序盤に金を使った者は貧困に喘ぐし、金を残した者は荷物の処理に困る。自分でプレイのバランスを取らなければならないゲームである。

各々自分の売却カードや契約書と相談して欲しい品物を積んだ船に並ぶ。契約書は書かれている品物を置くとゲーム終了時に勝利点となる。ただし、一度置いた商品はのりでくっついたように剥がすことができなくなる。

そして季節は進み、消防士界の大スターが現れる。最初の火事でその破壊力を知った市民が群がる。その横で白COQは安価で契約書と船を買いあさる。この時点でカジのみがお抱え消防士が居ない状態。焦げないためにはなんとしても手に入れたいところだが、スタPかつ長蛇の列を見て断念。

そして火災発生。一人、カジだけが焼けこげていく…。そして、JJが沢山集めると指数関数的に勝利点が増えていく事務所を集めている。それ以外はこれといって平均的な展開。これを阻止すれば勝てそうだ。

案の定、JJは事務所を重点的に攻めてくる。カジは大嫌いな火事を避けるために消防士の獲得を目指している。

しかし、JJはここで最悪のスタP。動向を観察され、ナカとCOQがプレッシャーをかける。3金しかもっていないJJは事務所1つを2金で購入するのが精一杯だ。そして、白COQは漁父の利で4点消防士を獲得。

終盤、COQのカード。船を勝利点に換えるカードをゲットして準備万端。あとは残りの契約書を完成させるのみだ!

そして最後の火事が起こり、カジは念願の火事回避を成功させ、JJが焼けだされた。

その他の点数を全て反映したところ・・色々なところからバランスよく得点した白COQの勝利!幼い頃から火災が絶えなかったカジ倉庫も効率良く契約を成功させ見事な追い上げで2位。

最終得点

 COQ:32 カジ:28 JJ:20 ナカ14

総評

Silver

面白い。独特な競りシステムと評されることが多い本作ですが、確かに需要と価格の関係がリアルタイムに反映されるシステムが非常に良く出来ています。相手への干渉もこのシステムを利用してそのまま行えるのがエレガントです。

苦しい競りのシステムをすり抜けて獲得したカードによりタブロービルドでできることが次第に広がっていくことも楽しいです。勝ち筋も色々あり、ユニークな展開を何度も楽しめます。コンポーネントの質も良いです。

このゲームは公称プレイ時間45分ですが、本作のようにきっちり45分と銘打っているゲームはどれも良く考えて作られているような気がします。中量級のユーロゲーム好きの筆者の好みです。ただし、初見の方と遊ぶ場合にはカードリストを用意した方が面白く遊べます。拡張カードセットが発売されていますが、残念ながら現在は希少品です。

少し前にテーマをヴァイキングに変更した「ヨーヴィック」というリメイク作が発売されています。現在はそちらの方が手に入りやすいかもしれません。

購入先情報

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