要素は多いほど良い。なぜなら俺がフェルトだからだ。
メーカー | Ammonit Spiele |
発売年 | 2011年 |
作者 | Stefan Feld |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
120%フェルト作品、俺がフェルトだ
フェルト作、ローマの勢力争いをテーマとして、伝統ゲームマンカラを主軸にしたゲーム「トラヤヌス」です。新興メーカーと組み、ルールもコンポーネントも気合いが入って発売されました。アートワークも非常に素晴らしいゲームです。多くの得点要素をうまくまとめ上げ、罰則への苦しい対応も盛り込みつつリプレイ性も担保するフェルトらしい作品です。
この作品では、要素一杯なデザイナーとしての一面が強く出ているように思います。したがって、メインボードには様々なアクションの受け皿が所狭しと描かれています。
それぞれ、エリアに示されたアイコンのアクションを実行できるようになっています。軍事行動と建築作業を行うエリアには、事前に自分の駒を派遣し、兵隊や作業員として置いておかなければなりません。
マンカラアクションで脳を焼け、俺がフェルトだ
1人1枚配られる個人ボード。大事なのは、右半分を占める「アクションサークル」。手番では、これを利用してマンカラアクションを行います。それ以外の部分は、主に獲得したタイル等を配置しておく場所となっています。右上に派遣前の駒をストックしておく場所も用意されていますね。ブルゴーニュの城のようにペラペラの紙ではなく、厚紙の個人ボードです。大きな凱旋門の駒もいい味。
アクションサークルの利用の仕方は、伝統ゲームである「マンカラ」方式。つまり、あるトレイに置かれているマーカーを隣りのトレイに1マスずつ移動しながら1つずつ置いていくのです。その後、最後に移動したトレーの内側に書かれたアクションを実行できます。
上の写真だと、凱旋門駒の隣りのトレイからマーカー(ピンクと白)を1つずつ隣のトレイに置いていき、右下の、ピンクのマーカーを置いたトレイのアクションを実行できます。
また、アクションを行ったトレイに置かれているマーカーの色と、トラヤヌスタイル(外周のギリシャ数字のマスに置かれているタイル)に書かれた色が合えば、トラヤヌスタイルに書かれたボーナスが貰えます。写真では、マーカーの色(ピンク)とタイルの色(ピンクまたは緑)がマッチしているので、ボーナスが貰えます。
トラヤヌスタイルをアクションサークルに配置するのも、6つのアクションのうちの1つです。メインボードから獲得したトラヤヌスタイルは、凱旋門駒が置かれているところに配置されます。こうして、手番でアクションを選択して実行していきます。
やってみるとマンカラ自体がとても楽しいことに気づきます。様々な要素を両立しようとすると、すぐに脳がオーバーヒートするのを感じると思いますが、同時に脳が喜ぶような満足感を得られるます。やりたいことができないもどかしさを楽しみましょう。
行軍・商売 ポイントサラダ、俺がフェルトだ
この他に、商品を示すカードも登場します。6つのアクションのうち、船のエリアのアクションを選択することにより、商品カードを出荷したり、補充したりできます。組み合わせ次第で直ちに点数が入るのと、ゲーム終了時のボーナスタイルによる得点が期待できます。
さらに、ラウンドごとに表向けられる庶民の欲求にも対応しなければなりません。広場から得られる広場タイルで、庶民が欲する娯楽、パン、宗教の問題を解決しなくてはなりません。これを怠ると、大幅に勝利点が削られてしまいます。トラヤヌスタイルの中には、欲求のうち1つを恒久的に満たしてくれるものもあります。
任意のアクションを選択するにはトレイのアクションマーカーの個数を調節しなければならず、トラヤヌスタイルを発動させるには、その色にまで注意を払わねばなりません。アクションを実行できても、数あるエリアのどこを狙うのか、熟慮が必要です。各アクションのバランスもとても良く、他のプレイヤーの動向も見極めることが重要です。
より詳しいルールはプレイ記の中で。
ゲームはメインボード下部で管理する時間の経過(4期)で終わります。ゲーム終了時、最も得点の高いプレイヤーが勝利します。
プレイ記
TBGL宮原ゲーム会にて。海賊船さん、MOGさん、流さんとプレイ。COQは緑色。
ゲーム開始時、1枚のボーナスタイルと3枚の商品カードを受け取る。ある程度は指針を持ってスタートするわけだ。
さらに、アクションサークルには3枚のトラヤヌスタイルも置かれた状態でスタート。マーカーの方は、各トレーにランダムで2個ずつを事前に配置しておく。
COQの初手では、左のトレイのマーカーを移動させ、トラヤヌスタイルを達成しつつ、広場から広場タイルを獲得するアクションを実行(柱みたいなやつ)。
これによって、トラヤヌスタイルに書かれた勝利点をゲットすると共に、兜の印(娯楽:拳闘?)の欲求には恒久的に対処できるようになる。
それにしても、頭ではせいぜい、2手先くらいまでしか考えられない。次に動かそうと思っているトレイに置かれているマーカーがいつの間にか増えている。もちろん、自分で動かしている。
あ…ありのままをはなすぜッ…!!
動かそうと思ったら、増えていたんだ…。
という展開を誰もが経験するはずだ。
とりあえず、初期手札がすべて違う商品だったので、船から出荷。各組み合わせは、早い者勝ちで点数が高くなるように出来ている。それ以外のアクションも、基本的には早いほうが有利なので、アクションサークルの不自由さと、実行したいアクションの間で身もだえる。
軍事エリアにもちょっかいを出し、タイルを獲得。背の高い駒は軍事指導者駒で、これを移動させた先にあるタイルを貰える。また、軍事アクションの別の選択肢として、駒の派遣を行うこともできる(緑の楕円、駒が密集しているマス)。この時、兵隊を各エリアに送ると勝利点が手に入る仕組み。こちらも、早ければ早い程勝利点が沢山手に入る。早い者勝ちなので、プレイヤー間の競争(インタラクション)は厚めだ。
そうこうしているうちに、市民の欲求も2つめが表向けられる。時間を示すトラックは、各自のアクションにより、すごいスピードでまわっていく。案外、1期は短い。
こちらは、建築のエリア(オレンジのタイル)。建築タイルは勝利点と追加アクションをもたらす。終了時に同種のタイルを沢山集めていれば、さらに勝利点が貰える。
ストラスブール的なテイストのエリアで、派遣した先のタイルを貰えるが、自分の駒は縦横に接していなければならない。中々目的のアクションを選択できない時は、これに頼るのも手だ。
取り敢えず、序盤〜中盤は庶民の欲求に応えられるよう、欲求充足のトラヤヌスタイルを中心に集める。この手の奴は、序盤に揃えないとどんどん費用対効果が薄れていくしね。
というわけで、欲求には全種対応できるようになった。しかし、あくまで欲求が1つだった場合のみの救済タイル。同じ欲求が2つあった場合には、広場タイルを獲得しておかなければならない。
盤上も中々賑やかになってきた。途中経過では、COQが中々のペース。茶色のMOGさんが少し遅れている。
ここらで、カードの出荷を行っておこうと、カードを引けるボーナスを持つトラヤヌスタイルを配置。さらには、船の追加アクションを行えるタイルも獲得しておく。
この野望を一気に達成し、カードを公開して最終ボーナスにも備えておく。
この時点で持っているボーナスタイルは、出荷したカードによるものと、パンのタイルによるもの。なるべくこの図柄のカードを出荷し、パンのタイルも保持しておきたい。これらが揃えば、後ろから迫る、赤の海賊船さんを抑えられるだろう。
などと考えていると、序盤出遅れていたMOGさんが不穏な動き。なんと、勝利点を大量に与えるトラヤヌスタイルのみで自分のアクションサークルを固めている。そして、これを次々に達成し、不気味に差を詰めてくる。
対するCOQも、残り少ない勝利点のトラヤヌスタイルを獲得して自分のボードに配置するが、いかんせん、このタイルを活性化できるようなマーカーの移動ができない。終始苦しいマンカラアクション、最高だ。
半ばこのタイルの活性化はあきらめ、最後の勝利点計算を目指して、パンのタイルを獲得。これで、庶民の欲求にパンが2つ含まれていなければ、大量勝利点を獲得できるはずなのだ。
しかし、なんという運命のいたずら… 庶民はパンを2つ要求し、勝利点を得るには至らず。ゲームは、最後のボーナスに向け、カードの出荷ラッシュをした海賊船さんがボーナスを大量獲得して勝利。
トラヤヌスブーストで追い上げたMOGさんが、1歩後ろにまで迫るという危ない展開だった。未達成のタイルを残していたので、この作戦を実行に移す手番がもう少し早かったらやばかった。
プレイ時間:140分
総評
Silver
これでもか!俺がフェルトだ!という要素ガッツリのゲーム。こうでなければフェルトではありません。これだけの要素をうまくまとめた作者は流石に優秀です。フェルトの作品なので、みんなが大好きな対応しないと大減点の要素もあります。ちなみに、本作は当時のエッセンの出口投票でも2位という輝かしい成績でした。
マンカラという伝統ゲームをアクションに取り入れたのは非常に面白い試みで、これを利用してアクションを選択するのはとても楽しい時間です。これは本当に凄く好き。長時間ゲームなのだけれど、このアクションのことを考えると、不思議とまた遊びたくなります。絶対脳内麻薬が出ています。
マンカラを採用したゲームは本作が初めてではありませんし、これまでも多くの作品がありました。これらを評価する時に注意したいのは、「マンカラ自体が面白い」という点です。マンカラが面白いので、そのゲームも面白いと錯覚しがちです。本作の場合は、マンカラの面白さを多彩なアクションの苦しいマネジメントの基盤に採用しており、マンカラを採用した意味があるデザインとなっているので「マンカラの出落ち」のような状態にはなっていないと言えます。また、目標タイルの指針と得点バランスが良い早い者勝ちのシステムがリプレイ性を向上させており、何度でも遊べるゲームに仕上がっていると思います。
気になるのはスタートプレイヤーの優位性です。早い者勝ちのシステムの中で、スタPの有利は不動。また、かなりの確率でスタPは手番が1回多くなるという終わり方をします。「要素は多いんだし、別のエリアでアクションすれば別にいいだろ、俺がフェルトだ」ということみたいなので、バランス措置があると良かったですね。また、流行りのエンジンビルドのように、ゲームが進むにつれて今まで出来なかったことができるようになり、ゲームが加速して(盛り上がって)終わるというタイプのゲームではないので、この辺りで好みが分かれそうな気はします。僕は好きです、重苦しい感じ。
コンポーネントは、とても豪華。凱旋門駒なんてタイルでも良さそうなものですが、立派な門が4つ付属しており、メーカーのやる気が伺えます。不思議とたまに遊びたくなるゲームです。