白鷺城

白鷺の白き姿の如し

発売年2023年
作者Isra C., Shei S.
プレイ人数1-4人用
対象年齢12歳以上

ゲーム概要

舶来物のジャパニーズ白鷺城

あるようでなかったダイスの縦置きシステム

日本の兵庫県にある国宝「姫路城」は、そのシラサギが羽を広げたような優美な姿から「白鷺城」の愛称で親しまれています。本作は江戸時代の白鷺城をテーマとしたダイスプレイスメントゲームです。プレイヤーは藩主に取り入り、自分の配下を城に送り込んでいきます。9手番しかない中で、いかにリソースを稼ぎ、コンボをつなげて城への部下の配置に繋げるかという手番数が決まっている中で如何に効率的に動くかというゲームです。ダイスプレイスメントには少々工夫が施されており、3人以上プレイ限定ではあるものの、新しい仕組みも楽しめます。いわゆる外国人から見るトンデモ日本ではなく、きちんと監修を受けている痕跡のある作品です。小さめの箱に詰め込まれた満載の木駒も見どころです。「赤の大聖堂」を手がけたデザイナーの作品で、ダイスを使ったソリッドなゲームを作る印象のあるコンビです。

ラウンドマーカーは巨大な木製シャチホコ!

珊瑚・白・黒!

両端しか取れないが左の低い目のダイスにはボーナスがつく

このゲームに登場するダイスは3種類、「なぜ赤だけ珊瑚なんだ?」という爽やかな疑問の風が吹いた後にゲームの根幹となるダイスピック&ダイスワーカープレイスメントの説明を聞くことになるでしょう。3種類のダイスは3ラウンドある各ラウンドの開始時にすべて振られた後、色ごとに立派な橋の上に昇順に1列に並べられます。手番では、列の両端にあるダイスのどちらかしか取ることができません(!)。つまり、最も大きな出目か最も小さな出目しか取れないということです。この後このダイスを配置するマスにはダイス目が記載されており、その差分がプラスならお金が貰え、マイナスならお金を払ってダイスを配置しなければならないから大きなダイス目を取りたいという仕組みです。ただ、小さいダイス目を取ると後述する灯篭ボーナスがもらえるという特典があるのであえて小さい出目をとる戦略もあって毎手番とても悩ましいです。

また、3人プレイ以上では、ほとんどのマスに2段目のダイスを配置することができます。この場合は、置かれていたダイスの出目に対する差分で配置コストが増減します。他人の動向によりリソースが大きく影響を受けることになります。手番順が早いほど大きな出目のダイスが取れる可能性が高い(場にあれば)ので手番順を早める行動も大事です。

5の目に4を置くには1金支払う必要がある(珊瑚色のアクションができる)

配置したダイスの色により白鷺城内で様々なアクションができます。各部屋にあるダイスの色はゲームごとにランダムに変化し、場合によっては1つの色で複数のアクションができる部屋ができることがあり、そこは人気の部屋となるでしょう。さらに、ダイスに対応したアクションはカードでランダム性が担保されており、こちらもゲームごとに変化します。しかも、このカードは部下を送り込むアクションによってプレイヤーが獲得できるようになっており、「あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!自分の手番が来た時にはやりたいアクションがカードごとなくなっていた…何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかったというポルナレフ的に盤面がガラッと変わる事態も発生します。盤面がガラッと変わりすぎるとダウンタイムが長くなる傾向があるので嫌われがちな要素でもあるかと思いますが、獲得したカードは結構エレガントにコンボに絡んでいくので賛否両論というところでしょう。

個人ボードでリソースを管理する

コンボは色々、勝つ道は1つ

ゲームの主な得点源は個人ボードから白鷺城内への部下の送り込みです。これをしないと勝てません。庭師・藩士・侍をメインボード上の所定の場所に送り込むことで様々な恩恵とゲーム終了時の勝利点を稼ぐことができます。そして、これらを送り込むために3種類のリソース(飯・真珠(とお金)・鋼鉄)がそれぞれ必要なのです。アクションのコンボを発動させることで派手に得点を稼ぐのではなく、リソースを獲得しつつこれらを配置するアクションを同時に発動させ、できるだけ多くの部下を送り込むゲームという感じです。戦略の幅は狭め。

駒を送り込むとリソースが解放される

とにかく全ての要素が絡み合っている

リソースをもらえる場所に庭師を置くのは序盤のセオリー

庭師を送り込むことにより直ちに恩恵としてリソースが貰えたり、お金と引き換えに強めのアクションができたりします。また、ラウンド終了時に3つ余るダイスの色と配置した場所の色がマッチしていれば、再度のそのアクションができる仕組みです。序盤はリソースが貰える場所に庭師を配置しておき、後半は強めのアクションができる場所に配置するのがセオリーとなりそうで、後者の方がゲーム終了時の得点も高く設定されています。

藩士が到達した部屋のカードはもらえる

藩士を城門に送り込んだら、真珠を使って城内の部屋へ侵入させ、一段ずつ階層を上げていきます。最上段まで辿り着ければ大きなゲーム終了時勝利点が約束されます。階層を上げていく時、途中とまった部屋にあるアクションカードを獲得して個人ボードに配置できます(部屋には新たにカードが置かれます)。個人ボードに配置する際に、これまで置かれていたカードは裏返して個人ボードの下部に置きます。カードの裏面はリソースが1つ書かれており、カードをたくさん獲得すると、裏面にして置かれたこのリソースがどんどん累積していき「灯篭ボーナス」というアクションを実行した時にもらえるリソースが増えていきます。エレガントなシステムです。

最上段まで上がれば高得点とボーナスがもらえる

また、個人ボードに3箇所あるダイス置き場(出目が6なので大変ですが)にダイスを置いてアクションを実行した場合、その列に対応する獲得していたカードのアクションが実行できます。この時、自分の部下駒を城内に配置していればその下に描かれているリソースが解放されるようになっており、1列のリソースを全部貰いつつアクションができます。この個人ボードのアクションマスへのダイス配置の仕方次第ではここでも前述の灯篭ボーナスが発動する仕組みになっており、これでもかという要素の依存関係がデザインされています。

獲得したカードは灯篭ボーナスに累積されていく

を操練所に送り込むことにより、そこに記載されているアクション(リソースの獲得)ができます。さらに、ゲーム終了時に城内に送り込んだ藩士の数との掛け算で勝利点が加算される仕組みになっており、こちらも無視できない要素です。城門に留まっている藩士はピンポンダッシュをしているだけなのでこの得点には絡めません。

操練所:配置時にアクションができるのに加えて終了時の勝利点の源

部下を送り込んでキメるコンボが肝

「白鷺城での一年」が絶妙にダサくて良い

手番順は白鷺のトラックの順番で決まり、これを進めておけばゲーム終了時の点数ももらえます。その他のリソースとして家紋もあり、これはお金や任意のリソースに変換することもできます。部下を送り込むことで別のアクションを連鎖させることができる場合が多いので、なるべく効率的にリソースを集め、部下を送り込んで一気に2つ3つのアクションを連鎖させることを狙います。これがうまくハマり、リソースを無駄なくアクションを連鎖させることに成功すると中々爽快です。ゲーム終了時に勝利点の最も高いプレイヤーが勝利します。

総評

Silver

非常によくまとまっているゲームだと思います。日本の狭い住宅事情にも優しい小さな箱に詰まったBIGユーロ。満載のコンポーネントもこれに異を唱える人は少ないと思います。これを執筆している時点でBGGの評価も8.0とかなり高いようです。とにかくゲーム全体が1本の糸で縫い付けられているように絡んでおり、細部に渡るまで綺麗なデザインのゲームだと感じました。反面、やることは決まっているのでスケールは大きくないです。

基本的には部下を送り込むことは必須です。そのためのリソースをいかに効率よく稼ぎ、溜まったリソースを使ってアクションを一気に連鎖させるかのパズルを解いていくゲームです。勝つための経路は決まっており、それを効率よくこなすことを目指す印象です。プレイ時間との兼ね合いもあって戦略の多様性には手を広げなかったデザインのように感じます。その代わりにありとあらゆる要素の間に関係性を持たせてパズルを難解にデザインしています。部下の送り込み自体にはインタラクションがない(早取の要素などがない)のもパズル的なゲームと言える側面でしょう。トコトン考えようと思えばものすごく頭を使うので程々に楽しむ方がおすすめです。

ダイス配置が2段まで可能でその出目差分でコストが増減するところが新しく、かつ手番順で大きな差を生むデザインだと思いますので、ダイスの2段配置が許される3人以上のでのプレイが推奨です。手番順を変更するための白鷺のポイントを獲得する手立てが(灯篭ボーナスを除き)序盤にほとんどない状況が生まれる可能性があり、開始時の手番順が遅かったプレイヤーが少し気の毒な展開がある気がします。もう少し開始時手番順が遅いプレイヤーへの恩恵があると良かったと思います。

共通ダイスからのピック限られたマスへの配置に加えて配置マスのアクション自体の変化とリアルタイムに変化する状況が生まれるゲームなので、表裏一体の問題として手番が回ってくるまでに盤面が大きく変わっており、その時点で戦略を練り直さなければならなずにダウンタイム(待ち時間)が長期化しがちです。計画することに自体に意味がない場合があるのでこれを嫌うプレイヤーはいると思います。この点は前作「赤の大聖堂」でも取り沙汰されていた記憶があります。

ある程度ゲーム慣れしているlet it be(なすがまま)なメンツと遊ぶ分には問題ありませんが、あまり長く考えていると待ち時間の長い重量級のゲームになってしまうので注意が必要ですね。9手番しかないこのゲームでは1手番が重いので長考する必然性があります。その意味では最も競争が激しく面白いであろう4人プレイはダウンタイム的にもキツイかもしれません。手番順の遅いプレイヤーが不利すぎる問題もあり、3人プレイが推奨と感じました。3人であればそれほど手番順の不利さを嘆くまでもなく、ダウンタイムもそこそこに楽しめると思います。

筆者的にはここまで意図的に要素が絡められていると考えるのが億劫になってしまいそうなのでもう少しエレガントなポイントを絞ったゲームが好みです。また、もう少しダウンタイムを少なくする工夫と戦略の多様性がプレイヤー側にあるデザインの方が好みです。とはいえ細部までとても美しくまとめられた良いゲームですし、面白いです。箱も手番数も日本人好みの凝縮加減と思います。ディテールにこだわった木駒は個人的にはあまりそそられませんが(キューブやディスクで良い)、価格的にも頑張っていると思います。

タイトルとURLをコピーしました