ギャンブルは面白くて、やがて、悲しきかな
メーカー | alea |
発売年 | 2012年 |
作者 | Rüdiger Dorn |
プレイ人数 | 2-5人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
R・ドーンのダイスゲーム
Rüdiger Dornといえば「ゴア」や「ダイヤモンドクラブ」、近年では「イスタンブール」で高名のデザイナーです。代名詞のドーン歩き(足跡としてディスクを1つずつ残しながら移動するシステム)はイスタンブールで広く知られることとなりました。しかし、本作はダイスゲーム。当時はなぜ彼がラベンスバーガーアレアからダイスゲームを発表したのか謎でした。結果として、さすがDornという出来のカジノをテーマにしたダイスゲーム『ベガス』が誕生したわけです(その後、タイトルはなぜか「ラスベガス」に変更されています)。
コンポーネントの質がいい
箱を開けると、中に入っているのは5色各8つのダイスとカジノタイル6枚。ダイスは標準的な大きさ。小さ過ぎずとても良い。それから、10000$~90000$までのお金カードが沢山。カジノタイルには、それぞれダイス目が描かれています。お金は紙幣では無くカード製で、素晴らしい出来です。
気付いたら熱くなっているダイス数マジョリティ
ゲームは4ラウンド。まずは各カジノにお金カードを割り振ります。カードを山札からめくり、50000$を越えたら次のカジノへ。
手番では、自分のダイスをすべて振ります。出た目の中から好きな目を選択し、その目のダイスすべてを対応するカジノに送り込みます。これを全員のダイスがなくなるまで続け、各カジノのお金カードを奪い合います。各カジノで、ダイスを最大数置いているプレイヤーから、金額の大きいカードを獲得して行きます。
ただし、数が完全にバッティングした場合は何も貰えません(写真の3は青が40000$、白が20000$、緑と赤はバッティングしているのでゼロ)。これを4ラウンド繰り返し、最もお金を稼いだプレイヤーが勝利します。
2〜4人プレイ時のヴァリアントルールとして、使用しない色のダイスを各自に配り、通常通りに手番を行って、お金の獲得の時だけそのダイスをノンプレイヤーとして扱うというものが用意されています。バッティングが妙の本作の面白みを担保するヴァリアントとして優秀です。
プレイ記
Tさん、Mさんと3人プレイ。COQは緑。
箱絵でダイスを振るおじさんのような濃い二人を前に、ルールを説明してゲームスタート。お金カードが綺麗なのと、サイコロが結構しっかりしてるのとでかなり気分でちゃう見た目である。
Tさんの第1投。最初から3つもダイスを置くなんてヒヨッコのやることだぜ。
男なら、まずは”様子見”からだ。
と思ったら、70000$のカジノの5の目が3つもでたのでホイホイとダイスを置く。
即システムを理解したTさんは、ダイスを1つだけ置きながら。
これ最初にあんまりダイス置きたくないな
その通り。
といいつつ、80000$のカードがあるカジノにちゃっかりとMさんが相乗り。
ひとり取り残されるのは寂しいので飛び込む。これで三つ巴。バッティングしているのでこの状態では誰もカードを貰えない。
他人より先にダイスが無くなるのは怖いので、ダイスが無駄にならず、かつ沢山置かなくて済む目を一生懸命見つける。結構悩ましい出目の時もあるので考えどころもある。
そこへ、彼の80000$カジノで新たな展開。黒と赤がバッティングしており、このままだとカードはCOQのもの。しかし、気は抜けない。なぜなら、どちらかの色が1つでもダイスを置いたら、たちまちCOQは3位に転落してしまうから。
ラウンドは終盤。左端の80000$カジノを目で制しつつ、4番の90000$カジノにも手をつける。現在のところ緑2個、黒2個で優勢。
しかし、ここに黒がのってくる。もはやCOQに残されたのは、最後のダイスで奇跡の4を出すことだけ。そして振る。ダイスを。4の目を信じて。
…が、出目は5。超無駄な5番のカジノに最後のダイスを投入し、COQの第一ラウンドは終了。相手にダイスが無いとわかるや、途端に色めき立つ他の二人。悪魔のような笑顔でダイスを振る。
無念にもバッティングされてしまった4番のカジノには、Tさんがダイスを送り込んで来て漁父の利。1番のカジノも赤が3つで最多となり、COQには最悪の展開。
終わってみれば、獲得できたのは、無駄にダイスを突っ込んだ5番のカードのみ。第一ラウンドから思いっきり差がつく展開に。その後、なんとか追いすがるも、最後までトップは揺るがなかった。
Mさん:62 COQ:51 Tさん:42
プレイ時間:30分
総評
Silver
メーカーはアレアですが、アレアらしからぬ軽いゲームです。アレアはラテン語で”ダイス”という意味なので、全くかけ離れたゲームではないのですが。非常に軽い分、少々の説明で誰でも楽しめるという大きな武器を持っています。
ダイスゲームといえば、ルールを読んだ時には『こんなに○○でゲームになるの?』と思うのが通例。ベガスの場合、○○には単純のふた文字が入りました。実はこれ、バッチリはまった時にはダイスゲームとかなり相性の良い単語ですよね。ダイスゲームの醍醐味の一つに、出目が確定した瞬間の熱狂というものがありますが、このゲームはそれを演出するに足る要素を持っていると思います。即ち、単純さです。
ラウンドは終盤、誰もが固唾を呑んで見つめる盤上で、最後のプレイヤーが振ったダイス目は…! みたいな。
そして、これに至る演出。
各ラウンドは短いのですが、すべてのプレイヤーが賭けに絡め取られて行く仕組みが良くできているので、毎ラウンドの終盤には場があたたまっています。いきなり主戦場を決めるのは不利なので、当初は様子見で1つずつダイスを置いていくわけですが、ダイスが減り、次第に余裕がなくなってくると降りたくても降りられない局面が必ずやってきます。丁度、ちょっと覗くつもりです立ち寄ったパチンコ屋で、気付いたら散財して熱くなっているような感覚です。
ダイスゲーム、ギャンブルゲームは勝っても負けても運ゲーという一言で片付けられがちですが、このゲームはそうはさせない、気付いたら熱狂してしまう熱さを生むデザインとなっていると思います。
髑髏と薔薇、FabFib、ブラフなどのゲームが、最後の2人になっても同じシステムで勝敗を決定するのに、最低もしくは至適プレイ人数が3人からなのには、大きく2つの理由があると思います。1つは、それまでのブラフの掛け合いでクセを掴むこと。そしてもう1つは、勝敗と駆け引きを楽しむために場を暖めることです。このゲームは、後者の方をシステムで上手に誘導してくれています。
白いダイス拡張入りの3〜4人プレイがお勧めです。ちなみに、2人ゲームでもソコソコ面白く、いやらしい展開になりますよ。