死が訪れた時に死ぬのは俺なんだ。
だから自分の好きなように生きさせてくれ。
メーカー | eggertspiele |
発売年 | 2011年 |
作者 | Inka Brand, Markus Brand |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 12歳以上 |
ゲーム概要
リア充デザイナーによる「死」をめぐる人生のゲーム
夫婦でデザインを手掛けるBrand夫妻の『村の人生』です。BGGの作者のページやSpielboxなどのインタビュー記事を見ればわかるとおり、とても仲睦まじいご夫婦ですが、本作で彼らの名前は一気に世界に轟きました。2012年のドイツゲーム大賞エキスパート部門(KDJ)受賞作です。
テーマは題名通り、「村での一族の人生」です。システムを構成するメカニクスはワーカープレイスメントとリソースマネジメントとちょっとだけ拡大再生産。みんなが好きなメカニクスが詰まったゲームになっています。
意味のあるワーカーの「死」
このゲームの特徴は「死」。通常のゲームであれば、ワーカーが死ぬことはマイナスでしかありません。しかし、このゲームではワーカーの死は一族の歴史、誇りとして語り継がれていきます。死んだワーカーは墓に葬られ、村に貢献した人物として一族に勝利点をもたらします。とても新規性のあるアイデアです。
村の中心広場では結婚式や収穫が行われ、教会や議会、職人が働く仕事場、市場などがあります。大きくて綺麗なボードです。プレイヤーの手番では、このうちのいずれかの場所でアクションを行います。
充実したセットアップで序盤から面白い
ラウンドの最初に、タイルに示されたリソースを袋に入れ、各アクションを行う場所に撒いていきます。カラフルな4色は、信仰や説得力などのリソース。黒は疫病です。セットアップのお陰で序盤からいきなり熱いゲームを遊ぶことができるようになっています。
こんな形に散りばめられたリーソスを1つ取り、その場所でアクションを行います。もちろん、アクションは早い者勝ち。リソースが無くなってしまった場所のアクションは行えません。また、アクションは行えるけど疫病しかないということもあり得ます。
己が家族の生死をコントロールする個人ボード
メインボードとは別に、個人ボードも。家族コマには1〜4の世代番号がついています。そして、個人ボードの周りに書かれた砂時計のマーク。これは一族の時間の経過を示しており、アクションを行ったり、疫病コマを取ったりすると少しずつ進みます。これが一周すると、自分の家族が一人亡くなり、村の歴史に刻まれます。次の世代の一族を世に生み出すには、村の広場で結婚のアクションを行います。
アクションを行うには、リソースコマを1つ取り、家族を配置します。一度家族を配置すれば、以後はコマをとるだけでアクション可能となります。
職人の仕事場では、馬車や鋤などを制作することが可能です。非常にユニークなのは、その時のコストをリソースで支払っても良いし、時間で支払っても良いところ。あまり時間を進め過ぎると、仕事をする前に家族が死んでしまいます。
様々なアクション、様々な勝ち筋
収穫のアクションを行うと、個人ボードで麦が収穫できます。この時、職人のアクションで造ることができる、鋤や牛などがいると、通常よりも沢山の麦を収穫することができます。麦は、お金に換えたり、教会で寄進したりする用途に使用できます。
議会では、説得力のリソースを使用して地位をあげることにより、お金を勝利点に変えるなどの特殊アクションが行えるようになります。有利なスタPマーカー(指輪)も取れるので、議員一家を目指すのもありです。
教会に立寄り、麦の寄進をすれば、ラウンドごとに勝利点が。ただし、黒バックから運良く引かれないと中には入れません。沢山立ち寄らせ、確率を上げれば中に入るチャンスも増えます。また、他のプレイヤーよりも沢山寄進を行わなくては報われない得点も与えられます。関係ありませんが、ダミーコマとして使用される黒駒がヘルミッショネルズ(出典:キン肉マン)です。
家族は旅行にも行けます。行った場所が多いほど、最終的な勝利点も高くなります。移動には、道に記されたリソースがかかります。風来坊として人生を終えるのも悪くありません。
市場では、勝利点となるタイルを購入することが出来ます。しかし、このタイルを購入するには、職人アクションで造った物が必要です。麦の収穫を取るか、勝利点を取るか、難しいところです。
俺の屍を超えてゆけ
役目を終えた家族は、村の台帳に記録されます。各アクションスペースから死去していったコマがずらりと並び、ゲーム終了時に得点を与えます。世代交代の新陳代謝を促進することも求められます。
台帳に入りきれなくなった村人コマが墓地に埋葬されるとゲーム終了。最終的に、得点が一番多いプレイヤーの勝利。プレイ後には、きっと胸が一杯になっていることでしょう。
公式ヴァリアントルール:適用必須
最後に、公式に発表されているスタートプレイヤー有利を緩和するヴァリアントルールを掲載しておきます(通常ルールだと、開始時スタートプレイヤーは無条件に有利であり、ラスト手番のプレイヤーは得られるリソースが1つ少ない)。
タイルに示されている通りにリソースをボード上に配置してラウンド開始の準備を済ませた後、残りの全てのリソースを教会の黒い布袋に入れます。そこからスタートプレイヤーが、参加人数+2個のリソースを引きます(2人プレイの場合は+1つ)。スタートプレイヤーは、引いたリソースを参加人数分の山に分けます。その後で、ラストプレイヤーからプレイと逆順に、好きな山のリソースを全て取っていきます。最後に黒い布袋を空にしてゲームを始めます。
プレイ記
karokuさん、ふうかさん、侍さんと4人プレイ。COQは青。
議会で村を掌握し、湧き出る麦を金に換えて得た現金を勝利点に換える作戦。
対するふうかさんは、村の歴史に次々と偉人伝を刻んでいく。残念ながら、村の功労者となったふうかさんに一歩及ばず。
総評
Gold
人生こそボードゲーム
当時、本作で頭角を表したBrand夫妻の唯一無二なセンスに驚きました。誰も予想しなかったような新たな発想を自ら生み出すことのできるデザイナーです。このことは、後年の賞レースで証明されることになります。
ユーロゲームを骨子とし、リソースの取り合いを介したアクション制限によるソワソワする感じ、少しだけ取り入れられた拡大生産系のワクワクする感じ。ここには飛び交う特殊能力も無ければ、ダイス判定目掛けて発射されるミサイルもありません。このゲームでは多くの要素の中から自分なりに得点経路を見いだし、それに集中している間に、自然と他プレイヤーとの間に絡みが生まれ、いつの間にかゲーム終了のタイミング、得点、アクション選択に凌ぎを削っています。
要素は多いのですが、本作はテーマとシステムのフィッティングがとても良く、一連の流れとしてすんなり理解することができます。
さて、このゲームのウリである時間の経過と死ですが、『ワーカーを失うことに大きな意味を持たせた』というところに感銘を受けました。これに至ってもテーマとの兼ね合いが良く、先祖の功績により一族に繁栄をもたらすというのは、ゲーム中涙ぐましくさえあります。プレイし終わった後、久しぶりに脳の隅々にまで血液が行き渡ったような満足感を感じたのを覚えています。
「死」をテーマとした本作がKDJを受賞できるかどうか、心配の声がありましたが、本作は2012年のKDJを見事に受賞しました。Brand夫妻は受賞に際して「死も人生の一部である」と語ったそうです。
ちなみに「人生こそボードゲーム」は、ゲームに付属している和訳についていた副題(TGIWおのさん訳)です。
2022年、アートワークを一新したビッグボックスが発売されるというニュースがあります。