いつか蝶になりたい
メーカー | ABACUSSPIELE他 |
発売年 | 1994年 |
作者 | Alex Randolph |
プレイ人数 | 3-5人用 |
対象年齢 | 7歳以上 |
ゲーム概要
アレックス・ランドルフ作の「イモムシ・イモムシ」。今は「ワームアップ」という名前の方が通るかも。ランドルフと言えばハゲタカの餌食やガイスターなど心理戦をゲームに落とし込んだ作品が有名。この作品もバッティングの駆け引きを楽しむゲームである。古いゲームなので短めにまとめます。
半円型の木製駒を7つ繋げた自分のイモムシを、いち早くゴールに導くことを競う。ゴールはチェッカーフラッグの彩られた長めのタイルで、片端を軸に、まるでコンパスのようにぐるりと移動させることができるようになっている。ゲームボードは特になく、なんと机全体がゲームボードとなる。障害物を置いて遊ぶこともできる。
手番では、各自配られた5種類の(4、5、6、7、X)タイルのうち一枚を裏向きに出し、一斉に公開して数字の分だけ自分のイモムシを移動させることができる。ただし、タイルの文字が他のプレイヤーとバッティングしているとその手番は何もできない。同じタイルは連続して使用する事ができないので、一度使用したタイルは脇に置いておき、次の手番終了後まで戻ってこない。前手番で出したタイルが使えないことが、次のバッティングを予測するヒントになるわけだ。
イモムシの移動は端にある駒を反対側の端に移動させることによって行う。つまり、前進も後退もできる。これが案外ウネウネとイモムシな動きをする。素晴らしいアイデアである。
そして、ここがこのゲームの一番の盛り上がりポイントだと思われるが、「X」のタイルを出したプレイヤーが1人だけの場合、そのプレイヤーは場に出てない数字を選択して自分のイモムシを進め、ゴールを移動させる事ができる。ぐるりとゴールを回転させるのである。
ゴールタイルの両端には穴が開いており、円柱上の駒が1つずつ配置されている。これのどちらかを押え、コンパスの中心にして「ぐるんっ」と自由に回転できるのだ。あと一歩でゴール!という瞬間にゴールが移動してしまう不条理と笑いを楽しむ事のできるゲームとなっている。
プレイ記
深夜3時過ぎ、自宅ゲーム会にてヤス、のっちと3人プレイ。飲んだ後だったので、少々脳が軟化気味。しかしこれも「頭がやわらかい」と書けばなぜか褒め言葉になるから不思議だ。
取り敢えず、色を決めてスタート。
なんだこれ、ファンダムみたいだな。
ファンダムというのは、昔流行ったMSXというホビーパソコンの読者プログラム応募コーナーである。そう、このゲームの見た目は昔のパソコンで一生懸命プログラムを打ち込んだ「ヘビゲーム」のようだ。なんだかすごく懐かしい。
スタート直後、「邪魔」がキーワードだと確信していたので、いきなりヤス虫を邪魔。ヤス虫も負けじとCOQ虫の進路を遮ってくる。…が、その間にのっち虫が悠然と一直線にゴールへ。
なんだ闘争心のカケラもない無気力イモムシめ!
大丈夫大丈夫、ゴールを動かせばいいんだよ
ヤスと目配せをしながら、ゴールを動かしてのっちの勝利を阻止しようとする。しかし、猛スピードで爆走するのっち虫はそのままゴール。あれれ??
これ3人プレイで2人絡んでたら独走お祭りゲーじゃない?
その通りである。他の2人が絡んでいるうちに独走されたら、あとは「X」をお約束の順番で出して阻止するくらいしかやることがない。それならいっその事、ゴール手前10センチからゲームを始めれば良いと思うくらいだが、この手のゲームの助走距離には「場を温める」という役割があるので縮めたらアッサリ感が増すだけとなるだろう。
数回遊んでみたが熱い展開は起きなかった。
総評
巨匠ランドルフの少し変わったバッティングレースゲームである。イモムシの動きを再現する駒の使い方と、テーブル全体をゲームボードに見立てたデザインは面白かった。バッティングのヒントとして前手番で使ったタイルは使えないこと、最速で移動しつつゴールをぐるりと移動させられる「X」の存在など、戦略性と理不尽さの笑いを盛り込んだポイントは良い。原始的な面白さを内包している可能性は認めるが、個人的にはそこまでの面白さや熱さを感じることはできなかった。最早と言ったところか。