バッティングを除いて、我々の人生に一体何が残るのだろう
メーカー | ZveZda |
発売年 | 2003年 |
作者 | François Haffner |
プレイ人数 | 3-6人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
南太平洋に浮かぶリゾートにコテージを建てるゲーム「マカバナ」
カードを使ってコテージを建設する座標を示し、他プレイヤーとのバッティングを回避しながら島の各地に自分のコテージで満たすことを狙うゲームだ。長年手に入らなかったが、やっと再販された(総評に書いた通り、盛大にやらかしたが)。今回のレビューには、ゲーム会に持ち込んでもらった旧版の美しいコンポーネントを用いている。
島は4つのビーチに分かれており、それぞれのビーチに4つの地形(砂浜/岩場/草地/海)がある。また、コテージを建設できる場所には、魚/花/タトゥーの模様が記されている。
このように、ビーチの名前/地形(砂浜/岩場/草地/海)/模様を3枚のカードで指定する事により、自分のコテージ建設場所又は、誰かのコテージを奪う場所を示すことができる。
手番では、秘密裏に選んだカード3枚を裏向きに出す。全員が出し終わったら、一斉に任意の1枚をオープンして公開。
また、各自2枚のみペンキカードを持っている。3枚のカードを配置する際、このカードを出して塗り替えを宣言することにより、新たなコテージの建設ではなく他人のコテージの色を塗り替えて乗っ取る事もできる。
カードを配置した後、ティキ駒を1人1つずつ配置していく。ティキ駒には、空白地へのコテージ建設を防ぐ効果と、既に建設されたコテージを守る効果がある。つまり、オープンされた1枚のカードの情報から、他人が狙っている土地を読むわけである。自分のコテージが狙われていると思えばそれを守るためにティキを配置し、そうでなければ新たな建設を阻止すべく配置を行うのだ。
ティキ駒の配置が終わったら、手番順に建設を解決していく。うまく空白地を選択することができれば、そこに自分のコテージを置く事ができる。バッティングした場合は、手番の早い者勝ちである。
誰かが自分のコテージを規定数配置するか、どこかのビーチがコテージ及びティキで埋まると終了フラグ(ティキで埋まっても終了フラグなのは忘れがちなので注意)。隣接するコテージの数が多い程にボーナス点。それぞれのビーチの最大数コテージでも得点が入る。
最も得点を稼いだプレイヤーが勝者となる。
プレイ記
JOSSさん、流さん、フォルテさん、タクトさんと5人プレイ。COQは緑。
ゲーム開始。
南の島のハッピーな雰囲気がとてもよく表現されているコンポーネント。
とりあえずは、広大な島の好きなところへコテージを建てる計画を立てれば宜しい。しかし、微妙に連続コテージが作り易い地形もありそう。最初は人が殺到するだろうと読み、そこは外して、逆にティキ駒配置の目標とする。
それにしても、お気づきだろうか。カードスリーブが凄い。100円ショップで購入されたスリーブとのことだが、サイズがまったく合っていない。まるで、警察が証拠を保管しているようなシュールさである。
1枚公開しなくてはならないカードには海を選択。ゲーム開始時の候補地は広大であるので、これだけの情報で建設予定地を予測するのは困難だろう。
ティキ駒を置くフェイズ。限定的な情報の中で、高得点に繋がりそうな土地にティキが集中する。つまりはコテージの隣接ボーナスが発生しそうなスペースが潰される。
いきなり読まれる者、無事に建設を済ませる者がいてひきこもごも。一喜一憂の中で、COQ(緑)は無事に建設をすることができた。両端も空いており、中々の好立地だ。
続いての手番。ちょっとブラフをかけてみる。
初手で建設したコテージの横に建設すると見せかけるため、草原をオープン。しかし、実は全然違う土地を狙っている。これがこのゲームの秀逸な点。1枚公開させるだけで、色々な思惑の体現を可能にしているのだ。
すると、吸い寄せられるように、ティキ駒がやってくる。気持ち良い。目線やら言動にもブラフ要素をふんだんに盛り込まなくてはなるまい。
最初のコテージが建設されると、1枚のカードの公開で、ティキ駒を配置しなくてはならない場所がかなり絞られる。すると、手番順で必然的にその役目を果たさなくてはならないプレイヤーがでてきて面白い。無論、置かなくても良い。
ブラフの掛け合い、騙し合い。裏をかいているつもりの相手を仕留めることができれば、もはや島の英雄だ。
COQを阻止しようとした赤のプレイヤーは英雄にはなれず、COQは離れた土地にコテージを建てる。こうして、手番順と限定的に公開されたカードの内容から、バッティングとチキンレースの熱い戦いを繰り広げていくゲームだ。
終盤、うまい具合にBikiniビーチの隣接を2重に狙うことのできる場所に、2つのコテージを建てる事に成功。虎視眈々と塗り直しを狙ってくる周りのプレイヤーをティキ駒でかわしながら、チャンスを待つ。必殺の塗り直しの指定をカードミスで2度も台無しにする流さんを横目に見ながら。
気配を消し、うまい具合に3連コテージとすることに成功したところで、ゲームセット。唯一、3連のコテージを建設できたCOQが勝利。
プレイ時間:45分
総評
Bronze
面白い。
秘密裏の選択、バッティングそしてブラフのゲームだが、バッティング先が3つのカードによる指定で決まるところが素晴らしい。そして、そのうちの1枚を自分の意思で選択し、公開する要素が秀逸。このルールだけで苦しくもなり、ブラフの要素ともなり、単なるバッティングゲームとは段違いの面白さを実現している。うまく空白地を指定できた場合には手番順の早い者勝ちとなるので、その読み合いの戦略性も高い。
終盤には、勝ち過ぎているプレイヤーを皆が邪魔することになるわけだが、コテージの建設先にブラフ利かせられることで、4対1となってもなんとかかわす事ができる絶妙のバランスがある。また、邪魔する側も、自分を守るのか、他人の邪魔をするのか、他のプレイヤーを信じて自分は違うところを守るのか。プレイヤー同士でゲームバランスを取るところに古臭さを感じるかもしれないが、このゲームに限っては、お陰でチキンレースのような要素も絡んで心理戦と手番順のアヤの絡みが面白い。このゲームを真に楽しむためには最低でも4人は欲しいところか。
南の島の雰囲気も良くでており、コンポーネントも申し分なし。元はフランスのゲームであったためか、長い間手に入らない状態が続いていた。しかし、遂に日本語版も含めて再販がなされた。再販版は少々手が加えられている。大きな変更は、ボードが両面仕様になりプレイ人数によるマップが追加された点。最大プレイ人数が1人増えて6人となった点。そして、カードのデザインが変更された点である。
実際、再販のニュースを聞いてCOQはパッケージの男性くらい小躍りして喜んだ(本当は、踊っているのではなく、コテージを塗り直しに行っている)。だが、再販版のアートデザイナーが盛大にやらかしてくれた。土地を指定するためのカードのデザインが変更され、色々と直感的にわかりにくいのである。これはとても残念だ。詳しくは、ジョーコデルモンドのあきおさんのレビューを見て欲しい。
しかし、カードのミスプロットは旧版でも発生していたし、カードやボードの分かりにくさは開始時に説明すれば克服できるだろう。それよりも、バッティングゲームとしてはかなりの秀作である。はっきり言って、バッティングゲームはこれとハゲタカの餌食/バザリあたりがあれば他は要らない。初めてこのゲームを遊ぶ人とのプレイでは、カードを1枚公開することの意義を(特にブラフの部分を)事前に説明してあげてほしい。バッティングゲームに戦略性も盛り込んで45分程度で終わるこのゲームは貴重な存在。再販まで長らく待ったが代わりとなるゲームは現れなかった。