デザイン・アートワーク・展開、そのすべてがグレースカイ …面白さを除いてはね
メーカー | Hans im Glück |
発売年 | 2005年 |
作者 | Franz-Benno Delonge |
プレイ人数 | 2人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
鬼才デロンシュが遺した、不遇な2人用ゲームの傑作
2人用ゲームの傑作「フィヨルド」です。このゲームが発売されたのは、「カルカソンヌ」が発表された少し後。カルカソンヌが華々しい道を辿る裏で、フィヨルドはあまり有名にはならずに消えていきました。リオグランデ社から再販されていた時期もありましたが、これも終了してしまいました。しかし、2022年にすごろくやさんから4人まで遊べるようになったバージョンが発売されました。
コンポーネントは6角形のタイルと農家駒、そして土地駒です。このレビューで遊んでいるのは2人専用のゲームなので、駒は2色です。新しく発売される4人まで遊べる「フィヨルド」は、土地駒ではなくてヴァイキング駒になっているらしいです。
カルカソンヌとは似て非なるゲーム
発売当初、既に大ヒットしていたカルカソンヌと見た目が似ていることから多くの比較がなされました。結果として、良い意味でカルカソンヌとは別のゲームであったのですが、同時にそのために話題にならなかったのです。このゲームは、老若男女が楽しめるエリアマジョリティのゲームです。
超絶エレガントなルール!
このゲームは2つのフェイズに分かれています。
第2フェイズが終了したら、自分の土地駒を置いたタイルの数を数えて点数とします。3ラウンドのゲームを行い、合計点の多いプレイヤーが勝利します。囲碁を親しみやすくしたような、超絶エレガントなルールです。
新・旧フィヨルドのコンポーネント検証
ついに新版フィヨルドが発売されました。
気になるコンポーネントの差異について比較していきます。
外箱:新版の箱は倍くらい大きい
新版は4人分のコンポーネントに追加ルール(ルーン石)に加えて、タイルと駒の大きさも増しているため、箱は大きくなっています。そして、全体的にアートワークは新版の方が明るい雰囲気です。
駒:駒のサイズは大きくなり、土地はヴァイキングに変更
家の駒はデザインは大きく変更されていないものの、2倍くらいに大きくなりました。旧版で土地ディスクだった駒は、新版では細かな造形のヴァイキング駒となり、よりフレーバーが増しました。ヴァイキング駒の出来は秀逸ですが、破損の可能性も高まったと思われます。購入後は初期不良チェックのためによく確認した方が良いでしょう。
タイル:大きく薄くなった6角タイル
タイルは新版で若干大きくなりました。厚みは並べないとわからないレベルで旧版の方が厚いようです。旧版のタイルの方が硬い印象で、ぶつけるとカチャカチャと音がします。新版は少しシットリした印刷ですね。新版は海の部分がテカテカする印刷になっていて、並べた時に綺麗です。
タイルの中身:2人用のタイルの地形は初期配置用を除き完全に一致
これが一番気になっていた点です。2人用のタイルをすべて突き合わせて確認してみました。すると面白い事実がわかりました。タイルは、初期配置の3枚のタイルを除き、完全に一致していたのです。初期配置のタイルのみ、鏡に写したように左右が逆転していました。初期タイルを鏡像異性体にしたのはリメイク作者のシャレでしょうか。つまり、新版に旧版のルールを適用すれば(新版のルールブックに掲載されています)、旧版と同じゲームを遊べるということです。新版は旧版の完全上位互換と言えます。
ルールの変更点は?
ルールの変更点が基本ゲームに1つあリます。また、ルーン石を用いた拡張ルールとコンポーネントが付属しています。繰り返しになりますが、これらを適用せずに旧版のルールで遊ぶことも可能です。
基本ゲームの変更点:4つのタイルが表向けられている
前半フェイズでタイルを配置する際、旧版では裏向きのタイルから1枚を引いて配置できるかどうか検討しましたが、新版のルールでは、あらかじめサプライとして4枚表向けられているタイルから1枚を選択して配置します(配置後、1枚補充して4枚に戻します)。よりアブストラクト寄りになる変更と思います。好みに応じて新旧どちらのルールを採用しても良いでしょう。
ルーン石:得点ルールが追加される
ルーン石のルールを導入することによって、得点のルールを追加できます。通常は後半フェイズで配置したヴァイキング駒の個数が得点となりますが、「特定の海岸線に接しているヴァイキング駒はさらに追加点」などの追加得点ルールを設定できる拡張です。複数用意されているものを段階的に追加していけるように丁寧な説明が記載されています。ゲームに変化を与える悪くない拡張です。これも、好みに応じて採用すれば良いでしょう。
プレイ記
このプレイ記は東日本震災後初めて投稿したとの記録が残っている。度重なる停電・節電の中でも遊べるボードゲームってやっぱり自然に優しい。
2人対戦の1/3戦目:
めくっては配置を繰り返していく2人。しばらく海外に行っており、今回は久々の対戦のため農家配置のタイミングが掴めない。広大な土地には是非置きたいところだが・・
という訳で、かなり辺鄙な場所に1個目の農家を置くCOQ。このゲーム、第2フェイズでの陣取りでは自分の駒で相手をブロックできる。つまり、狭い入り口に農家を置いておき、第2フェイズですぐにシャットアウトできるようにする戦法が有効なのだ。もちろん、この農家の先をうまく開拓できればの話だが。
次第に、フィヨルドの地形が露になっていく。しかし、お互いに牽制してまだ農家を殆ど置いていない。裏向きのタイルが無くなったら、即座に第1フェイズは終了してしまうので、あまり良い展開とは言えない。
そろそろ中盤にさしかかり、フィヨルドの最終形も予測がついてきたので次々に農家を置いていくCOQ。
COQは発展のありそうな3方向に農家を置いていく。相手はまだ3つの農家を手元に置いている状況だ。タイルのめくり運もあるので、置きたくなくても相手に有利な場所に置かざるを得ないことも多々ある。
ここから、温存していた白い農家が次々とCOQの農家を殺すような位置に置かれていく。入口を占めているつもりだった場所に回り込まれるとツラい。あまり旨味がなく、相手が回り込んでこない絶妙な場所の入り口を占めることが重要なのだ。喉元にナイフを1本ずつ突きつけられる様に、ピタリピタリと農家を配置されていく。
完全に包囲されるCOQ。久々なので忘れていたが、包囲されるととてもまずい。残り1つの農家駒で逆転の配置を目指したいが、既にタイルは残り少ない。仕方なく、ないよりはマシとしょうもないところに最後の農家を配置する。
これが一戦目第1フェイズの最終形。第2フェイズの手番は最後にタイルを配置したプレイヤーではないプレイヤーから始まる。
1つずつ土地駒を配置していくので、如何に自分の領地を確定させるかが重要となる。最後に置いた農家は、いきなり目の前の土地をシベロンブロックされ終了。結果、僅差で1戦目を落としたが、続く2戦目3戦目は勘を取り戻したCOQがすべての駒を使い切り、ぶっちぎりの勝利。
プレイ時間30分
総評
Platinum
鉄板の面白さ。
TBGLベスト2人用ゲームの一つです(新版でもまったく同じルールで遊べます)。
囲碁の面白さを簡単に楽しめるゲームにしたようなエリアマジョリティのゲームです。前半はランダム要素の中でフィヨルドの地形を作っていく様子を楽しみながら、先を読んでまさに農家駒で布石を打っていきます。囲碁の序盤のような展開を地形構築の妙味も味わいながら楽しめるわけです。後半は、囲碁の陣取りに類似しています。土地駒で領地を切り分けていくのです。ルールは簡単で3戦遊んでも30分程度で終わる軽いゲームながら、しっかりと遊べます。2人で遊ぶなら、カルカソンヌよりこちらの方が好きです。
第1フェイズのお陰で、毎回陣取りするマップが違うのは、色々な展開を楽しむ上で非常に重要な点。この作品では、そのマップを作成するところまでがゲームになっているところが超絶エレガントでそこにシビレたり憧れたりします。なぜこのゲームがあまり話題にならずに消えていったのか、大いなる謎です。
どのタイルをひくかは運なので、第1フェイズは運の要素があります。しかし、それをどこに配置するか、表向けられているタイルをどう使うか。運の要素を自分の思考で敵にも味方にもできる部分もあります。その思考を巡らせながらフィヨルドを作っていくのは楽しい行為です。また、3戦合計のため、多少の運の要素は平均化されることでしょう。
残念ながら、Rio Grande社の発注リストからしばらく姿を消してしまっており、このまま絶版が続くようなら日本語版の販売権を購入しようかと思うくらいに好きなゲームでした。しかし!日本でも2022年にすごろくやさんから再販されるようです。しかも、4人まで遊べるようになり、追加ルールも伴って!旧版のルールでも遊べるとのことですが、地形等のバランスも戻せるのか、発売が待たれるところです。
作者は、コンテナ、マニラ、ゴイルドブロイなどの名作を手がけた鬼才デロンシュ。このゲームを遊ぶ度に彼の早すぎる死が悔やまれてなりません。
雰囲気はグレーですけど、とても面白いゲームです。