希望さえあれば、どんな頂きにも辿り着く事ができると決心しているッ!
メーカー | Ravensburger |
発売年 | 1980年 |
作者 | Sid Sackson |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 9歳以上 |
ゲーム概要
究極の運試し
コンピューターゲームのデザインでも有名なシド・サクソンのクラシックな作品「キャントストップ」です。単純なサイコロによる運ゲームと侮っていました。しかし、ボードゲームに馴染んでいない友人が自宅に遊びに来た時に遊んでみたところ、あまりの面白さに驚かされたのです。その後は家飲みの後などに頻繁に遊んでいます。プラスティック製なので汚れないところも家飲み向き。
これはただの運ゲームでは断じてなく、リスク管理と確率、そしてそれを超えた勝負師のゲームです。ハマると周囲の景色がぼやけるほどに熱中することのできる魅力を秘めています。
超余談:プッシュ-ユア-ラック
余談ですが、このような「アウトプットにある程度のランダム性や運があり、既存の利益のために勝負から降りるか、さらなる報酬のためにそれらをすべて危険にさらすかを決定する必要のあるゲーム」のメカニクスを英語でPUSH YOUR LUCKもしくはPRESS YOUR LUCKと呼びます。ゲームの評価を英語で読む時に頻繁に登場する表現ですので、覚えておくと役立ちます。TBGLは勉強になるなぁ〜。
STOP標識
このゲームは発表後40年以上経過しているので、様々なバージョンが存在します。筆者が所有しているラベンスバーガーのバージョンでは、海外の「STOPの標識」を模したゲームボードとピラミッド型の各自のマーカー、そして3つの白い登山者駒と4つのダイスを使用します。
ゲームの目的はボード上に示された2~12の山にアタックし、頂上を制覇すること。1人のプレイヤーが3つの山を制覇するとゲームは終了し、そのプレイヤーが勝者となります。
ダイス4つで2組の数字を作る絶妙のバランス
手番では、プレイヤーは4つのダイスを同時に振り、出た目をダイス2つずつにわけ、2~12までの数字を2組作ります。この数字が2~12までの山を指定するというわけです。作る数字は同じ数字2つでも可です。
アタックの度に、白い登山者駒を一歩ずつ進めていきます。登山者駒は3つしかないので、1度にアタックできる山は3つまで。ただし、登山者駒をボードに配置してからの手番は2つ作った数字のどちらかが有効ならば、対応する登山者駒をすすめて次の手番を行うことができます。
しかし!もしも4つのダイスをどう組み合わせてもアタック中の山の数字にならなかった時はバースト扱いとなり、折角途中まで上った登山者駒は取り去られてしまいます。そうなる前に、自ら手番を終了し、ビバークすれば登山者駒を自分のマーカーに換え、それまでのアタックを有効に確定させることができます。この場合、次回の手番で同じ山にアタックする場合、マーカーから始めることができるのです。
各数字の山は誰かが頂上を制覇すると、その他のマーカーは全て取り除かれ、誰も再びアタックすることはできません。ゲームが進むと、次第にアタックできる数字が減るというわけです。なお、2つの6面ダイスの合計で最も作りやすい数字は「7」であることから、登頂距離も一番長くなっています。
ゲーム中、あと1歩!あと1歩進みたい!ダイスを振る手が止まらない!キャントストップ!となるわけですね。4つのダイスで2組の数字を作るバランスが絶妙です。
プレイ記
自宅ゲーム会にてシカ、カジと3人プレイ。全員経験者。写真ではわからないが、極寒の中、庭でウナギを焼いた直後の為、全員コート着用のままゲームをしている。
少し酔っているため、ダイスがコロコロと思わぬ方向へ転がってしまう。そこで、ダイスはトレイの中で振る事に決め、いつの間にか、ションベン(トレイからダイスが飛び出ること)したらバーストというルールが追加された。シビア!
カジは最初の手番から6、7、8の山を攻める絶好の展開。このゲーム、数字の作り易い中央の数字は登頂距離が長くなっている。しかし、4つのサイコロを振って、6、7、8の組み合わせがでる確率は登頂距離を無視できるほど高いはず。これはいきなり制覇か?と思ったら。。
ここまでくれば十分です。
正気か?
6登頂直前、一歩手前でストップ。煮え切らない男だと内心思いながらも、ひと安心。堅実だなぁ。手番はシカへ。シカも6、7、8をアタック。次々サイコロを振り、カジに迫るシカの猛追!一気に7の中腹にいたカジを差し切って7登頂成功。カジの駒は取り除かれ、ここでビバーク。
序盤は勝負せんとあかんで。キャントストップや。
続いてCOQの手番。一投目。何やら1~3ばかり。・・が、運良く4を二組作る事のできる目。
続いて8、9をアタックし、なんと初回の手番で4の登頂成功。8も一歩手前まで進める事ができる。ここでビバーク。
このゲーム、2投目、3投目に登山者駒が手元に残っていたほうが有利。手元に駒が残っていれば、想定外の数字しか作れなかった時も対応できる。そして、残した駒を如何にして確率の高い数字にアタックさせられるかが重要。確率の高い数字にアタックできれば、そこを足掛かりにして進んでいけるのだ。ただのサイコロゲーかと思っていたが、以外に考えることがある。続いてカジの手番、あと一歩まで来ていた6を登頂させ、ビバーク。そして終盤。
この段階でCOQ2、シカ1、カジ2。COQとカジが1歩リード。実はこのゲーム、6、7、8の高確率3兄弟が制覇されてしまってからが本当の戦い。6、7、8を足場にできないことで、バーストの危険がかなり上がるのだ。地道にビバークして上っていく地味な展開か、果敢にアタックする派手な攻略法か、プレイヤーの性格が如実に現れるゲームである。
体も温まり、異様な盛り上がりを見せる終盤!この部屋に集まった3人は果敢なアタッカーのみだった。
キャントストーーーップ!!
が、バースト。
キャントストーーーップ!!
が、バースト。
そしてCOQの手番。
1投目、12!
2投目も12!
12は3回アタックすれば登頂できる、数ある中では最も低い山。しかし、12は6が2個でなければアタックできない奇跡の山。ビバークし、次の手番でじっくり攻めるか、それとも勝負をかけるか!
希望さえあれば、どんな頂きにも辿り着けると決心しているッ!
でるかっ12!
・・・と、ションベンのイメージが頭に浮かんで躊躇。
なんですか、折角気合い入ってたのに。
その後も何度か躊躇した挙げ句、ついに意を決して振る。これで勝負が決まるとなったら、中々最後の一投は決心が要るものである。
結果は見事12を出し、登頂成功。異常なほど盛り上がり、過酷な登山戦争に終止符が打たれた。後に、何故勝負に挑んだのか、聞かれればこう答える事だろう。
そこに山があるから。
総評
Silver
どうして長い間手を出さなかったのか。不思議な程のおもしろさ。簡素なボードと駒からは、ゲームの内容がうまく伝わってこなかったのですが、プレイしてみるとなぜボードが「STOPの標識」なのか理解できました。
見るのとやるのは大違い。サイコロを振る時のドキドキ感、相手のサイコロの目が確定した瞬間の計算。はたして、アタックは成功するのか。他人のマーカーを差し切る壮快感。どれをとっても、今までに無いようなエキサイティングな時間でした。この熱狂は、周りの景色がぼやける程です。
一見すると、サイコロの運だけのゲームと思われがちですが、それだけではありません。リスク管理と確率の計算。そして、俺ならこの目を出すことができるさ、そう決心している!という運試しの熱さ。全員が勝利に信念を燃やすことが出来れば、異常な程に盛り上がります。評価はSilverにしていますが、神回が訪れた時にはPlatinum級の盛り上がりを見せます。
一方、盛り下がる時もあります。誰かが先行してしまい、他のプレイヤーが無謀な賭けを続けなければいけない時(そして失敗を繰り返す時)です。まぁ、そういう時もあるのでスッパリ諦めましょう。そうすれば問題ありません(確信)。
これを読んで、今まで敬遠されていた方、初めて知った方がこのゲームに触れてみようと思って頂けたら幸いです。古くても良いものは良い。