アサラ

発売年2010年
作者Michael Kiesling, Wolfgang Kramer
プレイ人数2-4人用
対象年齢9歳以上

ゲーム概要

無冠の名作:マストフォローで塔建設

ボードゲームを評価する時に英語圏の人が使う言葉にHidden Gemというものがあります。日本語にするなら「隠れた名作」という訳がはまるでしょう。本作『アサラ』は名コンビKramer&Kiesling(クラキン)によるデザインで、ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされたものの惜しくも受賞を逃した作品です。カードを用いたワーカープレイスメントとトリックテイキングゲーム(トリテ)ライクな”マストフォロー”をゲームの骨組みにしている作品で、正に彼らの隠れた名作の1つです。近年、トリテをメカニクスとして採用するゲームが時折脚光を浴びますが、2010年時点で既にこのようなゲームが存在していたわけです。一時期キックスターターで再販の噂が流れたものの、最近は情報を見ないので、またしても”隠れて”しまったのかもしれません。

カードでプレイするマストフォロー系ワーカープレイスメント

『アサラ』は塔のパーツを購入して自分の前に並べて建設していき、各ラウンドの終了時には建築済みの塔と装飾に応じて、ゲーム終了時に5種類ある塔の高さ比べをして名声点(=勝利点)を分配し、勝敗を決するゲームです。衝立の裏には、それぞれの種類の塔の特典一覧表が記されています。きちんと土台と屋根が揃っている塔の高さ1位と2位に名声点が配られます。

衝立の裏にはすべてが記されている

各プレイヤーはアクションを実行するための5色のカードをランダムに配られて手札として持っています。これを実行したいアクションのスペースにプレイすることでそのアクションを実行できます。スペースには限りがあるのでラウンド中のアクション数は限られています。つまり、ワーカープレイスメントのメカニクスと一緒です。ワーカー駒の代わりにカードを使いますが。

カードは色でマストフォロー

流石のクラキンはこれにトリテのマストフォローを融合し、ワーカープレイスメントのメカニクスを格段に面白くしています。各アクションについて、誰もカードを配置していなければ任意の色のカードをプレイすることができますが、いずれかの色のカードがプレイされたあとは、同じ色のカード縛りが発生します。同じ色のカードがなくても任意のカードを2枚裏向きにしてプレイすることでアクションを実行できますが、手番が減ることと等しい行為なので、手札をうまくマネジメントしないとどんどん劣勢になります。

任意のカード2枚を裏向きに出してもOK

常に資金はカツカツで

お金はラウンドごとに一定額が配られますが、全然足りません。追加のお金はアクションで手に入れなければならず、しかし同時に塔の部品も購入しなければならず、塔の建築もアクションで行う必要があることに加えてワカプレスペースには限りがあり、色縛りまで発生する悩ましさは相当です。

お金を払った分のパーツを建築できる(追加も可能)

しかも、塔の建設アクションスペースは、そのアクションで建設できる塔のパーツ数と同一のお金の支払いも必要であり、効率的にパーツを集めてから建設したい欲求と早取り&色縛り要素への対応がバチバチです。

土台と屋根のパーツがあれば一応完成

4ラウンド終了後に最終得点系差(高さ比べ)をして最も名声点を獲得したプレイヤーが勝利します。

上級ルール

内容物に含まれている上級ルールでは、光る窓の購入とカード補充のアクションが追加されます。選択肢が増えることでより一層悩ましくなる一方でアクションスペースが増えるのでゆるくなる一面もあります。

総評

Silver

「お金を払って購入したパーツを組み立てて高さ比べをする」というボードを見ただけで、ルールの説明を受けなくても遊べるくらいにシンプルなゲームでありながら、カードを使ったワーカープレイスメント様のメカニクスにマストフォローの仕組みをプラスすることでいわゆるドイツゲームとしての完成度をめちゃくちゃ高めています。現代となってはどちらのメカニクスもかなり一般的ですが、これらを組み合わせてザ・ドイツゲームを作り上げる作者はやはり名コンビです。

パズル性が薄く、アクションポイントもないことからクラキンの他の作品と比べるとかなりオーソドックスな仕上がりです。オーソドックスゆえにその完成度は非常に高く、早取り、高さ比べ、マストフォロー、すべての要素が他者との絡みを含んでおり、悩ましさがとても強いゲームです。カードの配り運でどうにもならないこともあるのですが、そこは目を瞑りましょう。

基盤のメカニクスがワーカープレイスメントなので、プレイ人数は多い方が真の面白みを体験することができると思います。Maxの4人プレイが一番面白いと思います。

コンポーネントはほぼすべて紙製なのですが、メインボードがはめ込み式になっており、ユニークな8角形の形をしていて唯一無二感があります。イラストも美しく、見た目の側面でも評価は高いです。若干大きすぎるボードが日本の住宅事情にそぐわないという点を除けば。

本作にはミニ拡張が2種類存在します。上級ルールのカード補充アクションでさらにお金を追加することで任意のアクションが実行可能になるものと、各アクションスペースにランダムな恩恵の宝箱が置かれるものです。後者はソリッドなゲーム性にランダム性を追加できる感じです。あまり流通していないので気にしなくても良いと思います。

Silver
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The Board Game Laboratory – Rebooted!!
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