カードの枚数は取り敢えず忘れて
メーカー | Hans im Glück |
発売年 | 2013年 |
作者 | Stefan Feld |
プレイ人数 | 2-4人用 |
対象年齢 | 10歳以上 |
ゲーム概要
在りし日のフェルトの姿
元々、フェルト作といえば「ドラゴンイヤー」や「ノートルダム」に代表されるような”辛さ”が特徴でしたが、いつしか要素の多さに比重が移ってきてしまっていました。『手番順の有利不利なんて知るか、これだけ要素が満載なら夜も寝れないほどうれしいだろう!』というやつです。続いてリリースされた「ボラボラ」もキラリと光るシステムを軸にしていて悪くはないんですけど、ちょっとダークサイドならぬライトサイドに堕ちかけていました。やっぱりフェルトはダークじゃないと。
今回紹介する『ブリュージュ』(本当は「ブルッへ」という発音のはずなのですが、大人の都合でこうなったようです。)では目も当てられないような災害が復活しています。相変わらず得点の経路は多彩ですが。特殊カードの内容は各人ミクロで展開してるので放っておけば良く、自分の世界に没頭できる感じです。カード効果のコンボは多彩なので、そこを楽しめるヒトはもちろん楽しいですし。次々に発生する天災に四苦八苦しながら周りにおいていかれないようにアレもコレもしなきゃいけない忙しさはフェルトファンなら待っていましたというところでしょう。それでいてプレイ時間は慣れれば4人で60分程度というのはポイントが高いです。このように在りし日の姿を取り戻す現象を、当サイトでは逆水前寺清子現象(2歩進んで3歩下がる=1歩戻る)と呼んでいます。
ゲームでは特殊能力のある人物カードを様々な目的のために使っていきます。家とセットで場に出すことができれば、トレーディングカードゲームのようにカードをタップ(横に向ける)ことで特殊能力を発動させることもできます。カードのコンボを発見した瞬間も楽しいゲームですが、ゲームの基礎にはきちんとドイツゲームの潮流を感じます。
中世ベルギーの都:ブルッへが舞台
ゲームではベルギーの都ブルッヘを舞台に、160枚あまりのカードの能力を使用して得点を伸ばしていきます。160枚のカードにはそれぞれおじさんが描かれていて(全部絵柄が違う、凄い!)いろんな特殊能力が付与されています。おじさんたちは5種類の色のうち何れかに属していて、裏面はその色の家になっています。各ラウンドの最初に、各プレイヤーは2つ山札からカードを規定枚数になるまで補充するのですが、各山一番上のカードだけが見えているので2択で欲しい色を選択していくことになります。欲しい色が見えていない場合は今引いた山の一番上に良い色が来るように念じましょう。各手番ではカードを1枚使用して複数のアクションの中から1つを選択します。ただ単に特殊能力の応酬をするわけではないです。良かった良かった。
災害を避けながら建物を建て人を集める
人物は配置することによって能力を発揮します。リソースを使用して得点を得る能力や、その他のアクションを有利にする能力など多彩です。リソースは対応する色の家を建てたりするのにも使います。カードの色はそのラウンドごとに振られるダイスの目と対応しているので、換金額はラウンドごとに変わります。
ダイスの目は災害にも関わっており、プレイヤーは5・6が出た色の災害マーカーをうけとらなければなりません。この災害マーカーが3つ溜まると、配置したヒトが死んだり、お金が全部なくなったり、目も当てられないような災害が起こります。つまり、狙った色のカードを補充し、災害を回避しながらお金を稼ぎ建物を建ててヒトを配置してその特殊能力で得点していくゲームです。ラウンドごとに振られるダイスの出目が(自分にとって)ショボイと脳内阿鼻叫喚です。
各トラックはアクセルを緩めた奴から消えていくチキンレース
運河は、それぞれのプレイヤーに2本ずつ用意されており、対応する色のカードと書かれたコストを払うことにより引いていけます。これを終点まで引くと早いもの勝ちの得点チップが貰えます。ただし、順番が決まっているのでここでもカードの色が超重要。さらに、運河とヒトそしてラウンドの最初に行われる市議会トラックの駒の位置で1度でも“単独トップ”になったプレイヤーにはゲーム終了時にそれぞれ4勝利点が与えられます。この“1度でも”というところにフェルトの非凡さを感じるわけですが、アクセルを緩めた奴から消えていくチキンレースはかなり悩ましいです。逆に、1度でもトップをとればあとはアクセルを緩めてもいいし、最初からあきらめるのもありってところも面白いですね。
プレイ記
MOGさん、流さんと3人プレイ。
スタートプレイヤーはMOGさんで、最初の市議会トラックはパス。2番手のCOQは下家に楽をさせるわけにいかないのでお仕事で大枚をはたいて市議会を進める。すると運よく1ラウンド目で市議会の単独トップを頂くことに。
市議会で無理する必要のなくなったCOQは、一気に運河も引いていき、ついでに運河でも単独トップに。あとは適当に家を建て、お金を貯めて次のラウンドに備える。
次のラウンドではヒトを配置する計画だったものの、早速ペストが流行りそうで計画断念。とりあえずペストの蔓延を防ぐのにカードと手番を使用する。苦し楽しい。
気付くとMOGさんは毎回カードの効果で災害マーカーを1つずつ捨ててる。ずるい。あまりずるいので、MOGさんがお金を得たタイミングやカードを使いたそうなタイミングで「各プレイヤーからお金を徴収する」とか「各プレイヤーはカードを1枚捨てる」みたいな一次的な効果のカードで応戦する。これが中々効果があったようで、耳に残る悲鳴が実に心地よい展開。
終盤、運河を引き切って得点チップを貰いたいが、どうにも赤のカードが引けない。そうこうしているうちにカードの山が尽きて最終ラウンド到来。2択の連続を失敗してもうダメぽと思ったその時。
手札にカードを3枚引くという能力のカードが!
これを家に配置してカードを3枚引き、見事赤のカードを手に入れて運河完成。最終得点計算でギリギリ逃げ切って勝利しました。
最初のラウンドで先手番が市議会締めないからっすよ!
そんなこと言われたってあqwせdrftgyふじこl
すべての悲鳴が心地よいです!(最低)
最終得点: COQ:54 流:52 MOG:35
プレイ時間:60分
総評
Bronze
多彩なおっさんを160人並べたいヒトにおススメのゲーム
というのは嘘で、沢山のカードに苦手意識を覚えていた方(僕)も是非遊んでみてほしいです。筆者はカード&特殊能力満載系のゲームは評価が低くなる傾向にあります。しかし、本作の場合、カードには色々な能力が書いてあるのですが、予想の範囲内であるものが殆どなので、周りは軽く見回しておけば良い程度です。カードを様々な目的で用いるシステムも面白いです。カードゲームですが、下地のドイツゲームの要素がしっかりしているのでゲーム全体のバランスが良いのですよね。
少しだけワレスの「ロンドン」に似た雰囲気がありますが、そこまで取っ付き辛くないと思います。なぜかというと、カードの枚数の割に手元に来る枚数が少ないので、手也でコンボらしきものを模索するのがメインでそんなに知識とか問われない感じなのです。それ程カードコンボがガチじゃない感じです。コンボができても特に他人をハメるようなものではなくて、自分の得点を延ばすのがメインですし。コンボができてもフル稼働する前にゲームが終わるくらいの感覚ですし。
良く良く考えるとブリュージュのディベロッパーはハンスでした。どこからどこまで編集者が関与しているのかは不明ですが、得点サラダと揶揄される要素多彩なフェルトのゲームをなんとかドイツゲームの枠の中に引き戻した感じは流石ハンスのゲームだと思いました。カードの特殊テキストは勝敗を決めるけど、その一線に立つために色々やらなきゃな「色々な部分」がいい感じ。前述のドイツゲームの要素です。
カードの引き次第で勝敗が大きく変わりどうしようもないという評価(人物ガチャ:初手で強いカード引いたヒトが勝ちで良いじゃんみたいな)もまぁわからないではないけど、比較的ゲーム時間が短いので笑い飛ばせる範囲だと思います。ロンドンは何度も遊ぶにはちょっと重過ぎますしね。
アークライトから日本語版が出たので筆者は日本語版に買い直しました。