カッラーラの宮殿

崖から飛び降りろ、そして落ちていく間に翼を作るのだ

メーカーHans im Glück
発売年2012年
作者M Kiesling, W Kramer
プレイ人数2-4人用
対象年齢10歳以上

ゲーム概要

ガードレールの装備されていない大人のゲーム

2012年No.1の正当派ユーロだった

『カッラーラ』は、資材を購入し、6つの都市に建物を立てて勝利点を獲得するゲームです。

1999年「ティカル」と2000年「トーレス」で連続してドイツゲーム大賞(SDJ)に輝いたクラマーとキースリングコンビが2012年に発表した作品です。資材を購入して自分の個人ボード上の6つの街に建物を建て、決算によってその価値分のお金や勝利点を得るという正統派のユーロゲームでした。メインのシステムには、キースリングお得意の円状のギミックを採用し、「ヴァイキング」からの流れを感じさせます。

このゲームの特徴は、まず”上級ルール”が明確に区分けされ、初級ルールを数回プレイしてから採用するようにとわざわざ封筒に封印されているところです。見出しに「ガードレールの無い大人のゲーム」と書きましたが、恐らく作者らもゲーム根幹の理解が最低限必要であることを大きく認識していたのでしょう。実際には、ゲーム慣れしているメンバーであればいきなり拡張を採用して遊ぶ事が可能ですが、真の面白みをすぐに認識することは簡単ではないと思います。しかし、一度面白みを知れば、ユーロゲーマーでこのゲームを手放す人はいないでしょう。

手番で出来る事は「資材の購入」「建物の建築」「決算」の3択とシンプル。建物がすべて建設されるか、毎ゲーム変化する(上級ルールでは)終了条件を満たしたプレイヤーが終了を宣言するとゲームが終了し、その時点で最高得点のプレイヤーが勝利します。

自由度を履き違えると谷底に真っ逆さま:決算計画の重要性

冒頭に記載した通り、このゲームでは「獲得した資材で建物を建てていく」わけですが、建てる場所は個人ボードのいずれかの場所、すなわち、ある程度任意の場所に建てる事が出来ます。ある程度任意とは「獲得した資材の色によって生まれる制限を除けば好きなところに」という意味です。建物のタイルは9枚表向けられており、そのうちの1枚から選択します。書かれている数の資材を何色の資材でまかなってもかまいませんが、使用した一番低価格な資材の色によって場所が制限されてしまうわけです。

左に向かってより高価な資源が必要になる

大事なのは、「街によって決算で得られる収入の種類が決まっている」こと。すなわち、勝利点お金かのどちらが得られるかが、建てる場所によって決まってしまうわけです。資材を獲得するには当然お金が必要なわけで、建物をお金の得られる街に建てたいところですが、そうすると勝利点は全く得られません。反対に、勝利点を得られる街に建てていけば勝利点を獲得することができますが、お金は全く得られないのです。このバランスをとることが楽しいわけですが、決算は個人ボードで各建物の種類につき1回ずつ、メインボードで各街につき早い者勝ちで1回ずつしかできません。決算の目論見が外れると、その後は辛いプレイをすることになります。

資源は立派な衝立の背後に隠す

メインボードの決算は早い者勝ちですが、それぞれの街には決算するための最低建物建設数が設定されています。決算を効率よく行うために、沢山の建物を建設しておきたいところなのですが、他プレイヤーによる街への建物建設が決算へ強烈なプレッシャーをかけてきます。また、決算によって各建物は種類に応じた報償駒を生み出します。これらは最後に得点となりますが、こちらも早い者勝ちなので決算は計画的に。

主たるギミックは、円状の資材市場

資材獲得は、メインボードに配置された円状の資材市場で行います。円の周りにはそれぞれの色の資材の値段が示されており、円盤が回転するに従って資材の値段が安くなっていきます。

資源市場の円盤は、良く回る工夫がされていてぐるぐる回る

資材を購入するには、まず最初に円盤を1目盛り回転させ、一番高額なマスに全体の合計が11個となるように資材をランダムに補充します。その後で購入するマスを決め、そこから好きなだけ資材を購入します。円盤が回転するに従い、高額な色の資材も次第に安くなっていき、無料になる資材もでてきます。調子にのって買いすぎると、その後どうにもならなくなる危険があるので注意が必要です。

上級ルールその1では、資材の購入時に円盤をまわすかどうか、プレイヤーが選択することができます。これにより、資材の値段を調整し、次のプレイヤーにプレッシャーをかけることができます。

上級ルールは選択性になっており、好きなルールを採用して遊ぶ事が出来ますが、このルールだけは入れた方が面白いと思います。身銭を切って場全体を絞るという言わば「間接攻撃」は、アメゲーの直接攻撃と違ってとても清々しい緊張感をゲームに提供してくれル、ユーロゲームの特権です。

選択ルールその2:ゲーム終了条件と最終得点計算の変更

ゲームの終了条件は、すべての建物が建設されることの他に、3つある終了条件を全て満たしたプレイヤーが終了宣言をすることでも達成されます。基本ゲームでは、シンプルな3つの終了条件(決算回数、建物建設数、報償駒数)が設定されていますが、それぞれの条件がカードでランダムに設定できるようになっています。これにより、報償駒の収集にセットコレクション色が強くなったりとゲームに変化を与えることができます。

終了条件(上三段のカード)次第で基本の得点計算も変わる

また、上級ゲームではさらにボーナス得点のカード(例えば、各街の建設数トップのプレイヤーにボーナス勝利点など)が追加され、単に決算によって得られる勝利点を得るだけでは勝てなくなります。

選択ルールその3:価値8の建物と決算強化タイル

3つ目の選択ルールでは個人ボードを裏面にし、建物の背景色(2色ある)による決算を可能にする他、価値8の建物がいつでも建てられる状態となります。価値8の建物を建設すると、各街の決算効果を倍にする決算強化タイル1つを得る事ができ、さらに多彩な戦略を取る事が出来るようになります。こちらのルールは、決算を多彩にすることができるようになるため、ルールは複雑になりますが、ゲームの難易度は下がるような気がします。

新版カッラーラの変化

2023年に日本語版の『カッラーラの宮殿・新版』が発売されました。さまざまな部分に変更が加えられており、別のゲームのように変化している部分もあるので触れておきます。旧版を新版のルールで遊ぶことはできませんが、新版にはアドオンの旧版カードを追加することで擬似(決算タイルが異なるので完全に同じではない)旧版を遊ぶことができます。

まず大きな違いはモニュメントの扱いです。資材の購入用ホイールの区画にモニュメントと各色の像が追加されています。新版では、一区画の資材を買い占めることでモニュメントか像を取得することができるようになりました。モニュメントは、購入した建物に配置することで価値を1高めることができます。像も建物に配置することができ、特定の色の像を指定して決算ができるようになっています。決算の方法が増えたことで、戦略が多彩に、そして全体的に優しくなりました。

さらに、決算で他人とのインタラクションが起きるようになりました。決算の駒が共通の決算ボードの上に置かれるようになり、決算にボーナスが付与されるようになりました。誰かが決算を起こすと、その区画の決算を行うか、通常のアクションを行うかの選択を他のプレイヤーに迫る仕様となりました。同じタイミングで決算を起こせばボーナスがもらえますが、後で独自のタイミングで決算駒を使用する場合にはボーナスを失います。これによって、決算のタイミングがより一層戦略的になりました。

一方で、旧版にあったゲームの終了条件を変化させるカードは無くなってしまいました。また、決算タイルの一部のバランスが悪く、ナーフ(弱体化)が推奨されています。コンポーネントは旧版の方が豪華です。全体的に、新版は”今風”にプレイしやすくなった印象です。

総評

Gold

2012年度のゲームはホントにヤバかったですね。「ツォルキン」「キーフラワー」に続き、「カッラーラの宮殿」もおすすめゲームの1つです。単純な面白さとしては「ツォルキン」が頭一つ抜けていると思いますが、僅差で甲乙付けがたいので、遊ぶ時間や好みで選ぶと良いですね。

中でもカッラーラは、比較的シンプルなルールに実力と運を適度に盛り込むユーロゲームの基本を押さえ、巧みに1対多人数をチラチラと演出する華麗さも持っています。

作者がわざわざ別封筒を用意していることからもわかる通り、先に基本ゲームを充分に理解しないとボーナス得点や決算強化タイルの効果でシステムの中心で回っている面白みのエッセンスに気づきにくいと思います。というか、筆者は選択ルールその2とその3を採用せず、円盤の回転選択のみを追加したルールが一番好きです。このルールだと、実にソリッドなカッラーラの面白さを体験できると思います。

選択ルールの2と3は、それぞれに少し大きめの振れ幅を秘めているので、組み合わせ次第ではゲームのバランスが悪くなってしまうことがあるのも気になりますね。なので、これらのルールは適度に組み合わせたほうが良いのではないかと思います。

今のところ欠点は、箱の大きさと全てのルールを追加すると大味になってしまう可能性を秘めていることくらいで、ゲームを重ねるごとに面白みを増してくるとても良いゲームだと思います。

Attention(注意)!!正当派ユーロゲームと呼びながらも、ユーロゲームにつきものの安全装置が弱めです。また、全体が絞られるような展開には、プレイヤー全員がある程度ゲームの根幹を理解している必要があるように思います。そういった意味で、エキスパートゲームだと思います(つまり、いつもよりも人を選ぶ可能性があります)。

新版と旧版は結構変わっているのでどちらが優れているというわけではないのですが、新版にはある程度指針があり、より今風に調整されていると思います。新版が発売され、旧版のエキスパート仕様でも、新版の今風の仕様でも遊べるようになり、完全版となったことから評価をGoldに変更します。

購入先情報

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