Short Review
澄み渡る青空のようにスガスガしいトリックテイク
メーカー | 2F Spiele |
発売年 | 2013年 |
作者 | Friedemann Friese |
プレイ人数 | 2-6人用 |
対象年齢 | 8歳以上 |
ゲーム概要
欧州の伝統ゲームをフリーゼがアレンジ
光り輝く緑色の箱。これだけで作者が誰だかわかりますね。このゲームはスカンジナビア地方で遊ばれていた「Agurk」という名前のトリックテイキングゲームが元です。これをフリーゼがアレンジしたため、説明書にはその旨が記載されています。シビレたりあこがれたりする配慮です。
このゲームはトリックテイキングゲームに分類されるものですが、「負け抜け」「最後のトリックが超重要」など通常のトリックテイクとは少し異なるルールとなっています。
ゲームとは直接関係ないですが、箱の裏面には英語の題名「Five cucumbers」と英文ルール同梱の記載があります。2F Spieleはこの頃から卸専用の組織を立ち上げたらしく、同時に英文ルールが同梱されるようになったようでとてもありがたいです。
中身はAmigoサイズのカード1束(スートはなく、1〜15までのカードが4枚ずつ)と緑が綺麗なキュウリの木製駒沢山です。1には「×2」と記されており、それ以外にはキュウリが1〜4本書かれています。キュウリはどう見てもヘチマに見えますが、それは「まっすぐなキュウリしか買わない都会の人が悪い」ってテレビ東京か何かで言ってました。きっとそうなんだと思います。
キュウリを受け取らないように暮らすゲーム
ゲームでは、合計60枚のカードを良くきり7枚ずつ配ります。配りきりではないのでゲームに登場しないカードがあることになります。配られたカードを1枚ずつ出していき、7トリック目に手札がなくなったら1ラウンド終了です。トリックをとるのは最も大きな数字のカードを出したプレイヤー。ここまでは普通です。
このゲームの変わっているところは、7枚のカードを出していく中で”得点に直接関係があるのは7枚目のカードをだしたとき(7トリック目)のみ”というところです。しかも、最後の(7つめの)トリックを取ってしまったプレイヤーに与えられるのは最後に自分が出したカードに記された数のマイナス得点(キュウリ駒)です。つまり、如何に最後の一枚を小さい数字のカードとするかが重要なゲームってことです。最初のトリックから最後のトリックに向けて手札を整えていきます。
そしてこのゲームでは、マイナス得点であるキュウリを5本を超えて受け取ってしまうと負けとなります。負けたプレイヤーは穴という穴にキュウリを突っ込まれ、苦しみながら勝者が決まるゲームを見つめるのです。
超余談:あなたは冷たいキュウリのような人ですね
余談ですが、ドイツではキュウリは「役立たず」の象徴であったりするようです。したがって、このゲームではキュウリを受け取りすぎると負けになってしまいます。しかし、米国ではキュウリはその艶やかで冷たい印象から、落ち着き払ったクールなことを現す時に使われます。「You ara a cool cucumber!」と言えば、「あなたは冷たいキュウリのような人ですね(クールですね)」という褒め言葉です。勉強になりましたね?間違ってもドイツ人に向かって言わないように気を付けてください。
いかに最後のトリックで負けられるカードを温存するか
手札から出せるカードは、今出されている最も大きな数字以上もしくは手札で一番小さい数字のカードです。左記の写真だと、場に12の数字が出ているので、出せるのは1、13、15のうちのどれかです。
例ではまだ手札に5枚のカードがあるのでラウンドは終了せず、このトリックをとってもマイナス得点にはなりません。それどころか、ここでトリックをとることが出来れば、次のトリックで最初のカードを出すリードプレイヤーになれるので有利です。そうすれば、8などの中途半端な数字を処理する事もできるでしょう。
こうして最終7トリック目までに手札を調節し、最後の1枚を弱いカードにすることを目指します。目論見が一旦外れると、リードになるために残していたハイカードがいつまでも手札に残り、涙で前が見えなくなります。
もしも「x2」が最後のトリックで出されたら、ペナルティの本数が倍になります。これはオリジナルのルールにはなかったフリーゼ独自の味付けです。これのお陰で突然死が発生することがありますが、最後まで1を温存するのはかなり難しいです。それでも過去には1ラウンド目で倍ペナルティをくらい、8本のキュウリを突っ込まれて憤死したプレイヤーも居ます。常勝タムラさん…惜しい男を亡くしました。
総評
Platinum
脂ぎった料理の合間にキュウリを食べたような実にスガスガしいプレイ感。ゲーム会の締めや、重ゲーの後の息抜きなどにも最適。スキー旅行に1つ持って行けば、夜通しこれ1箱で遊び尽くすことができるでしょう。プレイ可能人数の幅も広いです。
ユーロゲームでは基本的に負け抜けのゲームは好まれない傾向がありますが、待ち時間はわずかですし、それもゲームを彩る演出だと思えるタイプ(ブラフとか髑髏と薔薇とか、キュウリにまみれて堕ちていったプレイヤーは、ゲームに流れと熱気を提供します)のゲームです。
カードは配りきりでないですし、偏り方によってはどうプレイしても勝てません。運の要素が平均化する前に脱落してしまう人も居ます。だからその辺は割り切って楽しみましょう。しかし、決してタダの運ゲーではないですよ。
和気あいあいと始まるゲームは、トリックから降りて自分の手札で最も小さい数字のカードを出すプレイヤーが現れてからどんどんと収束に向けて動き出します。最後のトリックで負ければいいわけです。アイツの最低カードは少なくともX以上なんて情報を頭に入れながら、如何にして手札を整えるか。いつアクセルを踏めば最後まで走りきれるのか。
昔、リチャードガーフィールドが「ゴォ〜スト」というゲームでやらせようとして大失敗した”勝負に向かって手札を整えさせる”という試みが見事にはまったゲームだと思います。
元はトランプでも遊べるゲームですが、トランプでは替えが効かないデザインを考案したフリーゼは素晴らしい仕事をしました。内容も元ネタよりもバランスが良くなっていると思います。この素晴らしいゲームをたくさん遊べるように、私は予備の品を幾つか保管しています。
傑作。